64話

淳は足音から二人が完全にこの場にいなくなったと判断すると

撃っていた銃撃をやめて津部に話しかけた。

「このまま聞いて欲しい・・・津部・・は

何故これに乗ったのかは知らないけどさ・・

どうして簡単に出来ちゃうの?

・・・俺・・もしもこのゲームに乗ったとしても

津部みたいに"兄弟"を平然と殺してまで・・・

・・・・絶対に出来ない・・・

殺してしまったら俺は俺でいられなくなるよ・・

絶対に・・・・

・・・そして何人も同じようなことしてきて・・

それで今俺を殺そうとしている・・・」

何故か津部も攻撃をやめて淳の話を

聞いていた・・・。

「そんなことが何故出来るの?

・・・・何で・・そんなに冷静に自分を保てるんだよ!」

淳がその場で必死に叫ぶ・・・。

「・・・それは・・仕方の無いことなんだ・・

それに・・・俺は拓斗を殺したんじゃないんだ・・・」

「え?」

「表面的には俺が殺したと言うことになっている・・・

しかし厳密に言えばあれは俺が殺したのではない」


26時間程前・・・

男子12番津部 拓斗は自分の支給武器であった

レミントンM36ショットガンを希莉達に渡して

希莉達を津部の逃げていった方向と別のルートから

診療所へ行く様指示していた・・・。

そして自分は丸腰・・・

武器は説得・・以外に無かったのである・・・。

走って茂みを抜けるとすぐに弟に会うことが出来た・・。

「拓也・・・」

「・・・!?・・・」

・・・・・

・・・・・

「そうか・・・これに乗ったちゃんとした理由があるんだな・・」

「ああ」

津部兄弟はその場に座り込んでいた・・。

空を見上げると晴天で周りの雑木林が一時の心を休めさせた・・・。

「・・・それじゃ俺は早々にこのゲームから離脱・・てわけか・・」

それを聞き拓也が拓斗を見やる・・。

「・・確かに・・・確かにさっきクラスメイトを殺すのが

このゲームのルールだって言った・・だけど・・・

そのルールに従って実行する権利が拓斗にもあるんだぞ?

なのに・・・何故?」

「・・・・その死の世界・・ってやつさ・・俺が見てこようか?」

「え?」

「正直のところ最後まで残れるのは1人・・・

もしかしたら俺らのどっちか死ぬかもしれない・・・

いや・・いつかどっちか死ぬよ・・・

その時さ・・・2人きりのうちどちらかが死ぬことを

選ぶなんて絶対に出来ないさ・・・

俺だってもちろん死ぬのはごめんだ・・・

だけどな・・・お前は体力があって・・

根性もあるから・・そのかわりやる気がないおかげか

やれば出来るのに学力の方はイマイチだけどな・・」

笑いながらそう話す・・。

「でも・・機転はきくだろ・・・

だから誰よりもこのゲームで生き残れそうな

気がするんだよ・・・

俺の分までさ・・

いや・・・俺らの父さんと母さんの分までさ・・・

でっかい仕事・・こんなことさせる奴らに

目に物見せてやってくれないか?」

そう言いながら拓也の持っていたグロッグ17Lを拓也自身に構えさせる。

「お前が俺を殺さないとあいつら自殺したって機嫌損ねるだろ?

だから・・・・な?」

しばらく考えていたが決心したのかゆっくりと

引き金を引いていく・・・・。

「・・・拓也・・・生きろよ・・」

「・・・ああ・・・父さんと母さんに会えるといいな・・・」

「会えるさ・・・絶対に・・天国でね!」

「ドパン」


「・・・そうだったのか・・」

「ああ・・・優勝すると約束した以上・・守るつもりだ」

「・・・津部は・・自分の信念を守るんだね・・・

俺はさ・・・ついあいつらこの場から逃がしたけど・・

沢近・・を守りたいんだよ・・自分の信念とか関係なしにさ・・」

「そうか・・・」

そう言いながらデザートイーグルの銃口が淳の額に向けられた・・。

「・・・今まで殺し合い・・ってひどいものだなって思ってた・・

もちろんそれは今も変わらないけどね・・・

こんな首輪を作った政府も許せるわけが無い・・。

でも一つだけ・・・

自分の守りたいものを守るのが・・・殺し合いなんだな・・って

分かったような気がする・・・」

津部はそこでフッと拓斗以外に滅多にしない笑みを浮かべると

デザートイーグルのトリガーを引いた・・。 

【残り6名】



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