メートル・ド・テル徒然草

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エルネスト1969

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Jan 24, 2006
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「西洋料理」とはいづれも「火を通すこと」が大前提の概念である。

と、申し上げたばかりなのですが、フランス料理には古くから「ステック・タルタル」という生の肉を食べる料理があります。

 ステック、とは、ステーキの事。「タルタル・ステーキ」の名前でも呼ばれ、日本ではメニューに載せているところは少ないかも知れませんが、パリのビストロなどではよく見かけました。

 タルタルステーキとは、基本的にはケイパー、玉ねぎなどのみじん切りを加えたマヨネーズソースを作り、ソースをミンチにした牛肉と和えて食するといった料理です。
 主にフランスではこの作業をホールで行うため、サーヴィスマンが作って提供するところから各種サーヴィスのコンクールやサーヴィス技能検定の試験課題として扱われることも多いようです。

 本来、生肉を食べる習慣の無かったヨーロッパにおいて、この料理が広まったのが実に8世紀という古い時代。ジンギスカン、そして大モンゴル帝国があった頃、蒙古系部族によって伝えられた名残りだそうです。

 タルタル(Tartare)の語源を遡ると古代テュルク語で、「他の人々」という意味のTatar(タタル)という言葉でした。そのためタタールの名は、その名が用いられる時代と場所によって指し示す民族が異なっています。

 現在では、ロシア連邦内のタタールスタン共和国に住むタタール人、ウクライナ領のクリミア自治共和国に住むクリミア・タタール人などが自称の民族名としてタタールを称しています。中国の少数民族のひとつタタール族は、中国領に住むタタール人のことです。


 料理法としてのタルタルは、大モンゴル帝国の領土拡大とともに広まっていきました。もともと騎馬民族であったモンゴル帝国は遠征先で運んできた食料に尽きると、自らが乗ってきた馬を食したのです。
 この時の料理法が現在でいうタルタルであり、また、この手段によってモンゴル帝国が人類史上最も領土の広い国になったことのひとつの原動力になったといえます。

 この「馬肉食文化」が西方に向かって広まっていく際にその名をタルタルと変えて現在に至ります。また、ドイツの都市ハンブルグに語源を発する「ハンバーグ」。非常に身近な料理となっていますが、牛肉のタルタルを焼き上げたそのスタイルのルーツもここでしょう。

 大モンゴル帝国は東方にもその勢力を伸ばそうと試みました。日本史にも鎌倉時代の出来事として残る、「元寇」です。
 元と呼ばれたモンゴル軍は火薬などの新しい文化を東の果て、日本にまで影響を及ぼしました。そのうちの食文化のひとつが「馬肉食文化」だったのかもしれません。現代でも九州の熊本県や、対馬などにおいて馬の肉を食べるという文化は残ってきました。
 さらに隣国の韓国では、フランスのステック・タルタルと同じものが、「ユッケ」と呼ばれる料理となっています。







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Last updated  Jan 25, 2006 01:59:15 AM コメント(2) | コメントを書く
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背番号のないエースG @ チョコレート 「風の子サッちゃん」 ~ Tiny Poem ~…
坂東太郎G @ 「辛味調味料」そして考察(01/16) 「石垣の塩」に、上記の内容について記載…
エルネスト1969@ Re[1]:ホスピタリティは「人」ありき(10/04) はな。さんへ コメントありがとうございま…

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