11月27日(水)
「短歌セミナー」(抜粋:後藤)(6)
著者:馬場あき子(短歌新聞社)
発行:平成二十一年十月十日
2.虚と実について(3)
くれなゐの椿を焚くは誰ならむ近づきゆけどわれには見えず 辺見じゅん
朝もやの記憶の中の時計台ぼんぼんぼんやり流れてゆくか 俵 万智
現実の或る部分にタッチしながら、感覚的に把握している見えない存在、曖昧な記憶をうたっています。<いま>の作者の心のかたちに、かぎりなく近い、ソフトな感銘です。捉えがたいそれを捉えようとして、「くれなゐの椿を焚く」という虚構が生れ、「ぼんぼんぼんやり流れてゆくか」という虚構感覚が生れています。まさに「虚にして虚にあらず、実にして実にあらず」その「間」を楽しみうるのが虚構です。 (つづく)
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