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さりげなく話の中に、私と結婚したいという彼の意思を含ませている。結婚か。そういえば父も、最近孫が見たいなどと言うようになってきていた。俺が元気なうちに、リザの子どもが見たいものだ。伽と結婚していないのにそれは無理。それに伽の夢が叶わないと、結婚を許さないと言ったのは紛れも無くお父さんでしょう!父とのやり取りを、傍らで聞いていた母が、まあまあリザ!そんなに突っかからなくてもいいじゃないの!最近のお父さんはね、リザの幼い頃の写真を見ては、可愛かったななんて懐かしんでいるのよ。こらっ!!リザには内緒にしておけと言っただろ!ヾ(;´Д`●)ノぁゎゎ両親の微笑ましいやり取りに、クスクスと声を上げて笑う私。休みの日には必ず、両親の許に出向くようにしていた。介助をする母の負担も軽くなるし、少し身体が不自由になって、将来に不安を抱くようになった父を励ましたかったから。伽から逢いたいと連絡があっても、先に実家に行く予定を入れてしまっている時は、実家を優先した。伽には用事があるからとだけ伝えて。彼に、余計な気遣いをして欲しくなかったからだ。もしも両親の話をしたならば、伽の事だ、最後の乗艦勤務を拒否するかもしれないと考えた。陸に残る選択肢も無いわけではないが、今まで友情を育んできた瞑月や、兵役仲間達と海上での暮らしを思う存分、悔いの残らないように過ごして欲しかった。当分の間、彼には両親の事は話せない。隠しているみたいで心苦しいが、もう決めた事だ。何事かを考えているのだろう。少し俯き加減の彼女は、会話の途中で押し黙ったままだ。結婚式に監督を呼ぶって言った事、気に障ったのだろうか。リザ、すみません。結婚式の話なんてしちゃって。まだ兵役も終えていないのに、結婚なんてあり得ないですもんね。親父さんとの約束だってあるっていうのに。話の流れでつい、貴女とそうなれたら、恩師呼びたいって想っちゃったんです。すみませんでした。解ってる。少し困惑した様子で、顔を覗き込むようにして私に謝罪する彼。伽の言葉にただ一言だけ返答した。そっけないように彼には感じられるのだろう。すまない、やはり、恋が初めての女にはこんな時、どのような言葉で返事をしていいのかすら解らない。可愛げが無いように思うだろうな。自身に望むのは、もっと恋人に対して素直になりたい、ただそれだけなのに。軽く切なさを覚え彼の手を強く握り締めた。可愛い女になれなくてすまない。お前はストレートに、私に対し愛情を表現してくれるのに・・・力を込めて握りしめられた手の温かさに、貴女の想い解っているつもりです。ちょっぴり意地っ張りの強情な女性。俺がどれ程貴女の事を想っているか、知っていますか?照れくさくて、好きとなかなか言葉に出せないけれど、真剣にリザを想っています。伝わって欲しいと心で願いながら、少しずつ暮れていく港町を、無言のまま歩みを進める。あ、そうそう!jammin'Zeb(ジャミンゼブ)っていう男性四人組知っていますか? ふと思い出したかのように、唐突に彼が話しだした。jammin'ZebがMLB開幕戦でアメリカの国歌斉唱したんですよ!日本にある東京ドームで。2008リコーMLB開幕戦「レッドソックスvsアスレチックス」で国歌斉唱したんです。まだデビュー半年らしいんですけど、あのような大きい舞台で歌えるなんて凄いですよね!アルバム「Smile」出しているって聞いたんで、今度聴いてみて下さい。アカペラって新鮮ですね、人の声のハーモニーって、とても美しくて魅力的です。彼らはジャズ界の若き新星ですしね!まだ若いし歌もいいし、これから人気が出てくると想いますよ!それにその中の1人が、うちのバンドのボーカルSimonと同じ名前なんで、一方的に親しみ湧いちゃって!(´∀`*))ァ'`,、 俺もあんな大舞台で歌ってみたいです。ドームって残響が凄いんで、ライブには向かないって聞きますけどね。ジェネシスのライブも聴きに行きましたけど、やっぱり残響があって、席によっては音が遅れて聴こえるんですよ。そうなのか?私はライブってものにも一度も足を運んだ事が無い。それならば、jammin'Zebがライブをやるとき、一緒に聴きに行かないか?お前のお勧めならばいいグループなのだろうな。アカペラは好きだ。本当の実力が無いと歌えないからな。静かな言葉で呟くように話す。えぇ、jammin'Zebのライブ是非一緒に行きましょう!彼女の提案に即座に同意の言葉を掛ける。リザはピアノを習っていた為か音感がいい。瞑月のサプライズの時に彼女の歌声を聴いた俺は、綺麗なソプラノに聞き惚れてしまった。歌の上手い人っていいよな。自身も音楽に携わる世界を目指すのだから、パートナーが歌が上手いに越した事は無い。リザ、俺が書いた詩が完成したら、歌ってみてくれませんか。まだ音つけていないんですけど、いい詩が書けた気がするんです。別れた恋人との再会の歌なんですよ。艦に乗っている間寄港した際に書いたんですけど、俺の書く詩ってみんな恋愛ものばかりだって、カイルに笑われましたよ。伽はロマンティストだからな。現実的な私とは対照的だ。短く呟いた。お前のように何の計算も打算も無く、人を想えたならば幸せなのに。伽は人と接するのが大好きだ。私は違う。そう簡単に、人を信用出来ない疑り深い人間だ。長い事軍人をやっていると、本音は一切出せず不本意でも、階級が上の無能な上官命令を聞かねばならない立場。ましてや女の軍人だ。数え切れないほどのセクハラやパワハラを受ける。腸が煮えくり返るような思いだって、何度もしている。私が上を目指しているのは、無能な上官を超えてやりたいからだ。袖の下で上官になるのではなく、周りの人間から信任を得て偉くなりたい。その為に日々の勉強も欠かせないし、部下の育成にも全力を注ぐ。必ず影の自分の努力を、見てくれている人物がいると信じながら。世を変えようと思っても、トップが無能なら意味が無い。軍も同じだ。組織を変えるために、必ず女性軍人としての最高位を目指したい。それが私の夢。伽も地味に影で努力を重ねているのだろう。目指す道は異なっても、互いの夢を叶える為に日々精進していこうな。最高位に登りつめた時、傍らに寄り添ってくれているのが、伽、お前であって欲しいんだから。街灯の暗い路地に入りリザが歩みを止めた。魅力的な大きな瞳で俺の顔をじっと見つめる。彼女が何を望んでいるか察して、肩を抱き寄せくちづけを交わす。小さなキスが、次第に舌を絡めた深いキスに変わる。しかも彼女からなんて、こんな事初めてだ。少しの驚きと更なる愛しさが心を支配して、このまま、近くのホテルに連れて行ってしまおうかと思ったくらいだ。事務所を離れるのに許可を貰った時間は一時間。もう約束の一時間は、10分ほどしか残されていなかった。唇を解放し彼女を見つめる。瞼を閉じたままの彼女はゆっくりと瞼を開いて2、3度瞬きをした後、再び俺の顔を見て、一週間後この場所で逢えるか?久しぶりに長い時間、お前と一緒に過ごしたい。ストレートな誘いに嬉しくなって、もちろんです。部屋予約していいですか。耳元で静かに囁いて細い体を抱き寄せた。彼女は俺の腕の中で、無言のまま意を示し首を縦に振った。
2008/03/27
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決勝戦は俺のチームの後輩達も、皆応援に来てくれました。四年以下の時にお世話になった、下のチームを見ているコーチも。市内最後の決勝ということで、市内所属全チームが試合を見ていました。大勢に見られていても不思議と緊張感よりも、この大舞台を楽しんでやろうという、ワクワクとした気持ちのほうが大きかったです。二回裏に一点、三回裏に三点。相手は最終回まで得点を入れる事が出来ませんでした。三回に、相手も緊張していたんでしょうね、スクイズプレーの時、打者の反則打球の為に、相手走者がアウトになっちゃったんです。 最終回で、相手チームは得点を入れられなかったので、結果は4対0でした。投球数は86球なので、比較的球を放らなかったほうなのかもしれませんね。終わった瞬間、マウンドで思わず両腕を上げましたよ!そしたらよく優勝したチームがするように、皆がマウンドの俺に向かって走ってくるんです!あの瞬間を経験して、野球続けてきて本当に良かったなって、心底思いました。ふとベンチ方面に目を向けるとお袋は、バッテリー組んでいた人物の母親と泣きながら抱擁してるし、いつの間にか応援に来ていた、じいちゃんばあちゃんも、拍手を送ってくれていました。小さな大会なので、僅か三回しかない決勝までの道のりだったんですけど、MVPっていう、俺にとっては最高の栄誉までついて、優勝で最後の試合を飾れたのが何よりも嬉しかったんです。それにその年の監督、体調を崩して入院していましたから、なんとしても最高の結果を残してあげることが、一番元気になってもらえるかもって考えていたんですよ。皆で気持ちを一つにして試合を出来た、最高のゲームだったと今でも思っています。親父もお袋も、とてもやんちゃで協調性がなくて、切れやすい性格をどうやったら俺が自覚し、改善していくよう自身で努力するようにさせるか。ここが一番心を悩ませた事だったそうです。考えた挙句に集団スポーツで、親とは異なる他人の大人から叱られ、時には褒められる経験を積む事が、幼かった俺に必要なんだと、結論をだしたんですね。親は陰でコーチや監督と、チーム内の親達と板ばさみになって、いろんな思いもしたようですが、今では皆に感謝の想いしかないと、正月帰省したときに言っていましたよ。話しながら、傍らに寄り添うリザの顔を見つめる。その大きな瞳が柔和に微笑んでいた。そうか。お前の両親も伽の事を考えたからこそ、上下関係の厳しい世界へ入れたんだな。勝ち負けだけが、大切なことではないだろうけれど、監督、コーチらは、子ども達に勝つ喜びを教えたいと思うだろうし、一生懸命にプレーをする大切さだって教えたいだろう。試合を見に来る親は、負けた試合には采配が悪いとか非難もするだろう。そう考えると最後の試合、勝ててよかったな。伽は監督、コーチ達の立場も救ったということになる。彼女の言葉に頷き同意を示す。今から思えばそうかもしれません。だって、チーム内でも負けると采配が悪いとかの、批判を始める人間が必ずいましたから。両親はそれを聞くのが嫌で、しばらくグラウンドに、足を運ばなくなった時期もありましたからね。預けている以上、素人が口を挟む事など出来ないし、ましてや批判するなんてもってのほかです。監督達も批判をする親には、一切本音を出さないものです、陰で悪口を言っている親達の事は、ちゃんと把握していて、不快感を露にしていた時期もあったそうです。いくら自身の子どもが可愛いとはいえ、他人がわが子を叱ってくれる経験なんて、今の時代、そうある事では無いじゃないですか。皆知らん振りして、子どもがタバコを吸っていても注意もしない。うちの監督達は、他人に無関心な大人達には、なって欲しくないっていう人達ですからね。実は俺が二年の時当時六年だった選手が、タバコを吸ったのと万引きをしたんです。その週の土曜日、チーム全員グラウンドに集められ、連帯責任を負わされて、一ヶ月間野球の練習させてもらえませんでした。たとえチームが違っていても、見本とならなければならない、最上級生の一部がやってはいけない事をした責任を、皆に負わせたんですね。それぐらい監督達は厳しい人達です。厳しすぎるのではとの、親の声も一切聞き入れませんでしたよ。いいか、お前達。犯罪に手を染めてはいけないんだ!絶対にな!やってはいけないと言われている事は絶対にするな!お前達、大好きな野球が出来ないのがこんなにも辛いって解ったか?たった数名の人間がルールを破っただけで、楽しい練習も試合にも、参加させてもらえないんだぞ!だからやってはいけないと言われている事柄には、一切手を出すんじゃないぞ!もしもOBに脅されて困っているならば、すぐに俺達に相談しろ!その為に俺達がいるんだからな!練習を再開させる前に、俺達に話したんです。ニ年でチームが異なっていたので、一番最初に謹慎が解禁になりましたけど、六年生達は、更に一ヶ月練習させてもらえませんでした。六年の人が、練習中の監督に謝罪に訪れるんですけど、すごい剣幕で帰れって怒鳴られるんです。二年の俺達の前で泣きながら謝罪するのだって、上級生ですもん屈辱ですよね。監督からすれば、後輩達に対する見せしめという部分と、俺達に対して、悪い事をしたらこういう目に合うんだよ、という部分があったんでしょうね。厳しいな。だがそれが、チームを統括する監督責任というものだ。なかなか立派な人じゃないか。お前はいい指導者に恵まれたな。沢山の批判を一身に受ける人間は、強くなければならない。お前の監督も大人(たいじん)なんだろうな、そしてとても老獪だ。子どもの心理をよく解っているのだろう。えぇ、本当にその通りです。厳しいけれどよく電話をくれて、他チームの試合を個人的に連れて行ってくれたり、食事をご馳走してくれたりと、本当にまめで気配りが出来る人なんです。言が立つのでいろんな誤解を招く人なんですけど、俺は今でも尊敬している指導者です。俺達の結婚式には招待してもいいですか?いかに過去の俺が弱虫で情けない選手だったか、暴露されそうですけどね!((藁´∀`)) 可愛い女になれなくてへ
2008/03/26
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伽、お前の六年の頃の想い出ってなんだ。久しぶりに再会した日の夕方、所属事務所の大羽社長に、リザをベースまで送り届ける一時間ほどの許可を貰って、彼女の手を握り締めながら薄暗くなっていく港町を歩いていた。俺の六年の想い出ですか?彼女の問い掛けに暫しの間、過去の出来事に想いを馳せる。そうですね、一番嬉しかったのは、六年最後の野球の試合で優勝した事ですかね。よかったら聞かせてくれないか。私とは全く異なった生活を送ってきたんだろ。ちょうど卒業シーズンだ。伽が、どのような小学校時代を過ごしてきたのか、興味がある。彼女の言葉に、少しばかりの嬉しさが心に浮かぶ。俺に興味を抱いてくれているなんて。そうですね。聞きようには、ちょっぴり自慢みたいになってしまいますけど、それでも構いませんか?問い掛けると無言のまま首を縦に振る。ピッチャーは二人いたんですけど、一応俺が一番背負っていたんで、エースってことにはなっているんですけど、最後まで完投した試合って少なかったんです。他のチームの人間より体格も小さかったし、野次に弱かったし、感情が表に出てしまうからお前は精神力が弱いって監督、コーチ陣に何度も注意されましたね。そんなへぼな俺を、辛抱強く育ててくれた監督とコーチに、最後の試合で絶対優勝をプレゼントしてやろうって決意したんです。お袋も俺の意思を汲み取ってくれて、試合の前日は必ずカツを揚げてくれました。勝つとカツってことでげんを担ぐって意味でね。うちはあんまり裕福じゃないんで、肉は鶏肉なんでチキンカツなんですよ。言葉でがんばれを決して言わないのが、俺の親父とお袋なんです。それをたくさん食べて、翌日の試合に絶対勝とうって密かに決意しました。俺の話を少し微笑みを浮かべながら、無言のまま彼女が頷く。好奇心に満ちた綺麗な瞳は、真っ直ぐ俺を見つめて小さくそれで?と話の続きを促す。ええと、初戦の相手は三年までは格下の存在だったのに、四年の頃から急にチーム力がついて、勝つことが出来なくなったチームとの対戦でした。ピッチャーも大きいしいい球放るし、打線は強いしで嫌な相手だなって正直思いましたね。ましてや、俺とピッチャーが保育園が同じ、幼なじみなんですよ!だけど監督が、あのピッチャーは気持ちが弱いぞ!一度ペースを崩したらとことん崩れる。そこをいやらしくつく采配をするから、お前らは今まで培ってきた経験を、フルに使って相手を掻き回せっ!!監督は試合前俺達にそう伝えました。最後の試合ですから、相手チームも気合入っていますし、ましてやずっと四年から対戦していて、そのチームが勝っていましたから。心のどこかに、俺のチームに対する慢心があったのかもしれません。監督の采配は見事で、相手の隙を上手くついて二回裏には四点入りました。最終回で相手に三点入れられましたが、逃げ切りましたよ。相手の投球数は97球、俺は67球で今までにない省エネピッチングでした。二回戦目はこれまた強敵で、同じく対戦しても、以前のように勝てなくなってしまった相手でした。優勝最有力視されているチームでしたね。ピッチャーが大人みたいにデカイんですよ!球も速いんで打線が弱いうちのチームは、足で相手を掻き回す作戦で一回裏に四点入れました。四回に向こうに二点入れられましたが、これも逃げ切りました。相手ピッチャーは、五回で降板しちゃったんです。球が定まらなくなっちゃって。優勝候補でも、野球は最後までわからないって本当です。時折小さく頷きながら黙って話に付き合うリザ。すみません、なんだか自慢話みたいで。それに退屈じゃないですか?俺の言葉が余程不安そうに聞こえたのか、彼女は少し慌てた様子で首を左右に振った。そんな事はない。お前の話に耳を傾けて、光景を想い浮かべているのもまた楽しい。それに、自慢話だってたまにはいいじゃないか。優勝という結果に行き着くまでには、陰の幾多の涙と、沢山の苦節の軌跡があるのだから。それで決勝戦はどうだったんだ?再びリザは話の続きを静かに促す。彼女は聞き上手なんだな。俺が話しやすいように、さりげない心配りをしてくれる。恐縮しつつもこくりと頷いて話し始める。俺の恩師へ
2008/03/24
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歌詞書き溜めてくれていたんだなサンキュー!こっちが俺の分。あんまり枚数書けなかった。手直しする部分合ったら声掛けてくれよ。ああ。俺のは勝手に直しちゃっていいぞ。クリアファイルに挟まれた歌詞を互いに交換し合う。これから逢うのかリザと。うん、夜ね。お前リザの事諦めてないんだろ。顔を背けるお前の表情一瞬嫉妬が浮かんだぞ。口に出せない呟きを心で吐き出す。言葉に出したら俺達喧嘩になる。それほど互いにリザを想っているなんてな。人と争うのは好きじゃない。でもきっかけを作ってしまうトラブルメーカーでもある俺。もう以前のようにバンドを解散なんてさせたくないんだ。大人にならなきゃ。じゃあな!俺これからデートだから。ああ!サンキュー呼び出して悪かったな!立ち去る背中に声を掛けると左手を挙げてどう致しましての仕草。あっさりとした男だな。カイルは。付かず離れずの付き合いを好む男。大切なものには全力を注いでも興味無い事には見向きもしない。人間関係も深く関わろうとしないのは、馴れ合いを好まないからだろう。一匹狼みたいだな。似ている部分があっても和を保とうとする俺とは異なるんだな。小さくなる背中を見つめながら考えていた。予定より時間が余ってしまって、ボーっと時間を過ごすのは嫌だな。そう考えた俺は、近くのコンビニの公衆電話からリザの携帯に電話を掛ける。コール三回で彼女が出る。もしもし、伽です。プライベートでは久しぶりだな・・・簡単な挨拶を交わし予定が早く済んじゃったんでこれから逢いませんか。約束の時間より大分早いけど。貴女のご都合はいかがです?お嬢さん!((藁´∀`)) いたずらっぽい問いかけ。Oh,that's very sweet of you!と答えるとリザ!俺英語解かりませんっ!!。・゚・(*ノД`*)・゚・。何て言ったの??嬉しいわって言ったの。私のほうはすぐ出られるぞ。単車で迎えに来てくれるのか?いえ、今日は車です。親父の車借りましたから。10分くらいで着きますんで実家の前で待っていて下さい。了解!じゃ後ほど。彼女から電話を切るのを確認して受話器を置く。再会できる期待に胸が高鳴る。車に乗り込みながら、やっぱり好きな人に逢えるのは嬉しいもんだなと呟いてみる。時間ぴったりに実家に到着する伽。実家前に車を停車させ、運転席から降りながらにこやかに微笑みかける。久しぶり!リザ!ご両親は?新年の挨拶をしないとね!そう言ってウインクをする。今母が車椅子を押して散歩に行ってる。夫婦の時間を邪魔するなって私は置いて行かれた。((藁´∀`)) 仲良いっすね!ご両親!そっか・・・それじゃしょうがない。夜送ってきた時にでも挨拶します。それが・・・母に帰ってくるなって言われた(>д
2008/01/10
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よう!無事帰還だな!お帰り伽!((藁´∀`)) 無事帰って来たぜ!待ち合わせた公園で、俺達は笑って互いの拳を付き合わせ新年の挨拶を交わす。どう?面子集まった?今のところボーカルだけ(>д
2008/01/10
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お正月に実家に帰っていた私は、父を囲んで家族だけの時間を過ごしていた。兄2人はお嫁さんを伴っての帰宅。アルコールを飲めない2人の兄は、新年の挨拶の乾杯一杯で顔が赤くなる。家族だけの穏やかな一時に心が和む。彼らが帰宅した後、後片付けを全て終えて一息つく。正月だけは、少しならお酒口にしてもいいわよあなた。手術してから晩酌を絶った父と母。夫婦2人でマッコリを味わう様子を見つめて、夫婦っていいものだなと考えていた。貴女も飲む?母に勧められて頷き、自分専用のマッコリ杯に注いで貰う。頂きます。父と母に視線を向けて杯を少し上に持ち上げる。頷く父と母。彼らの視線を感じながらゆっくり味わう。美味しいです。薄く微笑むと2人は柔和な視線で私を見つめる。伽君とは逢ったのか。とっくに帰還しているだろう?父の問い掛けに首を横に振る。まだ逢っていません。彼も里帰りしている筈だし、それに伽には親戚が多いようで挨拶回りも大変だって言っていましたから。そうか。新年に挨拶を交わせる親族が多いという事は、彼の家系は親族含め仲が良いという事なんだろう。彼の人柄はまだあまり知らないが、こういった部分で伽君一族達の人柄というものが垣間見えるものだ。そう言葉を吐き出し、父は杯に入ったマッコリを、比較的自由に動かせる左手で持ち上げ口に含む。そうかもしれない。人を笑わせる事で和ませ争いを避けようとする。少し短気な部分があるけれど、そんな欠点を変えようと彼も努力している最中だ。艦から降りた彼は以前より精悍な、海の男の顔に変わっているのだろう。逢うのが楽しみだ。少し微笑んでいる娘の姿に複雑な想いを抱く。大切に育ててきた娘に想い人が出来て、少しずつ自身から離れていくんだな。どんなに大切に育て上げてもいつかは他の男に眼を向けて旅立つ愛娘。寂しいものだ男親ってものは。小さな成長を喜んでいた遠い過去が懐かしい。傍らの妻が小さく笑う。何ですか、リザが帰ってきたら途端に無口になっちゃって!リザよりもあなたの子離れのほうが必要みたいだわ!((藁´∀`)) (>д
2008/01/09
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海が見える。屋形船がちょうちんの明かりを、海面に映し出しながらゆっくりと流れるように進む。バイクから降りて高台まで階段を登りきると、海が一望できる。後にはレストラン。一階は世界的に有名なコーヒーチェーン店が店舗を構えていた。少し高いけれど、ここは2階なんでしょうか。傍らのシンは海風に髪をなびかせて、海を見つめている。その表情は少し微笑みを浮かべているように見えて、私も嬉しくなってしまう。見つめる視線に気がついた彼は、少し照れたような笑みを浮かべて行きましょうか。肩に手を添えて後のレストランにエスコートする。照明を落とした暗めの店内は、まるで異空間のよう。壁紙の色はビロードのような深い赤。各テーブルにはグラスキャンドルライトが置かれていて、本物の蝋燭の明かりみたい。案内された席は店の一番奥。右の壁にはサンドピクチャーが掛かっている。シンが椅子を引いてくれる。ありがとう。椅子に腰掛けた私は、サンドピクチャーの砂が、ゆっくりと落ちていく様に心を奪われる。なんて幻想的なんだろう!話には聞いていたけれど、実物を見たのは初めて!まるで子どものように、素直な感動と好奇心を表情に表す名花は、とても無邪気な表情をする。奏でるピアノも時に優しく悲しく、時に激しく表現する事もある。心の想うまま私の表現したいまま、万感を込めてピアノに向かうんです。万人の心を動かす事なんて出来ないけれど、奏でるピアノの音で、たった一人の聴衆の心を虜に出来たなら本望です。少し俯きながら話す彼女は、ピアニストとしての名花ではなく、1人の女性としての本心を曝け出した。その横顔の美しさに心を奪われてしまった私。遠い過去の出来事を想い返しながら、目の前の彼女を見て、あの時と何一つ変わらない純粋さに、美しい横顔に胸が高鳴る。視線を感じて正面を向くと、シンと視線がぶつかる。慌てたように瞳を伏せる彼。見ていたんですか。尋ねると、貴女の後にある、グラスキャンドルライトの明かりに見惚れていたんですよ。じゃあ、どうして顔が赤くなっているんですか?いたずらっぽい問いかけに苦笑する。やれやれ、名花には私も敵いませんね。思わず肩を竦める。シンは正直な人。心の動揺が手に取るように解かってしまう。ちょっぴり不器用なそんな彼がとても好き。心の中で貴方が好きと何度呟いたことでしょう。15歳の時に出会って以来、ずっとシンに恋をしてきた。やっと想いが通じた嬉しさで、瞳に涙が浮かんでしまう。彼に悟られないように、もう一度壁のサンドピクチャーに視線をそそぐ。判ってしまいましたよ。名花の瞳に涙が浮かんでいる事。慌てて視線を逸らした様子は、初めての出会いを想い起こさせる。5日間の滞在の中で、彼女との距離が近くなるほどよそよそしくなる態度。その様子に困惑してどうしたんですかと尋ねた時に、その瞳に涙を浮かべて、貴方を好きになってしまいました・・・そう言いましたね。真っ直ぐ見つめる瞳から視線を外す事が出来ませんでした。その瞳がとても美しかったのと、私も貴女に恋をしていたから。体を交わしたのはたった1度きりなのに、決して忘れる事の出来ない名花との想い出。彼女の想いは時を経た今、また私の心を捉えてしまった。いや、私も名花を永遠に放したくない・・・ずっとそう想っていた。シンディと関係を持っていても心のどこかで名花に詫びている自分がいた。私達の想いは、出会いから14年を経て再び心を結びつけたんですね。目を閉じてそんな事を考える。交換条件へHoneyへ
2007/09/10
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