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よう!お帰り!濡れた髪を拭きながら伽に声を掛ける。伽、ありがとな!お前のお陰で、心置きなく艦に乗ることが出来るよ。ただいま。そりゃ何よりだ!シャワー浴びてたのか。シンディとの蜜月を過ごした瞑月は、何だか嬉しそうで、サプライズ企んだ甲斐があったぜ。((藁´∀`)) リザの親父さんに、交際の許しを貰えたのか?もっともお前のその顔を見れば、結果がどうだったか判るけどな。(。-∀-) ニヒ♪ばっちりさ!どうもリザの母親が、影で説得してくれていたみたいだ。親父さんが言ってたよ。うちの家系は、女性陣を敵に回すとえらい事になるって(>дд
2007/09/24
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ホテルをチェックアウトして、タクシーに乗ってリザの両親の許へ向かう。緊張で心臓がばくばくいってるぜ。(>ддд
2007/09/22
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そういえばこれからの予定、何も決めていなかったんじゃない!そうね。どうしましょうか。店でもぶらぶらしてみる?うーん、何だか時間が勿体無いかも。港でも見てみるかい。そうね、瞑月の乗る艦見えるかしら。俺達はタクシーに乗って、30分程のところにある港にやって来た。遠くから見ても、物凄く大きいのね!甲板にいる人影は判っても、顔まで判らないわ!そうだね。特別修理受けたばかりの一番手前のが、俺の乗る艦。艦番号が見えるでしょ、あれがそう。航海に出たら、そうそう港に立ち寄ることが出来ないから、他国の艦から洋上給油受けたりするんだよ。海は広いものね。艦の甲板からヘリコプターが飛ぶんでしょ。あんなに大きいヘリが何台格納されているの?俺の乗る艦は3機格納できる。大きいよね。甲板がつかえなくなった時には、へリがホバリングしたまま給油する訓練もあるよ。風圧が強い時は凄く怖いんだ。着艦したあとは、塩分をシャワーを使って洗い流すんだ。格納されるまでにやる事はたくさんある。そういえば、航海中に艦上でどんな訓練をするの。信号拳銃発射、手旗信号訓練、艦上救難とかいろいろある。一般にはあまり馴染みがないわね。(>д
2007/09/15
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約2時間かけて美味しいランチを楽しんだ。頼んだのはボンゴレべラーチ、ホワイトソースのタリアッテレ鶏肉とジャガイモのホワイトソースの煮込み、城邑風ラザニアバゲットインポテトサラダ、ミネストローネRILIEVI リリエービ 白 750mlを飲みながら楽しむ食事は、どれも美味しく幸せな気分になった。どれも美味しかったよ!ご馳走様でした。食後にカプチーノを味わいながら談笑する。身内とのひと時っていいもんだな。明日からまた元の生活に戻らなければならないけれど、晴れやかな気分で船に乗れそうだ。演奏を終えた名花さんに、皆で賞賛の拍手を送ると、はにかんだ笑顔を見せた。予約をしたのは俺なのに、フランツさんが支払いを持った。固辞すると義兄らしい事させてくれよなんて言って笑うんだ。恐縮しながらも、彼の厚意に甘えさせてもらう事にした。シンと名花さんは引き続き店に残って練習。フランツは顧客に挨拶をしてまわると言う。スーツに着替えた彼は、先ほどまでのにこやかな彼ではなく、経営者の顔をしている。ご馳走様でした。今日は本当にありがとう!フランツ、本当にありがとう。そしてご馳走様でした。2人で頭を下げると、彼が言う。旅立つ瞑月に、美味しい料理を楽しんでもらえてよかった!船から降りたら、伽君とリザさんも来るように伝えといて!あれ?伽と会話したんですか?いつ?君達が着替えている間にね!伽君やシンさんから何か聞いていないかい?何も。伽とは会場で別れたきりだし、シンとパーティー以外で顔を会わせたの、今日だけですよ!じゃ、何も聞いていないんだ。伽君はね、愛歌さんと瞑月がホテルから出てくるところを、シンディに見られる事は、予想外だったんだ。責任を感じた彼は、城邑に毎日予約を入れて店で夕食を取り、毎日支配人に僕の連絡先を教えてくれって、頭を下げていたそうだ。僕と連絡が取れれば、誤解だって事がシンディに伝わると思ったらしい。10日目に土下座をしたら、シンさんに抱き起こされたって笑っていた。あいつそこまでやってくれたのか。ありがとう。伽・・・伽さん、そこまで・・・本当にありがとう・・・いい友人や側近を持ったね、瞑月。はい。本当に。そしていい義兄にも恵まれました。皆に感謝です。フランツの手を握り締めてそう言うと、彼は人懐っこい笑顔を浮かべた。色々大変な事も多いだろうけれど、残りの兵役、最後まで頑張れ!陸でも、海でも僕達は同じ空の下にいるんだからね。負けるなよ!瞑月!はいっ!!大きく返事を返事をしてフランツに最敬礼をした。彼も同様に返し、じゃ!2人ともまた!そう言って立ち去る背中を、彼女と見えなくなるまで見守っていた。最後の夜へ
2007/09/15
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屋根の上のウ゛ァイオリン弾きより「陽は昇り、また沈む」幾度となく繰り返される夜明けや日没を、二人の喜びや悲しみをのせて流れていく。時の移いを、人らしい感情を交えて表現している。少し切なくなるメロディー。瞑月様ご夫妻も、フランツさんご夫妻も、移いゆく時の中で、何を感じたのでしょう。そしてシンも私も・・・名花さんの想いがピアノの旋律に表れていて、感情を揺さぶられる。この歌、2度目の舞台で歌った曲。もっと気持ちを、感情を込めて表現しろって舞台監督に、大きな声で怒鳴られた。時にはメガホンを投げられた事もあった。楽屋で不甲斐無さで幾度となく涙を流して、それでも人前では決して涙を流さなかった。プロに徹しないといけない。感情は演技者として出すだけ。所属していたプロダクションの社長と、マネージャーとごく少数の人間にしか、素顔を見せなかった。誰に何を言われようと、仕事とプライベートは別にしたかったから。それでも千秋楽にこの監督に俺の激に、人前で泣かなかった頑固者はお前だけだって言われて、皆の前で監督に抱きついて大泣きしたのも、今となっては懐かしい想い出。もう一度瞑月、貴方に逢いたい一心で無我夢中でそんな日々を送っていた、懐かしい想い出ね。過去の事に想いを馳せているのだろうか。少し感慨深い表情を浮かべて、ピアノの旋律に耳を傾けている。シンディもフランツも、帰国したいと思わないの。問いかけてみる。!!俺を見つめる2人の反応は意外だった。全然っ!!(´∀`*))ァ'`,、 どうして?帰国させたいの?えぇっ!!Σ(゚Д゚ノ)ノ感慨深そうな顔をして、2人とも聴き入っているじゃない!瞑月、貴方何にも解かっていないわよ!(´∀`*))ァ'`,、 同感!やっぱり面白いね!君って人はっ!!((藁´∀`)) なっどういう事っ!!((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル今住んでいる所が島国より楽しいからに決まってるじゃないっ!!2人は同時に同じ答えを言った!ヵ゙━━ΣΣ(゚Д゚;)━━ン!!愛国心はっ!!あるわよ。でも魅力を感じない国になってしまった。帰国しても多分すぐここに戻ってくると思う。それに外からの方が、何が良い所で悪い所かも客観的に見ることが出来るでしょ。狭い島国を飛び出して、世界を見たいと常々考えていた。だからそれを目標に、必死に語学も経営学も学んだ。あちらはしがらみが多すぎてね、思うように仕事が出来ないかなって考えたんだ。2人とも不安は無かったの。文化も異なる、全く違う国での生活で暮らしていく事に。無いわけじゃなかった。だけど世界を見たかったのと、色んな文化に触れてみたかったのと、人嫌いだけど根本は人が好きだから、たくさんの人と交流したいと思ったわ。僕も同じ。人が好きだし自身を豊かにする為に、たくさんの事を知りたいと思った。自国の目線でなく、世界の目線からね。上にいけばいくほど凄い人物に逢えるしね。とてもいい刺激になるんだよ!2人とも似たような事を言うんだね。人嫌いの俺は、外に出ようと試みたことなど無かった。自身を磨く事もしてこなかった。自分の立場に甘んじるだけで、あれが辛いこれが嫌、そんな事ばかり言っていたよ。そう呟くと、そこに気がついただけでも良かったじゃない。自身を見つめなおす事が、未来に進む第一歩になるのだから。兵役終える頃には、貴方の中で大きな変化が起きているんじゃないかしら。そうさ。強さと覚悟を身に付けるその為に兵役したんだろう。人は幾つになっても変わる事が出来るんだよ。君が君らしく生きる為に、今何が必要なのかを見極めるいいチャンスが、変化の時が来たんだよ。変化の時・・・そう!今この場所からね。未来の君が、今の君とどれだけ変わっているのか、しっかり見極めさせてもらうよ!俺を見つめる2人の瞳は期待に満ちている。自身の変化の時・・・曲は大地讃頌を奏でていた。またね!へ
2007/09/15
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スーツ姿で現れた名花さんは、細身のスーツがよく似合う。公演用の衣装なのだろうか。ゆっくり椅子に腰を下ろし、目を閉じて精神を集中させる。公演が近いけれど、こういう場では皆が寛げるような曲を聴いて欲しい。事前にシンと打ち合わせて、シンディ様がコーラスが好きな事を知った私は、以前演奏会で奏でた曲を弾くことにしました。メドレーで最初の曲は「花」メゾピアノからはじまってメゾフォルテ、再びメゾピアノ、間奏はピアノを印象つけるフォルテ。終盤はメゾピアノ。弾いている私も少し楽しくなるような情緒あるメロディー。次は「荒城の月」過去をめぐる様な日本的な曲。少し切なくなるような音を、丁寧に奏でる。コーラスの声が消えゆく感じを思い出しながら、「浜辺の歌」へむかって間奏を弾いていく。お食事をいただきながら、こんな素敵な演奏を聴けるなんてそうない事だわ。しかも世界で活躍をされるピアニストの演奏なら尚更・・・私のふるさとの曲ばかり。その心遣いが嬉しくて、軽く瞳を潤ませる。フランツもピアノの演奏に聞き惚れている。同じ国の出身ですもの。情緒溢れるメロディーには心を奪われてしまうのよね。ノエルも歌が好きで、料理を作りながら小さく口ずさんでいる姿を見かける。そんな姿はとても楽しそうで、胎教にもいいんだろうなって想う。僕達はふるさとの曲が好きだから、自分たちの原点を忘れない為に、漢字の名前をつけようと話しあっているんだ。生まれた国を忘れない為に。シンディもフランツも自国を離れて生活しているせいか、それゆえに愛国心を感じるのだろう。2人ともとても感慨深い表情をしているよ。2人は他国での生活の中で、文化や習慣の違いに日々戸惑いを浮かべているのかも。たまには帰国したいと想う事だってあるだろうな・・・自分の事ばかりで、そんな事も思い遣ってあげることが出来なかった俺・・・恥ずかしいよ。変化の時へ
2007/09/14
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城邑に行くと、フランツが出迎えてくれた。やあ!よく来たね!今日は貸切にしたから、気兼ねなく食事を楽しもうか!皆に会うのも久しぶりだし、積る話もしたいしね!フランツは俺の義兄にあたる。ハワイで現在身重のノエル、つまりシンディのお姉さんと二人暮しをしているんだ。シンと名花さんは?今着替えているよ。シンさんは更衣室の前で待ってる。これで確信。あいつやっぱり名花さんに惚れてるんだ。((藁´∀`)) 傍らのシンディを見つめると、同じ事を考えたらしく、見つめ合って微笑を交わす。シンさんと名花さんは、早めに来て先ほどランチを終えたところ。3人でゆっくり演奏を聴きながら、身内だけで楽しんで欲しいそうだ。なんだか申し訳ないみたいだわ。そこまで気をまわして頂いて・・・ここで練習させてもらっているという、名花さんの感謝の気持ちなんだって。どうしてもって言うから、断る事出来なくてね。そうなんだ。すごく周りに気を使うような、繊細そうな印象を受けたけど、思った通りか。初めてお会いした時も、同じ印象を抱いたわ。いつも感謝を忘れないように、ファンに贈られたロザリオをいつも持ち歩いて、それを見てはありがとうと想うんですって。立ち話もなんだから、とりあえず席に着こうか。ピアノに近い席に案内するよ。瞑月が椅子を引いてくれる。ありがとう。どう致しまして!お嬢さん!そう言ってウインクをする。この人は機嫌がいいとウインクをするのよ。私達の様子を見て、フランツが可笑しそうに笑う。フランツだって、ノエルに職場でも自宅でも、目が合えばウインクをするって聞いたわよ。2週間に1度、ノエルと電話で近況報告を交し合ってるの。毎日行っていた仕事も週4回に減らしていることも聞いているわ。今日は検診日だったとか、今お腹を蹴っ飛ばしているとか、幸せそうに話してくれるの。そんなノエルがちょっぴり羨ましく想うのよね。私の右横には瞑月が腰掛ける。彼の正面にはフランツ。ここにノエルがいたら、更に盛り上がるんでしょうね。シンディが笑ってる。7年ともうすぐ7ヶ月か。月日が過ぎるのは早いものだね。左横のシンディは幼なじみのフランツさんに恋をして、フランツさんはノエルさんと結ばれて、俺はシンディに恋をして・・・それぞれに切ない想いをして、時に泣いたり喧嘩をしたり、身近な人の死に涙する事もあった。心が痛くて言葉にならない事だってあった。なんて長い長い7年だったんだろう。親父もお袋もこんな想いをしてきたんだろうか。シンも名花さんも、伽やリザも・・・目を閉じて様々な過去の出来事に想いを馳せる。きっかけは、みんな人を好きになる気持ちから始まったね。ノエルはルークに恋をして、僕の親友ルークは戦場で命を落とした。シンディや瞑月の働きかけがなければ、ルークの名前のミュージアムは完成しなかったんだ。人を想う事、それは人の繋がりを意味する。人間は個体で生きていく事は出来ないのだから。他者を思いやり、繋がりを大切にし、和を保つ事。僕は君達と、ノエルやルークを通し様々な事を学ばせてもらったよ。経営者となり、レストラン経営者となり、信用を作り上げていく事の難しさ、社員からの誹謗中傷だってあった。しかし全ての従業員を路頭に迷わせない為、必死で護らなくては、堪えなくてはならなかった。いろんな事があったけれど、そんな荒波に耐える事が出来たのは、僕を取り巻く、僕を信用してくれる人達がいたからこそ。名花さんのいつも全てに感謝。全くその通りだね。何だかそれぞれに想う事があって、しんみりしちゃったね。(´ω`ι)本当にね。昔の事想い出しちゃったわ。(´∀`*))色んな事があったもの、無理ないさヵ゙クゥ━il||li(っω`-。)il||li━リ皆様、お待たせ致しました。ピアノ演奏を聴きながら、最高のお料理をご堪能下さいませ。深々と頭を下げてお辞儀をする名花さん。俺達三人は一斉に大きな拍手を送る。傍らのシンもなんだか誇らしげに見えるよ。情緒へ
2007/09/14
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もう一度バスに浸かって汗を流して服に着替える。ホテルのバスも広くていいよな。ゆったりと寛ぐ事が出来たよ。宮殿の風呂は全部で5つ。宮殿のバスもそこそこ大きくて、男性四人が一度に入れる、陶器製の白の円形のバス。ジャグジーがついているんだ。四角い、檜で出来た日本風の24時間風呂と、今回のブルガリのような、フランス製の黒の楕円の3人が入れるバス。二つの客室には、それぞれに白のネコ足のバスが備え付けられている。毎日どこのバスに入るか、その日の気分で決めるんだ。俺とシンディは白のバスがお気に入りなんだ。なにせ大きいからね。親父は檜の24時間風呂が一番好きなんだ。いつでも入れるから。((藁´∀`)) そのバスルームの隣にはサウナがあって、そこで汗をかいて水風呂に入ってから、風呂に入るのが親父の楽しみなんだ。最近は翠嵐さんが客室に泊まりに来るのよ。結婚すればいいのにね。とてもお似合いだと想うけど・・・親父も慎重だからね。ファーストレディーの大変さ解かっているから、負担を掛けたくないんだろうね。心療内科のクリニックも評判良いみたいだし、ましてや軍医も引き受けているからね。俺もたまに睡眠薬処方してもらうからな、翠嵐さんに会うんだよ。エレベーターに乗っている間に、たわいも無い会話を交わしながら、シンディをエスコートしてフロントに鍵を預ける。行ってらっしゃいませ。そんな声に見送られてホテルを後にする。呼んでもらったタクシーに乗り込み、後部座席でシンディの手を握り締める。運転手に見えないようにこっそりとね。フランツには今からホテルを出ると伝えたわ。ホテルのロビーで携帯を切り終えて、彼に声を掛けた。了解。名花さんとシンも来ているそうよ。何でも公演の練習の為、ピアノを借りているんですって。宿泊はホテル・ルテシアですって!あそこのアルマン・スイートって、へッドボードの部分がバイオリンの形をしているのよね。バスルームのカーテンは音符が描かれていて、まるで音楽家の為の部屋なんだそうよ。名花さんにぴったりなホテルね!なかなかおしゃれなホテルだね!しかしよく知ってるねホテルの事。実はお父様の受け売りなのよ。いろんな方とお会いするでしょう、各界の著名人とも会われるんですもの、情報は半端じゃないしそれにとても正確なんですもの。最近では、海竜が海外視察に同行するようになったから、ホテルの手配も彼がやっているの。ネットで調べたり、旅行代理店に電話したりして情報を集めているわ。兄貴頑張ってるじゃん。どうしたんだ?想い人が出来たみたいよ。あの兄貴に!?だれ!!貴方と一夜を共にした愛歌さんよ!彼女のお店に毎晩通っていくの。だから彼女のお店に来るようにとの手紙に少し驚いたわ。タクシーに乗り込む前に交わした彼女との会話を、車中で想い返す。ふーん・・・あの兄貴がね。しかし世間は狭いもんだね(>д
2007/09/13
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ねぇ・・・瞑月黒い羽のタトゥー入れたの。うん。親友伽と同じタトゥーなんだ。離れていても互いの事を忘れるな、辛い訓練を共に乗り越えた、同志がいた事を忘れるなってメッセージを込めたんだ。素敵ね。男同士の友情って。うん。男ってさばさばしているからさ、喧嘩しても拳を交し合えば、それで終わっちゃうんだよ。俺と伽は、あいつの方が大人だから喧嘩にもならなかったけど(>ддд
2007/09/13
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君の笑顔をもっと見せて。心を癒すような君の微笑みは乗船した後も、きっと俺の心を温めてくれるんだろう。必ず帰ってくるから待っていて。耳元で囁く。貴方の微笑みは、ちょっぴりやんちゃな男の子みたいよ、瞑月。自分の魅力をよく知っている、年下君の彼はとても甘えん坊。帰ってきたら、また私の側から離れなくなってしまうかもね。そんな貴方を想像してまた笑ってしまう。何を想像しているの、お嬢さん。そっと頬にキスをする。少し先の貴方の姿、甘えん坊な瞑月が微笑みながら、ただいまって言っている姿が見えるわ。そして小さく可愛いキスをするの。瞳を閉じて答える。君の脳裏に浮かんでいる俺は、今より男らしくなってる?えぇ。とても。護る覚悟を抱いた精悍な顔をしているわよ。彼の首筋に手を回してキスを交わす。優しく舌を絡ませたくちづけは、何て甘く心を酔わすのでしょうね。まるで夢の中に引き込まれるような感覚がするわ・・・切ないような表情のシンディ。俺を誘っているのかい。初めての時には見せなかったね、そんな艶めいた大人の女性の顔は。抱きしめる度に新たな一面を見せるんだね、シンディ・・・貴方のささやき。女性の心をよく知っているのね。どんな言葉に、ささやきに弱いか知り尽くしている。体に触れる仕草だって、女性の体を知っている人の仕草だわ。以前のように嫉妬したりなんかしない。貴方は私だけの人だから・・・そして私も貴方だけの女性でいたい。これから先、永遠にね。愛してるって、きっとこれからも何度も何度も、抱きしめるたびに君に囁くんだろうね。何度言っても足りないくらいだよ。俺がどれほど君を愛しているか解かってる・・・首を横に振る。だって何度でも言って欲しいんだもの。愛してるって甘い囁きの言葉を、貴方から聞きたいんだもの・・・女はね、愛する人からの囁きでどんどん綺麗になっていくの。愛の言葉は、女が綺麗になっていく為の魔法の呪文なのよ。魔法の呪文・・・ならば今よりももっと君は綺麗になるよ。俺のたくさんの愛の呪文でね。私を抱きしめる腕の強さは、兵役に行く前よりはるかに力強くなっている。それなのに仕草は繊細さを増している気がする。吐息をくちづけで遮る瞑月。意地悪ね。背中に回された手が爪を立てる。彼女の抗議。ごめん、でも君の喘ぎを舌を絡めたキスで遮ると、軽く快楽の表情をする。その甘い表情を見ているのが好きなんだ。高まりに誘われるのを確認して、彼女の手を強く握り押さえつける。ちょっと乱暴だったかも。ごめんよ・・・なんて色っぽい表情を浮かべるんだろう。快楽に溺れる表情に、何だか嬉しくなってしまって駆り立てられる心。どうか忘れないで。抱きしめる腕の強さや俺の温もりを。世界にたった一人だけの俺の愛する君よ・・・2人の会話へ
2007/09/13
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すずめのさえずりが聴こえる。遮光カーテンの隙間からは、朝日の光が一本の筋のように差し込んでいてホテルの壁を照らしている。傍らにいるはずのシンディがいない。!!慌てて起き上がる!シンディ!此処よ。落ち着いた声がバスルームから聞こえる。バスローブを羽織って立ち上がり、寝室の横のバスルームをのぞくと、昨日みたいにバスタブに薔薇の花びらを浮かべていた。俺を見て微笑む彼女。お嬢さん。いつからそこに居たんです。明け方から・・・此処のバスルームには朝日が射し込むのね。夜明けの光に気がついて、引き寄せられる様に窓からの景色を眺めていたわ。バスタブのお湯がまだ温かかったから浸かっていたのよ。ふうん。相変わらず明け方のお風呂が好きなんだね、シンディ。貴方もでしょ、瞑月。バスローブを脱いで湯船に浸かる。本当だ。まだ温かい。昨日のようにシンディを後から抱きしめる。体を交わした後に、2人でバスに浸かってボーっとするのが好きで、兵役する前よくこうやって射し込む光を眺めていた。暗闇は死や停滞、静寂、終焉をを感じさせ、光は再生、誕生、復活を連想させる。闇も光もどちらも好きだ。濡れた髪にくちづけながらそう考えていた。もう一度抱きしめてもいい。耳元で囁かれる。返事の代わりにくちづけを交わす。小さなキスが舌を絡めたキスに変わる。抱きしめる腕に力が込められた。彼女の細いウエストに手を添えて、まるで幼い子を立たせる様にバスの中で2人で立ち上がる。光の中に映し出される綺麗な白い肌は、初めて抱きしめた時と何一つ変わらない。ゆっくりバスから出て、バスタブの横に置かれた、茶色いバスタオルでシンディの体を包み体を拭く。俺はバスローブに袖を通して、2人で隣の寝室に向かう。冷蔵庫からコントレックスを2本持ってきて、1本をベットに腰掛けている彼女にふたを緩めて手渡す。ありがとう。そう言って受け取り口をつける。俺もふたを開けてゆっくりと流し込む。ベットサイドにコントレックスを置いて、赤いシーツに包まれた羽毛布団をめくって、軽くマットを叩いてシンディを誘う。彼女をベットに誘う時は、いつもこうやって合図を送る。立ち上がり、ゆっくりとベットに体を体を横たえるシンディに、優しくキスをすると彼女は瞼を閉じて俺のバスローブを脱がす。手の温もりが背中に触れる。温かい、自身より小さな手。優しく、時に強く舌を絡めたキスを交わしながら、彼女に触れる。くすぐったいよ・・・瞑月・・・笑うシンディに、つられて笑ってしまう。君の微笑みへ
2007/09/13
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女性の体って、何でこんなに柔らかいんだろうな。男と全然違う。シンディを抱きしめて温もりに触れながら、そんな事を考えていた。俺を見つめる瞳。心を引き寄せ放さない君の眼の輝きを離れている間、一日として想い出さない日はなかったよ。恋しくていとおしくて、時に嫉妬に苛まれても、やっぱり君を忘れる事など出来なかった。憎みきる事など出来なかったよ。他の男に、シンに抱かれた君でも、世界中の誰よりもいとおしい女性なんだ。初めて君を抱きしめた時、実はとても緊張していたんだぜ。虚勢を張って君に悟られないようにしていただけ。俺が緊張していたら、シンディ、初めての君もさらに緊張してしまう事、解かっていたから。カミュVSOPを飲ませたのもその為なんだよ。緊張をしている事を、君を酔わせることでばれないようにしていたんだ。俺も男だもん。少し位のプライドだって持ち合わせてるんだよ。でも鋭い彼女の事だから、もしかしたら、ばれているのかもしれないね。今だってちょっぴり緊張していたりするんだ。君が送ってくれたマッカラン12年を、ホテルに持ってきていた。バカラのアルクールオールドファッショングラスもね。マッカランをグラスに注いで、口移しで飲ませる。瞳を閉じて受け止める彼女。初めての時はブランデーだったけれど、今はウイスキー。度数は40。ニートで俺も味わいながら、体を交わす。女性には強すぎるって!普通そうだよな。でもねシンディは酒が強くてニートじゃないと酔わないんだ。俺のほうが先に酔ってしまう事だってある位さ。彼女、普段飲まないのにね。俺より酒が強いなんてな。今だって酔っているのかいないのか、瞳を閉じた表情から窺い知る事が出来ないよ。闇と光へ
2007/09/12
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メイクを落としても彼女の大きな瞳はとても印象的で、まるで心を見透かすかのよう。綺麗な瞳。ガデットブルーの瞳で俺の顔を見つめる。濡れた髪の彼女はとても色っぽい。バスタブの中で、背中から抱きしめて瞳を閉じる。人肌の温もりと、お湯の温かさに包まれながら、ラベンダーの香りを感じる。ゆっくりと幻想的な空間の中で、好きな人と過ごす時間。きっと最高の贅沢なんだろう。今何を想ってる・・・そんな問いかけに、幸せって想ってるさ。同じ事考えてたわ。肩を抱く俺の腕に手を添えて答えるシンディ。言葉は必要最小限でいい。抱きしめれば心が伝わるような気がして、ただ君とずっとこうしていたい。ブルガリホテルで過ごす、贅沢な時間・・・今頃2人は、どんな時間を過ごしているんだろうな。リザを抱きしめたまま瞑月とシンディを想う。あいつも好きな人を抱きしめて、幸せな時を過ごしているんだろう。満たされたような幸福感のなかでまどろみながら、ゆっくりと眠りに落ちていく。私を抱きしめたまま、幸せそうな表情で眠りにつく伽。18日には船に乗ってしまう。逢えなくなるなんて寂しい・・・そう素直に口に出来たらいいのに。まるで自身のつけている香水と同じ。強情っぱりという意味のカボシャール。グレ Gressカボシャール CabochardミニボトルEDP3ml マッカラン12年へ
2007/09/12
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ホテルに着いてチェックインを済ませる。ホテルの手配は自分でやった。そこまで伽にやらせたら悪いもんな。ロビーには黒の大理石が使われ、落ち着いた大人の雰囲気を醸し出している。ここは親父から教えてもらった。ロイヤルスイート。エントランスからバスルームに至るまですべて黒の大理石を使い、寝室とバスルームは一続きになっている。白のバスの形は楕円形、2人でも十分ゆったり入れるくらいだ。壁の黒と対照的な白いバスそのコントラストが美しい。そしてバスタブのふちには、たくさんのバカラのグラスが置かれていて、その中にはラベンダーの香りがするキャンドルが入っている。バスルームの照明を点けずにキャンドルの灯りだけでバスルームで寛ぎの時間を過ごせるように・・・なんて幻想的な時間だろう。ホテルオーナーは女性だと聞いている。なんともおしゃれだね。背中を抱いてシンディ、一緒に入ろうか・・・誘うと頷いて服を脱ぎ始める。部屋の中にはガラスのテーブル。これもバカラ製。その上には真っ赤な薔薇の花束。送り主は親父だった。サンキュー親父!一輪頂いていい?いいよ。バスルームに薔薇を一輪持ち込んだ彼女は、一枚一枚丁寧に花びらを取り、バスタブに落としていく。湯船に2人でつかりながら、そんな様子を眺めている。乳白色の入浴剤に、赤い薔薇の花びらが浮かんでいる。綺麗・・・うん、綺麗だね・・・キャンドルライトが黒の大理石に反射する様は、まるで暗闇に蛍が漂うような感覚を抱く。そういえば、シン、あいつはバスルームにたくさん蝋燭を持ち込んで、暗闇でボーっとするのが好きって言っていたな。カボシャールへ
2007/09/12
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瞑月とシンディをタクシーに乗せ見送る。伽、愛歌さん、本当にありがと。2人に感謝してるよ。伽さん、愛歌さん本当にありがとうございます。何度も何度も礼を言いながら、2人が向かったのは例のホテルさ!もっとも泊まる部屋はロイヤルスイートだけどな。瞑月の自腹さ!((藁´∀`)) 着替えの後に伽さん、この服差し上げます。もう過去の想い出ではなく、瞑月と未来に向かって歩いていくから、この服は今の私には必要がなくなってしまいました。そう言って笑う彼女。でも・・・高価そうな服だし、受け取れませんよ。お願い、どうか受け取って下さい。懇願する表情に根負けして受け取ってしまった。オート・クチュールだぜ!いくらするんだよ!((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル店の後片付けをみんなが手伝ってくれたから、1時間ほどで終わってしまった。助かったぜ!皆ありがとな!仲間を見送った後、愛歌さんに控え室を貸してもらって、リザにシンディから貰った服を着てもらった。!!ヮ(゚д゚)ォ!綺麗ですよ!よく似合います!(´∀`*))ァ'`,、 そうだ!この格好で歩いてホテルまで行きましょうよ!えぇ!!この格好でっ!!でも・・・(´ω`ι)いいからいいから!((藁´∀`)) 目立っちゃいましょう俺達!愛歌さんじゃあね~!気をつけて行くのよ!伽、リザ!行ってらっしゃい!彼女に見送られて店を後にする。夜の9時、ベースを眺めながら寄り添って歩く俺達。街灯に照らされて歩く姿に、町の人々が振り返る。そう見ているのは俺じゃなくリザなんだ!俺の自慢の美人の彼女。リザは恥ずかしそうに俯き加減で歩いているけどね。あの・・・伽さんじゃありませんか・・・ファニー・フェースの・・・ライブハウスの前を通りかかった時、たむろっていた派手な姉ちゃんに声を掛けられた。ファニー・フェース。俺がやっていたバンドの名前なんだ。そうですけど。大ファンなんです!握手して下さいっ!!あ、どうも・・・右手を差し出すと、両手で包み込むように強く手を握る女性!放してくれないかと思ったぜ!((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル今は兵役に行かれているんですよね!またバンド組んで下さいね!よく知ってるね。俺が兵役してる事。私ファニー・フェースのおっかけしてましたから((藁´∀`)) 結成時からのファンなんですよ!そりゃどうも!じゃあね!今デート中だから悪いね!ファンの女性は、一瞬リザに嫉妬の視線を投げかけた。おーこわ!女の嫉妬の顔って俺苦手だ。伽は密かに有名人だったりするのか?そんなことないっすよ!でも結構派手にライブやってたから、俺も知らないファンとかいたのかもしれませんね。兵役終えたら、またバンドを組むんだろう?はい。そして必ず有名になってリザを迎えに行きます。軍人とファニー・フェースのギタリストの結婚、世間が大騒ぎになっちゃうかもしれませんね!ァ'`,、'`,、(ノ∀`*)'`,、'`,、そんな事を話しながら歩いていたらホテルに着いちゃったよ。キャンドルライトへ
2007/09/12
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女声コーラスに聞き惚れる。歌っていいな。シンディも一緒に口ずさんでいる。彼女はソプラノ。普段話す声はとても落ち着いた声質なのに、歌うと驚くくらい高音が出る。俺が帰国する前「ばら、きく、なずな」を歌ってくれたね。君の歌声に聞き惚れた事を想い出すよ。私の手を握り締めて歌声に耳を傾ける彼は、あんまり歌が上手じゃないけれど、話す声がとても好きよ。初めて会ったとき、声が素敵って想った事、まだ貴方に言っていなかったわね。容姿も素敵と感じたけれど、一番最初に心を奪われたのは瞑月の声なのよ。少年のような、時に女性のような中間の声質。まるで女性の声優さんが、少年役をしているような瞑月の声。貴方の囁く声は、私の脳裏に深く刻み込まれているの。人の五感の中で、最後まで残るのは聴覚。意識が無くても、聴覚だけは最後まで残っているんだって。親父が言っていたよ。人としての寿命を終える瞬間に、聴こえるのが君の声であってほしい。最後の時に俺に好きと囁いてくれるかい。シンディ・・・俺の願い事、至ってシンプルでしょ。握りしめた手に力を込める。ピアノの伴奏が終わる。皆で、名花さんと女性陣に拍手を送る。伽と視線がぶつかる。あいつ俺にウインクを送ってるぜ!(´∀`*))ァ'`,、 真似して俺もウインクをする!サンキュー伽、素敵な時間をありがとな。お前がリザと結婚する時は、俺がサプライズ仕組んでやるよ!瞑月が笑ってる。サプライズ大成功だな!ァ'`,、'`,、(ノ∀`*)'`,、'`,、皆にも楽しんでもらえたようだ。テーブルの上の料理も全て無くなって、愛歌さんも嬉しそう!そろそろサプライズパーティーを終えて、2人だけの時間を作ってやらないとな。俺のマイクをよこせとジェスチャーを送る瞑月。マイクを渡すと電源を入れて話しはじめた。本日は俺と妻シンディの為に、このような素敵なパーティーを開いて下さった皆様、またお集まりいただきました皆様に、心より御礼申し上げます。乗船前に妻に逢えた事、心から嬉しく想います。隣のシンディを見つめながら、会場の皆に語りかける。俺を見つめるシンディ。兵役に志願した事で、たくさんの素晴らしい仲間に出会うことが出来ました。我儘な俺を受け入れてくれる親友も出来ました。ここに来た事に何一つ後悔はありません。まだ1年半近く兵役生活が残っていますが、この素晴らしい仲間達と共に日々の鍛錬を怠らず、自身の精進に努めてまいります事を、ここで皆に誓いたいと想います。皆様、本当にありがとうございましたっ!!皆本当にありがとう!心から感謝を込めて深く頭を下げる。かっこいいぜ、瞑月!拍手をすると、周りからも大きな拍手が沸き起こる。瞑月マイクを・・・促されシンディにマイクを渡す。皆様、本日は素敵なパーティーを開いて下さり、心より御礼申し上げます。まだまだ未熟で至らぬ点も多い私達夫婦ですが、皆様方の温かい励ましや思いやりの心に触れ、たくさんの勇気を頂きました。私も離れている間も彼に習い、自身を成長させていく事を、皆様に誓いたいと想います。本当にありがとうございました。感謝で涙が溢れ頬を濡らす。大きく拍手を送る。じーんときちゃったぜ。2人に喜んでもらう為にひらいたサプライズパーティーだったのに、なんだか夫婦という絆を目の当たりにして、考えさせられ、感じさせられたひと時だった。この2人はもう大丈夫だろう。最後に皆で集合写真と2人だけの写真を撮って、サプライズパーティーは幕を閉じた。ファニー・フェースへ
2007/09/12
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綺麗な人だね、名花さんて。そうね。その名の通り美しい方ね。初めてお会いした時、とても繊細で聡明な人という印象を抱いたの。奏でられるピアノの音は、まるで名花さんの心の内を表しているかのよう。心を惹きつけて放さない、魅力的な演奏をなさるピアニストだわ。うん。どこか君に、似た部分があるように想えたんだけど。私に?君もそう。表現は異なるけれど、オスカーを受賞した最後の映画、「さよなら」で恋人と別れるシーンで見せた君の表情がね、忘れられないんだ。心を永遠に捉えて放さない、そんな表情していたこと知っていたかい?あの映画はね、実は見ていないの。「さよなら」を引き受けたのは、瞑月に逢う為の最後の賭けだった。だから裸身を曝け出したし、万感の想いを込めて演技をした。貴方に逢いたかったから、ただそれだけの為。それにもしも「さよなら」を瞑月が見てくれたなら、私に逢いに来てくれるかもしれないって想ったのよ・・・そうだったのか・・・ありがとうシンディ・・・小さく呟いて渾身の力を込めて抱きしめる。永遠に放さないから。君の記憶が俺の心を捉えて離さないように、君の身も心も俺の、俺だけの記憶で満たしていて欲しい。言葉に出さなくても、貴方の想いが抱きしめる腕の強さや、手の温もりから伝わってくるようで、涙が溢れてくる。私も同じ想いよ。世界にたった一人しかいない瞑月という存在を、私だけの記憶で繋ぎとめておきたいの。きっとその記憶だけが、来世で再び貴方に出会える事だと固く信じているから・・・そろそろ2人だけにしてあげた方がよさそうかな。愛歌さんに目配せをすると、ウインクで了解の合図を返す。スーツの上着を脱いで、再びピアノの前に名花さんが腰を下ろし、演奏を始める。曲目は「世界中の誰よりきっと」リザ達女性軍人によるコーラスだ。絆へ
2007/09/12
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瞑月、久しぶり!ハワイで会って以来だね!シンディとは本当に久しぶりだね!元気だったかい!本日はお招きいただきありがとう!君達に会えて嬉しいよ!フランツ!!!瞑月達と会話している人がフランツさんなんだ!後で挨拶しよう。(´∀`*))ァ'`,、 ふーんなかなか男前な人だね!自身で会社経営しながら、イタリア料理店の経営もするなんて凄いよな!フランツお久しぶり!お会いできて嬉しいわ!ノエルは順調?うん!順調だよ!僕もね、彼女と一緒に母親学級通ってるんだ!出産には立ち会いたいからね!女性って子どもを授かると、ますます綺麗になるんだね!((藁´∀`)) あはは!それってのろけだよフランツ!奥さん自慢は相変わらずだね!そう言って握手を交わす。だって自分の奥さんの自慢したいでしょ!ァ'`,、'`,、(ノ∀`*)'`,、'`,、瞑月だってそうだろう!(。-∀-) ニヒ♪あは!そうだね!俺も親友に惚気ていたりするもんな!(´∀`*))ァ'`,、 惚気てるの?伽さんに?そう!男ってね、好きな人の自慢したいもんなの。美人の奥さんなら尚更さ!そうそう!(´∀`*))ァ'`,、 瞑月はシンディを最高の女性だと思っているし、僕もノエルが最高の女性だと思ってるよ!今日は楽しませてもらうよ!他にも挨拶したい人もいるようだから、このくらいで。じゃあまた後で!ああ!楽しんでいって!フランツ!また後ほど会いましょう!瞑月お久しぶりです。ああ。久しぶりだな、シン。握手を交わす俺達。瞑月とお会いするのは初めてですね。名花。はい。こちら第二皇子の瞑月です。初めまして瞑月様。ピアニストをしております、名花と申します。先ほどは素晴らしい演奏をありがとうございました。御高名はかねがね承っております。私の父が貴女の大ファンで毎晩CDを掛けているくらいです。握手を交わしながら名花、美女の形容する名前がつけられているなんて、なかなかセンスのある親なんだろうな。その名の通りとても美しい人だ。瞑月様の過分のお褒めにあずかり、大変恐縮でございます。握手を交わしながらも、緊張でそう答えるのが精一杯です。瞑月様との握手の後、傍らのシンディ様に視線をそそぎ、お久しぶりでございます、シンディ様。あの日の対談以来ですね。小さく微笑んで彼女を見つめる。ええ。お元気そうで何よりです、名花さん。先ほど演奏された「私の回転木馬」はとても好きな曲です。素敵な曲をありがとうございました。名花さんとの初めての対談は、とても有意義な時間を過ごす事ができました。私も貴女の演奏に心を奪われてしまって、部屋でも移動中の車の中でもCDを聴いています。ありがとうございます。そのように仰っていただき、とても光栄でございます。握手を交わしながら答える。世界中の誰よりきっとへ
2007/09/11
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ピアノを弾いている隣にいるのはシン。まるで名花さんをガードするかのように見守っている。女性のように美しい容姿の男性ピアニスト。あいつもしかして名花さんの事・・・(・∀・)あいつ惚れっぽいからな~!あり得るかも知れない。後で聞いてみよう!シンディに再会出来た事で、あいつのした事すらもちっぽけに思えてきたよ。今の俺なら、以前のようにシンと話す事が出来そうだ。傍らのシンディ嬢を見つめて手を取る。俺を見つめるシンディはその大きな瞳に涙を浮かべていた。泣かないで。美人さん!そっと涙を拭う。瞑月ごめんね・・・小さな言葉で謝罪するシンディ。何も言わないでいいよ。もう済んだ事だろ。君は自分でけじめをつけたんだろう。俺の奥さんは強い人だもの。ホールの中央に並べられたたくさんの料理、愛歌さんの手料理だ。おそらく親しい軍人達も伽も手伝ったんだろうな。みんな俺達の為にわざわざ準備してくれたんだろう。ピアノを聴きながら、目を閉じて心の中でありがとうみんな。俺兵役してよかった。多くの仲間に恵まれ、親友と出会えた。シンディとも仲直りが出来たしね。乗船前に君に会えて本当に嬉しいよ。シンディ。俺、もっと強くなって帰ってくるから。もうしばらく待っていて。寂しい想いをさせちゃうけれど、海の上で毎日君を想っているから。瞑月の囁きに耳を傾ける。ずっと待ってる。貴方の事を。私も毎日貴方を想っているから。どうか無事に兵役を終えて、私の許に帰ってきて。彼からのくちづけを受けるあいつ本当に奥さんの事好きなんだろうな。(´∀`*))ァ'`,、 見てるこっちが恥ずかしくなるくらいアツアツカップルだね!さっきからシンディの側から離れないよ!マイクを掴んで大声で叫ぶ!瞑月っ!!お姫様だっこしろっ!!(。-∀-) ニヒ♪そうだそうだっ!!瞑月!お前軍人だろっ!!男らしいところ奥さんに見せてやれっ!!はい!だーっこ!だーっこ!(>д
2007/09/11
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シンディっ!!そう言って絶句する俺っ!!彼女もびっくりした表情を浮かべ、じっと見つめるっ!!お二人さん!もっと寄り添って下さいっ!!大きな声。瞑月、あの方はどなた?伽って言うんだ。俺の親友だよ。あの方が伽さん。アルバムを送ってくれた人ね。そう、瞑月貴方の親友なのね。初めましてシンディ様。伽と申します。瞑月と同じ海軍に所属しております。自己紹介しながら敬礼をする。元女優だけあって、とても美しい。瞑月が自慢したくなるのも解かる気がする。思わずじっと見つめてしまう!アルバム、ありがとうございました。私の知らない彼の一面が垣間見えたようで、嬉しいです。そのように仰っていただき、送った甲斐がありました。(´∀`*))ァ'`,、 貴女にお詫びしなくてはなりません。ホテルの一件は全部私が仕組んだ事です。申し訳ありませんでした。深く頭を下げる面を御上げ下さい、伽さん。写真を何度も何度も見返して、きっと何かの間違いなんだろうと思いました。瞑月の顔つきは、自分の欲になど負けない精悍な顔をしていました。だから信じようと決めたんです。傍らの瞑月を見つめる。瞑月、シンディに会って凄く嬉しそうだな。瞑月、こんなに素敵な奥さんがいるんだから二度と浮気心なんて起こすんじゃねえぞ!(・∀・)ニャニャおう!肝に銘じておくさ!(>д
2007/09/11
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名花、タクシーでHoneyというお店に一足先に行っていて貰えますか。私はシンディ様を店に連れて行くように言われてるんです。はい。素直に頷く彼女。ホテルから彼女を見送り、単車を飛ばして宮殿に行くと、シンディ様は既に身支度を整えていた。車に乗り換え、彼女を後部座席に乗せる。車中でも思案げな表情を浮かべている。何が起こるのかを考えているのでしょう。シン、貴方は知っているのでしょう?今日の事。ええ。再び思案し始める。シンディ様、今日という日が一生の想い出になるように、ある方が計画した事です。そうとだけ申し上げておきます。一生の想い出・・・思わず呟く。さあ、着きましたよ!後部座席のドアを開けて、シンが微笑みかける。ありがとう。大きなお店。先日尋ねてきた女性が経営するお店。店の名前はHoneyハチミツか・・・シンがドアを開けてくれる。いらっしゃいませ。ようこそおいで下さいました。シンディ様。握手を交わし、先日の非礼を詫びると、にっこり笑ってお気になさらずに。どうぞこちらへ通されたのは控え室。大きな姿見のある部屋。何だかスタジオの控え室を思い出し、懐かしくなってしまう。シンディ様はこのお衣装にお着替え下さい。手渡された衣装を見て懐かしさに駆られる。これは・・・想い出の衣装ですよ、シンディ様。メイクはご自分でなさいますか。ええ自分で出来ます。ありがとう。そう言うとどうぞごゆっくり。お時間までこちらでお待ち下さい。後ほどご案内致します。頭を下げて部屋を出て行った。コンコン!ノックする音。はい。お支度はお済ですか。ええ。どうぞ。失礼致します。お綺麗ですわ、シンディ様!ご案内致しますこちらへどうぞ!案内されたのは大きな扉のある部屋、この扉の先には、一体何が待ち受けているのだろう。電気が消される。真っ暗闇に戸惑う!あっあのっ!!大丈夫ですよ!シンディ様、扉が開いたら真っ直ぐお進み下さい。大きな音をたてて勢いよく扉が開かれる。言われたとおり真っ直ぐ進む。暗闇で何も見えない。一体どこまで進めばいいの。不安になってくる。やだ!何かにぶつかったっ!!せーのっ!!突然大きな声がして照明が一斉に点灯する。一瞬眩しさで目が眩む。!!私がぶつかっていたのは瞑月、貴方だったのっ!!私の回転木馬へ
2007/09/11
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瞑月出かけるぞ!俺はいい。ほっといてくれ。そうはいかねえんだよ!みんなたのむ!!うあっ!!ばかやろう何すんだよ!!お前ら覚えてろよっ!!よし!これで逃げる事も出来ないぞ!瞑月!(・∀・)ニャニャおとなしく従っていれば麻袋に詰めたりなんてしなかったのに(。-∀-) ニヒ♪よし!車に積み込め!麻袋に押し込まれ、身動きが取れない!くっそー何にも見えない!何を企んでやがる!!ばかやろうっ!!ここから出しやがれっ!!暴れるなよ瞑月!すぐ出してやっから。その代わり、逃げたりしたらまた麻袋に入れるからな!みんなお前より体も大きいし、力も強い5人がかりじゃ逃げ出せねえぞ!(´∀`*))ァ'`,、 みんなお前の差し金だなっ!!伽っ!!てめえぜってーゆるさねえっ!!麻袋に押し込まれた奴は大暴れしている。5人がかりで瞑月を運びパジェロの後部座席に押し込んだ。一体何を企んでんだっ!!出せっ!!やれやれうるさい男だね、まったく!(´ω`ι)Honey はベースと目と鼻の先なのに車を使うとはね(>дд
2007/09/11
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愛歌さんの店に行こうぜ!俺はいい・・・お前だけで行って来いよ。当分酒は飲みたくない。そうか。じゃ、行ってくる。当たり前だけどかなり落ち込んでる瞑月。自分が招いた事とはいえかなり罪悪感。あら、いらっしゃい!グラスを麻布で拭きながら俺を見つめてにこやかに微笑む。瞑月は?酒は飲みたくないってさ。そう。シンディと連絡取れた?本人と直接じゃないんだけど、側近のシンって人と会うことが出来たよ。私昨日シンディに会ったわよ!(´∀`*))ァ'`,、 なかなか気の強い子で面白かったわよ!物怖じしないきっぱりと物事を喋る子で、ああいうタイプは好きだわ!えぇ!!どうやって彼女と!?最近瞑月のお兄さんが毎晩通ってくるわ!それで一緒に食事する事を条件に、会わせて貰っちゃった!愛歌さん・・・何だか俺の努力虚しいっす。・゚・(*ノД`*)・゚・。土下座までしたのに~!伽、そんな事ないわよ!貴方の努力はきっと実を結ぶわよ!側近に会えたなんて凄いじゃないの!あ、そうそう16日に来る人数はどれくらいなのかしら。うーん大体30人くらいを予定してる。大丈夫?うーん、私1人だと厳しいかしら。あと2人くらい料理出来る人声を掛けてもらえる?OK!愛歌さん、絶対成功させようね!((藁´∀`)) もちろんよ!何を飲む?アードベッグがいいな!ちょっとほろ苦くて好きなんだ!ハーフロックでね!了解!フランツ、貴方に招待状が来てるわよ!誰から?伽って人から。知らないよ?誰だろう。封筒を開けてみて手紙の内容を確認してみる。瞑月の友人らしい。ふーん。成る程ね、楽しそうじゃないか!肩を震わせて笑う。なあに?フランツ楽しそうね!瞑月を驚かす為のサプライズパーティーの招待状だってさ!彼に関わる人を呼んで内輪で盛り上がるんだろう。せっかくお招き頂いたんだもの、行ってもいいかな?もちろんよ!行ってらっしゃい!ホテルに着いた私達は、チェックインを済ませ部屋に入る。部屋の鍵を閉める。シンに寄り添い優しくくちづけを交わす。ふと思い出したように、名花、16日日曜日スケジュール空いていますか?ちょっと待っていてください。確認します。ええ、空いていますよ!でも、どうして?ピアノ演奏をお願いしたいんです。私からの依頼、受けて貰えませんか。じゃあ条件を出してもいいですか?いたずらっぽく微笑みを浮かべる。条件?そう。今日は私とこのホテルに一緒に泊まる事。駄目ですか・・・懇願する瞳の美しさに抗う事が出来ない事、貴女は気がついていないのだろうか。分かりました。今度は私からくちづけをする。嘘へ
2007/09/11
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シンディ、君に会いたいという女性がいるんだ。宮殿の応接室に招いている。すぐに来てもらえないか。私の部屋に突然海竜から応接室からの呼び出し。こんな事は滅多にない為に戸惑いを抱く。慌てて応接室に向かうと、ソファーに一人の女性が座っていた。ドアが開いたことに気がついて、ソファーから立ち上がりこちらに振り返る。この人、アルバムに写っていた人だわ。警戒心を露にした表情を浮かべて私を見つめる。初めまして。愛歌と申します。そう言って手を差し出す。初めまして。シンディです。警戒と戸惑いを抱きつつ、差し出された手と握手を交わす。あの・・・海竜皇子は・・・海竜には外に出て貰っています。プライベートな話ですし、彼には関係の無い話ですから。第一皇子である海竜を呼び捨て。様くらいつけてはいかがです?皇子に対し無礼ではありませんか!少し強い口調で答える。噂には聞いていたけど、なかなかきつい性格のようね。気の強い子って好きよ。私と似てるじゃない。さすがオスカー受賞した女優ね。これくらいの強さがないと、あそこまで這い上がれなかったでしょうね。ふふふ・・・何が可笑しいのでしょう。思わず彼女に抗議の視線を投げかける。私に何か御用でしょうか。これでも多忙なんです。用件があるならば手短にお願い致します。丁寧な口調だけど、声には静かな怒りが込められているわ。では早速。私と瞑月様は体の関係などありませんから、どうぞご心配なく。用件はそれだけ。それじゃ失礼致します。!!立ち上がりドアへ向かう彼女。それだけ言う為に此処に来たの!お待ち下さい!思わず声を張り上げる。足が止まるのを見届けて、一体どういう事ですか・・・彼女を真っ直ぐ見据える。よく通る声ね。シンディの方に振り返り、彼を・・・瞑月様を今でも好きですか?そう問いかける。一瞬困惑の表情。でもすぐに真顔になって、はい。そう答えたわ。ならば彼を信じてあげて。それじゃあねシンディ様!そう告げると自らドアを開けて出て行った。部屋に取り残された呆然として佇む。瞑月の誤解を解きに、わざわざ此処まで出向いてきたのだろうか。ドアの外には海竜が壁に寄り掛かって立っていた。ありがとう海竜!ウインクをして彼の腕に縋りつく。どう致しまして!お嬢さん!ずいぶん短時間でしたね。そう!面倒な用事は短時間で済ますものよ!そして楽しい用事にはたっぷり時間をそそぐの。そのほうが有意義だから。納得!愛歌は合理的主義なんでしょう?そうよ!何でも合理的に済ませたいの。面倒と、煩わしい事は嫌いだわ!そんな所は僕と似ている。ますます魅力を感じ彼女に引き込まれていく。絶対彼女を落としたい。大人の魅力を持つ、人に媚びないこの女性を・・・伽の計画へ
2007/09/11
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素晴らしい演奏でしたよ!ありがとう!久しぶりに伸び伸びと演奏出来ました!制約がないって気が楽です。一方で責任も伴いますけどね!このシャツとネクタイ、支配人のご好意で私にプレゼントして下さいました。窮地を救ってくれたお礼だそうです!いたずらっぽくウインクをして無邪気に笑う。そんな表情に見惚れてしまう。そろそろ行きましょうか。今日は色々あって貴女も疲れたでしょう!ホテルまで送ります。バイクのキーを握りしめて彼が言う。はい。たった一日で、こんな色んな事が起きるなんてなんだか不思議ですね。とても印象に残る充実した一日を過ごす事が出来ました。自然に笑顔がこぼれる。そうですね。同意しながら、君の笑顔は何て眩しいのだろう。いつまでも心に残る微笑みを浮かべる。その笑顔を永遠に自分だけに向けて欲しい。そんなふうに想うのは我儘なんでしょうか。出来る事なら願いが叶うなら、名花の心を私の心で永遠に縛り付けておきたい。決して放したくない。きっと彼女より私のほうが貴女に夢中なんです。精一杯そんなふうに見えないようにしているのは、男の虚勢ってやつです。つまらない事に男は拘ってしまうものですね。苦笑する私。私を見つめる貴方の瞳は、優しさの中に人を護る覚悟を感じさせる。シン。私が貴方に魅かれたのは、その瞳なんですよ。強い覚悟を感じさせる一方で、慈しみに満ちている瞳の輝きに、初めて会った時から引き寄せられるような気がしました。でもまだ彼に打ち明けていません。少し照れくさいから。告白するのはもう少し先にしましょう。カードで支払いを済ませ、店を後にする。自分の分を払うと申し出る彼女を制した。この店を選んだのは私なんですから。困惑している彼女に、次はご馳走になります。そう言うと笑顔を浮かべ、はい!約束します。ありがとう!ご馳走様でした。そう言って頭を下げる。律儀な彼女らしい。単車のエンジンを掛ける。スロットルを回して吹け具合を確認する。プラグも被っていないし調子はいい様だな。単車は車以上にデリケートだと感じる。まるで女性みたいだ。シンはバイクをとても大切にしていること、彼の動作で判る。几帳面な彼は、法律で義務づけられている、運行前点検を欠かさない。そんなオーナーの下に来たなんて幸せなバイクですね。このバイクはなんていうんですか?カワサキのゼファー1100です。貴女の次に大切な私の宝物です。 さらりとそんな事を言うシン。慌ててヘルメットを被り高揚した顔を隠す。もう、真顔でそんな事言わないで下さい!嬉しいけれど、とても照れくさいんですから・・・行きましょうか。メットを被り後に乗るように促すと、頷いて私の後ろに跨る。ホテルはここから20分ほどの距離だけど、名花にいろんな景色を見せてあげたい。少し遠回りしてみよう。観覧車!綺麗・・・信号待ちの間に左を見上げて、色を変える観覧車に見惚れる。スロットルを上げて直線道路を走る。唸るエンジンに耳を傾けながら、体に当たる風の心地よさに感動する。車と違って体が外に出ている分五感で風を感じる。名花、貴女にも感じて貰えるでしょうか。まるで地面を滑っていくような感覚を。飛び立ってしまうような疾走感を・・・貴方が私に伝えたい事、十分伝わっていますよ。夜風が体に当たる心地よさ、同時に恐怖感も抱く。もしもバランスを崩したならば、大怪我は免れない。恐怖感を抱くのに、何故人はスリルを感じる物に惹かれるのでしょうね。リスクが大きいと解かっているのに、心を奪われる。貴方と私の関係も、どこか似ている気がします。世間では認められない間柄でも、私はシンが好きです。このまま2人でどこかに行ってしまいたい・・・腰に回した腕に力を込めた。愛歌へ
2007/09/11
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名花様、そろそろお仕度のお時間でございます。衣装をご用意致しましたので、こちらへどうぞ。支配人が呼びに来た。はい。行って来ます。シンに声を掛けるとついて行くと言う。部屋には入りませんよ。ご心配なく。そう言って笑いかける。更衣室に入ろうとすると、私を制止する。私が先に入室し、安全を確認してからじゃないと駄目ですよ。そうでした。彼はボディーガード。部屋の隅々を確認する。盗聴器や、ピンホールカメラが無い事を確認し入室をOKする。名花どうぞ。声を掛ける。ありがとう。微笑んだ彼女は、ドアの向こう側に姿を消す。僅か3分程の間に全ての身支度を終え、更衣室を出る名花。早いですね!えぇ。いつどの様な時に、時間を奪われるか分かりませんので、仕度は出来るだけ早めにするように心がけています。公演に遅れるなど、プロにはあってはならないことですからね。足を運んで下さったお客様を、がっかりさせたくないんです。ファンを大切にする姿勢は、14年前もそうだった。僅か15歳にもかかわらず、プロとして世界に出ていた彼女は、常に全てに感謝する事。それが、私という人間がこの世で生きる為に、必要で不可欠な事なんですよ。そう言っていた。全てに感謝。これは彼女の口癖なんです。彼女に好感を抱いたのは、そんな姿勢なのかもしれません。更衣室から出た後、支配人に案内される。先頭を歩くのはシン。ピアノも隅々までチェックが終わるまで、近づく事すらも許されない。皇室のボディガードをしている彼は、盗聴器や爆発物が仕掛けられる場所は、大体分かるみたい。心療内科の翠嵐さんのアドバイスも、きっとあるのでしょうね。彼はとても口が堅いので、人の情報を他人に漏らす事は絶対に無い。全幅の信頼を置かれるシンは、忠誠心に厚い優秀な人。だからこそ今の立場で仕事をしているのでしょう。チェック終わりました。名花さんどうぞ。 彼が声を掛ける。ピアノの側でたたずむ支配人に、曲目はありますか?そう尋ねると困惑した様子で、演奏者に任せていたので何も無いんです。解かりました。むしろその方が好都合。自由にピアノに向い合えると言う事です。楽譜に縛られず、好きな曲をメドレーで弾く事が出来るんですからね。どちらかというと、楽譜通りの演奏よりも即興が得意な私は、公演を主催する上の役員達には評価が悪い。アンコールでは用意された演目を、即興で演目を交えた演奏をしてしまうから。音楽は本来自由なもの。型通りにはまった表現なんて、くだらないしつまらない。演奏者が楽しめない公演で、人の心など打つ事など出来る筈が無い。これは私の持論ですけれどね。椅子に腰を下ろし、軽く鍵盤を叩き音を確認する。うん。調整は問題が無いようです。鍵盤の戻りも異常無し。目を閉じたまま指先に刻まれた感覚だけで音を確認する。脳裏に刻み込んだ音は、微妙な音の違いを聞き逃す事など無い。絶対音感とは違う、私が自身で身に付けた音感だと信じている。最初の曲は「私の回転木馬」。コーラスの伴奏も公演の合間に引き受けて来た私は、この曲がとても好き。恋を歌った曲で、まるでシンと私みたいじゃないですか。少しテンポの速い、明るい曲の後にもう一曲、「そんなお婆さんならわるくない」続いて「虫歯のタンゴ」歌詞がユニークで、聴衆が思わず笑いをこぼす。歌う人間がいないのが残念なくらいです。明るい曲が続いた後はバラードを。「星に願いを」ゆったりした曲調で心を惹きつける。つぎは「チム・チム・チェリー」映画メリー・ポピンズの主題歌です。演目の最後は、ちあきなおみさんが歌う「喝采」を演奏する。まるで劇画のような印象を抱かせる「喝采」はとても好きな曲。トータルで1時間ほどの時間でしたが、楽譜に囚われないで演奏できる事は殆んど無い為、自由な演奏を、心から楽しむことが出来ました。リスクへ
2007/09/10
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最近よく来るわね。海竜。えぇ。貴女を口説き落としたくてね。この人は一体幾つなんだろう。謎めいた女性に一目ぼれをしてしまった僕は、毎晩のようにHoney に通うようになった。第一王子にも拘らず、僕を呼び捨てにすることも好感を抱いたんだ。周りの人間達はちやほやするけれど、彼女は媚びない。そんな女性は魅力的だ。私に興味があるのか、毎晩通ってくる海竜。瞑月の10歳年上の兄だという彼は、欲しい物は何でも手に入れるのが僕の主義なんです。そう言って微笑みを浮かべる。自信家ね。手に入らないものだってあるわよ!それは?心。心は縛る事などできないから。貴女はセンチメンタルな人ですね。心なんてお金で買えるものです。所詮人間など欲にまみれているもの。お金で買えないものなんて、この世にはありませんよ!海竜。貴方はそう想うかもしれないけれど、私はそうは想わない。心は心でしか縛れないもの。記憶という、目に見えないものでしかね繋ぎ止めておけないのよ。そんな言葉に肩を竦める。やれやれ。愛歌さんはまるで少女みたいですね。まるで世間を知らない子どものようですよ!そう言ってメガネを外し私の手を取る。あら、子どもは貴方だわ。お金は天国にも地獄にも持っていくことが出来ない、所詮物でしかない。だけど心は、想い出は、人の記憶というもので永遠に縛り付けることが出来る。人が形を成しえなくなっても、想いは消える事などない。時には辛く思えたり、嬉しく思ったり。想いがあるからこそ人は人でいられるの。自身の欲に流されたらもう人ではないわ。淡々と話す愛歌。今まで出会ったどんな女性より気高く芯が強い。僕の言う言葉に決して首を縦に振らない彼女はじっと顔を見据える。僕の言っている事は間違いだと言わんばかりだ!少しため息をついて視線を外す。愛歌さんは頑固ですね。そうかしら。そうですよ!そう言ってウインクをする。踊っていただけませんか。お嬢さん!喜んで!王子様。ねぇ、海竜何です、愛歌・・・耳元で囁く。お会いしたい方がいるの。貴方に口添えお願い出来ないかしら。ならば僕と、お食事していただけますか?貴女はいつも僕の誘いを断るんですから。えぇ。もちろんよ。だけど食事だけよ!その後はノーサンキューだわ!やれやれ。先に牽制されてしまいました。愛歌さんはガードが固いです。思わず苦笑。それで?お会いしたい人とは何方です?耳元で囁かれる。お安い御用です。愛歌。ありがとう。海竜・・・交換条件へ
2007/09/10
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公務に行く途中で、ホテルから出てきた瞑月を目撃し、平手打ちをしてプレジデントに乗り込んだ。追いかけても来ないって事は、認めてるって事なの・・・ 車を出して!運転手に強い口調で声を掛ける。車中で瞑月の馬鹿!唇を噛み締めながら、心の中で何度も呟く。一方で、自身の過ちを想い起こし、苦悩する。瞑月の事なんて批難できないじゃない!馬鹿じゃないの私・・・何事もなかった様に公務をこなし、車中で瞑月の事を想った。許せる、ううん許せない。でも自分のした事を棚に上げて、彼を批難することはおかしいんじゃないの!私が裏切らなければ、彼が兵役に行く事などなかったのだから・・・▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽ あれから3日が経つのに心は揺れ動いたまま・・・シンディ様。お届けものです!侍女が分厚い封筒を差し出す。ありがとう!受け取ると封筒の裏には住所と伽、それだけしか書かれていない。住所はベースじゃないの・・・LOUIS VUITTON ルイヴィトンのペーパーナイフで封筒を開けると、アルバムが入っていた。 写っているのは瞑月とその友人達なのかしら。みんなプライベートで撮ったような寛いだ表情をしている。私と過ごしていた時とは、少し違う表情をしている瞑月の顔は、少し精悍な顔つきになっていた。添えられていた手紙には、彼の表情から何を感じとることができますか。9月16日日曜日、夜6時Honeyでお待ち申し上げております。シンさんが貴女を、このお店にエスコートして下さいます。伽これは一体何!?まるで謎掛けのよう。Honeyって、最近海竜がよく行くお店だわ。とてもおしゃれなショットバーだって言っていたもの。軍人が出入りする女性が経営者の大きいお店だって聞いている。アルバムをめくると、その店内なのでしょう。少し落とされた照明の中で、カウンターでウイスキーを飲んでいる瞑月が写ってる。カウンター内には、ホテルから彼と一緒に出てきた女性。推測の範疇だけど、この女性が経営者なのかしら。シンが絡んでいるって事は、信用がおけるということ。口が堅い彼に尋ねても決して事情は明かさない事、十分判っている。今回の事と、何か関係しているって事よね。ならば何も聞かず、当日を待つしかないわね。きっと誰かが仕掛けたサプライズ。一体何が待ち受けているのでしょう。不思議ね。さっきまであんなに気持ちが掻き乱されていたのに、このアルバムを見たら心が落ち着いてしまったわ。きっと何か事情があったのかも知れない。そう想いはじめていた。お願いへ
2007/09/10
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ヘルメットから見つめる、流れる風景の美しさに心を奪われる。綺麗・・・今までこんな風景など見たことが無かった。シンはバイクを走らせながら、綺麗な夜景に心を躍らせていたのでしょうか。部屋を出る前シンが、貴女はプロのピアニストですからね。私のグローブ使って下さい。単車で素手は危険ですから。でも、貴方のは?古いけれど、予備を持ってきていますから大丈夫。万が一の事を考えて、多めに準備するのがクセなんです。そう言って手渡してくれた彼のグローブ。私の事を思い遣ってくれる、シンの優しさがとても嬉しい。夜風は少し冷たいけれど、レーシンググローブが風を防いでくれるから、指先が冷えない。ピアニストの私にとって、指先は命に等しい。ましてや私からピアノを取り上げたら、一体何が残るというのでしょう。スパルコレーシンググローブTWISTER ツイスター 左足でギアを下げる音がする。カシャンカシャン。この音、金属音なのに何だか心地よく感じるのは、バイクが好きになっているからかもしれない。シン。バイクってどうやって動かすんですか?出かける前に問いかけた。エンジンを掛けるのは解かりますね。頷く名花。そうしたら、左手でクラッチを握って、左足でシフトをローに落とすんです。そして少しずつ右手でスロットルを回し、エンジンを回転させながら、左手のクラッチをゆっくり離していくと、ギアが繋がって動き出すんです。首を傾げる彼女は、私の話した事を、目を閉じながら動作を真似ている。単車に興味を抱いたのでしょうか。そんな様子に少し可笑しくなって笑いをかみ殺す。いけません。彼女は真剣なんですから!シン。私もバイクの免許取りたいです!!!名花!?やはり駄目でしょうか・・・そう言って項垂れる。単車は危険ですよ。貴女はピアニストなんです。私は賛成出来ません。父と同じ事を言うんですね。私は自分に自信が持ちたくてピアノに打ち込んできただけ。なのに今の立場に収まると、あれはやっては駄目、これも駄目。雁字搦めの生活が待ち受けていた。私は私です!自身の選択する事に、もう成人の私に誰の制約が必要なんですか?そう反論する。こんな彼女は初めて見ました。たくさんの制約にうんざりしているのでしょうか。いいえ。言葉が足らず不快な想いを抱かせたなら謝ります。ただ、単車は本当に危険です。守るものはほぼメットのみなのですよ。もしも怪我を負ったら・・・取り返しがつかないことだってありえるんですから。十分解かっています。幼い頃から体調管理すらも母がいない為、全部自己管理だ!仕事で多忙な父にそう言われてきたんです。父の考えは決めた事は貫き通せ。そして最後は自己責任だから他者に責任転嫁をするな。そのように言われて育てられたんです。自己責任なんて当たり前です。強く言い切った名花。反論しても無駄な事は、瞳の輝きで理解できた。貴女には敵いませんね。そう言うと輝くような笑顔を見せた。腰に回された彼女の手の強さに、心に秘められた強さを感じながら、出発前に交わされた会話を想い返す。目的地はもうすぐ・・・少しスピードを上げましょう。ストレートに差し掛かるとスロットルを上げたくなります。悪い癖ですね・・・2人の過去へ
2007/09/09
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案の定マンション前の道路には、ワゴン車がいる。スモークを貼って、外からは中が分からないようにしている車が2台。ミラースモークの単車が一台、後のシートには大きな鞄を襷掛けした人。鞄の中はおそらくカメラ。ばれないでしょうか、ドキドキします。シンのバイクが駐車場から出てくる。私はヘルメットを被り、彼の後ろに跨る。しっかり私につかまっていて下さいね。行きますよ!はい!ゆっくりとスロットルを上げて、右にウインカーを出し、車道の車が途切れるのを待つ。シルバーの車が道を譲ってくれた。左手を挙げてサンキューと合図。単車を動かしても、マスコミの車は動かないようだ。ミラー越しに後方を確認しながら、少しずつスロットルを上げていく。風を切るように走る単車は、私達を乗せて何所へ向かうのだろう。シンは私を、何所へ連れて行くつもりなんでしょうね。楽しみです!腰に回された腕に力が込められた。もう少しスピードを上げましょう。彼女にも風を感じてもらえるように。まるで走っているより、飛んでいるような感覚。名花、貴女にも体に刻み込んで欲しい・・・時刻は5時35分。腕時計を確認して到着時間を想定。予約したのは6時。十分過ぎる位です。少し遠回りしましょう。少しずつ暗くなっていく、夕闇が辺りを包んでいく。一番怖い時間帯だが、私は闇が訪れる静かな時間が好きだ。この時間に単車を走らせていると、そのまま闇に吸い込まれていくようで、少しの恐怖心と、大いなる好奇心に心が躍る。普通闇に恐怖感を抱くのだろうが、私は暗闇が好きだ。暗闇の中で蝋燭をつけてぼんやりするのが好きな私は、部屋に何本ものいろんな蝋燭を持っている。グラスキャンドルライトを持っている事、名花に言ったら、彼女はどんな顔をするだろうか・・・グラスキャンドルライト単車へ
2007/09/09
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シン、もう一度バイクに乗せてもらえませんか。バイクで風を切って走る感覚、もう一度味わってみたいです。バイクがお気に召しましたか、お嬢さん!いたずらっぽくウインクをするシン。えぇ、それにバイクを運転する貴方は、とても素敵でした。運転上手なんですね。名花にそう言って貰えるとは、光栄ですよ。だけど最近、マスコミがマンションの外に張り付いていて、自由に外に出ることが出来ません。私もたまには外に出たいんですけど、写真に撮られるのが嫌で、部屋に篭ってばかりです。日帰りとはいえ公演も近いので、気分転換を計りに行きたいのですけど・・・玄関にアタッシュケースがありましたね。公演が近いか・・・何かいい方法はないだろうか・・・!!名花、お金は掛かってしまいますが、ホテルで暫くの間過ごされてはいかがですか?ホテル?そう!ホテルに泊まって、身も心も充実した状態にしてから、海外公演に臨むんです。一流のホテルは、最高のくつろぎを与えてくれますから。それにホテルなら、私も通えますしね。本当ですか!ならそうします!無邪気にはしゃぐ彼女に目を細める。名花は可愛いですね。携帯電話で、Rホテル東京のフロントに電話を掛けて予約をする。1名で、スタンダードの予約をお願い致します。私の傍らで彼女は、興味深そうに私とフロントとのやり取りを聞いている。電話を切った後、海外公演に行く時の、宿泊先を手配するのは名花の父親だと言う。私をプロデュースし、支えているのは実の父親なんです。けれど父は公演先には同行しません。1人でも海外に行けるようにという、父の考えなんですよ。成る程。だから初めて会ったときも、貴方1人だけだったんですね。そう。父は自国に残り、次の公演のスケジュールを管理したり、新しく公演先を探したりするのが役割なんです。海外まで行動を共にはしないんですよ。今回はふるさとでの公演になります。物流も信用がおけるので、前以って父に、衣装などは宅急便で送っておきました。今回はとても身軽です!トランクを持たずに出かけるのは、そうそう無いですからね。でも、練習はどこですればいいのでしょう・・・大丈夫。ちゃんと考えてあります。私に任せて下さい。貴女は何も不安なく、公演が成功することだけ考えましょう。はい。ありがとう・・・シン・・・じゃぁ、名花そろそろ出かけましょう!私の手を握り締め立ち上がる。何所にですか・・・行き先はまだ内緒です。たまには気分転換に、都心のほうに単車を走らせましょう。混んでいるけど、夜景は最高ですよ!名花、貴女だと絶対にばれない、変装の道具ってお持ちですか?笑いませんか?笑いませんよ。出来ればこれは使いたくなかったんですが・・・(>д
2007/09/08
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左車線を一定の速度で走るバイクは、運転手の運転技術の高さを感じさせる。車の間を縫う事もなく、ただ左の車線を走り続ける。もうすぐ自宅のマンション。この人は私の住んでいる所を把握しているらしく、一度も道を尋ねることなく此処まで来た。左にウインカーが点滅。もうすぐマンション。もうちょっとバイクに乗って居たかったけど、クリニックから僅か10分。心地よい風を感じたあっという間のひと時だった。マンションの駐車場に到着し、私はバイクから降りる。ヘルメットを外してお礼を言い、運転手の顔を見る。エンジンが止められキーを抜く。ゆっくりとバイクから降りる運転手。フルフェイスのメット外す。その顔を見て思わず息を呑む!!!シンお久しぶりです。名花。単車どこに留めたらいいですか。あっこっちです。私は車を所有していないけれど、来客があったときの為に駐車場を借りている。そこに彼を案内した。部屋まで見送ったら帰ります。シン・・・お茶くらい飲んで行って下さい。それくらいはいいでしょう。送ってくれたお礼させて下さい。縋りつくような瞳。出会ったときのあの頃と、何一つ変わらない純粋さを抱かせる、美しい瞳の輝き、引き寄せられる心。目を逸らす事が出来ない。この人は魔力にも似た瞳の美しさに、気がついているのだろうか・・・シン・・・ずっと貴方を想っていました。このまま帰したくなんかないです。どうか1人にしないで。そんな想いを込めて彼の腕にしがみ付く。名花、部屋に行きましょう。そう促すと首を縦にふる彼女。エレベーターに乗り込んでも彼女はしがみ付いたまま。まるで私を帰さないようにしているみたいです。部屋の前に立ってカードキーを差込み番号を押すと、音を立ててロックが解除された。先に名花が部屋に入る、そこではじめて腕が解かれる。名花が部屋の中から私を見つめる。懇願する表情を浮かべて。彼女の瞳は私の心を揺り動かす。瞳を逸らす事が出来ない。小さくため息をついて負けましたよ・・・名花。自嘲気味に呟くシン。私はホッとして、小さくため息をつく。彼を部屋に招き入れるのは、今日が初めて。海外公演も多く、部屋に置いてあるのはグランドピアノとベッド。白い食器棚、テレビは無い。寝室のウォークインクローゼットには、公演用の衣装が溢れかえっている。白のソファーに座るように促すとありがとうそう言って腰を下ろした。食器棚から、ジノリのカップとティーポットを取り出した。ジノリは私のお気に入り。カップは白のばかり集めている。リチャードジノリ(Richard Ginori)ベッキオホワイトドルチェセット リチャード・ジノリ(Richard Ginori) ミュージオ・ホワイト ティーポット 部屋を見回すと、全て白の内装。キッチンもテーブルも、そしてグランドピアノも。白が好きなんです。グランドピアノを見つめている様子に気がついたのか、名花がキッチンから声を掛ける。グランドピアノの上には、白のグランドピアニストが置いてある。私は立ち上がってピアノを眺める。紅茶をガラスのテーブルに並べながら、グランドピアニストですか?ええ。白は初めて見ました。まだ発売されていませんからね。私が白のグランドピアノ所有している事を知ったファンの方が、黒のグランドピアニストをご自分で白に塗装して私に下さったんです。ファンの方が自分で・・・凄いですね。なんでも塗装屋さんだそうで、その方の車の後ろには、私の顔がエアブラシで描いてあるんです。名花公認って書いてあるんですよ。ピアノを私に手渡しながら、車の写真を見せて、どうか公認して下さいって深々と頭を下げるんです。認めないわけにはいかなくて・・・それにこのピアノとても素敵でしょう。わざわざ私の為に黒を白に塗り替えてくださったなんて、その気持ちがとても嬉しかった・・・素敵な話ですね。ええ、ファンあってこそ今の私がいるんですもの。紅茶入りましたよ。シンはロイヤルミルクティーがお好きでしたね。ノーベル賞の受賞晩餐会で味わうという、茶葉が手に入ったのでどうぞ熱いうちに召し上がって下さい。話しながら彼の右横に腰を下ろす。ありがとう名花。そう言うと嬉しそうに微笑を浮かべる。彼女の微笑みは人を魅了する。いつまでもその笑顔を見つめていたいと思った。想い人へ
2007/09/08
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驚いた顔をして私を見つめる。先生もなんですか・・・そう。貴女と逆で私は男性になりたかったの。ただ、今はこのままでもいいかなって思い始めてる。ずっと違和感を感じてきたこの体でも、やっとね好きになり始めているの。それは、どうしてですか。どうしたら私も、私自身を好きになる事が出来ますか!真剣な瞳、必死で訴える表情に少し微笑みを浮かべて答える。最近になってね、好きな人が出来たの。ずっと好きだった人。幼い時とても可愛くて、初対面で女の子かと思ってしまった。その人に初めて打ち明けた時、それでも、お前はお前自身だろ。世界にたった一人だけの、個性を持った翠嵐という女性だろって言われたの。お前が自身を肯定できなくても、私はお前を認めるって言ってくれた事で、蓄積していた思いが消し去られたようだった。これでいいんだ、このままでいいんだってやっと思うことが出来たのよ。あの人も・・・私に同じ事を言ってくれました。ありのままの名花でいいと、飾る必要なく偽ることなく、どんな私でも受け止めるからって・・・過去の事を思い出したのでしょう。そう言って肩を震わせて泣く彼女を抱きしめる。心が静まるまでしばらくこのまま。不思議なものよね、人を抱きしめていると癒される。男女関係なく人が求める温もりという感覚は、DNAに刻まれた記憶。人でいる限り、きっと消え去る事などないのでしょうね。先生、ありがとうございます。こんな私でもいいんだって、少し前向きな気持ちになれました。自ら体を離し微笑みかける。彼女の微笑みは人の心を惹きつける。男女問わず魅了されるその笑顔は、まるで聖女のよう。苦しみも悲しみも知り尽くしている彼女だからこそ、表現するピアノの旋律はどこか悲しげで温かい。情感を込めて丁寧に鍵盤をひくというその指は、細くて長い美しい指をしている。今日はこちらまでどうやって?タクシーで参りました。そう。ならば帰りもタクシーを呼びましょうか。はい。お願いします。私は看護士に携帯を渡し、此処に電話して早急に来るように伝えてちょうだい。翠嵐がそう言っているって。タクシーが来るまで名花さんと談笑する。先生は独身なんですか。そうよ。このくらいになっちゃうとね、1人で居るほうが楽なの。人に縛られるのは嫌いだし、束縛もしたくない。でも不思議よね、幾つになっても人は人に恋をしてしまうのよね。はい。人を好きになるのに、女性も男性も関係ないんですね。それに一度好きになってしまうと、なかなか忘れる事が出来ない。忘れたいと願っても心が拒絶するかのように・・・その通りだわ。心が忘れる事を拒むかのようね。本当に人の心理って複雑だわ。だけどシンプルでもある。常に二つの選択があって、好きか嫌い、白か黒、右か左か、行くか行かないか。そんな感じで、自身での選択をしなくてはならないのよね。もっともそんなふうに、簡単に選択など出来ないんだけれどね。先生ちょっと宜しいですか。私に耳打ちをする看護士。到着したみたいね。名花さん。これ持ってってちょうだい!手渡したのはシルバーのSHOEIフルフェイスヘルメットRFX 戸惑う彼女にタクシーが来たわよ!そのメットは貴女にあげるわ!そう言って肩を軽く叩いて笑う先生!いったいどういうことですか?問いかけには答えずそっと背中を押され診察室を出る。そのまま廊下を歩き非常口に向かう。会計は次でいいわ。人目につかないように裏から出るのよ。メットは此処で被れば誰だか判らないから。先生はそう言って私にフルフェイスを被せる。大型の単車はパワーがあるから、乗ったら運転手にしっかりとしがみ付くのよ。タンデムは体を密着していないと危険だから。ドアが開いたらすぐに単車に乗って!自宅まで送るよう言ってあるから。ドアが開かれ、エンジンの掛かった大型の単車に跨っている人の後に跨る。先生の言ったとおりに運転手の腰に腕を回す。先生が頷き運転手も頷く。ミラーシールドのメットで顔が判らない。この人は誰・・・いったい先生は誰を呼んだんだろう。手を振る先生を後にし、必死に運転手にしがみ付く。一度もバイクに乗ったことのない私は、初めて感じる風の心地よさに感激していた。風を切って走る感覚、加速するバイクのエンジン音に耳を傾ける。このバイクがよく手入れされていることが解る。無駄な音がしない。目を閉じて、疾走するバイクの心地よさに感動しながら、そんな事を考えていた。微笑みへ
2007/09/08
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再びカルテに目を落とし、初めて彼女が此処を訪れた時の事を確認する。今年の6月3日。皇室内で、対談後眩暈を訴え一度国立病院を受診。その後帰宅。本人の予約後、翌日にこちらに来ている。開院したばかりだから受診者も少なく、すぐに予約が取れていた頃ね。海外公演の多い彼女は、公演前にメディカルチェックを必ず受けるという。あまり無い事だけど、自身のカルテをコピーし持ち歩く習慣がある。海外公演中に万が一の事があった時には、診察する医師にカルテのコピーを見せる。言葉の通じない海外での公演を、十代からこなしてきた知恵なのでしょう。6月2日に国立病院の内科医にカルテを見せて、診察でもカルテにも異常が無いことを確認してもらい、その内科医に紹介状を書いて貰いました。そのような患者さんは珍しい為、印象に残るのよね。でも自身の記憶と過去の記録と相違が無いように、念の為にカルテに目を通す。人間の記憶なんて曖昧で、信用がおけないものだから。名花さんに付き添われていた男性が、受付をしました。受付の女の子が言っていたわね。名花さんは帰化したばかりで、この国の保険証が無かったの。それを解かっていて、此処のクリニックに受診させることを勧めたのは厳の側近だと彼女は言った。勧めた人は、彼女の保険記録が残らない様に、そして世間に公にならないよう考慮したのね。前以って彼から連絡が無かったら、診療を断っていたわ。公に出来ない秘密ですもの。カルテの片隅に書かれている保険証の名前を確認する。本名清明鏡名前の中で一番シンプルで、誰にでも耳に残る音が彼の愛称。名花さんの想い人の正体、厳の側近兼ボディガード、彼の愛称は・・・シン・・・私も彼の事は良く知っている。とても真面目で誠意がある男性。忠実で勤勉、そんな印象を抱かせる人。今は彼に想い人はいない事、本人から聞いて知っているけれど、医者の立場では言えないわ。名花さん。辛い時は辛いって言っていいの。悲しい時には声を上げて泣いていいの。大人だから、泣いてはいけないなんて思わなくていい。苦しい思いを吐き出す事は、決して弱いからじゃないの。貴女が貴女らしく未来を見据えて、生き抜こうとする為に、心の重りを捨てることなのよ。弱音をはいたっていいの。本心を曝け出したっていいの。此処は貴女がありのままでいられる場所なのだから。先生も、辛いとか、苦しいとか感じるんですか・・・人間だもの感じるわ。挫折ばっかり味わってきた人間よ!私の家系はみんな医者なんだけど、私は落ちこぼれでね、中学受験に落ちるし、人間関係には失敗するし、一族の恥さらしって言われたわ!(´∀`*))ァ'`,、 でもね、おかしいかもしれないけれど、私はそんな自分が好きなのよ!だって、世界にたった一人のオンリーワンなんですもの。オンリーワン・・・私も、こんな私でも、世界にたった一人のオンリーワンになれますか・・・もちろんよ。貴女は世界に1人だけの大切な人。誰かと比べる必要もなく、恥じる必要もないピアニストなのよ。運指法にとらわれないで、ピアノで表現する貴女の才能は人の心を捉える。だから今の立場にいるのでしょうね。ただ、孤独は辛いわよね。胸の内を吐き出したいって思うわよね。大丈夫よ。その為に私がいるんだから。先生・・・涙が彼女の頬を濡らす。手を握り締め、名花さん、貴女はとても才能豊かな素敵な人よ!人と比べて落ち込む事はナンセンス。他人の評価など気にせずに自分らしくでいいのよ。でも、私は普通の人とは違います・・・先生はそうやって励まして下さるけれど、私の辛さは、苦しさは先生には解からないと思います。俯く彼女・・・私も言わなきゃならないか・・・名花さん・・・実は私も同じなの。幼い頃から、好きになる子はみんな女の子だった。遊ぶのはいつも男の子ばかりで、女の子達のねちねちした集団に入るのが嫌で、いつも男の子達と一緒だったの。成長していく体に嫌悪感を抱き、研修生の時にはこっそり、男性ホルモンを注射した事もあったわ。今だって違和感を感じている。ただ、私の中では女性と男性ちょうど半分みたいだから、絶妙にバランスが取れているのかもね。子どもを授かる性を持ちながらも、自身の体に違和感を感じるわ。単車へ
2007/09/07
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VIPルームなんて初めて入ったぞ!((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル先日食事した席は衝立で仕切られていたけど、こちらは完全な個室。しかもこの間より窓が大きくとられていて、眺めがいい。お車ですか?あっ単車です!ならアルコールは止めておきましょう。何が宜しいですか。メニューを見せられて、じゃあロイヤルミルクティーを・・・支配人、私にも同じものを。畏まりました。早速ですが本題に入りましょうか。経緯をお聞かせ下さい。少し身を乗り出すようにして、俺の話に耳を傾ける。瞑月の教育係兼ボディーガードであり、瞑月にとっては兄のような存在。シンディと関係していた男性でもあり、何だか複雑な人間関係だな。話しながらも、頭の隅で皇室の人間相関図を思い浮かべている。お話は解かりました。この事情を説明しなければならないのは、シンディ様なのですね。はい。このお店のオーナーが瞑月の義兄って聞いていたんで、彼に連絡がつけば最終的にシンディさんに、誤解だって事が伝わるかなって思ったんです。なるほど。手順を踏むおつもりだったのですね。ならば私がこの店に居たのは、貴方にとってはこの上ない、最高の偶然だったのかもしれませんね。そうかもしれません。あの・・・シンディさんに誤解だって事は伝えたいんですけど、サプライズは黙っていて欲しいんです。瞑月だけじゃなくシンディさんにも喜んで欲しいので。思案する彼。俺も必死になってサプライズがばれないで、彼女の誤解が解けるか考える。写真・・・普段のようすの写真を、彼女に見せるのはどうでしょう。それに手紙を添えて。頭のいい女性ですので、察しがつくと思います。彼の提案にそれいいですね!俺早速今まで撮った写真、プリントアウトします!写真か・・・そうだよな。離れてからのシンディは、瞑月の普段の様子知らないんだもの。それにしてもシンさんは、シンディの事よく解かっているんだな。何だか複雑な感情を抱いてしまう。おそらく彼は、瞑月が兵役に行った理由を聞いているのだろう。複雑そうな顔をして、ミルクティーを口にしている。正直な人、そんな印象だ。瞑月と正反対だな。少し可笑しくなってしまう。?思い出し笑いなのか?今少し微笑んだように見えた。大人の男性っていった印象を受ける人。あの瞑月が親父より怖いって言う位だからな。一見物静かなように外見の中に、どのような感情を潜めているのだろう。いつの間にか瞑月の癖がうつってきたらしく、最近の俺も人間ウォッチャーになってるよ(´ω`ι)単車に乗るんですね。私も大型乗るんですよ。カワサキゼファー1100に乗ってます。そうなんですか!俺、ニンジャ乗ってます!ZX-10Rです!同じカワサキ仲間ですね!((藁´∀`)) いい単車乗っていますね。ZX-10Rですか。色は何色ですか?グリーンです!友人が黒乗っていたんで。今でも1,468,950 円で出てますから。怖ろしく高いです(>дд
2007/09/06
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おかえり!・・・・・・・・ふう・・・ちょっとやりすぎたかな俺・・・黙ってベッドに横たわる瞑月。反省してるのか?それにしても激しい落ち込みっぷりだな。こういう時は、そっとしておいた方がいい。時折深いため息をついて、寝返りをうつ。何かあったのかな?少し心配になって、部屋を出て建物の外の電話から愛歌さんの店に電話を掛けてみる。話聞かれちゃまずいからな。コール3回で彼女が出た。愛歌さん?伽です!あぁ伽!よかったわ!私も話をしようと思っていたの。瞑月凄く落ち込んでるでしょ。そうなんですよ!心配になって電話したんです。実はね・・・・・・・・・・・・・・というわけなのよ。(>д
2007/09/06
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服を身に付け、項垂れている瞑月に服を渡すと、すみません・・・そう言って受け取る。彼を見ていたらなんだか、離婚した2人の夫達を思い出しちゃったわ。浮気はしない。絶対に。2人とも私に誓ったのに、最初の夫は結婚1年で外に女性作っちゃったし、2人目の夫も、行きつけの飲み屋の女性と駆け落ち。どうして1人の女性で満足できないのかしらね。子どもは最初の夫との間に、男の子がいるわ。経済的に自立していなかった間は子どもは彼が育てていた。月に1度だけ会わせてもらえるなら・・・それが離婚の時に夫に出した条件だった・・・ぼんやり過去の事に想いを馳せていたら、愛歌さん本当にすみませんでした。深く頭を下げる瞑月。私はベッドから立ち上がって彼に寄り添い、謝罪するくらいなら今後一切浮気なんてしないことね。そんなに後悔に満ちた表情しちゃって・・・今回のは何も無かった事よ。忘れてちょうだい・・・でも、俺・・・貴女に責任取らなきゃ・・・瞑月。責任取らなくてはいけない覚悟をもって、私を抱きしめてはいないでしょう?どんな人間でも簡単に責任なんて取れないのよ。もしも私が貴女の奥さんと別れて、私と結婚してって言ったら貴方どうするの?今の貴方にそんな覚悟があって!あえてきつい言葉で問いかける。彼の瞳を見つめると苦悩と葛藤が垣間見える。十分反省しているようね。これなら今後火遊びしようなんて思わないでしょう。伽の思惑通りに進んでる。もう10時よ。そろそろ此処を出ましょう。はい。本当にすみませんでした。彼女にもう一度頭を下げる。黙って頷く愛歌さんは、シャツ着ないと、外に出られないわよ。小さく微笑む。頷いて服を身に付ける間、俺の方を見ないようにしてドアの前で待っていてくれた。外に出ると、眩しいくらいの日差し。夏から秋に掛けての強い光に顔をしかめる。ホテルのすぐ目の前は大きな国道。この国道は、ベースを取り囲むようにして張りめぐらされている。今日は土曜日、流れているけど車の台数は多い。キキィー!!大きなブレーキ音がして、俺達の後ろで黒のプレジデントが止まる。びっくりして2人で振り返る!道路にはブレーキ痕、余程慌ててブレーキを踏んだんだ!愛歌さんと顔を見合わせて、なんだろう?さぁ・・・暫く車を眺めていた。何でも無さそうね。行きましょうか。彼女に促されて歩き出した。カチャ・・・バタン!カツカツカツカツカツカツカツカツ・・・・早足で近づいてくる。背後から近づく靴音に、不穏な気配を感じて振り返ると、シンディ!!瞳には憤怒の色、大粒の涙が浮かんでいて真っ直ぐ俺を見据える!次の瞬間左頬を叩かれていて呆然とする!なんで彼女が此処に・・・狼狽し混乱する頭の中で冷静さを取り戻そうとするけれど、激しく動揺しているせいかコントロール出来ない・・・貴方って最低よ・・・俯いてただ一言だけ呟いた。零れ落ちる涙が頬を濡らす。シンディ!!俺の声に何も答えず、彼女は走り去る。プレジデントの後部座席に乗り込み、車が走り出す様をただ声も無く見つめる事しかできない・・・見られちゃったのね、私達・・・静かにため息混じりに話しかける愛歌さん。ショックが大きすぎて何も答えることが出来なかった。誤算へ
2007/09/06
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明るい日差しに照らされて、眩しくて目が覚める。見慣れない室内。何処だ此処・・・目が慣れない俺は、少し目を細めて周りを見回す。頭が痛い・・・こめかみが心臓にあわせズキズキと痛む。隣に人の温もりを感じ、伽かと思って顔を覗き込むと・・・!!!!!!!!あっ愛歌さんっっ!!状況が飲み込めずに激しく動揺っ!!昨日の晩何があったっけっ!!俺、どうしたんだっけっ!!!!伽は?あれっ??やべぇ・・・全く覚えてねぇ・・・〓■● バタッ傍らの愛歌さんは下着姿だし、俺何にも着てないし・・・・・ァチャポーンΣ(ノД゚;)ァリェヘンヵラ!! これってとんでもない状況なんじゃないだろうかっ!!!あら、おはよう!瞑月!昨日は素敵な夜だったわね!目が覚めた愛歌さんが俺の頬にキスをする。えっあっあの・・・言葉にならない。愛歌さんの顔を正視できないよ・・・どうしたの?もしかして覚えてないとか・・・ギクッ!!あっいやぁその・・・此処はどこです・・・か・・・もうっ!!私の経営するホテルよっ!!昨日コート掛け取り付け頼んだでしょ!つけてくれた後の事覚えていないのっ!!すみません・・・覚えていないです・・・(´ω`ι)昨日店を閉めた後、ホテルに来てコート掛け取り付けたでしょ!(>дд
2007/09/05
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彼女の話に惹きつけられる俺と瞑月。女性が1人で社会に出て、生きていくのはつくづく大変なんだな。俺は一生リザを守り通していけるだろうか。喧嘩をしても、ちゃんと仲直りできる様な喧嘩をしたいよな。心の中で彼女を想い浮かべ考える。瞑月もマッカランを飲みながら、同じような事を考えていたのかも。シンディの事が許せなくて兵役に来た彼は、本当は自分の妻に会いたくて仕方がないんだ。やっと電話出来たよ。そう照れくさそうに笑って、まだいつ会うか日にちは決めて無いけどな。胸のつかえが降りたんだろう、心底ホッとした表情を見せたんだ。奴の様子を見た俺が思いついたのがこのサプライズというわけ!瞑月の酒を飲むピッチが早くなる。妻を思い出して切なくなったのかな。そろそろ第二作戦に移行かな!(・∀・)ニャ俺は愛歌さんにウインクをして合図をする。それに気がついた彼女。ねぇ、瞑月、お願いがあるんだけど。ホテルのコート掛けが壊れちゃってるの。高い位置だし届かなくってね。閉店後でいいから、ドライバーで取り付けてくれないかしら?いいですよ!お安い御用です!(´∀`*))ァ'`,、 やっぱりな!そう言うと思ったぜ!(。-∀-) ニヒ♪想像通りの反応で可笑しくなる俺。愛歌さんはホテル経営もしてるんだ。小さなラブホテル。軍人の利用者が多いって言っていたな。ありがと瞑月!ボウモア一杯奢っちゃうわ!飲んでちょうだい!見たところ彼女が一枚噛んでるとは、瞑月は気がついていないようだ。いつにも増してテンションが高い瞑月。シンディの声が聞けたことが余程嬉しかったんだな。そろそろいい頃合いかもな。瞑月もいい感じに酔ってるし。第三段階に移行して!ウインクをして愛歌さんに合図を送る。さあ!みんな聞いて!ちょっと早いけど今日はお開きよ!今日はこの後予定があるの。ごめんね!一斉に客からブーイングがおきる。いつも深夜2時までやっているから、12時前閉店になるなんて殆んど無いからな。門限は決められている俺達も、前以って申請を出しておけば4時間までの自由時間を貰えるんだ。門限通りに帰ってくる隊員達は、酒を飲まない奴らが多い。ごめんね!明日は通常通りに営業するから!そう言って軍人達を見送る愛歌さん。残されたのは俺と瞑月だけ。じゃあ俺帰ります。じゃあな瞑月!あーあ。(´ω`ι)予想を超えた酔っ払いぶりだよ。大分ベタベタしてるし大丈夫かな・・・こいつは酔うとキス魔になるからな。(>д
2007/09/05
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翌週の土曜日に、俺は瞑月を誘って愛歌さんの店を訪れた。相変わらず賑わっている店内には、ビル・エヴァンスが流れている。ジャズの好きなおしゃれな愛歌さんらしい。ビル・エヴァンス/ベスト・オブ・ビル・エヴァンス・オン・ヴァーヴ。店の雰囲気にあってるよな。 俺と瞑月はカウンター越しの愛歌さんと話しながら、テキーラサウザシルバーをサウザマルガリータにして!と注文する。今日はテンションが高いのか、瞑月もいつも以上に饒舌だ!これなら上手くいきそうだな!(。-∀-) ニヒ♪こいつは酒が入ると、おさわり君になるからな。酔った目安は人の体に触れだす事さ!瞑月の隣で奴の様子を見ながら、少しずつマルガリータを味わう。俺もあまり強い方じゃないから、酔わないようにしないとな。愛歌さんも一緒に飲みましょうよ!ァ'`,、'`,、(ノ∀`*)'`,、'`,、じゃあ一杯だけね!瞑月にウインクをする彼女は、めっぽう酒に強い!テキーラは、ストレートで味わう方が好きよなんて言うんだよ。((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル何度この人と勝負してへべれけになった事かっ!!ヵ゙クゥ━il||li(っω`-。)il||li━リマッカラン貰おうかな・・・トワイス・アップでね!シングルモルトの名酒。瞑月が一番好きなウイスキー。シングルモルトのロールスロイスと評される、シェリー樽熟成の酒。俺も同じの下さい。ロックがいいな。はいはい!ブラックプディングの美味しいのが入ったのよ!食べてみない?ペッファーバイサーも美味しいわよ!食べる食べる!!ペッファーバイサー俺大好き!((藁´∀`)) ねぇ、愛歌さんは何でこの店を始めたの?そうねぇ・・・彼に会ったからかしら。彼とは、例の70代の紳士パトロンなんだ。私は何の資格も無かったし、夫にぶら下がるだけの生き方しか知らなかった私が、離婚して食べていく為に開いたのは小さなスナックなの。わずか5席しかない小さなお店だったの。固定客を作る為に、客に媚を売ることなどしたくなかった。訪れる人の愚痴に付き合い、励ます事で少しずつ常連のお客さんが来てくれるようになったわ。それでも店の一ヶ月の家賃を払うだけで、精一杯の毎日だった。おまけに主人に息子まで奪われて、自暴自棄になっていたのよね。何で私ばかりこんな目に遭わなくちゃいけないのって、世間を恨み自身の境遇を憎んだわ。そんな一番最悪な時期に出会ったのが彼だったの。その日は台風が近づいていて、土砂降りの雨が降る夜だった。これじゃお客は来ないわねって思って、夜の11時に店閉まいをはじめようと店の外に出た時に声を掛けられたの。失礼お嬢さん!ボウモアは置いてありますかな?えぇ。ありますよ。そう答えるとにっこり笑って、店閉まいしているのに申し訳ない。被っていたハットを取り、深々と頭を下げるの。ARMANI COLLEZIONI ダブル4ツボタンスーツダークネイビー×ピンストライプを着こなす小柄だけど上品な男性。一目でお金の持っている男性だって判ったわ!丁寧に頭を下げる彼に好感を抱いて、店に招き入れると、ボウモアをニートで。驚いて顔を見つめると、いたずらっぽくウインクをするの。ウイスキー本来の味を楽しみたいんですよ。お嬢さん。静かな声で答えて微笑みかけるのよ。グラスにはこだわりを持っていたから、BACCARAT /バカラグラス2103323 シリーズアルカードにボウモアを入れて渡すと、目を細めてなかなかこだわりを持っているお嬢さんですね。そう言って微笑むの。認められたみたいで何だか嬉しくなってしまってね、彼の静かにお酒を楽しむ姿を見守りたくなってしまったのよね。お嬢さんもいかがですか。私の楽しみは美しい女性と会話を交わしながら、上手い酒を静かに味わう事なんです。このような雨の日には人が恋しくてね、町に出向きたくなるものです。目を伏せる紳士の言葉に耳を傾けながら、えぇ。その通りですね。私もいただきます。そのように答えてバカラのグラスにボウモアを注ぐのね。彼に習ってニートで味わいながら美味しい・・・呟くと柔和な瞳で私をじっと見つめるの。雨の夜の出来事。彼との出会いはそんなふうにして始まったのよ。ふうん・・・何だかロマンティックな出会いだね。うん・・・大人の世界って感じでいいね、ビル・エヴァンス流しているのもその紳士の好みだからでしょ。そうなのよ!体を交わすことも、手を握る事も無い私と彼との関係は、心の奥底で繋がっているようなお付き合いなの。名乗る名前だってきっと偽りなんでしょうけど、互いに慈しみあう心で繋がれた関係なのね。私は彼が大好きだし、彼も好きって言ってくれるの。彼はとてもロマンティストで、女心をよく知っているのよ。どんな褒め言葉に心を動かされるのか、どんな仕草に惹き付けられるのかよく知っているわ。俺にはその紳士が羨ましい(´ω`ι)お前女心に疎いけど、ロマンティストなんだから精進すれば、愛歌さんの英国紳士みたいになれるかもよ~!ァ'`,、'`,、(ノ∀`*)'`,、'`,、企みへ
2007/09/04
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瞑月に先日の礼が出来ないかな。奴が喜びそうなことはないかと考えていた俺は、彼女の手を借りる事を思いついた。サプライズ大好きな女性。ショットバーを経営する彼女の名前は愛歌。おそらく偽名だろうけど歌をこよなく愛す愛歌さんは、怖ろしく歌が上手い!歌手になりたかったのよ!そう言って笑うんだ!スレンダーなーボディラインは、とても子どもを産んだ女性とは思えないよ!女はね、見られている意識をしていれば、子どもを産んだってボディーは締まってくるのよ!もっとも、運動も必要だけどね!自信たっぷりに言い切る彼女は、年齢が判らない。70代のパトロンがいるんだってさ!なっ70代のパトロンっ!!ド━━━(゚ロ゚;)━━ン!! 初めて瞑月から聞いたときはびっくりしたよっ!!ド━━━(゚ロ゚;)━━ン!! 体の関係がないおじいちゃんパトロンなんだって!とても紳士の、静かにお酒をたしなむ、まるで英国紳士のような、素敵な人だって言っていたよ。紳士パトロンを抱える彼女は、とても世話好きで人の身の上話に黙って付き合う。時には一緒に涙を流し、時には明るく励ましてくれる。そんな彼女がオーナーのショットバーはいつも軍人達で賑わっているんだ!辛い訓練の合間に、癒しを与えてくれる愛歌さんは、俺達年下軍人にとってまるで姉のような存在でもある。水商売の女の言う事は本気にしちゃ駄目よ!いたずらっぽく笑ってウインクをする。可愛い女性なんだよ!土曜日に彼女の店に訪れた俺。愛歌さん、俺のシナリオに一枚噛んでくれませんかね!あら、何かしら?楽しい事?(´∀`*))ァ'`,、 もしかしてサプライズ?そう!瞑月を驚かせたいんだ!あいつが喜ぶ事をしてみたいと思ってね!(・∀・)ニャニャふうん!面白そうね!で、内容はどんな事なのかしら?愛歌さんの役割は・・・・・・( ̄ー ̄)ニヤリヮ(゚д゚)ォ!いいのかしら!そんなことしちゃって!((藁´∀`)) ばれたら瞑月怒らない?大丈夫!奴と俺の仲ですから!'`,、'`,、 '`,、'`,、('∀`) '`,、'`,、 '`,、'`,、上手くやって下さいね!絶対成功させましょうね!任せて!お水だもの!男性に嘘を言う事は慣れてるもの!瞑月に喜んでもらえるよう、私も頑張っちゃうわ!(´∀`*))ァ'`,、 瞑月に幸せが訪れますように!乾杯!乾杯!そう言って笑う俺達。絶対に上手くいきますように!(((藁´∀`)) 紳士へ
2007/09/04
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厳は幼い時に、5つ上の兄を亡くした。その為に彼は繰り上がり長男となってしまったの。次男だから、本来政に携わらないで済む筈だったのにね。どこで人生の歯車が狂うかわからないものだな。そう言って苦笑いする。幼いときから真面目で融通が利かない彼は、大人になった今でもそんな所は変わらないけど、万人を受け入れる懐の大きさを持っている。若い頃から信仰している宗教の指導者が大いなる影響を与えているらしく、その指導者と同様、彼も万人を励まし元気を与えたいと願っている。とても彼らしいわ。厳は物静かで、感情を荒げる事は殆んど無い。たくさんの苦悩や葛藤があるでしょうに。負の感情が湧き上がっても抑えなくてはならないだろ。マイナスの感情に飲み込まれては、自我を抑制できない子どもと同じだ。常に冷静沈着で感情を表に出さず、それでいて温かく人を包み込むような微笑みを見せる。私は彼の表情に魅了された1人よ。彼の側近も男女問わず、厳の魅力の虜となってしまう。とても不思議な魅力を持つ人なのよ厳は。だけど、自身の感情をコントロールしながらも、限界を感じるのね。政を執り行う立場の重圧、国民の期待と絶望を感じながらの日々は、彼の心をすり減らせ絶望へ陥れる。どんなに努力をしても、民へ伝わる事の無い虚しさを抱くんですって。今貴方にできることを精一杯やれば、後世で必ず評価されるわ。頑張ろうなんて思わなくていいの。一生懸命働いている姿は、私も側近達もちゃんと見ているわ。辛い時は辛いって吐き出していいのよ。人間は心で全てをコントロール出来るほど、強くなどないのだから・・・翠嵐の言葉は、私の心の奥深くに入り込み勇気付ける。目を閉じて彼女の言葉に耳を傾けているだけで、癒されるような感覚。互いを思いやり心を癒す存在。不思議なものだな人という存在は・・・いつの間にか心療内科医と、国主としての立場を踏み越えてしまった互いの心。強さを湛えた緑の瞳は俺の心を捉えて離さない。妻を亡くした私は、もう人を好きになる資格などない。そう言い聞かせ厳しく心を律してきた。俺を庇って命を落とした葵菫に対する深い懺悔。厳・・・貴方は亡くなった葵菫に、一生を捧げて生きるの・・・そんなの辛すぎるじゃない・・・診察を終えた彼女は小さな声で呟いて俯く。医者としてではなく1人の女性としての言葉だった。もう彼女の呪縛から心を解き放って・・・亡くなった葵菫だって、貴方が幸せになる事を望んでいるはずよ。そう彼に言いながらも、心の中で彼女に謝罪する。ごめんね。葵菫どうか許して・・・葵菫と私は小学校時代からの親友。葵菫が厳と結婚した事を知った私は、嫉妬の感情に苛まれた。幼なじみの厳がずっとずっと好きだった。毎日のように宮殿の庭で、2人で遊んだ出来事は私の大切な想い出。僕達結婚しようね!そう言って頬にキスをされた。可愛い彼のプロポーズをずっと信じてきたの。どうか私に彼の心が向きますように・・・祈りにも似た想いを込めて厳の背中に縋りつく。翠嵐の覚悟が背中から伝わってくるようで、体に回された細い腕を振り解くことが出来ない。暫くの間2人で佇む。彼女の腕に力が込められた瞬間、もう自分の気持ちを抑える事が出来なくなっていた。一瞬強く目を瞑り覚悟を決める。葵菫、すまない・・・もう心を欺き偽るのは止めよう。翠嵐を愛している。はっきりと意識し彼女を抱きしめた。重なる面影へサプライズへ
2007/09/04
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厳と私は幼なじみ。彼は皇室の次男で、私は代々医者の家系の次女。兄も姉も皆外科医なの。内科選んだのは私だけ。なぜか?人を切るのが怖いから。医者なのにおかしいって思うでしょうね。でも出来れば人が血を流す姿なんて見たくない。自身が人の手術している姿を思い浮かべるだけで、眩暈すら起きるくらいよ。私は医者なんかになりたくなど無かった。けれど、決められたレールの上を歩いている方が、自分で行き先を決めない分楽だったから、医者の道を選んだだけ。そんな私の幼き頃からの夢。一番好きな人と結婚する事。政略的な結婚などではなく、一番好きな人と一生を共に生きていきたい、そう願っていたわ。けれども現実は、そんな私の夢など受け入れられるはずも無く、父と母の決めた結婚相手と指輪を交わした。優秀な外科医の男性。容姿はまあまあだけど、マザコンの男性で全てにおいて母親の意見を尊重した。そんな彼を愛せたらどんなによかったでしょう。どうしても愛情を抱く事が出来ない人との生活に、苦しさと葛藤を感じる日々。安定剤を服用し、必死に自分の中に湧き上がるネガティブな感情を押さえつける。皮肉なものよね、そんな私は心療内科の医師。結婚しても子どもは要らない。お荷物だから。そんな自分本位の意見を主張する彼。価値観が異なる男性との生活が、噛み合う所など全く無かったわ。結婚一年目に私は家庭内別居を決意し、部屋に鍵を掛けて寝るようになった。それでも人前に出るときは、夫婦仲が良いように装う。彼の両親の前でも、私の両親の前でも友人の前でもね。彼との別れはある日突然やって来た。結婚し5年目を迎えようとしていた矢先、連日当直だった彼は、手術中に脳動脈瘤で倒れてそのまま帰らぬ人となった。悲しいけれど、涙が出てこない。通夜の席でも涙を流さない私を見て、参列者が帰った後義母に頬を叩かれた。可愛い息子を、お前にみたいな嫁に渡すんじゃなかった!!まるで悲鳴に近い義母の叫びに、私は項垂れ謝罪するしかなかった。あれから幾度年月が過ぎたのだろう。とっくに40歳後半も過ぎて、1人でいる事が当たり前になっている私なのに、再び心に小波を起こさせる厳・・・ずっと押さえてきた感情に心が大きく揺さぶられてしまうなんて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・診察を終えて、つかの間の翠嵐との2人だけの時間。皇室の心療内科の専門医の認定を受ける彼女とは、亡くなった兄の代わりに今の立場になってから、ずっと世話になっている。もともと医者になんて興味など無かった。プライベートな時間では本音を曝け出す翠嵐。お前の告白を聞いていると、まるで心療内科医の彼女と、立場が逆転したような錯覚すら浮かぶ。ストレートに本心を吐き出す女性は好きだ。自身が本心を吐き出せない重圧を背負っているからこそ、尚そのように思うのだろうか・・・翠嵐へ
2007/09/03
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お前アフィリエイトって知ってる?俺?よく解かんない(´ω`ι)ポイントとか現金とか貯まるやつだよ!ふーん。ブログは持ってるけどやった事ないな。シンディがやっていたんだよな。ポイントが貯まるのが面白いらしくてさ。ふーん、女性ってポイントとか貯めるの好きだもんな。俺にはよく解らない感覚だ。彼女は香水が好きだから、ミニチュアの香水をいっぱい持ってたよ!ラルフローレンのローレンとかカボシャール、アルマーニも持ってたな。女性ってミニチュア好きだよな。俺の元かのはキャシャレル、ルル3.5ml持っていたよ官能的ないい香りがするんだよな~!(´∀`*))ァ'`,、 お前リザいながら酷くないか!(>д
2007/09/03
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部屋に戻った俺は歯を磨き終えて、シャワーから戻った瞑月に声を掛ける。ただいま!おぅ!お帰り!楽しかったか!あぁばっちりさ!瞑月の紹介してくれた店、凄く良かったぜ!夜景も綺麗だったしな。そう言って長袖のシャツを脱いで瞑月の隣に体を横たえる。あそこの夜景は客に評判がいいらしいぞ!上客が案内される席を、シンに手配してもらったからな。2人に楽しんでもらえたなら、俺も紹介した甲斐があるってもんだ!うん、ありがとな。料理も美味かったし、店の雰囲気も落ち着いていて、リラックスして食事出来たよ。2人の記念日に、また食事に行きたいな。誓約書書いて会員証貰っただろ。次回の時には伽の名前で予約できるよ!ネットでも電話でも、両方OKさ!IDとパスワードは失念すると、再度紹介者のIDが必要になっちゃうからちゃんと控えておけよ!チェック厳しいんだ、フランツさんの店って。一般庶民がやすやすと入店できる店じゃないんだな。あぁ。フランツさんの奥さんは弁護士だからな。彼女のアドバイスで二重、三重にも人の目でチェックする体制にしてあるんだ。顧客データーは全てノエルさんが金庫に保管して、決して第三者に情報が盗み取られぬよう、アナログで大変だけどパソコンでのデーター管理は、一切してないって言っていたよ。まだ開店して2年程の店なんだけど、顧客は200を越えているって支配人は言っていた。予約は半年待ちが当たり前の店だけど、今回はシンになんとしても予約取れよって言ったからな!おそらく直に、オーナーのフランツさんに掛け合ったんだろうよ!予約最優先だから、身内でも俺だって断られる事だってあるんだぜ!。゚(゚ノ∀`゚)゚。ァヒャヒャ店の名前の城邑(じょうゆう)はノエルさんがつけたんだってさ!なんでも、城壁に囲まれたまちって意味らしい。そうなんだ!悪かったな・・・(>д
2007/09/02
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伽は物を自作するのが好きらしい。特に箱物が好きなようだ。此処に来る前に作った物の写真を見せてくれた。これは何だ?大きい箱だな!これは長持ちだよ。毛布とかシーツが入ってるんだ。これパソコンデスクか!でかっ!!((藁´∀`)) これくらい大きくないとパソコン乗らないもん。しょうがねえよ(´ω`ι)お袋がいっつも此処を占領してるんだ(>д
2007/09/02
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医務室に向かう途中で燦光に会った。あれ!珍しいな!どこに行くんだよ燦光!訓練は?今日は俺だけ休み!そう言うお前こそ、何でこんな所に居るんだ?俺は不眠の薬処方してもらうんで、先生の所に行ってたんだ。お前相変わらず不眠なのか(´ω`ι)大変だな。俺の妹も不眠だよ。人の温もりが側にないとたちまち眠れなくなっちまうんだ。ふうん。女の子じゃ大変だろうよ!お肌に影響出ちゃうぜ!会話を交わす俺達は、軍の同期。基礎訓練を終えた俺達は陸、海、空に分かれて訓練を始めていた。燦光は陸軍所属したんだよ。常に冷静で感情を表に出さない男。何を考えているか分からない一面を持つが、話してみると結構よくしゃべる。一つ下に妹がいるんだ。写真を見せてくれたっけ!グレーの髪が印象的な、勝気そうな女の子って感じだった。奴の話しっぷりで、妹を深く愛している様子がよく分かる。仲のいい兄と妹なんだろうな。受診待っている奴、他にいるのか?後5人ほど待っていたぞ。どっち受診するんだ?心療内科なんだ。心療内科か・・・。じゃあ時間掛かるかもな。5人とも心療内科だよ。先生は1人しかいないし、診察には時間を掛けるからな。あの先生。そうか・・・どうすっかな・・・時間あるんだろ!コーヒーでも飲むか!自販機のでよければ奢るぜ!そう言ってウインクをする瞑月。皇室の第2皇子っていうから、どんだけお高くとまっている奴かと思っていたが、全く違う。我儘だが人に対する配慮を持っている。常に人に目を向けていて、周りに気を配る男。訓練に必要な道具も、先輩軍人から指示される前に動く。一度記憶した事は忘れないように、メモを取るくせがあるんだ。名前、家族構成などなんでも得た情報をメモを取る瞑月。親父から教わったんだ!そう言って笑ってたっけな。ほい!自販機のコーヒーでごめんな。インスタントのあんまり美味くないコーヒーだけど、勘弁してくれな!ブラックでよかったよな。2人分のコーヒーの入った紙コップをテーブルに置きながら、瞑月が言う。あぁ、ありがとう瞑月!ご馳走になって悪いな。こいつは人の趣向もデーターに取っているんだな。どう致しまして!お前の妹、沙羅は元気か?あぁ!この間の休みに会ったよ!相変わらず甘えん坊でさ、俺にべったりなんだ(´∀`*))ァ'`,、 いいな~!妹って!俺も欲しかったな~!((藁´∀`)) 最近親父に恋人が出来たらしいんだ!妹生まれないかな~!年齢的に無理か(>дд
2007/09/01
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心地よいまどろみの中で朝を迎える。傍らにはリザ。彼女の方は目覚めていたみたいだ。おはよう。そう言って微笑みかけてくれる。おはようございます。俺も微笑んで答え小さくくちづけを交わす。昨日の俺達は、あの後一緒にバスにつかって疲れをとった。スタンダードだけど、少し大きめのバス、2人で入るにはさすがに狭いけれど、逆に密着感があって良かったりもする。バスの中で背後から抱きしめて、細い首筋にくちづける。濡れた髪の彼女は色っぽくてドキドキしちゃったよ。バスから上がった俺達は、ミネラルウォーターを飲んで再び同じベットで抱きしめ合った。温もりの心地よさに酔いしれながら、いつの間にか寝入ってしまったみたいだ。よく眠れましたか。尋ねると無言で頷く。彼女が眠りに落ちるまで見守っていた俺はちょっぴり寝不足なんだけど、寝顔を見ることが出来たから満足さ!((藁´∀`)) 太陽の光に照らし出された上半身。くっきりと浮かび上がる鎖骨が綺麗だ。惹きつけられる様に鎖骨に優しくくちづけると、彼女が少し驚いた表情をする。同じタトゥーが刻まれた腕を見つめながら、2匹の蝶が交わる姿を想像する。神聖で厳粛な行為なんだもの、女性を辱めるような事など絶対にしたくない。女性を支配したい欲望があっても、ぐっと堪えなくちゃいけないんだ。欲望に支配されたら、もう人間じゃなくて鬼畜と同じだから。抱きしめながらも、頭の隅っこで色んな事を考えている。欲望に飲み込まれないように抗っているからなのか。ただ理解できるのは、欲に飲み込まれると自分本位の愛し方になってしまう。女性の求める愛し方と、男の求める愛し方は全く異なるって瞑月も言っていたもんな。リザの表情を見つめて心地いいと思ってくれているのかな、ちょっと不安になったりもするんだ。背中にまわされる手の温もり。抱きしめているのに抱かれている感覚だ。女性の体は幼き頃に抱かれた、母の温もりを想い起こさせる。遠い遠い記憶なのに決して忘れる事の無いDNAに刻み込まれた記憶。リザはどこか若かりし頃の母に似ている気がする。伽・・・人の温もりって心地がいいんだな・・・瞳を閉じたまま彼女が小さな声で呟く。そうですね・・・幸せな気持ちになりますよね。人に抱きしめられるって、幸福な事だな。幼き頃両親に抱かれている感覚みたいだ。抱っこしてくれる存在を求め、無邪気に両親の後をついてまわった頃を想い出した・・・幸せな幼き頃の記憶を、俺との時間で想い出したのだろうか。何だかとても嬉しくなってきつく抱きしめる。ほのかに漂うカボシャールの香りに酔いしれながら、いつまでもこうしていたいって思ったんだ。後姿へ
2007/08/31
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今頃2人は甘い時間を過ごしているんだろうな。ちょっと羨ましいな(´ω`ι)シンディ、君は今どうしているんだろう。もう寝てしまったかな。それともいつものように本を読んでいるだろうか。夜の11時、何だか急に彼女の声が聞きたくなってしまった。俺は飛び起きて、廊下に設置してある電話まで全速力で駆け出す。皆寝静まっている。俺の足音だけが廊下に鳴り響く。ダイヤルを回すのももどかしい。早くシンディの声が聞きたいっていうのに・・・3回コールで出た、受話器の向こうの声はシン。シンか!こないだはサンキュー!どう致しまして。シンディに電話を回しましょうか。ああ、頼む。こいつは俺が考えている事を、先読みするんだ。一緒に過ごしてきた時間が長いから、俺の気持ちは大体解るらしい。もしもし・・・受話器を取ったシンディ。聞こえてくるのは、戸惑いを含んだ少しトーンを落とした声だ。シンディ・・・俺だよ。会話が続かない。言葉も交わさず、怒りと嫉妬の感情に突き動かされるように出てきてしまった俺。彼女と何を話せばいいのだろうか・・・電話を掛けたことを後悔しはじめた時、瞑月、ありがとう、電話するの勇気が要ったでしょう・・・その声は少し涙ぐんでいて、今すぐにでも彼女の元に駆けつけて抱きしめたい衝動に駆られる心!シンディごめん。ずっと声が聞きたかったんだけど、勇気が無くて・・・プレゼントありがとう。返事も出さずごめんよ。ううん。気にしないで。私こそ本当にごめんなさい・・・彼女が謝罪する。もう済んだ事だよ。シンディ。それより元気だった?そっちは変わりないかい!ええ。皆変わりないわ。変化があったといったら、お父様に恋人が出来たってところかしら。ええっ!!親父にっ!!そう!貴方も知っている人よ!誰だかわかる?全然わからない!誰なの?貴方もお世話になっている軍医の翠嵐(すいらん)さんよ!お父様の幼なじみのね。ド━━━(゚ロ゚;)━━ン!! あっあの足の綺麗な女医さんっ!!そうよ!綺麗な人ね。大人の女性って感じでとても素敵な方だわ!瞑月も兵役に行ったばかりの頃たくさんお世話になったようね。ああ(>д
2007/08/30
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人の温もりって、こんなにも心を温かくさせるものだったなんて初めて知った。抱きしめてくれる伽の温もりに包まれながら、充足感を覚える。彼の腕に刻まれたタトゥー、私と同じ蝶だ。伽、私と同じタトゥーを刻んだのか?はい。貴女を永遠に忘れない為に、離れていても心は繋がっているって信じていたくて、リザと同じ蝶をいれました。こういうのって嫌ですか?そう尋ねる彼の顔は不安げ。いや、ちょっと嬉しかったりする。素直な感想を言う。よかった(´∀`*))ァ'`,、 引かれちゃったらどうしようかと思ってました。ペアルックとかはあんまり好きじゃないんですけど、貴女の存在をいつも感じていたくて、同じタトゥーいれちゃったんです。ロマンティストなんだな。伽。あはは!よく言われますけど、そうでもないんですよ!もしも音楽の世界で干されちゃったら、音楽で食っていきたい人の為に、会社立ち上げようかななんて現実的なことを考えたりもするんです。一方で自分ってものを表現する為に、あらゆる手段を使っても、華やかな世界で生きていきたいって想ったりもするんです。伽は表現者になりたいって事なのか。そうですね。現実に足をつけたまま、空想の、幻想の中で生きることが出来たなら本望です。その為にはたくさんの努力が必要なんですけどね。お金も人脈も必要ですしね。確かにその通りだな。自分が目指したい道を見つけたならば、誰に何と言われようと自身を貫き通せ。目指す頂点は異なるけれど、お前の夢が叶う事信じている。私も必ず夢を叶える。はい。俺必ず夢を叶えます。いつになるかは解らないけど。リザ、夢が叶ったら俺と一緒になってくれますか!!!突然のプロポーズ!唐突な言葉に絶句する!まさか勢いで言ってるんじゃないのか!彼女の困惑した顔で、何を想っているか察知した。勢いで言ってるんじゃないですよ。俺貴女の事本気だから、一緒になりたいって思ってるんです。まだ親父さんのOKも貰えていないけど、OK貰えるまで何度だって足を運びます。結婚を許してもらえるならば、土下座だって平気でしますよ!そこまで想ってくれているのか・・・戸惑いを感じつつも、彼の言葉が嬉しくて縋りつく。言葉を重ねるよりも、ただ抱きしめる事で嬉しさを伽に伝えたかったから。ありがとう・・・伽に出会えた事、心から感謝・・・温もりに触れながら目を閉じた。声が聞きたくてへ
2007/08/30
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