出会い④あのワンオンが...


そして早朝の出発を気遣って、「眠かったら寝ててもいいよ。別に隣で人が寝てても気にしないから。」などと声をかけてくれる優しさものぞかせていた。

いよいよ本番。「彼」は私の前の組だった。
数人参加していた女性は一列に並んで「始球式」。
見栄っ張りの私は職場の人々の前でかっこ悪いことをするのはイヤだったので、触ると火花が出そうなほど緊張していたが無事にヒットをかっ飛ばし、ほっとした。
しかし、打ちっぱなしでかっ飛ばすのとコースは訳が違う。
どっちが正面なんだかよくわからず、足元だってまっすぐではない。とにかく迷惑をかけまいと走り回り、ヘトヘトになりながら、ようやくショートホールで一息。
次のミドルは前の組のショットを見学する余裕があった。

320ヤード、パー4。「彼」のショットはキャリーの良さにも助けられてなんとワンオン。すごいパワーだった。
多分私はこの一打に魅せられたのだろう...

無我夢中で走り回るホールが続き、18ホール周り終えるとヘトヘト。「彼」はグロス86。優勝を逃したものの「彼」は疲れも見せず、各ホールの反省なんかしている。方や私は136。叩いた数が50も違えば走ってる距離も全然違う。
ゴルフというスポーツはうまい人は最短距離を歩いて回れるが、ヘタッピだととにかく長距離ダッシュの連続なのだ。
帰りの車の中ではとにかく「彼」を賞賛する話で盛り上がった。シンガポールでゴルフを始めたこと。駐在中は毎週一回は必ずラウンドしていたこと。一番の楽しみであること。
一方で彼はきちんとレッスンを受けた私のスウィングを「やわらかくてきれいなフォームだから経験を積めば絶対うまくなる」と褒めてくれた。

脳裏にシンガポールで食事をした時の真っ白な彼の左手が蘇った。そして仕事を離れた「彼」の楽しそうな表情とゴルフの話をする時の快活な口調はとても好もしかった。
また一緒に行きたいな...会話はそんな風に流れていった。

翌日以降、会社で会うと挨拶は交わすけれど相変わらずムダ口をきくことなく黙々と仕事をする「彼」とPC通信で次のゴルフの約束をした。今度は職場の友人を交えた一泊の日光ゴルフ旅行。

男女二組・車二台で出かけてどちらも特別な関係でない場合は途中で組み合わせを変えるのが普通だと思う。が、この時は私はなぜか頑ななほど「彼」の車に同乗し続けた。
夜は翌日の食事を賭けたトランプをしたり、カラオケに行ったり。ここでも「彼」の率直な態度の評価はどんどんプラスの方に向かって行った。

仕事は確かに充実していた。そして、私は、会社に通勤するのがますます楽しみで仕方なくなっていた...そして一緒に日光に行った友人からある日聞かれた。
「もしかしてじゅんちゃん、「彼」が好きなの?」

そっか~、私、恋をしているのかな...

【そしてクリスマスイブの夜...】



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