メートル・ド・テル徒然草

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エルネスト1969

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Nov 19, 2006
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私が若い頃、まだ料理人として調理場に立っていた頃のことです。
今でもあんまりかわりませんが、元来、気の急く性格の私はポカも多く、調理場でよく先輩に叱られてばかりいました。

「お前の料理には、ホンマにセンスが無いなぁ~」
調理場で毎日作る賄いの食事も
「センスのないメシやなぁ!こんなん食えるかぁ」
と、そのままゴミ箱に捨てられたこともありました。

センス、センス、センス、、、
はて、「センス」とは一体なんだったのでしょう?センスさえあれば、私はもうちょっとましな料理人になっていたのかも知れません。

「この団扇(うちわ)、センス(せんす=扇子)悪いなぁ。」


「センスがあること」あたかもそれさえあれば、なんでも望みのかなう魔法のランプのように、優れた料理人になる必須条件のように思えてきました。

 「センスとは?」ずっと考えてきましたが、、、


 ある時、ふと目にした専門の料理雑誌に、とあるシェフのコメントが掲載されていました。私も知っている方なのですが、現在も大阪・心斎橋で2件ほどの店を切り盛りされているオーナーシェフのMシェフでした。

「…例えば、先輩に冷蔵庫に苺を取りに行くように言われたとします。冷蔵庫の扉を開けて、目の前にある苺を掴んで持ってくるようではダメなのです。『苺を一パック持って来い』と言われた時に、どんな苺を持っていくか想像できなくてはなりません。どちらを早く使わなければならないのか。ピュレにするのか、バースデーケーキを飾るのか。ケーキを飾る苺ならばどの位のサイズで、粒の大きさはそろっていたほうがいいのか。どなたが召し上がられるケーキになるのか、、、そういったことを思い巡らせられることが、料理人としてのセンスの差になって現れてくるのです。」


 そうなんです。センスとはつまり「想像力」に他なりません。


 サービスマンとしてレストランのホールに立つようになってからも、サービスマンとしての「センス」が問われます。
「サービス・センス」とは、それぞれのテーブル、それぞれの宴席において、いかなる方法が最も効果的で喜ばれるものであるのかを、想像し、思いを巡らせることに他ならないのです。

 (ある意味、この想像力を「思いやり」という言葉で置き換えることが出来るのかもしれませんが、「思いやりのこもったサービス」のスローガンを掲げる組織ほど「思いやり」に欠けていることが多いのはなぜでしょう?)

 多くの芸術と言われるものは、すべからく人間の「想像の力」から生み出されています。

 絵画は人に見せるために作られました。文学のほとんどは、他人に読ませて初めて感動を生み出せるものです。音楽は、楽譜が読める、楽器が弾ける、それだけでは人に喜ばれるものには生まれ変わりません。

 料理人も、サービスマンも「表現者」です。お客様は、個々のスタッフに内在する知恵と経験を楽しみにレストランを訪れられるのです。



 そして、その「レストラン」という空間で、お客様がどんな風に時間を過ごすのか、、、
それが、「想像力」であり、想像力の豊かなレストランが。「センスのいいレストラン」なのです。








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Last updated  Nov 20, 2006 02:58:49 AM
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Comments

背番号のないエースG @ チョコレート 「風の子サッちゃん」 ~ Tiny Poem ~…
坂東太郎G @ 「辛味調味料」そして考察(01/16) 「石垣の塩」に、上記の内容について記載…
エルネスト1969@ Re[1]:ホスピタリティは「人」ありき(10/04) はな。さんへ コメントありがとうございま…

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