マイペース70代

マイペース70代

生き急いだNさんへ


「オイオイ、ちょっと待ってくれよ」と、
本人も戸惑っているのではないだろうか。
一年ほど前から、体調を崩して入院したとは知っていた。
しかし、あの元気一杯の人が、
そのまま終わってしまうとは考えたくなかった。

若い頃から様々な地域活動やボランティア活動に関わり、
この町でその人の顔を知らなければ「もぐり」とさえ思えるような人だった。
だが、あちこちに顔を出す人にありがちな、
傲慢さや偉そうな態度とは無縁の人だった。
その人の明るい笑顔に、どれだけ多くの人が励まされたことだろう。
外に出歩くことが多かったから、
家族サービスは不足気味だったかもしれないけれど、
家族を誰よりも愛していたことは、みんながわかっていたことだろう。
まだまだ生きていて欲しかった。

ちょっぴり頑固で自分の意見ははっきり主張するけれど、
一旦決まったからには決して文句は言わず、
率先して行動に移す人だった。
あれほど気持ちの良い人は、本当に珍しい。
人の何倍も何倍も、自分の出来ることを精一杯楽しみながら取り組んで、
それに伴う苦労をも、自分の喜びに変えていた。
まだまだ生きてやりたいこともあっただろうに、
死を前にして「俺は本当に幸せなやつだなー」と、
苦労を共にした妻に言ったという。
今の私は、その言葉に少しの救いは感じるけれど、
「どうしてみんなにとってこんなに大切な人を、こんなに早く連れて行くの!」と、
何かに向かって叫びたい。

人生は四苦八苦というけれど、
人の生き死にだけはどうしようもない運命だ。
今はまだ、私の中には
その不条理さや理不尽さへの怒りが荒れ狂っているのだが、
何とか受け止めていくしかないのが人の死なのだ。
そして、生き急いだ彼の命や志を、
のろまな私が少し分けていただいたつもりで、
少しでも誰かの役に立てるように生きて行きたい。

Nさん、そんなに深いお付き合いはなかったけれど、
いつも尊敬してお手本にしていました。
今まで、みんなのために本当にありがとう。
ゆっくりお休みくださいね。
そして、あちらの世界から、愛する家族や友人達、
そしてこの町のみんなを応援していてくださいね。

(2004年01月31日)

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