趣味の漢詩と日本文学

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December 24, 2007
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カテゴリ: 漢詩・漢文
客舍喜鄭三見寄(一作訪) 劉長卿
客舍逢君未換衣、閉門愁見桃花飛。
遙想故園今已爾、家人應念行人歸。
寂寞垂楊映深曲、長安日暮靈臺宿。
窮巷無人鳥雀閑、空庭新雨莓苔緑。
此中分與故交疎、何幸仍迴長者車。
十年未稱平生意、好得辛勤謾讀書。
【韻字】衣・飛・帰(平声、微韻)。曲(入声、沃韻)。・宿(入声、屋韻)・緑(入声、沃韻)。疎・車・書(平声、魚韻)。
【訓読文】

客舎君に逢ふも未だ衣を換へず、門を閉ぢ愁ひて見る桃花の飛ぶを。
遥かに故園を想ひて今已に爾り、家人応に念ふべし行人の帰るを。
寂寞たる垂楊深曲に映じ、長安日暮霊台に宿す。
窮巷人無くして鳥雀閑たり、空庭新雨莓苔緑なり。
此の中分與故交疎、何なる幸ひあつてか仍ち長者の車を迴らす。
十年未だ称(かな)はず平生の意、好んで辛勤を得て謾りに書を読まんや。
【注】天宝五載(七四六)・六載頃、長安における作。
○客舎 宿屋。
○鄭三 劉長卿の友人らしいが、未詳。
○未換衣 布衣を官服に着替えない。官吏登用試験に及第しなかったことをいう。
○閉門 門をとじる。

○故園 故郷。
○今已爾 科挙に落第して意気消沈していること。
○家人 家族。
○応A きっとAだろう。
○行人 旅人。故郷を離れている作者自身。

○垂楊 シダレヤナギ。
○深曲 奥まった僻地。
○霊台 周代・漢代に長安の西北に築かれた台の名。
○窮巷 路地。
○無人鳥雀閑 人通りも無ければ、鳥雀すらもひっそり静まりかえっている。
○空庭 ひとけがなく静かな庭。
○新雨 降ったばかりの雨。
○莓苔 コケ。
○此中 この心。
○分与 分け与える。
○故交 むかしからの付き合い。旧友。
○長者 年長者。『史記』《陳丞相世家》「家は乃ち負郭の窮巷にして、弊席を以て門と為す、然れども門外に多く長者の車轍有り」。
○十年 初めて科挙の受験をしてからの年数。
○平生意 普段からの望み。
○好得 反語。どうして。
○辛勤 苦労してつとめる。
○謾 むなしく。
○読書 書物は文人の身につけるべき教養とされた。
【訳】
宿屋に鄭三が訪ねてきてくれたのを嬉しく思って詠んだ詩。
宿屋で君に逢うたれど登用試験に落ちたれば役人の服いまだ着ず、門をば閉じて庭先の桃の花散る眺めやる。
遥か故国を想いやり今の境遇落胆す、家族はきっと我が帰り吉報あるを待つやらん。
ひそとたたずむヤナギの木、奥まった地に枝を垂れ、長安のまち日は暮れて霊台近く身を宿す。
路地には人の影も無く鳥の声さえ聞こえこぬ、さびしき庭に雨は降りコケの緑ぞ色深き。
今日久々に君と会い日頃の無沙汰を穴埋めん、わざわざ遠路車をば迴らせたまいし嬉しさよ。
十年試験受くれども未だ念願かなわずに、苦労つづけて書を読むも本当に役に立つのやら。





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Last updated  December 25, 2007 11:16:42 AM
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