「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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マイペース70代
かつてのヤンキーボランティア
何年かぶりにおしゃべりをする機会があった。
当時は生意気で多少ヤンキーがかった少女達だったが、
今ではすっかり「親ばかママ」になっている。
みんな子育て中だが、お盆の里帰りにあわせて子連れで集まったので、
私もその輪に加わらせてもらった。
当時の私は、市民のボランティア推進のための仕事をしていたので、
高校生のボランティア研修、日々の活動のコーディネイト、
ノーマライゼーション啓発活動関連のイベントの企画・運営などの
事務局的な仕事をしていた。
彼女達は、若者のボランティア活動発掘のために
地元の高校と連携をとりながら開催した福祉施設でのワークキャンプや
高校生ボランティア研修会などを通して、
福祉ボランティアの世界に紛れ込んできた高校生達だった。
一般的にボランティア活動をする若者達と言えば、
真面目で優しい若者と想像するだろうが、
なぜかあの頃ボランティア活動に入ってきた子の中には、
限りなく非行の世界に近い子達が何人もいた。
そのことの理由を書くと長くなるので、
今日の思い出話だけを書いておこう。
私 「あの頃は、ホントにみんなにはハラハラさせられたよね」
A 「そうそう、夜の会議などが終わったときには、
必ず『まっすぐ家に帰るんだよ』が口癖だったよね。
実は帰ってなかったりして・・」
B 「うんうん。でもね、制服のままうろついて補導されたら
迷惑かけると思って、その後遊びに出るときは着替えたりして、
私達なりに気をつかっていたんだよ」
私 「えー! そうだったの?
そのせいか、当時事務所に苦情などはなかったなあ。
私は、みんながまっすぐ帰宅していたからだと思ってたのに」
C 「甘い、甘い!(笑) だけど、みらいさんが心配してるってことは、
ちゃんとわかってたから、ボランティア活動するところでは
ちゃんとしなきゃって思ってたんだよ」
私 「ところで、どうしてみんなはボランティア活動にあんなに夢中になったの?」
A 「うーん、やっぱり面白かったからだろうね」
私 「何が面白かったんだろう」
B 「色んな人と出会って、色んな話を聞くことが面白かったよね」
C 「そうそう、車椅子のMさんが鉄人みたいだったし、
彼が事故って障害者になった話なんか、マンガより面白かったしね」
A 「大の大人が、ボロボロ泣く姿なんて、見たことなかったし・・」
B 「それに、私達を誉めてくれる大人に会ったのも初めてだったしね」
C 「老人ホームに行って、ご飯食べさせてあげたおばあちゃんに
『ありがとう』って言われて、
私達が嬉しくてワーワー泣いちゃったり・・」
私 「それなのに、ヤンキーの部分はそのままだったわけだ。
宿泊研修で脱走したりさ・・」
D 「ハイ、それは私です。
でも、あれには私なりにちゃんとした理由があったから・・」
私 「それでも私は、何だか裏切られたようにも感じたよ」
D 「わかってる。悪かったと思ったよ。
だからあれからは、私、みらいさんのしもべになったじゃん」
私 「それもそうだね。あれからは、何でも言うこと聞いてくれたもんね。
今でもだけど・・」
私 「あの頃の体験が、今に生きてる?」
全員「そりゃそうだよ。あの頃があるから、今があるって・・」
私 「たとえば、どんな時に感じる?」
E 「うちの子ね、言葉が遅いとやら、知的に遅れ気味とやら、
検診のたびにひっかかってしまって。
でも、みんなが心配するほど、私は焦らなかったんだよね。
色んな人がいるってことわかってるし、
もし障害があってもそれで不幸だって限らないって思ってるし・・。
結局なんでもなくて、今はご覧の通りのやんちゃ坊主だけどさ」
A 「私はね、あの頃、学習会で『中絶』について色々聞いて、
ショッキングなビデオを見たから、この子を産んだと思うよ」
全員「あれは、結構衝撃的だったよね。
でも、あれを見せてもらって本当に良かったよ。
今思えば私達、本当にあぶなっかしかったもんね」
私 「あの研修をやる時は、かなり勇気が必要だったよ。
でも、みんなの様子を見ていたら、
セックスが子供を作る行為なんだとわかっていないような気がしたから、
思い切って企画したんだよね。
だけど、あのビデオはちょっと刺激的過ぎて、
私も後で少し批判されたし、少し配慮が足りなかったかと心配もしたの。
ちゃんと医療関係者の講義とセットにはしたけどね・・」
全員「あれは、絶対に今の若者達にも見せた方がいいと思うよ」
まあ、このように書いていけばエンドレスになってしまうが、
あの多少ヤンキーがかった高校生達が、
今はたくましい母親として生きていることを、本当に嬉しく思った。
若い頃に色々な人たちと出会って語り合った体験は、
彼女達の言葉を聞くまでもなく、
その成長の糧になっていることは確かである。
その出会いも、「継続的な人としてのつながり」になったからこそ生きているのであり、
単発的に「車椅子介助」だけの体験ばかりであるなら、
こうはならないと思う。
そんな体験をいくら重ねても、
障害者や老人は気の毒でみじめな人であり、
「ああはなりたくない。私は健常者で良かった」レベルにとどまり、
弱い立場の人たちを蔑視する感情が強化されることにもなる。
そして、若者達には
「心配しながら見守る」人の存在がとても大切なのだとも・・。
私は当時、本当にハラハラしながら、ただ「事件が無いことを祈り」、
そのためにみんなの良いところを必死に探して誉めるようにしていただけなのだが、
そのことが「みらいさんに迷惑をかけてはいけない」という
彼等の心理的ブレーキとして働くようになった。
当時の私にはそこまでの深慮遠謀はなかったのだが、
今回のおしゃべりでそれをあらためて教えられ、
若者に対しては「罰」だけで制御しようとすることの愚かさを感じることが多かった。
「だから若者にボランティア活動を」などと、
教育関係者のような言葉を私は言いたくはない。
ボランティア活動の喜びや意味を知らない大人が、
即効性をねらって善いことをさせようとする胡散臭さは、
若者は敏感に嗅ぎ取るものだ。
または、大人の見える評価だけを狙って、
ずるく立ち回る若者を育てることにもなりかねない。
今回は、日中集まれる女性ばかりと会ったのだが、
今度は当時の男子達にも会いたいものだと思う。
( 2004年08月17日)
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