I歯科医院の高楊枝通信。

I歯科医院の高楊枝通信。

2022/12/06
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50代女性、左下6、クラウン2次カリエス

神経を取って被せて10年〜20年経つと2次カリエスで抜歯寸前まで追い込まれることはよく経験する。
特にカリエスリスクの高い方、ブラキシズム等の咬合性外傷のある方は厳しい。
逆に30年〜40年持っているクラウンがあるとすれば、そもそもそんな治療をする必要がなかったのではないかと思う。

クラウンを外すと、冠の内面はFeS:硫化鉄で覆われている。これはセメントは脱離し、隙間に硫酸塩還元細菌が生息してたことを示している。外すと同時に硫化水素系の臭いがすることがあるが、これはこの細菌の代謝産物の一つで、いわゆる虫歯臭いと言われる臭いだ。

このFeSで覆われていると虫歯になりにくい、なぜならFeSは水素イオン:プロトンの歯質の電導を妨げる。
歯質つまりHA:ハイドロキシアパタイトはプロトン電導性を持ち、プロトンが内外のなんらかの起電力により歯質を通り抜ける際に、HAのCa:カルシウムから電子を奪い、プロトンは水素ガスに、Ca2+となってHAから溶出する。これが虫歯の正体だからだ。
これは僕が「虫歯の電気化学説」として提唱している理論から導かれる。

では時系列で画像をアップする。






もちろん支台歯もFeSで覆われている。要するにセメントなど効いていないのだ。
それでも問題なく経過することはある。セメントなど必要なのか? 甚だ疑問だ。
鋳造冠の時代になってもセメントを使用していない時期があったと聞いている。
セメントなどなくてもそれ程変わらないように思う。
近頃の歯科医師諸君はもしかしたら知らないかもしれないが、アマルガムや金箔充填を考えれば十分理解できるはずだ。それらはセメントは使わない。その話はいずれしよう。
要するに嫌気性の硫酸鉛還元細菌が生息できる程度の隙間であれば問題ないということだ。
この隙間が大きいと好気性、通性嫌気性の酸産生菌が生息するようになり、一挙に虫歯が進む。


メタルコアを除去する過程だ。これはとても辛く時間を要する作業だ。
小1時間かかって、保険診療では500円程度の診療報酬しかない。
これは歯科が保険導入された昭和40年から60年。ほとんど改定されていない。
なぜなら日本は最も成功した社会主義国家だからだ。

だから抜いて、ブリッジだ、インプラントだということになる。それは当然のことだろう。
僕は頭がおかしいのだw







メタルコアの遠心半はセメントが効いておらす隙間ができていた。この部分の虫歯はやはり進行していた


歯肉縁下2mmまで歯質は虫歯でダメになっていた。


歯質はペラペラだが、なんとかα-TCPの再結晶化効果で少しでも改善されることを期待したい






この患者さんは諦めていた(入れ歯になるのは仕方がないと)。僕は救世主だ!と言っていたが、世の中そんなに甘くはないw 僕はいつまでもは生きていない。こんなことができる(経済的にも技術的にも)歯医者は多分存在しないからだ。





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Last updated  2022/12/07 12:26:25 PM
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kear1 @ Re:今日も野戦病院シリーズ16.0(06/12) 汚れた歯をUPするのはやめるべき。閲覧注…
mabo400 @ Re[1]:今日の充填治療63(隣接面CRの作り方)(06/08) 萩嵜康雄さんへ 是非やってみてください…
萩嵜康雄@ Re:今日の充填治療63(隣接面CRの作り方)(06/08) 驚き!フロスが通るのがすごい。
mabo400@ Re[5]:今日の充填治療38(上級編:隣接面下インレー2次カリエス)(06/22) 感謝しますさんへ 数十μ以内の嫌気性菌が…
感謝します@ Re[4]:今日の充填治療38(上級編:隣接面下インレー2次カリエス)(06/22) mabo400さんへ ありがとうございます。 銀…

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