I歯科医院の高楊枝通信。

I歯科医院の高楊枝通信。

2022/09/02
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50代女性、左上457、2次カリエス

被せ物というものはいつかは2次カリエスで再治療のハメになる。
隙間が嫌気性細菌が生息できる程度の狭いものなら、カリエス(虫歯)は進行しにくいが、
好気性の酸産生細菌が生息できる環境になると急速に虫歯は進行する。
セメントのない時代は隙間をなるべく少なくなるような歯科治療が行われていた。100〜150年程前の話だ。

例えば金箔充填や最近まで保険診療でも認められていたアマルガム充填とかがそうだ。
隙間はあっても通性嫌気性細菌の硫酸塩還元細菌が生息できる程度の狭い隙間なら最終代謝産物である硫化鉄FeSによるイオン伝導阻害作用により虫歯の進行は抑えられる。

キャスト冠の製作が行われるようになってからもしばらくはセメントなしで装着されていたと聞いたことがある。診療室でも作製・装着ができるバンド冠が使われるようになるきっかけはセメントで隙間を埋めることが容易になってからだ。これは100年ちょっと前にリン酸亜鉛セメントが開発されてのち急速に広まり、つい最近までと言っても40〜50年前までは普通に行われていた。その後グラスアイオノマー系の合着用セメントが開発されてからは金属〜歯質間の接着力があるということで主流となっている。その後はレジン系のセメントが加わりバリエーションが増している。

いずれにしても接着ということに期待している向きがあるが、あまりその効果には期待できない。スーパー◯ンドでさえ接着剥がれは起こるからだ。長年の絶え間ない咬合力に勝てるセメントはない。



しかし、僕が提唱している「虫歯の電気化学説」では容易に説明出来る。

虫歯は金属の電気化学的腐食と同じカテゴリーに属する現象なので、歯質よりイオン化傾向の大きい物質で覆うとその物質が歯質より先に溶けてくれて、本体の歯質を守ってくれる。
この2つのセメントには歯質よりイオン化傾向の大きい「 亜鉛 」が含まれている。

これを腐食工学分野では「カソード防食」と呼んでいる。

最強の合着用セメントは歯質接着性は全く無いが、硬質な「リン酸亜鉛セメント」だろう。

ただし練和作業に熟練もしくは工夫を要する。

・・左上の7番はコアとクラウン間というよりは歯質とコア間に隙間ができていた。



この白いセメントがグラスアイオノマーセメントだ。





黒い部分は隙間があったところだ。



2次カリエス部分には歯肉息肉で覆われていた。覆われることにより虫歯の進行は遅くなる。これはプロトン:水素イオンが歯質を通り抜ける際に歯質中のカルシウムから電子を奪う前に歯肉息肉から電子の供給を受けるからだと説明出来る。電気的インピーダンスの問題として解釈できる。オームの法則さえ理解していない現代日本人にはちんぷんかんぷんだろうが。









CRでラウンド・ピンレッジド・コアの築成をする。
不定形の歯質とCRのダイレクトボンディングシステムが現時点では最も接着強度に優れている。
型取りして作るコア(土台)は外れるに決まっている。

それは外れるように作っているからだ。というか、型取りして口腔外で製作するので、抜き差しできるように作るしかないからだ。

工学的見地からすれば、電気伝導性のない物質で覆うという防食技術的にも理にかなっている。








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Last updated  2022/09/04 12:12:21 PM
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mabo400@ Re[5]:今日の充填治療38(上級編:隣接面下インレー2次カリエス)(06/22) 感謝しますさんへ 数十μ以内の嫌気性菌が…
感謝します@ Re[4]:今日の充填治療38(上級編:隣接面下インレー2次カリエス)(06/22) mabo400さんへ ありがとうございます。 銀…
mabo400@ Re[3]:今日の充填治療38(上級編:隣接面下インレー2次カリエス)(06/22) 追加の質問ですさんへ 虫歯と金属の間が…
追加の質問です@ Re[2]:今日の充填治療38(上級編:隣接面下インレー2次カリエス)(06/22) mabo400さんへ ということは2次カリエスじ…
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