趣味の漢詩と日本文学

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June 22, 2008
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カテゴリ: 漢詩・漢文
送杜越江左覲省往新安江 劉長卿
去帆楚天外、望遠愁復積。
想見新安江、扁舟一行客。
清流數千丈、底下看白石。
色混元氣深、波連洞庭碧。
鳴■(「木」のみぎに「良」。ロウ)去未已、前路行可覿。
猿鳥悲啾啾、杉松雨聲夕。
送君東赴歸寧期、新安江水遠相隨。
見説江中孤嶼在、此行應賦謝公詩。

【訓読文】
杜越を江左に覲省しに新安江を往くを送る。 
去帆楚天の外、望遠愁ひ復た積もる。
想ひ見る新安江、扁舟一行の客。
清流数千丈、底下白石を看る。
色は元気を混じて深く、波は洞庭に連なりて碧し。
鳴■(ロウ)去りて未だ已まず、前路行きて覿(み)るべし。
猿鳥悲しくして啾啾、杉松雨声の夕べ。
君を送れば東のかた帰寧に赴くの期、新安江の水遠く相随ふ。
見説(きくならく)江中孤嶼在りと、此の行応に賦すべし謝公が詩。
【注】

○江左 江東。
○新安江 浙江の上流。安徽省黄山に発し、浙江省に入り、蘭渓と合流して海に注ぐ。
○扁舟 小舟。
○洞庭 洞庭湖。
○■(ロウ) 漁師が魚を網に追い込むときに、ふなばたを叩いておどろかせる棒。

○帰寧 帰省して両親を安心させる。
○見説 きくところによると。
○孤嶼 孤島。
○謝公 南朝宋の詩人謝霊運は浙江省温州市の北の甌江中の孤嶼で遊んだという。
【訳】
江左にて杜越が実家へ帰省のため新安江をくだって行くのを見送る詩。 
君を乗せたる帆かけ船楚天めざして今ぞ去る、遠く眺むるわが心あらたに愁いわきおこる。
新安江を想ひ見りゃ、君は小舟に身をまかす。
清き流れはどこまでも、川底を見りゃ白い石。
川の水色深ぶかと、末は洞庭波碧し。
船端たたく棒鳴らしその音いまだ鳴りやまず、行く先前路行きて覿(み)るべし。
猿の叫びや鳥の声もの悲しくしてやりきれず、杉や松の枝ふりかかる雨音さびしこの夕べ。
君が東へ帰省するその姿をば見送れば、新安江の水はただ君のあとをばしたいゆく。
人から聞いたところでは江中ひとつ島在りと、旅の途中でその島を詩に詠み我に送るべし。






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Last updated  June 22, 2008 04:31:39 PM
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