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ボクの好きな映画5選

【ボクの好きな映画5選】  かつて鬼畜の心を震わせたごく私的なチョイスによる古今東西の5作品。



1. 「 Fearless (邦題:フィアレス-恐怖の向こう側) 1993年・アメリカ

最初に言っておくが、この映画はボクが「感銘を受けた映画」としていつも筆頭に挙げる作品ではあるものの、これまでそのレベルの感銘を共有する人に会ったことがない。戦地還りの兵士のように、「生きるか、死ぬか」といった究極の状況を経験した人でないと、この主人公の心理にこれほど感情移入できないのかと思う。

かつて楽天日記 にも書いたが、この映画は飛行機事故で奇跡的に一命を取り留めた男の「その後」の異常心理を描いたシリアスなドラマである。「お涙頂戴モノ」でも「感動ストーリー」でもないのだが、これを観ると過去23年間泣いたことのない鬼畜のボクの目に毎回のように涙が浮かびそうになる。
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見どころは墜落している飛行機の中の回想シーンである。乗客がパニックになったり、必死に祈ったり、隣の乗客と手をつないだり、遺言を録音している中で、主人公がとても穏やかな顔で”This is it. This is the end of my life. Let it go. I can let it go.”と(心の中で)つぶやいて完全にこの世への執着を放棄し、ほかの乗客に笑顔で声をかけたりするシーンはいつもボクの心に深い哀しみと感動を呼び起こす。ボクにとってそんな映画はコレだけである。



2. 「 1900(邦題:1900年) 1976年・イタリア

『ラスト・エンペラー』のベルナルド・ベルトルッチの監督作品らしいが、そんなことはこの解説のためにGoogle検索するまで知らなかった。1900年の同じ日にイタリアの田舎に生まれた大地主の息子とその小作人の息子の人生を中心に、ファシズムが台頭し社会主義運動が勢いを増し、やがて敗戦へと至るイタリア近現代史を背景として、5時間半掛けて描く壮大な社会ドラマ・人間ドラマ・歴史ドラマである。

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この映画の特徴は、「長いこと」はもちろんだが、とにかく人がいっぱい死ぬことだ。冒頭の場面における大地主の爺さんの糞尿まみれの自殺に始まり、ヘンタイ野郎による幼児の虐待殺人とか、ショッキングな場面が随所に登場する。あとは、いろいろな場面がやたらと血と糞尿と涎と精液・愛液にまみれていて、観る人の皮膚感覚に訴えるところがある点かなあ。

人間が生きるというのはこういうことなのだ…ということをズシーンと思い知らせてくれる、重くて哀しい映画である。坂本龍一がライブでピアノ演奏していたテーマ曲も耳に残るぜ。



3. 「 フォレスト・ガンプ(邦題:フォレスト・ガンプ/一期一会) 1994年・アメリカ

「たしかにいい映画だけどさ、せっかくなんだからもっと観たことなさそうな映画を紹介してよね」とか言われそうだが、ボクのこの映画に対する感銘は「ボク個人とアメリカとの愛憎の関係」が背景にあるので、それについて言及するためだけにもここに挙げさせていただきたい。

ボクは24歳で渡米するまでアメリカがキライで、“ダサい大衆どもの国”だと思っていた。ハリウッドの“セレブ”に代表される空っぽな陽気さや、ベトナム戦争やアメフトやブシュ大統領に代表される神経症的なアグレッシブさやマッチョ信仰もヘドが出るほどキライだった。何かというと「戦ったり」「打ち負かしたり」することをテーマにしたハリウッド映画も大キライだった。

ボクが「フォレスト・ガンプ」という映画よりも、この映画がアメリカで大ヒットした…という事実に感銘した理由は、それまでのアメリカ映画の主人公のように世界に対して挑まず、闘わず、世界の悪意に対しただ「走って逃げる」だけのヒーローがアメリカに受け容れられた点にある。
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この主人公は「力」に対して力で対抗せずに、逆方向に走って逃げ、そして、逃げ切る。
しかも、ガンプの走る先には何の「目標」「ゴール」があるわけでもない。何も追わずに「ただ走る」のである。
だからと言って、積極的な行動を起こさずに、何かを“期待”したり待ったりしているわけでもない。闘わず、追わず、待たない。しかしふと気づくと幸運な地点に着地している。

この映画のヒットはボクのアメリカに対する見方を変えてくれる力があったとともに、生き方の「ロールモデル」を提供してくれたと言う点でベスト5からは外せないのである。



4. 「 ルパン3世 カリオストロの城  1979年・日本

これが「お気に入り」の映画だというのは一鬼畜としてちょっと恥ずかしいのだが、10代で観たこのルパン3世の アニメ映画 は、スレッカラシになる30歳くらいになるまでたしかにボクが感銘を受けた最大の映画の1つだった。

もともと中学生時代のボクはアニメ番組『ルパン3世』のファンであったが、この映画はガキ向けのアニメ番組をオトナの鑑賞に堪えうる「007」並みの高度さに洗練させた上、「囚われの身である可憐な王女さまと、それを命懸けで救おうとするルパン3世とのプラトニックなラブストーリー」をストーリーの核に据えることによって、モテない少年&青年の純情をとらえたのであった(たぶんこの 王女クラリス は、“プラトニック系ロリコン”のケのある童貞日本人男性にとっての理想像と言っても過言ではあるまい)。
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ただ、この映画に対する男性たちの評価は高いが、女性が絶賛しているという話は聞いたことがない(笑)。考えて見ると、「囚われの身の王女さまを救う騎士」という筋立ては古今東西の童話と一緒であって、野郎どものダンディズムやロマンティシズムには訴える一方で、女性にとってはたぶん観ててもシラケるだけなのかもなあ。



5. 「GATTACA(邦題:ガタカ)」  1997年・アメリカ

5つめはSFのジャンルから、人間存在の不条理と人類という種の進化を暗示する「 CUBE 」にしようかはたまた運命(超越存在)と意思(神の手のひらの上で踊らされている人間)について考えさせられる「 マトリックス 」にしようかはては鬼畜らしく「ブレードランナー」とかにしようか迷ったのだが、ガタカにしといたよ。自分らしいテーマだし。

この映画についても 過去の日記 で触れたことがあるのだが、SF仕立てのストーリーでありながら、「人間の素質・才能 vs. 意思・努力」とか、「ホンモノ vs. ニセモノ」とか、アイデンティティの根拠のなさとか、ついでに兄弟・姉妹間のライバル関係とか、そういったことを痛切に考えさせられるシブい作品なんだなあ。それと、主人公を脅かす(心臓疾患による)迫りくる「死」も、この作品の隠し味になってるんだなあ。まあ、あらすじに関してはこれも 心斎橋氏の過去日記 を読んでくれい。

個人的に「泣かせるシーン」は、エンディングの直前、主人公のヴィンセントを乗せたロケットがついに土星に向けて打ち上げられんとしている頃、ヴィンセントにアイデンティティを提供したエリートの適正者ユージーンが車椅子を下り、現役の頃に勝ち取った銀メダルを首から提げて焼却室に入り自らの命を絶つシーン。
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この映画もさ、フィアレスとか1900とかと同じように、BGMが心に沁みるんだわ、コレが。
あとでこの音楽を聴いただけで、映画を見たときの感銘や感動だけがジーンとよみがえって、骨抜きになっちゃうんだよね。こんな一見するとただのB級SFみたいな映画にさ、どうしてマイケル・ナイマンがあんな高尚な音楽を提供してるわけよ。



おまけ 「South Park: Bigger, Longer and Uncut(邦題:サウス・パーク無修正映画版)」  1999年・アメリカ

言っておくがな、オレは サウスパーク テレタビーズ の大ファンだ。この2つの番組は何時間見てても飽きない。サウスパークは切り紙細工によるアニメで、テレタビーズはぬいぐるみによる空間劇だが、あと3週間で40歳になる中年のオレはこの2大番組には、かつてクリエイティブの世界のハシクレだった者として心から敬服しているんだ。オレにはこんなぶっ飛んだ世界はマネしたいが真似できないからだ。

まるで罪のない幼児向けのアニメのような顔をして、キャラクターたちが“Fワード”を連発するわ、手足がもげたりして血みどろのボロボロになって死ぬわ、地獄には堕ちるわ(笑)、地獄ではサタンがサダム・フセインとゲイ・セックスに興じてるわ(笑)、Vチップを脳に埋め込まれた主人公が“Fワード”を連発することで電撃を放ちサタンとその手下たちを撃退するわ、あーオレもこんな人をコバカにした強烈な作品が作りたかったなーチクショーと思いながら大笑いしちゃうんだなあ。
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