詩誌AVENUE【アヴェニュー】~大通りを歩こう~

詩誌AVENUE【アヴェニュー】~大通りを歩こう~

2016年01月16日
XML
カテゴリ: AVE予告篇
※ ネット発表のものは、出版された詩集とは異なる箇所があります。
※ 本篇の、詩誌AVENUEによるレイアウトは作者校閲を経ています。






「まあ、とてもきれいな鉢ですわね!」とベティが叫んだ。
プニンはまるではじめて見るかのように、快い驚きをもってその鉢を眺めた。彼はそれがヴィクターからの贈物であることを話した。(…)
その鉢は心やさしい偶然の神の微妙なはからいによって、プニンが椅子の数をかぞえ、パーティーの計画を立てはじめたまさにその日に到着したのだった。鉢を納めた箱はさらに別の箱に入っていて、その外側にさらにもうひとつの箱があった。おびただしい量の木屑と紙が鉢を包んでおり、それらがカーニヴァルの騒ぎのときのように台所じゅうに散らばった。なかから現われた鉢は──贈物をもらったとき、感動的な衝撃のために、贈られた人の心には、その贈物が寄贈者の心やさしさを象徴的に反映している輪郭のかすんだ純粋な光彩の炎のように見え、その現実的な実体は、いわばその炎のなかに埋没しているような、そういった種類の贈物であった。だが、その現実的な実体も、その贈物のもつ真の栄光を知らない局外者によって称讃されると、不意に躍動して、輝かしい姿を永遠に現わすようになるのである。

(ウラジーミル・ナボコフ『プニン』第六章・6、大橋吉之輔訳)

よどんだように静かで、荒涼とした風景だが、ジョカンドラにとってはホームグラウンドだった。そしてその静けさが彼女の心にも静けさを呼び起こし、熱っぽい額にあてられた冷たい湿布のように彼女の緊張をほぐした。

(ルーシャス・シェパード『緑の瞳』3、友枝康子訳)

エディにとってはただのピアノではなかった。ネディなのだった。エディはある程度の時間手にしたものには何でも愛称をつけた。それはまるで、馴染み深い海岸線や目的地が見えないと不安にかられる大昔の船乗りさながらに、名前から名前へと飛びうつっているかのようだった。もしそれをしなければ、名前もなく形もない混沌とした大洋を、なすすべもなく漂流してしまうようだった。

(フィリップ・ホセ・ファーマー『奇妙な関係』母・2、大瀧啓裕訳)

「人間は同じものにいろいろな名前をつけます」とメアリがいった。「〈混沌〉はわたしたちにとっては一つのことを意味するにしても、ほかのだれかにとってはまったくべつなことを意味するかもしれません。さまざまの文化的背景がさまざまの認識を生むのです」

(クリフォード・D・シマック『超越の儀式』23、榎林 哲訳)

何世紀も昔の哲学者ニーチェの文章を思い出した。(…)人間の心を蜜蜂の巣として描いている。われわれは蜜の収集家であって知識や観念を少しずつ運んでくるのだと──

(バリントン・J・ベイリー『知識の蜜蜂』岡部宏之訳)

ラムジー夫人はそれを巧みに結び合わせてみせた、まるで「人生がここに立ち止まりますように」とでもいうように。夫人は何でもない瞬間から、いつまでも心に残るものを作り上げた(…)

(ヴァージニア・ウルフ『灯台へ』第三部・3、御輿哲也訳)

セアこそ、わたしの初恋の人だった。また彼女は、わたしが救った人のものだったから、わたしは彼女を崇拝してもいた。最初にセクラを愛したのは、彼女がセアを思い出させるからにほかならなかった。今(秋が去り、冬がきて、春がきて、年の終わりであると同時に始まりでもある夏がふたたびきて)わたしはふたたびセアを愛した──なぜなら、彼女はセクラを思い出させるから。

(ジーン・ウルフ『調停者の鉤爪』10、岡部宏之訳)

美しいものというのはいつも危険なものである。光を運ぶ者はひとりぼっちになる、とマルティは言った。ぼくなら、美を実践する者は遅かれ早かれ破滅する、と言うだろう。

(レイナルド・アレナス『夜になるまえに』刑務所、安藤哲行訳)

少女は少女の痛みを抱えて、モーリスは自分の痛みを抱えて、二人は芝生を並んで歩いた。

(P・D・ジェイムズ『罪なき血』第三部・9、青木久恵訳)

E・A・ロビンソンは彼の後半生において自分の詩以外はどんな詩もほとんど読まなかったと告白している。ただ自分の詩だけをくり返しくり返し読む。これは自己模倣の麻痺が、人生半ばにして多くの良い詩人を駄目にするという事実の説明にもなる。

(デルモア・シュワーツ『現代詩人の使命』2、鍵谷幸信訳)

自分は個性(パーソナリテイ)に欠けるというエドワードの意見は正しい。彼は実際に同席しているときより話題にされているときのほうが実在感があった。友だちがぼくを作っていると彼はよく言った。しかし、彼の存在が目に見えない秘密の通路を通ってぼくたちに流れこんでいたのだ。

(L・P・ハートリー『顔』古屋美登里訳)

ところがそれ以来、電話はかかって来なくなった。かつてエドマンドが初めて交換手に苦情を言った直後と同じだ。アトリエは今や昼も夜も澱んだ熱気と静寂に満たされており、絵の中の子供らはめいめい好き勝手に虚空を見つめている。

(ロバート・エイクマン『何と冷たい小さな君の手よ』今本 渉訳)

だが、ラシーヌが何を言おうと、死者たちの国へ降りてゆくための道はない。魂たちのかわりに、ここにあるのは飛ぶ種子、浮遊する蜘蛛の糸、羽虫だ。死者たちの国への入り口はケルトの伝説が語っているように一筋のまっ直ぐな道でできている。

(イヴ・ボヌフォワ『大地の終るところで』VIII、清水 茂訳)

「もし私が他の人たちより少しでも遠くをみたとするならば、それは私が巨人の肩にたっていたからだ」という言葉は、ニュートンの言葉だとされている。しかり、彼は巨人の肩に立っていた。その巨人のうち最大のものはデカルト、ケプラー、ガリレオであった。

(E・T・ベル『数学をつくった人びと I』6、田中 勇・銀林 浩訳)

「あなたたちはもう行かないと」アーリーンの声が言った。「話している時間はないわ。もちろん、そんな必要もないんだけど」

(ケン・マクラウド『ニュートンズ・ウェイク』B面20、嶋田洋一訳)




     全行引用詩『ORDINARY WORLD°』 39/45 へ






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2016年01月18日 19時35分55秒
コメント(0) | コメントを書く


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ
画像認証
上の画像で表示されている数字を入力して下さい。


利用規約 に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

×

カレンダー

サイド自由欄


Art詩 スライドショー

作へ

注目 作へ
紫苑1~水原紫苑の歌によせて
     新たなイラストの扉がいま開かれた!




    詩誌AVENUEの  掲示板

    詩誌AVENUEの  私書箱

キーワードサーチ

▼キーワード検索

コメント新着

フリーページ

塚元寛一のお部屋★


創刊に向けて


コラボ詩の心得


顔文字詩


『ふろいど』のために


311


オリジナル意訳詩


TITANのお部屋★


『ふろいど』


動物さんたち 1


動物さんたち 2


作家の部屋★


poet 塚元寛一さん


poet 田中宏輔さん


poet 香鳴裕人さん


artist 羊谷知嘉さん


poet samleさん


reviewer 澤あづささん


poet NORANEKOさん


poet 天野行雄さん


poet 黒木アンさん


poet はかいしさん


poet 紅魚。さん


poet しぇりーいすちゃん


poet 泡沫恋歌さん


e-shi トラ太郎さん


e-shi 黒沙鐶ミイカさん


e-shi コマさん


artist ホングウ セラさん


reviewer 藤一紀さん


reviewer 水野英一さん


poet メビウスリング詩人会勉強会


poet 僻猫さん


artist 美々婆々さん


poet カニエ・ナハさん


ミュージシャンのお部屋★


hiroyuki


森 ミキ


編集室★


ブックマーク★


Home


room 1 企画


room 2


box 1 ✔


box 2 ✔


box 3 ✔


box 4 ✔


box 5


pro1 陽気なこまどり


pro2 coffee


pro3 花のやうに


pro4


pro5 


PBook 1


PBook 2


PBook 3


PBook 4


PBook 5 ✔✔


PBook 6


PBook 7


PBook 8


PBook 9


PBook 10


PBook 11


PBook 12


PBook 13 ✔


PBook 14


PBook 15


長編詩投稿サイト


日本人 カモメ7440


水深九十八メートルの夜



月舞の宴 (コメント付)


1~71行詩


今日の写真詩:詩文by塚元寛一


No.1


作品


十一次元の詩人たちへ


青いレモン


『青いレモン』の前駆詩


古井戸の底に浮かぶ


オリジナル意訳1    by塚元寛一


オリジナル意訳2


オリジナル意訳3


オリジナル意訳4


オ意ロートレアモン1


オ意ロートレアモン2


オ意ロートレアモン3


オ意ロートレアモン4


オ意ロートレアモン5


写真詩詩文控え1   by 塚元寛一


写真詩詩文控え2


写真詩詩文控え3


写真詩詩文控え4


写真詩詩文控え5


写真詩詩文控え6


ひろやすさん写真詩詩文控え1 by 塚元寛一


ひろやすさん詩文控2


ひろやすさん詩文控3


ひろやすさん詩文控4


ひろやすさん詩文控5


wa!ひろさん写真詩詩文控え1 by 塚元寛一


wa!ひろさん詩文控2


wa!ひろさん詩文控3


wa!ひろさん詩文控4


イラスト詩文控え1  by 塚元寛一


イラスト詩詩文控2


イラスト詩詩文控3



© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: