あんなこと、こんなもの

あんなこと、こんなもの

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2005.01.31
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 明日は雪だ、ぜったい雪だ、と天気予報が言っています。

 ほんとかな~ここは南国(と、観光案内には書いてある。駅前にはワシントン椰子がある・・・)
 従って、雪には弱い。ひとたび雪に見舞われると、目も当てられない惨状になる・・・

 忘れもしない一昨年・・・
 所属する文化団体の前々回の会長(女性、65歳)が突然、この度、結婚しました、と発表した。
 新郎は75歳の医師、病院は息子さんにまかせてボランティア団体の会長をしているという。
 どちらも家族に賛同され、祝福され、これからマンションで二人暮しをするのだという・・・
 ・・・しばし呆然とした後で、それはめでたい、快挙だ、仲間で披露宴をしよう、ということになった・・・



 そしてその当日、・・・雪が降った。
 降って、積もって、凍って、固まって、・・・
 学校は昼過ぎに早々と休校。デパートも閉めた。夕方にはバスが運休。汽車も運転を見合わせた。

 家の窓から下の国道を見ると、延々と続く車の列・・・
 その車、30分たっても1メートルも動いていない。
 運休したはずのバスも何台も混じって立ち往生・・・
 舗道は車をあきらめて歩く人達の群れ・・・自転車を押す高校生、中学生・・・

 「どうするの、するの?」と会場に電話すると、新郎新婦はマンションと店が近くだから歩いてくる、その他、歩いてこれる人達はみんな歩いて来るそうだから、予定通りやります、という。・・・そうだ、みんな街中の繁華街の人が多かったんだ・・・

「行って来ます。」と覚悟を決めて家を出る。「大丈夫?無理しないで、危なかったら引き返すんだよ。」と主人と母の声。
 花嫁のブーケとメーキャップの係なんです、私は。引き返すわけにはまいりません。
 右手に化粧品のバッグ、左手にブーケを入れた箱。

 右手の国道では1分間に1メートルくらいの速度で車が動いている。前、後ろ、横でコテッという音と「あっ」「痛っ」「ウギャッ」と悲鳴が聞こえる。凍った道路ですべったらしい。
 ふと横を見ると、個人タクシー、乗客はナシ
ドアを叩いて「もしもし・・・乗せてください」
 「雪だから、仕事やめてウチへ帰るとこなんだけど、どこまで行くの?」
 「**町2丁目まで・・・」

 「助かった~」
 1分1メートルの速度もこのあたりでは2メートルくらい。いつもならバスで2分の距離を45分かかった、でも助かった。
 「気をつけてな~すべらんようにな~」

 ここから先はまた右手に化粧バッグ、左手にブーケ。
 駅前を右に折れると橋。橋まではゆるい坂。
 あちらでころり、こちらでどたり。自転車を押した高校生、自転車ごと坂をすべり落ちてゆく・・・

 八甲田山死の彷徨、ナポレオン冬のロシア撤退、なんて言葉を思い出す。

 それから30分後に会場に到着。皆の拍手と新婦の「よくまあこんな雪の中を・・・」の声に迎えられ、
「ドレスは・・・ドレスは来てる?」と第一声。
携帯を耳に当てたままのみちえさんが
「まっちゃん(ドレスの係)今@橋の上。車が止まったままらしい・・・でもちょっとずつ動いてるって・・・」
 暖かい飲み物をもらって、かじかんだ指をほぐし、メーキャップにかかる・・・
 「こんな日に皆集まってくれて・・・」涙ぐむ新婦。
 「ほんとにありがとうございます。」横で頭を下げる新郎。
・・・その間にも刻々とドレスのまっちゃんの報告がみちえさんの携帯にはいってくる・・・
 「今、橋を渡りました・・・」
 「右手に放送局が見えます・・・」
 「今体育館・・・」
 「もうすぐ駅が見える・・・」
 「主人から電話が入って、帰りは危険だからホテルに泊まって明日帰ってくるように、と言われたから、ホテルに寄って、そこから歩いて行きます・・・」
 1時間半後、メーキャップも仕上がった頃、まっちゃんがドレスのはいった袋を抱えて息も絶え絶え、といった格好で倒れこんできた・・・「よかった~ホテル満室。私が最後の1部屋取った~」
 そこへやすよさん鼻をすりむいて血をにじませて
「はい、ケーキ・・・ワタシころんだけど、ケーキは無事だからね~」
「えらい!昔だったら教科書に載るよ!」・・・なんのことだ・・・

 というわけで、6時半の開宴は大幅に遅れて11時。
ジャズラウンジ経営者のみちよさんがピアノでウェディングマーチを弾いて、皆で
「おめでと~!」
 外は雪、地面は氷。繁華街の真ん中。人気のない道路にたまにタクシーが氷をかきわけて走るズザザザという音。
 まわりの店は早々と閉めて赤々と明かりの灯るのはここだけ。
 祝って騒いで、真夜中にお開き・・・
「どうやって帰ろう・・・」
「タクシー頼みましょう。」
「何時になってもいいからお願いします。」

 40分後に来てくれました。ベテランの運転手さん。
 ズザザザーと言う音をたてて走る車。
 無人の街・・・雪もやんで満天の星・・・
 車は右に左に車体を揺らせてすべるように疾走・・・
 ソリに乗ってるみたい・・・乗ったことないけど、きっとこんな感じだろう・・・

「お客さん・・・車、右左にゆれてるでしょう?」
「ええ・・・」
「これね、地面凍ってるから車すべってるの。」

すべりながら家に到着しました。

 二人は仲良く暮らしています。

 雪が降る、っていうので思い出しました。
 スノーウエディング・・・ロマンチックでしょ?














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Last updated  2005.02.01 13:14:41
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