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2007.01.21
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カテゴリ: フランス映画
NELLY ET MONSIEUR ARNAUD
Claude Sautet

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ここのところ年齢のことばかり書いていますが、この作品は監督クロード・ソーテ70才ぐらいでの最後の作品です。いわば遺言とでも言えるような作品かも知れません。この映画の5年後に76才で亡くなっています。老いて引退生活をしているアルノー氏を監督より4才下の名優ミッシェル・セローが好演していますが、監督のアルターエゴ的役柄と考えてよいのでしょう。ちなみに若いネリーを演ずるエマニュエル・べアールは撮影時に30才くらいです。一言で言えば、この二人の友情以上恋愛未満の物語とでも言ったらいいでしょうか、しっとりと落ち着いた雰囲気のいい映画です。

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上の写真はべアールに演技をつけるソーテ監督ですが、ここでべアールを見る監督の目は映画のアルノー氏の目でもあり、べアールが監督を見る目もネリーがアルノー氏を見る目であり、また映画の中で若いネリーを知って情熱を回復し回想録を執筆するアルノー氏というのは、べアールを目の前にして映画制作をするソーテ監督でもあるんですね。最初の方でネリーが夫にアルノー氏を説明するのに「老人ではなく年配」と言いますが、この辺がアルノー氏に託したソーテ監督の自分自身への思いなのかも知れません。

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映画自体の作りは、原題が『ネリーとムッシュー・アルノー』というように、中心にあるのはアルノー氏とネリーの物語ですが、映画の基本枠としてはネリーの物語だと思います。映画の最初と最後に描かれるのはネリーの人生であり、その中間に通り過ぎていくのがアルノー氏です。ただ単にアルノー氏(ソーテ監督)とネリー(べアール)の物語としていないところに、作品作りの上手さ、また奥ゆかしさのようなものを感じます。

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ネリーには失業中の夫ジェローム(シャルル・ベルラン)がいるんですが、もう1年も彼は仕事をしようとしないで、家でテレビを見たりしてる。ネリーがパン屋とかでパートの仕事をしているんですが、家賃は滞納している。ある日友人のジャクリーヌ(クレール・ナドー)とカフェにいると偶然そこにジャクリーヌとかつて恋人関係ももあった友人のアルノー氏が入ってくる。ジャクリーヌは2人を紹介する。ジャクリーヌが電話をかけにいって2人だけになるのですが、世間話をしていてネリーの状況を知って、アルノー氏はお金を都合しようと申し出る。ネリーは断ります。アルノー氏としては、金で彼女を・・・、なんて下心があるわけではなさそうで、若い彼女を見て、その魅力に惹かれもし、そして若さとか、生きる情熱とか、なんか自分の現在にない、あるいは歳を重ねて段々に失われて行く自分の何かを刺激されたんだと思います。そして執筆中の回想録の口述筆記のワープロ入力の仕事を彼女に提案する。

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ネリーは家に帰ると夫にその老紳士にお金を借りたと話をするけれど、わけのわからぬ男からの借金でありながら反対もしない。「他にもそんないい知人はいないの?」なんて言う始末。そんな夫を見てネリーは夫と別れる決心をし、夫に告げる。本当に夫が自分を愛しているかに疑問も感じたのでしょうし、自分の存在が原因で夫は仕事もしないという状況だと前から感じてもいたんですね。家賃の滞納があったからその生活も変えにくかったものの、アルノー氏からお金を借りればそれが解決できるわけで、せいせいと別れられるわけです。

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とりあえずその晩はジャクリーヌの家に泊めてもらい、その後ワンルームも借りて、アルノー氏の家でのワープロ・オペレーターの仕事も始まる。口述筆記の仕事ですが、回想録っていうのは自伝だから過去のアルノー氏のことも知り、そして現在こうしてアルノー氏と仕事をしていて、段々にネリーは彼という人間に関心をもっていく。そしてここは冗長だ、ここは詰まらない、カンマに位置はここの方がいい、と忌憚なく感想を述べるようになる。アルノー氏もそんな批判に最初は怒りを感じつつも、彼女が彼の著作や、ひいては人生や人間にも関心を持ち、心を開いていると感じ、逆に彼も彼女に心を開いていく。誰にも話したことのないドラベラという謎の人物との過去の一件についても秘密を語る。ここで成立しているのは紛れもない人間としての相互理解であり、愛なんですが、ただ一つ2人とも、特にアルノー氏が踏み切れないのは年齢の壁。

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(以下ネタバレ)


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別れた夫ジェロームが睡眠薬を飲み過ぎて病院に担ぎ込まれたという電話を受けてネリーは病院に駆け付けるんですが、病室の夫はピンピンしていて、自殺でもなんでもないただの事故だった。夫の今の彼女というのも現れ、夫はちゃんと仕事をしているという。ネリーの心は複雑です。夫がちゃんと仕事をすることもなく、夫とある意味正常な関係を持てなかったのは自分が原因だと感じてるんですね。そんなことからネリーはアルノー氏との共同作業でも心ここにあらず状態になって、それにイラついたアルノー氏と言い争いになってしまう。でもこれも彼のネリーに対して気持ちがあるからなんでしょう。ジャクリーヌ夫妻の喧嘩の仲裁を2人がすることになったりして、二人の関係は戻り、アルノー氏もドラベラを過去に破産させ、社会的に葬り去ったことなど秘めた汚い自分をも晒し、二人の見えない絆は深まっていく。

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独身主義を標榜していたヴァンサンだが、ネリーと暮らしたいと思うようになる。それで一緒に住むために借りる家も下見してきたと彼女に迫るんですが、彼女に「今のままではダメなの?」と言われて別れを告げる。ネリーとしては夫のこともあり、そういうことへに不安がまずある。自分は相手をダメにする女ではないかと。それとアルノー氏とがそうであるような、本当の心と心のつながりがヴァンサンとの間にあるかには疑問を感じている。そして家に帰りたくないネリーは夜アルノー氏の家を訪ね、一晩泊めてもらう。裸でネリーが寝る傍らに来たアルノー氏。肌に触れずに撫でるようにするが、それ以上は踏み切れない。彼女が寝返りをうって彼に気付くと、手を預けて握っていてもらう。彼女が眠ってしまうと彼は部屋を出てカフェのカウンターで一人もの思いに耽る。翌朝彼女が起きると、夫アルノー氏と別れて愛人とジュネーヴで暮らしていた妻が訪ねてきていた。妻の愛人が亡くなったのだ。ネリーは来週月曜に裁判所で夫との正式の離婚手続きがあり、火曜にまた来ると言って去る。正式の離婚も成立してアルノー氏の家にやってくると彼は旅行の用意を済ませている。妻と懸案であった世界旅行をして最後にシアトルの音信のない息子に会いにいく計画を実行することにしたと。彼が愛しているのはネリーなんですね、きっと。でもあの晩も自分は彼女を抱くということに踏み切れなかったわけで、こういう形でネリーから離れようと決心したわけです。一人取り残されて寂しく街を歩く彼女。やっぱり男と幸せになれる自分ではないのかも知れないという思いが彼女にはあるんですね。

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映画の最後のアルノー氏の決断は、もう自分は過去に生きるだけで、新しく映画を作ることはない、というソーテ監督の思いを描いていると考えられます。単なる物語ではなく、ソーテ監督の思いと重なっているので情緒深いです。しっとりとしたいい映画です。派手な感情をあの目で表現するいつもの彼女とは違う、落ち着いた演技のべアールが魅力的です。アルノー氏を演じたセローはこの映画でフランスのオスカーにあたるセザール賞をとっていますが、落ち着いた中に深い感情を込めた名演です。



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Last updated  2007.01.21 01:35:35
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