I歯科医院の高楊枝通信。

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ストリップスを使わない隣接面CR1.0(虫歯の電気化学説)



この方、食いしばりという外傷性咬合があり、外傷性に生じたクラックから虫歯が急速進行した。
通常治療ではこのくらい深い虫歯だと神経を取って被せると言うことになるが、それでは10年後は分からない。歯牙破折で抜歯になることが見えてくる。

とりあえずはCR充填で大きく削って歯牙を傷めるような取り返しの付かない治療は先送りして、その間患者と共に咬合性外傷の対策を考えるのが歯の寿命を伸ばすことになる。

近未来ではここで理論と技術を全面公開している「​ ストリップスを使わない隣接面CR ​」が世界標準になるだろう。

まず今日は理論面からの話を少ししたい。

僕はここで虫歯の発症理論として「​ 虫歯の電気化学説 ​」を提唱しているが、その基本理論は山口大の藤森先生等が明らかにした「​ ハイドロキシアパタイト中のプロトンの伝導 ​」というところにある。
ハイドロキシアパタイトというのは歯の主成分そのもので、歯の内外に電位差があれば歯の中をプロトンつまり水素イオンが通り抜けると言うことだ。

そしてプロトンが歯を通り抜けるときにハイドロキシアパタイト結晶中のCa(カルシウム)から電子を奪いCaは歯から溶出する。こうして​ 歯の結晶構造が崩壊 ​していく、これが虫歯と言うことだ。

これから導かれる虫歯の原因は2つ考えられる。

1、プロトン:水素イオン:H+が歯の周りに存在すること。つまり歯牙が酸性環境中にあるということ。
2、歯の内外に持続的な電位差が生じていること。

この2つが同時に満たされたときに虫歯が発症する。
どちらか一方だけでは虫歯にならない。

虫歯とは純粋に電気化学的な現象だ。一般的な意味での細菌感染症ではない。

この症例では隣接面に出来たクラック(ひび)から虫歯が進行した。
クラックの内外には​ 酸素濃度勾配による起電力 ​が発生する。
また歯牙表面のエネメル質と歯牙内部の象牙質では​ イオン化傾向が象牙質の方が僅かに大きい ​。これによっても電位差が生じる。

これが実際の画像だ。これをよく見ると分かってくると思う。





次回は実際のCR充填の様子をアップしたい。

つづく

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