44話

第二十三章  装備




 「また・・・銃声か・・・・・」

淳にとってこの銃声はまた一人・・いや・・

最悪2人も3人も死んでしまっているのかもしれないという

不安さと何も出来ない悔しさをどこにもぶつけることが出来なかった・・。

だが淳にはそれでもこのゲームの中で自分の目的・・・

やらなければいけないことはあった・・。

沢近を守る!・・・・淳にとって沢近は転校直後からの

憧れの存在でもあった・・・。

しかし本人はなかなかクラスメイトと溶け合おうとはせずに

一人ぼんやり窓の外を見つめている時が多かったような気がする・・。

淳は人と関わることはっていうのは

ただ単に友達をつくったりして話したり笑ったり・・・

そんなことだと思っていた・・・平和主義・・でもあったのだ・・。

実際そんな性格からか交友関係はかなり幅広かった。

しかし人の世話を焼きやすい淳の性格は

いつも疎外感がある沢近 愛理に興味があったのだ。

なぜいつも一人でいるのだろう・・・

なぜクラスに馴染もうとしないんだろう

・・・・そして・・・・

なんで・・・笑わないんだろう・・・と・・。

だから淳は興味を持ってみた。

だけど日常の生活の中では何も分からなかった・・・。

いや分からせてくれなかった・・・が

正しいのかもしれない。


 キーンコーンカーン・・・・

「柊君・・お昼休みどうするの?」

そう聞いてきたのは若松 まどかだった。

隣には最上 あずさがいておなかが空いていたのか

さっさと食べようとまどかを急かしている・・。

「あ・・うん・・・どうするかな?食堂にでも行こうかなって

思ってたんだけど・・」

「なら一緒に食べようよ!ほら・・お弁当沢山作ってきたから・・

なんなら槙野君達も一緒に!」

「おぉ!若松さんの手料理かぁ・・・ジュン!これは食べるしか

ないんじゃないか?」笑いながら槙野 晋治が席を立つ。

それにつられて三浦 宏一、雪村 司も

さらには誘われてもいないのに島村 直人までもが

自分に弁当があるのにもかかわらずお呼ばれしようとしている。

(それももちろん食べるつもりなのだろうが・・・)

なんだかんだ言ってまどかや淳の周りには

人が集まってくるのだ。

そして淳は思い立ったように愛理の方へ向きこう言った。

「沢近さんも一緒に食べようよ!」

誘われてビクッと体を反応させたがすぐに落ち着き

そして少し考えたあげく「遠慮しておきます・・・」

そう軽薄に言いまたもやぼんやりし始めた・・

(希莉もかなりぼんやりするほうだが

この日は何故か愛理のほうが目立ってぼんやりしていた)

しかし淳は持ち前の明るさ・・強引過ぎず不安にさせない・・

なんだかんだいって落ち着ける・・・

そんな物腰で「いいから、いいから」と

グループに入れた。

愛理は驚きながらもみんなから少しずつおかずをもらい

昼食をとっていた・・・。笑顔の無い昼食を・・・。

だが結局みんなとお昼を食べたのはそれっきりで

次の日からはいつもどこかへ移動しこの雰囲気から遠ざけようとしていた。


 ・・・・・・・・・今回のゲームで淳が愛理に出会ったのは

偶然ではあるが一度も見たこと無い笑顔というやつを

見れたことが淳にとっては大きかった・・。

そしてこの笑顔の裏に複雑に絡み合った悲しみも

漂っていたような気がしてならなかった。

その時に淳は思ったのだ。

「ああ・・俺は沢近さんのことが好きなんだ・・

だから気にもなるしこんな想いもうまれるんだ・・・

沢近さんは守ってあげたい・・・癒してあげたい・・」

そう・・・例え今がこんな殺戮ゲームのフィールドの中にいたとしても

そんなことは関係なかった・・・。

日常であの笑顔を見た時でもうまれる想いは同じであろうからだ。

「ところでお二人さん」

男子19番雪村 司が2人に話しかける。

「なんだよ?」淳が聞き返す。

「これを装備しろ・・・」そう言って手渡したのは

彼の支給品の中に含まれていた ウォーターガン だった。

「こんなおもちゃがなんだっていうんだ?」

そう淳が言うと笑いながらこういった。

「中は水じゃねぇ・・希硫酸だ・・

俺は一度学校に立ち寄ったんだよ・・

なんで出発地点が学校じゃないんだろうってな

まぁ・・それは大して広くない学校だから本部向きではない

ってのがすぐに分かった・・・

そいで理科室立ち寄ったらあったんで調達した

まぁ・・学校出る時に偶然本田に会ったんだが・・

すぐに逃げられてしまったな・・」

ちなみにウォーターガンの材質はどうも特殊らしく

硫酸を入れても溶けないらしい。

「これなら立派な武器になるだろ・・

正直お前の持ってるCz75だけじゃどこまで耐えられるか

分からねぇからな・・後・・隣の部屋に相本の死体があった・・

腐りかけてたんで外に出しといたぜ・・」

それに対して「あ・・ああ」と返事をし

ベッドに座る。

「それで?何故あなたはあたし達と一緒にいようと思ったの?」

愛理が尋ねる。

「いや・・・まぁ・・特に理由はねぇんだけど・・・

しぃてあげるなら一人は不安だった・・・じゃだめか?」

淳と愛理は顔を見合わせた「ハァ」とお互い深いため息をつき

雪村をもう一度見た。

「下手したら・・・あたし達より足手まといじゃないの?」

そう愛理がつぶやく・・・雪村には聞こえないように・・・。

雪村は運動などからっきしだが行動力だけはある人間だった。

「ホント・・なんなんだろうね雪村って・・」

淳もそうつぶやいていた・・・空の色が明るくなってきていた。

                  【残り15名】




BACK

NEXT

オリバトTOP




© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: