そうなると必ず出てくるのが、偽物だ。
先日、通販サイトで「ホログラム付」と明記された響を見かけて、なぜそんなことをわざわざ書くのだろうと思った。調べてみて、背筋が寒くなった。
まず驚いたのがこれだ。
オークションサイトで「響 空瓶」を検索すると、数千円から2万円近い価格で落札されている。中身の入っていない、ただのガラス瓶である。
フリマアプリでも響の空瓶や空箱が数多く取引されていて、これは偽造品を作るために売買されていると見られているそうだ。
インテリアとして飾りたい人もいるだろう。それは分かる。だが、数を揃えて買っている人がいるとすれば、目的は一つしかない。
2018年、三重県警がフリーマーケットアプリで偽の「響30年」を販売した疑いで男2人を逮捕した事件がある。商標法違反と詐欺の疑い。瓶は本物で、中身がすり替えられていた。
響30年の買取価格が30万円を超える一方、空瓶は箱付きでも1万円前後で取引される。つまり、1万円で空瓶を買って中身を安いウイスキーに詰め替えれば、数十万円の儲けになる。
構造としては、これ以上ないほど単純だ。だからこそ、やる人間が出てくる。
古物を扱っていた頃、贄物というのは必ず「儲けの差額」が大きいところに出ると教わった。真贄の見極めが難しいものより、差額が大きいものが狙われる。まさにその通りの構図だ。
こうした事態を受けて、サントリーも動いている。
山崎・白州・響には、偽造防止対策として2022年2月以降の出荷分からホログラムシールが貼られるようになった。
さらに2024年2月末には、同年3月製造分から、複製や再貼付が難しい特殊加工を施したホログラムシールを、3ブランド10品目のボトルの開封口と背面の2箇所に貼付すると発表された。順次切り替えて出荷されている。
「ホログラム付」という表記の意味が、ようやく分かった。あれは正規品であることの目印なのだ。
ただし、話はここで終わらない。
私が一番驚いたのは、この部分だった。
手口①:本物のキャップと空瓶を使い回す
空瓶やフィルム付きのキャップを買い集め、安いウイスキーを中に入れてフィルムを装着し、新品に見せかけて偽造する行為が行われているという。
ボトルもキャップも本物を使いながら、中身だけをまったく別のものに入れ替えた事例が報告されている。
つまり、外側を全部「本物」で固めてしまうわけだ。これでは目視で見抜けるはずがない。
手口②:キャップの天面を作り変える
キャップ自体は本物の空瓶から取ったものでも、中には天面を作り変えているものもあるという。
そもそも真贄鑑定で真っ先に見られるのがキャップで、偽物は切れ込みの角度、縫い目の位置、刻印の場所や深さなどが本物と微妙に違うとされている。
手口③:ホログラムシールそのものの偽造
そして、ここが一番気の重い話だ。
ホログラムシールは高度な印刷技術が用いられており、まったく同じものを作るのは非常に難しいとされている。それはそうだろう。だからこそ導入されたわけだ。
だが、 「難しい」は「不可能」ではない。
本物とは印字が異なるホログラムシールを貼った偽物ボトルが、過去に確認されている。特に中央の「SUNTORY」ロゴや、両側に細かく印字された文字のフォントや太さが違っていたという。
また、安価な偽物は光の角度による色の変化が乏しく、ただの銀色のシールに見えてしまう場合があるそうだ。
シールがあるだけで安心せず、光を当てた際の色彩まできちんと確認すべきだと、買取業者も注意を促している。
整理すると、こういうことになる。
| 見るところ | 偽造の手口 |
|---|---|
| ボトル | 本物の空瓶を買い集めて再利用 |
| キャップ | 本物を流用、または天面を作り変え |
| ホログラム | 印字の違う模造シール、色変化の乏しい粗悪品 |
| 中身 | 安いウイスキーに詰め替え |
一つひとつは「言われれば見分けられる」レベルの違いかもしれない。だが、 それは本物を手元に置いて見比べられる場合の話だ。
初めて買う人間に、比べる対象などない。
ここまで調べて、結論はひとつしかないと思った。
買う場所で選ぶ。
相場より安すぎる出品に注意すること。空瓶を出品している出品者にも警戒が必要で、複数の空瓶を仕入れて偽造し、余った分を売っているケースが疑われる。
「いただきもの」という記載もよく見かけるが、高額で希少なものが贈られてくること自体が稀で、それをわざわざフリマに流すというのも考えにくい。
酒店や百貨店といった店舗であれば信頼できるし、店名まで書かれていれば一層安心できる。
なお、ホログラム導入前に流通したボトルやオールドボトルにはシールがない。したがって古いボトルは、シールの有無だけで判断できない。キャップやラベル、相場も合わせて見る必要がある。
偽物は年々精巧になっており、一般の消費者が確実に真贄を見分けることは困難になっている。複数のチェックポイントを確認しても判断に迷うケースは少なくないという。
正直な話、これがすべてだと思う。 素人が見分けようとするのが間違いで、見分けなくて済む場所で買うのが正解なのだ。
骨董や古道具を扱っていた頃、こんなことを教わった。
安すぎるものには理由がある。そして、その理由はたいてい買い手にとって不利益な方向に働く。
いい買い物をした、と思った時こそ冷静になれ、と。
そしてもう一つ。**贄物と本物を見分ける目は、本物を数多く見た人間にしか育たない。**知識で覚えたつもりになるのが一番危ない。私も何度か痛い目を見て、それを覚えた。
ウイスキーの世界も、まったく同じ構図らしい。
私のようにたまに一本開けて楽しむだけの人間なら、答えは簡単だ。
**近所の酒屋か、百貨店か、信頼できる通販で買う。**それだけでいい。
投資目的で高額なものを扱うなら話は別だが、そういう世界には最初から足を踏み入れないのが賢明だろう。
そもそも私は、日常はもっぱら角瓶である。偽物を作る旨味などどこにもない。そう考えると、身の丈に合った酒を飲むというのは、こういう心配から自由でいられるという利点もあるのだった。
※本記事は公開されている情報をもとにまとめたものです。真贄の判断は専門業者でも難しい場合があり、素人による見極めには限界があります。高額な商品を購入される際は、信頼できる正規販売店をご利用ください。また、偽造防止策の仕様は今後変更される可能性があるため、最新情報はメーカーの公式発表をご確認ください。