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「あの梅の木は」 第 10 話
香織ママはアルコールが適度にまわってくると、普段に増して陽気に
なる。
「でさあ、香織、あんたたちどこまで進んだの?」
「な、なによ!急にそんな話、パパもいるっていうのに!」
それまで裕也と話が弾んでいた香織パパが振り返って首をつっこむ。
「なになに、なんのことだ進んでいるって?」
「もう、おとうさんったら地獄耳なんだから、いいのよ男同士で他愛も
ない話に花をさかせていれば」
「何だよ、そんな邪険にしなくてもいいだろ!教えてくれよー」
香織が両親の間に立ちはだかって言った。
「いいえ!パパには絶対に教えません!」
仁王立ちで、おまけに拳をにぎって言い切る娘の姿に、父親は成す術も
なく、
「何だよ、そんなに怒ることないだ ろ
語尾が消え入りそうである。
裕也はそんな父と娘のやりとりを見て、吹き出しそうになり、あわてて
口を手で塞いだ。
「ママ!・・・」
「分かった、もう聞かないから・・・あなたも余計な詮索しないこと!
分かった!?」
「じゅうぶん、分かりました・・・」
「まあまあ、もうそのくらいで、お父さん、ほら飲みなおしましょ」
「うん、裕也君は優しいなあ、やっぱり男同士だな、うん・・・」
すっかりしょげ返った父を見て、母と娘は顔を見合わせて噴き出した。
裕也は咳払いで香織に自分の方を見るように促がし、顔を小刻みに振った。
顔には「もう許してやれよ」と書いてある。
(あれは何だ!?)
彼の目が庭が見えるガラス窓に釘付けとなったがそれは一瞬のことで、
直ぐに立ち上がり、窓に近づいていく。
香織が異変を察知した。
「どうかしたの?裕也?」
「今、梅の木のところに・・・」
そう返事をしながら彼の手はすでに窓のサッシを開け始めていた。
そばに来た香織が
「どうかしたの?・・・」
そう言いながら彼の目線を追って梅の木を見る。
「今、なんか・・いや誰かがいたような・・・」
「やだ、まだ怪談話には早すぎるでしょ、飲みすぎじゃないの?」
「話は梅の木のことだぞ、俺たちにとっちゃ、下手な怪談話より
怖えだろ・・」
「ちょっと、酔い醒める・・・」
そう言った香織も目つきを変えて裕也と顔を見合わせた。
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