真理を求めて

真理を求めて

2006.03.29
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長野県の田中知事が、偽証の疑いで告発されたという。偽証の中身は、 「田中知事を偽証告発へ 長野県議会」 というニュースによると、


「偽証があったとされたのは、情報公開請求があった公文書を県職員が破棄した問題をめぐる証言など。公開を求められた公文書には、知事後援会元幹部が二〇〇三年春、下水道事業入札制度で県内業者を優先するよう働き掛けた経緯が記録されていたが、請求後に県職員が破棄した。

 疑惑のため、県議会は昨年七月、百条委を設置。公文書を破棄した県参事(当時)は同委で田中知事の指示を受けて破棄したと証言したが、田中知事は同年九月二十六日の証人尋問で「私からの指示はない」と否定した。百条委は今月二日、一連の疑惑に対し、知事として不適切な行為があったと結論付けた。

 この日の本会議の提案説明で高見沢敏光氏(志昂会)は「知事は破棄の報告を逐一受けながら中止していない。破棄の実行を容認し、言外において指示したと考えられる」と指摘。指示を否定した知事証言は偽証に当たるとした。「推測は成り立つが告発の根拠にはなりえない」との反対意見もあったが、賛成四十一、反対十三で可決した。」


というものだ。偽証のポイントになるのは、「私からの指示はない」という言葉だ。これが嘘だと言うことは、「指示があった」にもかかわらず、田中知事がそれを否定したときだ。上の記事を読む限りでは、直接指示を示す言葉はなかったようだ。だから、その限りでは、「私からの指示はない」という言葉は正しいものだと思われる。

問題は、「知事は破棄の報告を逐一受けながら中止していない。破棄の実行を容認し、言外において指示したと考えられる」と言う論理が正しいものと認められるかどうかにあるだろう。指示の言葉はないのだから、「指示していない」にもかかわらず、「中止させなかった」という行為が「指示した」事に当たるという論理が正当なものかどうかと言うことだ。これは弁証法的な矛盾である。

この弁証法的な矛盾を解明するには、どのような視点から見たときに「指示していない」と言えるのか、どのような視点から見たときに「指示した」と言えるのか、その違いを正しく区別しなければならない。その上で田中知事の行為が、どちらの場合に当てはめるのがふさわしいかを判断することになるだろう。

一般論として、指示していないにもかかわらず、指示したと判断されて責任を問われるのはどういうケースか考えてみよう。自立した人間は、自らの行為によって引き起こされた結果に対しては、自分で責任を持たなければならない。自己責任の原則というものがある。しかし、自己決定の自由な選択の中に、何らかの制限がある場合は、その制限をもたらしたものが責任を分担しなければならない。自己責任というのは、あくまでも自分の自由な選択の結果に対して責任を負うと言うことでなければならない。



また、自己決定的な判断が完全に行えないようなケースでは、直接には指示していなくても、黙認することに責任が生じるケースも考えられる。地下鉄サリン事件においては、松本被告の直接の指示はなかったように言われている。もし直接の指示があれば、それは決定的な証拠となり、裁判もそれほどの難しさがなかったのではないかと思う。

直接の指示がなかったにもかかわらず、信者の誰もが、松本被告の意志を忖度して犯罪に走ったというのが、状況証拠的なものなのではないだろうか。松本被告は、抽象的な意味の断片的な言葉は語ったようだ。しかし、それは具体的にどう解釈するかは、解釈する方にゆだねられていたようだ。その解釈は、教団にいたものにとっては自明とも言える解釈だったのだろうが、松本被告には直接の指示はなかったと考えられる。

このとき、直接の言葉はなかったのだから、松本被告に責任はないという論理を展開すれば、それはかなりおかしいと感じるだろう。彼の絶対的権力の構造を考えれば、犯罪が行われようとしていたときに、それを止めなかったという行為に責任が生じると考えられるのではないだろうか。

常識的には、直接指示する言葉がなければ指示はないと見るのが普通だ。指示する言葉がないにもかかわらず、指示していると判断出来るのは、かなり特殊な場合に限られる。だから、田中知事に対しても、「言外において指示したと考えられる」ということを証明するためには、そう考えられるだけの特殊性を田中知事のケースも持っているのだと言うことを証明しなければならない。

上の新聞記事だけからでは、このような特殊性はうかがえない。田中知事が受けた報告が、破棄の前なのか後なのかというのも、記事だけからではハッキリしない。破棄の前に、破棄することの報告を受けたのならそれをやめさせることも出来ただろうが、破棄の後で報告を受けたのなら、それを中止させることは物理的に不可能だ。

また、破棄の前に報告を受けていたとしても、その時点で破棄が不当なことであるかどうかは明確に判断出来ることだったのだろうか。意図的に破棄を黙認したということが言えれば、そこには未必の故意のようなものが推測出来るかも知れないが、判断ミスだった場合には、「指示をした」とは言えなくなる。

このときに、破棄が不当なことであり、その責任を問わなければならないもので、もしその責任を問うことを忘れていたのなら、それは責任の追及をしていないことが批判されるべきであって、「指示をした」という批判にはならない。つまり偽証には当たらないものになるだろう。

田中知事の具体的な行為が、「指示の言葉がないにもかかわらず、結果的に指示したことになった」と整合的に証明出来なければ、この告発は成り立たないだろう。果たして田中知事の行為は、「結果的に指示をしたことになる」と証明出来るものなのだろうか。具体的なニュースでは、このことが分かるように書かれたものが見つからない。

信濃毎日は、さすがというか、反田中新聞としてふさわしい表現をしている。 「「知事偽証」地検に告発 「公文書破棄」で県警に」 というニュースでは、


「告発状などによると、知事は証人尋問で、県下水道公社の事業発注方法を県内業者優先に変更することを含む改革について「全庁的な共通認識だった」と述べ、後援会元幹部の「働き掛け」の影響を否定したが、県幹部らの証言と食い違っており偽証した疑い。また、「働き掛け」の記録文書を破棄すると部下からメールで報告を受けたのに中止させず「容認」したことは言外の破棄指示に当たるのに、「私からの指示はない」と偽証した疑い。」




信濃毎日の問題は、 「知事偽証告発 迅速対応を当局に求める」 と言う3月26日の社説にも感じる。ここでは、


「知事に対しては、元幹部が政策秘書室などにしょっちゅう出入りできるよう「特別扱い」にし、働きかけ問題を生じさせた「道義的に重大な責任」があるとしている。

 議会側はこれらの事実を認定しながら、地検への告発では百条委の場でうその証言をした「偽証」などの疑いにとどめた。」


と書いているが、これは事実の報道という点でのジャーナリズムとしては失格の記事だと思う。「特別扱い」というのは、どこが事実だというのだろうか。単に、ある事実をそういうふうに解釈して受け取っているに過ぎないのではないか。「特別扱い」だというのなら、どのように具体的に扱ったことが、異例のことであり特別なのかというのを具体的に指摘すべきなのだ。それが出来ないのであればジャーナリズムとしては失格だ。



田中知事の行為が本当に偽証に当たるかどうかは、百条委の記録などを見て、自分の頭で判断しなければならないだろうと思う。





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最終更新日  2006.03.29 13:11:13
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Re:偽証はどのような論理によって証明されるか(03/29)  
msk222  さん
>信濃毎日は、さすがというか、反田中新聞としてふさわしい表現をしている。

3年前の怨念をもっている県議たち知事を陥れようとして、画策するのはまあわからんでもないです。その程度の人格の輩がほとんどですから…。
ただ「信濃毎日新聞」は、これまで地方紙としては良識のある新聞という、県民からも信頼を得てきた新聞なんです。その新聞が、意図的に田中知事に反感を抱かせるように誘導しているところが解せないのです。
エントリーでご指摘のように、記事が巧妙なんですね。
こちらの信毎支社長ともこの件について話しをしたのですが、記者クラブ廃止が原因ではないと言明していました。
記者クラブ廃止は、信毎にとっても望むところだったと…。意図的に誘導するようなことはないと思うが…。とやや歯切れは悪いながら一応否定していました。
しかし、社内に(結果的にだとしても)知事に批判的な編集を主導するチームがあるということは確かなようです。
それが、どんな意図からなのかを知りたいところです。
百条委員会の告発は、ある意味で結構なことかも知れません。
(客観的に判断するとしたら)告発そのものの欺瞞性が明らかになるでしょうから。
(2006.03.29 20:20:44)

Re[1]:偽証はどのような論理によって証明されるか(03/29)  
秀0430  さん
msk222さん

僕は、藤原正彦さんの『国家の品格』の中の「権力を批判する自由」という言い方を批判しました。この「自由」は、言葉の上で第三者的に語るのは簡単ですが、実際に当事者として権力批判をしようと思ったら、かなりの覚悟が必要なのではないかと思います。

そういう意味では、田中知事は、長野県においては権力者としては振る舞っていないと言うことの証拠が、信濃毎日が平気で批判出来ると言うことなのかなとも感じます。

むしろ、不当性を感じる県議の方を批判しないと言うのは、県議の集団が、長野県では権力者的な存在なのではないでしょうか。

また、このような報道をする信濃毎日の内部に、社の方針を批判する記者はなかなか出てこないのだろうなとも思います。記者にとっては、会社そのものはやはり権力として存在していると思います。社内に、不当な知事批判を内部批判出来る人がいれば、権力に対する批判の自由が保障されていると思いますが、ジャーナリズムを標榜する新聞社でさえも、権力批判は難しいのだろうなと思います。

田中さんが権力者として振る舞っていないのなら、黙認することが指示になると言う、権力者的な振る舞いを証明するのはかなり無理があるのではないかと思います。

この問題の本質は、田中さんがとった方法が、本当に県民の利益になっているのかどうかをハッキリさせることではないかと思います。田中さんが県民の利益になることをしているのなら、それに対して形式が整っていないではないかという非難は、無理な言いがかりのようにしか見えないのではないかと思います。田中さんのやったことが県民の利益になったかどうかと言うのをわかりやすく解説しているデータがないものかと思います。百条委員会の会議録は、末梢的なことを話しているだけのような感じがして、読むのに苦労します。 (2006.03.29 22:57:32)

Re[2]:偽証はどのような論理によって証明されるか(03/29)  
msk222  さん
秀0430さん
>田中さんのやったことが県民の利益になったかどうかと言うのをわかりやすく解説しているデータがないものかと思います。百条委員会の会議録は、末梢的なことを話しているだけのような感じがして、読むのに苦労します。

「百条委員会の会議録」は僕もザーと眼を通しましたが、仮にまともに議論がされているとしても、内容はトリビアリズムというか盲象的で、全体像を掴んでの話しになっていません。地球環境を語るのに小鳥の糞がきれいかどうかというような…。
「県民益」になったかどうかの資料は、県の経営戦略局秘書室に請求すれば送ってくれます。ただ、いつも分厚い資料なので、これももっと簡潔にして欲しいとは思っています。
その中から、入札関係で例をいうと、
田中県政になって、1参加希望型入札、2受注希望型入札というに2つの入札制度ができました。
1は、元請けとして受注機会の少ない小規模企業のみを対象としています。
2は、一定の能力などの条件が合えば誰でも入札に参加できます。
これは、インターネット等で公示されている事業をみて入札に参加できます。事後審査郵送方式ですから、まず談合のしようがありません。
参加希望型になって、H13年からH16年へのたった2年で、県内企業の受注率が約10倍になっています。
直接受注や談合が無くなって、落札率が下がりました。田中県政以前のH13年と以後のH17年を比べます。
 工事が、97.4%→81.7%、民間委託が、95.7%→69.7%
これだけ、費用効率が圧縮できて、しかも県内企業の仕事は増えています。

これらの事実がどこかに飛んで、県内業者(元・後援会幹部)が(県内業者の受注機会を増やすように)働きかけたという事実関係にすり替わって、語られているわけです。

もちろん、ほかにも木製ガードレール(県会で否決)とか、田中県政がやろうとしているものは沢山ありすぎて紹介しきれません。
(2006.03.30 11:27:17)

Re[3]:偽証はどのような論理によって証明されるか(03/29)  
秀0430  さん
msk222さん


>もちろん、ほかにも木製ガードレール(県会で否決)とか、田中県政がやろうとしているものは沢山ありすぎて紹介しきれません。
-----

そういうものを、数字やグラフでわかりやすく解説したものがあるといいですね。反対派のように、わかりにくくねじ曲げて解釈するようなところが、いかに末梢的なところを徘徊するような批判しかしていないのか、それがよく分かるような解説とデータが欲しいものです。 (2006.03.30 14:53:13)

Re:偽証はどのような論理によって証明されるか(03/29)  
msk222  さん
秀0430さん
>msk222さん
>>もちろん、ほかにも木製ガードレール(県会で否決)とか、田中県政がやろうとしているものは沢山ありすぎて紹介しきれません。
>-----
>そういうものを、数字やグラフでわかりやすく解説したものがあるといいですね。反対派のように、わかりにくくねじ曲げて解釈するようなところが、いかに末梢的なところを徘徊するような批判しかしていないのか、それがよく分かるような解説とデータが欲しいものです。
-----
県の広報は、以前はグラフ形式の冊子で全戸に配られていました。1千万以上掛かっていたと思います。
今は、あの信濃毎日新聞も含めて、県内の新聞の紙面を買って掲載しています。それだけコンパクトになったので見栄えは落ちますが、数字やグラフなどで報告されています。
ただ、僕などもそうですが、数字やグラフを見ただけで拒否反応をおこす人が多いから、そこから県民がどの程度変化を読みとっているかは、わかりません。

なお、それもたしか、田中県政の広報誌だとして攻撃されていたような…。
広報誌であることは確かですから、あたりまえだと思うのですが、自己宣伝だということでしょうか。
(2006.03.30 16:03:07)

Re[1]:偽証はどのような論理によって証明されるか(03/29)  
msk222  さん
批判というより、感想に近いのですが、田中康夫という人の行動は僕らにも読みにくいところがあります。
その一番大きいのが、民主党のシャドウ内閣の一件と日本新党党首の件です。
その思想や真意がどんなに優れていたとしても、県民の理解や支持からかけ離れたところにあったら、落第です。泰阜村に住所移転した件は、僕は心情的には大いに理解できますが、県民にはわかりにくかったということでしょう。
そのような、誤解あるいは理解しがたいところが、衆愚を甘く見てしまった結果ではないかと思います。
鳥取県の片山知事ともよく比較されます。どちらも既得権勢力と戦っていますから。
田中知事のほうが発想力は優れています。
しかし、片山知事は着実に実績を積んでいます。
「改革の技術」(田中成之著・岩波書店)という本で読んだのですが、片山知事は人の動かし方という面では職人肌だと感じました。
かたや田中知事は、文筆のプロですから芸術肌です。
芸術肌の人は理解しがたい面があったり、人の気持ちを掴みながら進めるというところでは、不向きな面があるのかも知れません。
もちろん、僕は近くにいて見ているわけではありませんから、単なる印象ですが…。
(2006.03.30 16:21:20)

Re[2]:偽証はどのような論理によって証明されるか(03/29)  
秀0430  さん
msk222さん

マル激に田中さんがゲストで出たときに、田中さんは、自分は問いかけをしているのだというようなことを言っていました。何かボランティアのように県民に奉仕活動をしているのではなく、県民に対して、県政を自分の問題として考え、主体的に参加してくるように問いかけているのだというように僕は感じました。

今まで日本人は、政治というものは「お上にまかせるもの」と考えていた人がほとんどだったのではないでしょうか。それが、田中さんが登場した長野県では、県民の一人一人が参加して自分たちの政治を作っていくものに変わったのだと思います。

そういう意味では、人間は十人十色と言いますから、必ずしも田中さんのやることのすべてに賛成だという人もいないと思います。田中さんは、きっとそういう人も含めて政治に参加して欲しいと思っているのではないでしょうか。

田中さんが一番困ると思っているのは、とにかくエライ人に判断をまかせて、自分はそれに従って利益のおこぼれをもらおうとしている人なのではないでしょうか。県政全体としては、田中知事を選んだと言うことは、主体的に政治に参加する人が増えたからだと思うのですが、県議の選び方を見ると、まだ「お上にまかせる」意識の人が多いのも感じます。

それにしても、長野県というのは、主体性という点では日本で一番その資質を持った人が多いように感じます。日本に本当の民主政治を実現し、しかもそれが衆愚政治に堕落しない姿を、長野県にぜひ見せてもらいたいものだと思います。 (2006.03.31 08:35:02)

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