1話

第1章 優勝しない





平成○年5月15日、条ヶ咲中学校玄関前にて………

 「はい!今日は皆さん待ちに待った修学旅行です。

しかし前にもちらほら説明しましたがぁ中学生らしい節度ある態度で

旅行を楽しみ、条ヶ咲中学校の名を恥じぬようにしましょう!

先生からは以上です。」そう言って早々と話を終えてしまった。

3年3組担任の 増田 は、普段であれば長ったるい話が…

特にこういった時には「いつ終わるんだよ」

と思うくらい長く話が続くはずだった。

「なぁ」 女子5番小柴 希莉 に話しかけたのは

いつものうざい 男子6番児玉 優 だった。

「今日の増田の話やけに短くねーか?」

優が何か気づいたときやちょっとしたことでもすぐにうざったく、

なれなれしく話しかけてくる。

希莉にとって優はクラスで1番嫌いなやつだった。

(だってそうじゃない顔ははっきりいって

ブサイク・・・面白くもないギャグは出るは、

自分が不利になるとすぐ人のせいにするは…)

希莉が優を嫌いな理由はほかにも多々ある。

「サア…気分なんじゃない?」

いつもと同じそっけない態度でテキトーに受け答えしてすぐに前を向く。

だが増田の話が短いと言うのは気になる話だった。

1組……2組とバスへ乗車していくそして3組が

バスに乗車しようとしていた。

ふと希莉が、 男子4番小倉 正輝 のほうへ目をやった。

何か難しい顔をしていて普段は見ない表情だった。

まるでこれから起こることを予想しているような哀しい目で…

(あの不良君があんな顔を……ねえ……)

そして希莉自身も1組や2組のバスより3組が乗車するバスだけが

異様な雰囲気に包まれているような気がしていた。

バスの扉がしまった。早々に話を終えて携帯をかけた3組担任は…。

「ああ、もしもし増田です。亜紅間さんですか?

今向かわせますので…それでは」

にやっとしながら最後に増田もバスに乗り込んでいる

(にやっとするのはいつものことだが)

バスの中はにぎやかさに包まれていた。

               【残り42名】



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