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こんにちは中ちび太です。今日のおすすめは、藤田壮眞「私は、あなたとわたしの区別がつかない」です。書き出し中学三年生の夏休みに書いた作文が賞を貰った。そのことがきっかけで普通の中学生だったわたしがこの本を書いている。普通と書いてみたけど、普通ではない。自閉症である。内容15歳の自閉症当事者によるエッセイ。彼には世界がどう見えているのか?15歳、自閉症当事者が書き下ろすみずみずしくも胸に迫るエッセイ自閉症者は何を考えているのか?世界がどういう風に見えているのか?その心の声を真っすぐに書いた自伝の登場!感想注意欠陥多動優勢の自閉症スペクトラムの著者が、幼稚園から小学校と障害と闘いながら唯一の理解者の母親と時にはパニックを起こしながら、中高一貫の中学校を受験、数学の勉強では覚えたこともつまづくと、すべて一からやり直しということも常の毎日、自閉症の生態がわかるようになった。評価5点わたしは、あなたとわたしの区別がつかない [ 藤田 壮眞 ]
2024.11.26
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こんにちは中ちび太です。今日のおすすめは、尾八原ジュージ「わたしと一緒にくらしましょう」です。書き出し「もしもし黒木くん?もどる途中で宅配便ボックス見てきてもらえるかな」黒木省吾がしょようを終えてマンションの駐車場にクルマを入れた瞬間、スマートフォンに志朗貞明から電話がかかってきた。内容この家からは、だれも出られないシングルマザーの美苗は、兄夫婦と両親、祖母が引っ越したばかりの家に幼い娘とともに身を寄せる。そこは有名な事故物件で「ある部屋に絶対に足を踏み入れてはいけない」と言われている。誰もいないはずの部屋から足音が聞こえ、眠ったままの娘がなにかに手を引かれるように寝室を出て行く。この家はどこかがおかしい……。美苗は霊能者を名乗る女性に助けを求めたが、ついにある日、その部屋から娘が意識のない状態で発見される。娘を助けようとする美苗は、この家に隠された、驚愕の過去を知る――。第8回カクヨムWeb小説コンテスト〈ホラー部門〉大賞を受賞した著者による、戦慄の「家」ホラー!感想WEB小説とホラーの組み合わせ、面白く読んだが、中身が薄いのは携帯小説はやはり苦手だった。評価5点わたしと一緒にくらしましょう [ 尾八原 ジュージ ]前作みんなこわい話が大すき【電子書籍】[ 尾八原 ジュージ ]
2024.11.25
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こんにちは中ちび太です。今日のおすすめは、岡野大嗣「うたたねの地図」です。書き出し入り口でもらったばかりのポケットティッシュ。うみのしゃしんが印刷された紙が入っていて、空の青を背景に、カモメのシルエットを模した白い文字が並んでいる。内容これまで取りこぼしてきた日々の感情を忘れないために短歌を詠む、人気歌人・岡野大嗣さん初の短歌×散文集です。さまざまな場所をテーマに、短歌を詠むときのまなざしから生まれた散文とたね(短歌が出来上がる前のメモ)、150首の短歌をもとに、〈夏のとある街〉を作りました。今まさにその場所にいるような、その場所とつながっているような感覚になれる新しい本。さまざまな場所と出合いなおすことで、短歌と散文、感情が響き合って、懐かしさとともに新しい風景があふれだします。ぜひ、短歌の世界と歌人のまなざしを追体験しながらうたとたねをヒントに、夏のとある街の地図を心に描いてお楽しみください。感想「銀行のティッシュに入っていた紙の海辺にたなびくウエディングドレス」、「抱きしめて浴びるウォータークーラーにつま先立ちで夏の呼吸を」短歌と散文集の構成、いまいち散文の部分が面白くなかった。評価うたたねの地図 百年の夏休み [ 岡野 大嗣 ]前作うれしい近況/岡野大嗣【3000円以上送料無料】
2024.11.25
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こんにちは中ちび太です。今日のおすすめは、小林早代子「たぶん私たち一生最強」です。書き出しうちらの時代は終わった。その生まれたての赤ん坊を前にして、四人の女たちは思い知らされていた。へその緒を切られて体を拭かれ、母親の胸の上にうつ伏せているその小さい生き物は、四人が打ちのめされてしまうほど圧倒的な「始まり」のかたまりだった。内容最弱な夜にひらめいた、最強になれる選択肢。宇垣美里、酒寄希望(ぼる塾)、スケザネ、武田砂鉄、ヒャダイン、三宅香帆、宮島未奈、柚木麻子、吉川トリコ、吉田大助が惜しみなく絶賛、書店員からも称賛の声多数の話題作!全員揃えばいつだってバイブス最高!花乃子、百合子、澪、亜希の四人は高校時代からの女友達。バカ話も重ためな恋愛話もマジレス無用の寸劇も、全てが楽しい20代。そろそろ人生の選択を迫られる年齢を迎え、花乃子が思い描くのは「四人で一生一緒にいる」暮らし――。でも、男はいらないってわけじゃないし、結婚だって出産だって興味はある。じゃあ、私たちの幸せっていったい何……?バカ笑いしたいときも死にたくなる夜もずっとずっと分かち合って生きて行きたい四人が、別れた男にスマブラでダメージを与えながら大マジメに考えた「一生最強」の人生とは!? R-18文学賞出身の新鋭が圧倒的センスで紡ぐ、自由と決断の物語。感想同姓時代が長くてセックスレスに陥ってる女、セックス好きだがいまいちセックスの喜びを味わえない女、子どもだけはほしい女、結婚という形にとらわれず、同世代のおんなが試験管ベビーで子どもを持って、四人共同生活の共通の子どもとして育ててゆこうという試み、最終章の視点、その子供からの書き起こしという試みがユニーク。評価7点たぶん私たち一生最強 [ 小林 早代子 ]前作くたばれ地下アイドル [ 小林 早代子 ]
2024.11.25
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こんにちは中ちび太です。今日のおすすめは、岩井圭也「夜更けより静かな場所」です。書き出し久しぶりにママと話をしたのは、決まった試験の勉強中だった。三年の前期試験は二年までと比べると格段に範囲が狭くなって楽だったけれど、だからといって気は抜かない。内容人生は簡単じゃない。でも、後悔できるのは、自分で決断した人だけだ。古書店で開かれる深夜の読書会で、男女6名の運命が動きだす。直木賞(2024年上半期)候補、最注目作家が贈る「読書へのラブレター」!一冊の本が、人生を変える勇気をくれた。珠玉の連作短編集!感想朝から24時まで開店しているユニークな古書店をおじさんが経営、24時から毎月読書会を運営、6人の常連がそれぞれ選書した、作品群や、古書の値付けなど、読ませどころが満載だった。夜更けより静かな場所 [ 岩井 圭也 ]前作科捜研の砦/岩井圭也【1000円以上送料無料】
2024.11.24
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こんにちは中ちび太です。今日のおすすめは、久米絵美里「天国にたまねぎはない」です。書き出しあ、しまった。今日、神さま、休みだった。学校の昼休み。紙パックのコーヒー牛乳を買おうとして財布から取り出した百円玉が、自販機の下にころがりこんだとき、ぼくは反射的にそう思った。内容ある日、ぼくは死んだはずのいとこから天国にたまねぎを密輸するバイトを持ちかけられた――毎日をただこなすように生きてきた平凡な中学生のキートは、死んだはずの7歳上のいとこから、天国にたまねぎを密輸するバイトを持ちかけられた。ついでに、死後も更新が続くいとこのSNSの乗っ取り犯探しも命じられる。突然訪れた非日常。その中で、自身の平凡さをもてあまし、非凡であることに憧れと恐れの両方を抱いていたキートが、最後にたどりついた真実とは……。SNSが全世代に普及している昨今、そのアカウントは死後も残り続け、鮮明な思い出を映し続ける。ある少年が、亡くなった人のSNSアカウントに向き合い、自分なりの「生きぬき方」を見つけるまでの物語。感想死んだはずの中学生の友人が、誰かがなりすましているのか、毎日、SNSが更新されている。その内容はなぜか、玉ねぎを使った料理のレシピばかり、なぜ玉ねぎなのかわかりにくい作品ではあった。評価5点天国に玉ねぎはない [ 久米絵美里 ]前作嘘吹きパスワード (わたしたちの本棚) [ 久米 絵美里 ]
2024.11.24
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こんにちは中ちび太です。今日のおすすめは、向坂くじら「いなくなくならなくならないで」です。書き出しファントムバイブレーションシンドローム。実際には起きていない携帯電話の振動を錯覚することをそう呼ぶのだという。携帯電話の普及によって、ポケットのなかに触覚的に着信を受けることを学習した身体は、衣服やなんかのわずかな刺激に反応してしまう。内容死んだはずの親友・朝日からかかってきた一本の電話。時子はずっと会いたかった彼女からの連絡に喜ぶが、「住所ない」と話す朝日が家に住み着き――。デビュー作にして第171回芥川賞候補作。感想芥川賞候補作。死んだはずの友人の朝日から電話がかかってきて、家もないという境遇から、一緒に生活することとなった。死んだはずの人物が実は生きていたというプロットは、よくあるパターン。評価6点いなくなくならなくならないで [ 向坂くじら ]前作とても小さな理解のための【電子書籍】[ 向坂くじら ]
2024.11.23
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こんにちは中ちび太です、今日のおすすめは、星月渉「私の死体を探してください。」です。書き出しこんなことは信じられないと言われてしまうかもしれませんが、私にとってこの世における最大の謎は、ギザの大ピラミッドやバビロンの空中庭園のように人々が口々に「謎だ」というようなモノではありません。内容note創作大賞W受賞でドラマ化決定のノンストップスリラー。ベストセラー作家・森林麻美がブログで自死をほのめかし「私の死体を探してください」という文章を残して消息を絶つ。担当編集者の池上は新作原稿を手に入れるため麻美を探すが、その後も作家のブログは更新を続け、様々な秘密が次々に暴露されていく。衝撃的なブログの内容に翻弄されていく関係者たち。果たして麻美の目的は?そして麻美は本当に死んでいるのか?感想ブログで自死を知らせ消息を絶った女、私の死体を探してくれと言いながら、ブログは更新され続けられる。ここ数本の小説にありがちなパターン、結末がグダグダになったのがいかにも残念。評価5点
2024.11.23
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こんにちは中ちび太です。今日のおすすめは、井上浩司「鉄道ダイヤ探求読本」です。書き出し本書は2023年に刊行した「図説鉄道配線探求読本」の姉妹本という位置づけにある。前著で取り上げた「線路」は列車を走らせるためにあるが、その線路に、どのように列車を走らせるか・・・すなわち「運行計画の策定」は、鉄道事業者にとって「商品」の出来を左右する問題となる。感想運行管理者が利用者の最大の利便性のために、また鉄道従業員の健康維持のことも考えながら、いかに列車を走らせるかに苦心をしているのかがよく分かった。ただ、スピード競争だけではないことも含めて。評価6点鉄道ダイヤ 探究読本 安全・利便な究極の運行計画はいかに描かれるか [ 井上 孝司 ]前作図説鉄道配線探究読本 線路の“つながり方”にはなるほど!の理由がある/井上孝司【3000円以上送料無料】
2024.11.22
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こんにちは中ちび太です。今日のおすすめは、中島京子「坂の中のまち」です。書き出し久世志桜里さんは、ヒッピーをしていたことがあるらしい。そう教えてくれたのは、わたしの母だけれど、ヒッピーというのがどんなものか、いまひとつ想像が追いつかない。内容「隣に座るって、運命よ」文豪ひしめく坂だらけの町の、不思議な恋の話。大学進学を機に富山県から上京した、坂中真智は、おばあちゃんの親友・志桜里さんの家に居候することになった。坂の中にある町――小日向に住み、あらゆる「坂」に精通する志桜里さん。書棚には「小日向コーナー」まであり、延々と坂について聞かされる日々が始まった。ある日、同級生の誘いで文学サークルに顔を出すことになったが、集合先のアパートは無人で、ちょっと好みのルックスをした男の子が一人やってくる。一緒に帰ることになった真智に、彼は横光利一の『機械・春は馬車に乗って』を「先生の本」といって渡して来、米川正夫、岸田國士、小林秀雄がいまも教鞭をとっているかのような口ぶりで……ひょっとして、この人、昭和初期から来た幽霊なのでは?江戸川乱歩『D坂の殺人事件』の別解(⁉)、遠藤周作『沈黙』の切支丹屋敷に埋まる骨が語ること、安部公房『鞄』を再現する男との邂逅、夏目漱石『こころ』みたいな三角関係……風変わりな人たちと、書物がいろどるガール・ミーツ・幽霊譚感想文学散歩の味わいを持つ小説、舞台は小日向、下宿先のお婆さんの、坂にまつわるうんちく話が面白い。時々、文豪なども顔を見て出すのも面白い。評価6点坂の中のまち / 中島京子 【本】前作 小さいおうち (文春文庫) [ 中島 京子 ]
2024.11.22
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こんにちは中ちび太です。今日のおすすめは、吉田修一「在明、一万年愛す」です。書き出し九十九島は長崎県の北西、北松浦半島犀川にたらなるリアス式の群島である。ただ、九十九という数字は風光明媚なイメージを喚起させるためのもので、実際の島数は二百八とも二百十六とも言われている。内容物語の名手が放つ、 感涙のミステリー。横浜で探偵業を営む遠刈田蘭平のもとに、一風変わった依頼が舞い込んだ。九州を中心にデパートで財をなした有名一族の三代目・豊大から、ある宝石を探してほしいという。宝石の名は「一万年愛す」。ボナパルト王女も身に着けた25カラット以上のルビーで、時価35億円ともいわれる。蘭平は長崎の九十九島の一つでおこなわれる、創業者・梅田壮吾の米寿の祝いに訪れることになった。豊大の両親などの梅田家一族と、元警部の坂巻といった面々と梅田翁を祝うため、豪邸で一夜を過ごすことになった蘭平。だがその夜、梅田翁は失踪してしまう……。感想失踪した創業者オーナー、離小島で発見される。戦後の混乱期に戦死者になりすまし、その事実を知っている元嫁を殺したことなど、ある意味、松本清張の砂の器を彷彿とさせるが、読ませどころは吉田修一らしいでき。評価6点罪名、一万年愛す [ 吉田 修一 ]ブランド (角川文庫) [ 吉田 修一 ]
2024.11.21
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こんにちは中ちび太です。今日のおすすめは、折原豊「お人好しのすすめ」です。書き出しあなたは、常日頃、自分は損ばかりしていると感じていないだろうか。しかし損ばかりしているのは、あなただけではない。夏目漱石の「坊ちゃん」は、主人公の「子供のころから損ばかりしている」という述懐から始まる。内容あなたのように、人のために損ばかりしている人をお人好しと言う。この本は、そうしたお人好しのあなたに贈る本である。あなたのお歳はおいくつだろうか。未成年者なら、お人好しであることをやめることもできるかも知れない。しかし、すでに二十年以上もお人好しで生きてきたあなたには、もはや手遅れであろう。どうせお人好しで生きるしかないのなら、お人好しをやめようとして無駄にじたばたすることはない。正しいお人好しになる方がいい。この本はお人好しのあなたと共に、正しいお人好しになる道を考える本である(本文より)。――利己から生まれる他者との対抗軸があふれる現代社会。そのさまざまな場面で心削られているお人好したちに、知識人としての高い見地から軽妙洒脱な文章で著者が送る、正しいお人好しになるための本。感想あいさつを惜しまない、約束を守ろう、正義を大切に、勇気を出そう、気前の良さを発揮する、感謝を忘れない、同情と憐憫は違う、小さな親切というのは、東京大学の卒式で、優秀な学生に勧めたもの、お人好しは損ばかりしているが、それが徳を積むことといった教え。評価3点お人好しのすすめ [ 折原 裕 ]
2024.11.21
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こんにちは中ちび太です。今日のおすすめは、鯨井あめ「白紙を歩く」です。書き出しセミの鳴き声と部活動の掛け声が、窓の外で響いている。梅雨が明けて夏が始まった六月末。シャツの胸元をぱたぱたと煽ぎながら階段を下りていると、「定本」と呼び止められ、わたしは踊り場で振り返った。内容天才ランナーと小説家志望。人生の分岐路で交差する2人の女子高生の友情物語。ただ、走っていた。ただ、書いていた。君に出会うまでは――。立ち止まった時間も、言い合った時間も、無力さを感じた時間も。無駄だと感じていたすべての時間を掬い上げる長編小説。「あなたをモデルに、小説を書いてもいい?」ケガをきっかけに自分には“走る理由”がないことに気付いた陸上部のエース、定本風香。「物語は人を救う」と信じている小説家志望の明戸類。梅雨明けの司書室で2人は出会った。付かず離れずの距離感を保ちながら同じ時間を過ごしていくうちに「自分と陸上」「自分と小説」に真剣に向き合うようになっていく風香と類。性格も好きなことも正反対。だけど、君と出会わなければ気付けなかったことがある。ハッピーでもバッドでもない、でも決して無駄にはできない青春がここに“在る”。感想天才的な陸上ランナーと、小説家志望の少女がその陸上ランナーをモデルにして、小説を書こうという、プロットがユニークで面白い着想だった。評価6点白紙を歩く [ 鯨井 あめ ]前作晴れ、時々くらげを呼ぶ (講談社文庫) [ 鯨井 あめ ]
2024.11.20
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こんにちは中ちび太です。今日のおすすめは、丸橋賢「はじまりの谷」です。書き出し直文はかじかんだ掌を合わせて、白い息を吹きかけた。新しい絣の綿入れはんてんについた雪をたたいて落とし、手を袂に引っ込め、呼吸を落ち着かせた。内容八十歳の新人作家堂々のデビュー第一作!自らの克明な記憶をモデルに感受性豊かな少年を見事に描き切った珠玉の連作短編集。かつての日本人はこうやって「はじまり」を迎えた。昭和初期の上州の農村を舞台に、現代では失われてしまった、美しい風景、自然への畏怖、家族や近隣の人々のぬくもりなどを瑞々しい筆致で描く。少年はまっさらの心で、いくつかの事件を通して成長し、自らの生涯を切り開いていく思考の礎ともいうべき精神性を養ってゆく。感想昭和初期の群馬県の原風景。自然豊かな土地での狩猟生活を通した少年の成長期として読ませるものだが、素朴さだけの味わいだった。評価3点はじまりの谷 [ 丸橋賢 ]
2024.11.20
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こんにちは中ちび太です。今日のおすすめは、一色さゆり「音のない理髪店」です。書き出し新しい本を置いて、最初のページをひらく。五森つばめという私の名前と、相手の名前そして日付を、ペンで慎重に素早く記す。間違わずに書き終えられ、小さく安堵の息をついた。内容音のない世界でも、きっとメッセージは届くから──ろう理容師を祖父に持つ若手作家。その半生を描こうとする姿が胸に迫る傑作小説! 日本の聾学校ではじめてできた理髪科を卒業した第一号であり、自分の店を持った最初の人。そんな祖父を持つ五森つばめは、3年前に恋愛小説系の文学賞を受賞してデビューした。だが、その後自分の目標を見失い、2作目が書けないでいた。そんな折、デビューしたところとは違う出版社の編集者から声を掛けられ、祖父の話を書くことを強く勧められる……。ろうの祖父母と、コーダの父と伯母、そしてコーダの娘の自分、さらには聾学校の先生まで。三代にわたる希望をつなぐ取材が始まった。感想実在のモデルが家族にいるおかげで、妙に真実っぽくて、感動を与えた物語り、手話の世界というのは知られているが、口話というのが本当にあると知って、感動を覚えた。評価6点音のない理髪店 [ 一色 さゆり ]前作ユリイカの宝箱 アートの島と秘密の鍵 (文春文庫) [ 一色 さゆり ]
2024.11.19
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こんにちは中ちび太です。今日のおすすめは、西村亨「孤独への道は愛で敷き詰められている」です。書き出し「親の因果が子に報う、ってやつですか?」網の上のハラミをトングで乱暴にひっくり返しながら、吐き捨てるように関根奈々は言った。元日の夜高円寺駅北口にある小さな焼肉屋で、私は初めて会った女性と焼き肉を食べていた。内容===アラフォーの柳田譲の前に現れた三人の女との出会いと別れ。愛を求め、また与えようとして却って孤独へと突き進んでしまう魂の悲哀を描く。===「二年半付き合った方とはどうして別れたんですか? 結婚は考えなかったんですか?」青春なんて私にはなかった。人が当たり前にできることが何ひとつできなくて、いくつもの後悔を重ねるだけだった。ずっと何かに抑え込まれているみたいに、人の目ばかりを気にして生きていた。そんな自分を解放してくれたのが夕子さんだった。こわばった心をほぐしてくれ、自分に生きる楽しさを教えてくれた唯一人の人。そんな大切な人を、自分は手放した。(本書より)感想40代で薄毛のためか女性経験のない男が三人の女と交際、最初の女は焼き肉屋デートなのに、一切肉を口にせず、ビーガン気取りで振られ、二番目の女は30歳前で農家のバイトで知り合ったちょっと頭の弱い女、向こうから迫られると逆に恐れをなす性癖が読んでいて、楽しかった。評価6点孤独への道は愛で敷き詰められている (単行本) [ 西村 亨 ]前作月ぬ走いや、馬ぬ走い [ 豊永 浩平 ]
2024.11.19
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こんにちは中ちび太です。今日のおすすめは、増田晶文「蔦屋重三郎江戸の反骨メディア王」です。書き出し蔦屋重三郎(1750〜97)の仕事を理解するなら、彼をぐぐっと現代へ引き寄せるといい。そうすることで、江戸の庶民から「蔦重」と愛称で呼ばれた本屋のリアリティが格段に増してくる。内容偉そうな「お上」は、おちょくれ!――天才編集者の一代記。貸本屋から身を起こし日本橋通油町の版元となった「蔦重」こと蔦屋重三郎。江戸後期、田沼意次の浮かれた時代に吉原の「遊郭ガイド」を販売し、「狂歌集」や「黄表紙」のヒット作を連発した男は、言論統制を強める寛政の改革に「笑い」で立ち向かう。北斎や歌麿、写楽ら浮世絵師の才能も見出した波瀾万丈の生涯を活写する。感想「ベストセラーのためならお上も恐れぬ!」という、キャッチコピーで示すように、松平定信などの緊縮経済に反発し、北斎や歌麿、写楽を世に出した男、吉原の遊女たちへの貸し本業から始めたというところが、目の付け所が適切、そういう経緯もあって、現在のTSUTAYAと関連があるのかと錯覚していた。評価6点
2024.11.19
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こんにちは中ちび太です。今日のおすすめは、長嶋有「僕たちの保存」です。書き出し武上さんの車をみつけられない。武蔵五日市駅の改札を出て、階段を下りながらロータリーを見渡す。スマートフォンには「着いた」と短いメッセージが届いており、つまりもう待っているはず。感想新幹線、バス、飛行機、テスラに乗った3人組のロードムービー、震災被害者の形見のSMXパソコンがキーになって、物語は進んだ行くが、しょせんは庶民で終わってしまうという、普通のオチ評価6点
2024.11.18
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こんにちは中ちび太です。今日のおすすめは、小原瑞樹「ハートレス・ケア」です。書き出し「じや、社会人デビュー一ヶ月を祝して、かんぱーい!」語りと音を立てて四つのグラスが重なり合い、一斉にジョッキを口もとに運ぶ。冷たいビールが喉元を通り過ぎ、全員で示し合わせたようにぷはぁっと息をつく。ハートレス・ケア (opsol book) [ 小原瑞樹 ]感想銀行マン、公務員、広告代理店など立派な仕事に就職した、友人に比べて、就職活動がうまくゆかず、嫌々ながら、続けて来た介護職、いつもやめよう、やめようと考えていた仕事も、面倒をみていた患者からの一言で救われ、もう少し続けようと考え直した姿にほっこりした。評価7点
2024.11.18
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こんにちは中ちび太です。今日のおすすめは、古川きょう「モモ、南野島部行く」です。書き出しマルチーズはマルタ島原産の小型犬で、世界最古のペットと言われている。気候の温暖な地中海で、太陽の光りをいっぱい浴びて走り回る愛くるしい姿をついつい想像してしまう。新しくペットをえらぶとき、やっぱりこれしかないとためらわぶにマルチーズに決まる。内容南の島・沖縄県多良間島。そよぐ風。愛くるしいマルチーズのモモちゃん。ちょっと控えめ、茶トラの野良猫トラちゃん。か弱き、かそけき生き物を愛護し、慰撫される歯科医のパッパとマンマ。そして、すぎゆくおだやかな時間・・・。心にしみわたる至福のときを味わいください。平明達意。新しい愛犬文学の誕生です。感想三匹兄弟のマルチーズを連れて南の島へ移住した歯科医が主人公である、一番下の番犬モモちゃん人間との触れ合いをただなぞっただけの物語、文芸春秋企画部出版部の本は自費出版社風の本が多いのかと実感させられた。評価2点モモ、南の島へ行く / 文芸春秋
2024.11.18
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こんにちは中ちび太です。今日のおすすめは、「愛ちゃんのモテる人生」です。書き出しはろー、愛ちゃんだよ。今回もたくさんの質問やメッセージありがとう。なんか、すっかりみんなの質問に答えるトークチャンネルになっちゃったね。内容18歳のオープンリーゲイ愛は、とあるきっかけで動画配信を始める。氷室冴子青春文学賞第五回大賞、鮮烈なデビュー作!感想セクシャルマイノリティの愛ちゃんが可愛さ爆発で先輩の男からもてまくる物語。ジュニア小説の味わいが残ったのが残念ではあった。評価5点愛ちゃんのモテる人生 [ 宇井 彩野 ]
2024.11.17
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こんにちは中ちび太です。今日のおすすめは、燃え殻「愛と忘却の日々」です。書き出しぼくのラジオ番組に届くメールの中に「生きる意味ってなんですか?」という内容のものが、週に二、三通くらいはある。「生きる意味ってなんですか?」内容「週刊新潮はこの連載から読む」という中毒者が、ますます増殖中の大人気エッセイ集の最新刊です。推薦コメントを寄せてくれたのは、ご自身のブログに「すでに読んだ燃え殻のエッセイ集、捨てようかなと手に取ったら、おもしろくて止まらなくなった。捨てずにおこう」とお書きになっていた作家・演出家・俳優の松尾スズキさん。 最新刊では、コロナ禍の暮らしぶりや渋谷の路上の奇跡、うかつにも五十歳になって、いまだにフルスィングで叱られている日々、保証人になるなどの「人生初の出来事」、ごはんの話をしているのが「本当の幸せ」だと気づいた瞬間など、どうってことないけど、不思議としみじみ沁みるエッセイの数々。また、燃え殻エッセイの「常連」とも言える学生時代の唯一の話し相手だった柴犬のジョン、母、父、祖父、テレビ界、出版界、J-WAVEのひとたち、BE:FIRSTのLEOさんもしっかり登場します。 週刊新潮の連載でタッグを組む大橋裕之さんのイラストと(燃え殻さんの過去と出来事を勝手に想像した)描き下ろしマンガも収録。この連載をまとめた第一作、『それでも日々はつづくから』は2023年の「造本装幀コンクール」に入選(デザイナーは熊谷菜生さん)、また本作収録の「おっぱい、足りてる?」は日本文藝家協会編「ベスト・エッセイ2024」に選出されました(編纂委員は、角田光代、林真理子、藤沢周、堀江敏幸、町田康、三浦しをんの6氏です)。感想六本木の交差点でキャッチの男に「オッパイ足りてる」と声をかけられて友達になった。僕の青年時代はエロ本は河原のゴミくらいに潜んでいた。週間新潮の大人気エッセイに評価されている。評価6点愛と忘却の日々 [ 燃え殻 ]
2024.11.17
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こんにちは中ちび太です。今日のおすすめは、モーリー・ロバートソン「日本、ヤバい。」です。書き出し今、世界の枠組みが不安定化しています。大きくは国際秩序が流動化し、小さくは一人ひとりの日常が変わっています。内容生き残るために、自分を変えろ。不安の「正体」とは? 日本復活のカギは何?混迷の時代を生き抜くためのヒントが満載!ニッポンの問題をやさしく読み解く「警世の書」「多様性とは何か? 自由になって、生きたいように生きればいい。それが自分も世界も幸せにする、という考え方です。自由とは誰かが与えてくれるものではなく、自分で勝ち取るものです。その自覚こそが自由の始まりです」(本書あとがきより)感想富山のパンクバンドで衝撃を受け、それを見たいために猛勉強、東大からハーバード大学へ、欧米の若きZ世代は「環境問題」、「労動問題」、「基本的人権」を第一に考えて積極的に行動している。日本人とは大違い。評価5点日本、ヤバい。「いいね」と「コスパ」を捨てる新しい生き方のススメ【電子書籍】[ モーリー・ロバートソン ]
2024.11.17
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こんにちは中ちび太です。今日のおすすめは、林望「結局、人生って最後に残る趣味は何か」です。書き出し思えばはるかな道をたどってきたものだ、というか感慨がある。私が生まれたのは、昭和二十四年だから、太平洋戦争が終わってから、まだほんの四年くらいしか経っていなかった時分で、あの「ドラえもん」の漫画によく出てくる「土管の置いてある原っぱ」などが、そこらじゅうに残っていた頃だ。結局、人生最後に残る趣味は何か【電子書籍】[ 林望 ]感想人生に趣味が必要なのは、仲間づくりなんではなくて、自己実現、定年後の時間ができれば、趣味の生活などという妄想は非現実的、結局、最後に残った趣味は昔ながらの能評価5点
2024.11.16
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こんにちは中ちび太です。今日のおすすめは、大前粟生「かもめジムの恋愛」です。書き出し「なんて読む?」と聞かれた。「はい?」と私は返した。経営難のためジムの月額料金が来月から千円値上がりするという掲示を受付中ロビーに張り出していた私に、おじいさんが声をかけてきた。かもめジムの恋愛 [ 大前 粟生 ]感想主人公の女子アルバイトとジムの受け付け、駅前ジムに集まる高齢者の一人と、恋愛相談、街の再開発で閉店に追い込まれるジム、相談相手がいなくなったヒロインの恋は成就するのか、高齢者同士の恋愛についても記載しているのがほっとする。評価7点
2024.11.16
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恋はいつも少し足りない 140字で切ない結末 [ 神田 澪 ]こんにちは中ちび太です。今日のおすすめは、神田澪「恋はいつも少し足りない」です。書き出し「好きな人に告白しようと思う」学校の帰り道で友人は言った。「そっか」ついに、と切ない気持ちに胸が痛む。内容編集レビューいつだって、理想の恋にはあと一歩届かない――著者TikTok総再生回数2500万回超! 1ページで泣ける、恋の超短編集140字小説のパイオニア・神田澪が紡ぐ、“恋”の物語のみを集めた140字小説集。Xに投稿し大人気だった作品から、新規書き下ろしまで159作を収録。お互いの心臓の音が聴こえるくらいドキドキした青春のひと時、全力で恋をしたけれどうまくいかなかった日、傷つけ合いながらそれでも一緒にいた夜……。キュンとしたり、切なくなったり、たくさんの恋の話がつめこまれた1冊です。感想TikTokに掲載する140字の超短編集、携帯小説に変わるのか新しい小説のかたち、この文字数で内容のあるものを凝縮できるかという試みではあるが、彼氏に向かって、「自分、私のことめっちゃ好きや?」とかいう言葉遊びで、おっというものもあるが、全体的なレベルではなかった。評価4点
2024.11.16
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こんにちは中ちび太です。今日のおすすめは、鈴木敏夫「体験的女優論」です。書き出し宮崎駿監督や高畑勲監督と多くのアニメーション映画を作って来た、スタジオジブリのプロデューサー・鈴木敏夫。1948年、愛知県名古屋市に生まれた彼は、子供の頃から洋邦の垣根なくあらゆる作品を見ていた。無類のファンでもあった。体験的女優論 [ 鈴木 敏夫 ]内容スタジオジブリの名プロデューサーによる映画エッセイ。大原麗子、風吹ジュンから、梶芽衣子、緑魔子など、無類の映画好きが見た映画と女優の魅力が満載。ジブリ映画製作の裏側も。感想ジブリ映画で声優を務めた関連からの女優論エッセー、桃井かおりの「青春の蹉跌」、「赤い鳥逃げた?」、緑魔子の「二匹の牝犬」、倍賞千恵子の「霧の旗」などを見たいと感じた。それにしても、コラムだから仕方ないのか、あまりにも毎回、慶應義塾大学卒業という繰り返しが笑った。評価6点
2024.11.15
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こんにちは中ちび太です。今日のおすすめは、角田光代「あなたを待ついくつもの部屋」です。書き出し面白い気分ではなかった。だって、ひとりでいいとあれほど言ったのに。つい強い口調でそう言うと、「でも、もう東京駅に着いちゃったもの」という、のんきな母の声が携帯電話から返ってきた。あなたを待ついくつもの部屋/角田光代【1000円以上送料無料】内容母に教わった「バーの味」、夫婦で訪れた憧れの上高地……。全国3か所の帝国ホテルを舞台に織りなす、めくるめく部屋の物語。帝国ホテル発行の会報誌「IMPERIAL」で11年間にわたって連載した、42編のショートショートを一冊にまとめました。幻想的な夢の世界を描くものもあれば、現実の夫婦を描いたものもあり、また過去と現在を行き来して語るものも。42編すべて趣向の違う、角田光代さんの幅の広さを思い知る短編集です。1話5ページで読める短い文章量ながら、じんわりと心が温まり、時には泣け、時には笑えるストーリーが詰まっています。感想東京、大阪、上高地の帝国ホテルを舞台にした42の物語を紡ぐ短編集、老齢の母親が休息時間に暇をつぶすむすめとのバーラウンジ、ちょっとした高級感のある鉄板焼きレストラン、上高地の安らぎなど、都会と地方のホテル活用術など、読み心地も満載評価6点
2024.11.15
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こんにちは中ちび太です。今日のおすすめは、平野沙季子「ショートケーキは背中から」です。書き出し早くこの日々が思い出になってほしい。そう思いながら過ごしたことを、赤坂に来ると思い出す。去年の秋に会社を辞めるまで、私は新卒で入社した赤坂の会社で4年半働いていた。ショートケーキは背中から [ 平野 紗季子 ]内容『生まれた時からアルデンテ』から10年、やっぱり虚無にはごはんが効く。「きっと私は世界を理解したい。そのための手段が、食べものだったのだ。」実家すぎる店からいつかは訪れたい名店まで、人より貪欲に食べ、言葉を探し続けた20年。その末に見た〈食とは何か〉の(今のところの)結論がここにあり! 著者が自らに課した100本ノック=書き下ろし「ごはん100点ノート」を大収録。感想ごはん100点ノートはよくも100本もの料理ネタがあったことに感心させられた。表題作はショートケーキはたんぱくな先端から食べるのではなく、あじも濃厚な背中から味わうべしという教え、突っ込み癖のある作者が、自分の中にリトル小峠がいるといった表現がユニーク、自分を受け入れてくれない京都文化でイノダコーヒーだけはよそよそしくない、銀だこの旬は秋だと思う。評価6点
2024.11.15
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こんにちは中ちび太です。今日のおすすめは、高嶋哲夫「家族」です。書き出し私は無意識のうちに顔をしかめ、息を止めていた。「気分が悪いのか」父の直樹が聞いてくる。「病院の匂いが嫌いなの」「そうだったな。子どもの時からだ。しかし、今の病院は匂いなんてしないだろ」家族 高嶋哲夫/著内容雑誌記者の笹山真由美は、若年性アルツハイマーを発症した父に付き添い病院を訪れた。彼女はその病院のICUで、頭に包帯が巻かれ、複数の管につながれた意識のない少女・美咲が流す涙を目撃する。美咲の家族は殺害され、自宅火災の焼け跡から遺体で発見されていた。事件を調べ始めた真由美は、美咲が典型的なヤングケアラーだったことを知る。重度の障害者の兄と認知症の祖母の面倒を、看護師の母にかわって一人で看ていた美咲が、衝動的に家族を殺して放火したと考える警察の見解に違和感を覚えた真由美が突き詰めた衝撃の真実とは……?感想家族の面倒を見るヤングケアラーの長女が放火殺人を実行した真犯人なのかという、ミステリ話なのかと読み進んでみたが、その謎は判然とせず、やはり題名通り家族小説の味わいだった。評価6点
2024.11.14
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こんにちは中ちび太です。今日のおすすめは、愛川晶「モウ半分クダサイ」です。書き出し「・・・ああ、そうですか。ありがとうございます。おい、お前、お手柄だぜ。男の子なら、うちの跡継ぎ・・・ええっ?これが・・・この子は、ずいぶんとまた、シワだらけだなあ」モウ半分、クダサイ (単行本) [ 愛川晶 ]内容本当は怖い落語×驚愕のどんでん返し!著者渾身の作家生活30周年記念作品その噺を聞いてはいけない男たちを地獄へ引きずりこむ闇の落語会落語会へ行くと、客は自分だけ。盲目の落語家が語る「もう半分」で、誰も知らないはずの秘密が暴かれる(「モウ半分、クダサイ」)。若い美人と浮気を楽しむはずが、大切なものを失う羽目に。「後生うなぎ」のように川へ投げ込まれたのは?(「後生ハ安楽」)「どくろ栁」の稽古が進むにつれて、おぞましい記憶がよみがえる。噺に導かれ、行き着く先は……?(「キミガ悪イ」)感想この作家が落語ミステリーの大家だとは、全く知らなかった。少し残念だったのは、モチーフにする作品がもう少しメジャーね作品だと、もっとわかりやすかっと。評価5点
2024.11.14
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こんにちは中ちび太です。今日のおすすめは、田村和大「修羅の国の子供たち」です。書き出し正範は、寝床の押入れの中から襖を少し開け、外の様子を窺った。タオルケットを腹にかけた明美が、布団で気持ちよさそうにいびきをかいている。もう一組の布団は畳まれたままで種雄の姿はない。父親の布団を敷きもせずに母親が寝てるということは、種雄は昨夜帰ってこなかったのだ。修羅の国の子供たち [ 田村 和大 ]内容「ヤクザの子どもである過去は消せない。ならば、ヤクザそのものを潰せばいい」――正範と寅。ヤクザである父を持つ二人の少年は、過酷すぎる十代を過ごし、それぞれにヤクザへの復讐を誓う。正範は猛勉強の末、検察官になり、暴力団取り締まりの最前線へ。そして寅は・・・・・・。二人の少年がたどり着いた結末とは!? 現役弁護士作家が描くヤクザ小説の新境地。感想ヤクザの父を持つヤクザと、猛勉強の末に検察官となった主人公、この世にヤクザはいらないと、警察とヤクザのなれ合い社会を根絶するために、警察社会とも徹底的に戦おうとする姿に感激した。今までにない、ヤクザ小説の新境地。評価6点
2024.11.14
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こんにちは中ちび太です。今日のおすすめは、まくるめ「その怪異はまだ読まれていません」です。書き出し怪異に違う人間とはどういう人間だろうか?怪談、怪異、都市伝説。そういったものを語る切り口として、よく見られるパターンがある。その怪異はまだ読まれていません/まくるめ【1000円以上送料無料】感想SNSで発信する怪異短編小説集、3名の人物に取材し、身の回りで起こった不気味な出来事を語り尽くした。下水道に住むワニは日が当たらないので、真っ白だったとかが代表的な少し辻褄が合わない、デマ話と言う要素もあった。評価4点
2024.11.13
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こんにちは中ちび太です。今日のおすすめは、千早茜「雷と走る」です。書き出し蝿が犬の耳を喰っている。垂れ下がったうすいみみのふちで、黒く蠢いている。木陰で眠る犬は時折りぴくぴくと耳を動かして群がる蠅を払っているが、忌まわしい虫は執拗な戻ってくる。雷と走る [ 千早 茜 ]内容幼い頃海外で暮らしていたまどかは、番犬用の仔犬としてローデシアン・リッジバックの「虎」と出会った。唯一無二の相棒だったが、一家は帰国にあたり、犬を連れて行かない決断をして――。感想野犬を飼うという家庭の物語、例え話ととして、南総里見八犬伝も出て来るが、そういう要素もなく、どこが読ませどころなのか、もう一つ、わかりづらい作品となっている。評価3点
2024.11.13
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フェイク・マッスル【電子書籍】[ 日野瑛太郎 ]こんにちは中ちび太です。今日のおすすめは、日野瑛太郎「フェイクマッスル」です。書き出し「じゃあ、今週の仮ラインナップはいったんこれで」編集長の寺脇文則がそうせんげんすると、森山裕司を含む四人のデスクは、一斉に椅子を引いて立ち上がった。これからまた長い一週間が始まる。長くて短い一週間。フェイク・マッスル【電子書籍】[ 日野瑛太郎 ]内容あらすじたった3ヵ月のトレーニング期間で、人気アイドル大峰颯太がボディービル大会の上位入賞を果たした。SNS上では「そんな短期間であの筋肉ができるわけがない、あれは偽りの筋肉だ」と、ドーピングを指摘する声が持ち上がり、炎上状態となってしまう。当の大峰は疑惑を完全否定し、騒動を嘲笑うかのように、「会いに行けるパーソナルジム」を六本木にオープンさせるのだった。文芸編集者を志しながら、『週刊鶏鳴』に配属された新人記者・松村健太郎は、この疑惑についての潜入取材を命じられ、ジムへ入会する。馬場智則というベテラン会員の助力を得て、大峰のパーソナルトレーニングを受講できるまでに成長。ついに得た大峰との一対一のトレーニングの場で、ドーピングを認める発言を引き出そうとするが、のらりくらりと躱されてしまう。あの筋肉は本物か偽物か。松村は、ある大胆な方法で大峰をドーピング検査にかけることを考え付くのだが――?フェイクが氾濫する時代の、「真実の物語」が始まった。感想三か月で筋肉モリモリになった若手俳優、そのからくりを暴くべく派遣されたポンコツ編集者がスポーツジムで潜入捜査、尿検査をしてもドーピングに引っかからない筋肉増強剤があることが分かった。物語の周辺部分でも読ませようという工夫があったが、新人作家だけに功はそうしていなかった。江戸川乱歩小受賞作品。評価6点
2024.11.13
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こんにちは中ちび太です。今日のおすすめは、桂望実「地獄の底で見たものは」です。書き出し伊藤由美はコンロに載せる。蓋をして火を点けた。少し屈んで鍋のしたな火を覗き込み、強さを確認する。それからキッチンカウンターのうえの時計に目を向けた。地獄の底で見たものは [ 桂 望実 ]離婚、クビ、収入ゼロ……。 もう、だめかもしれない。そこからも、人生は続く。日常に突如現れた落とし穴から、したたかに這い上がる!『県庁の星』の桂望実が描く、アラフィフ女の低温地獄。長年夫を支えてきたつもりだったのに、急に離婚を切り出された専業主婦。新規事業を立ち上げて15年、働きぶりを否定された会社員。ともにオリンピックを目指した教え子に逃げられたコーチ。22年間続けたラジオ番組をクビになり、収入が途絶えたフリーアナウンサー。どん底に落ちた女たちの、新たな人生の切り開き方とは?感想女主人公が地獄の底でどんな悲惨なことを味わったのかということをテーマにした短編集。中でも面白かったのは、オリンピックを目指す水泳選手のコーチが選手のためではなく、自己流の教え方が選手目線ではなかったと逃げられたコーチの心境を描いた短編が良かった。評価6点
2024.11.12
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こんにちは中ちび太です。今日のおすすめは、朝井リョウ「生殖記」です。書き出し尚成はいっつもこうなんです。幼体のころは、ここまでなかったんです。そうですね、たとえば沢山の個体で重いものを運ぶっていう場面に出会したとして、そうそう、体育で使うマットを運ぶとかそういう感じのやつ。生殖記 [ 朝井 リョウ ]内容とある家電メーカー総務部勤務の尚成は、同僚と二個体で新宿の量販店に来ています。体組成計を買うため――ではなく、寿命を効率よく消費するために。この本は、そんなヒトのオス個体に宿る◯◯目線の、おそらく誰も読んだことのない文字列の集積です。感想ヒト、個体としての男、冒頭の体組成計を買いに行った二人、そのことが物語の先をイメージさせるように、個体の体そのものが、どういう要素で構成されているのだろうか、という一作、今まで読んだことのない趣きだった。評価5点
2024.11.12
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こんにちは中ちび太です。今日のおすすめは、八名信夫「悪役は口に苦し」です。書き出しこんにちは、八名信夫です。桃太郎みたいなヒーローでなくても、世のため人のためにできることはある。小学校の学芸会の「桃太郎」で、いつも「鬼の役をやらされていた。悪役は口に苦し/八名信夫【1000円以上送料無料】起伏のある88年間を初めて振り返る。日本を代表する名悪役の波瀾万丈の88年間の歩みを綴った自伝。映画「飢餓海峡」「仁義なき戦い」など任侠ものから時代劇まで数多の出演作での悪役ぶり、そして「う~ん、まずい、もう一杯!」の青汁CMで、一役お茶の間の人気者となりましたが、俳優デビュー前はプロ野球選手として活躍していました。岡山での戦争体験、小学校で見た米軍のキャッチボール姿に始まる野球との出合いや明治大学野球部での苛酷な日々、そして東映フライヤーズ入りから俳優への転向、悪役商会結成。またカメラが回らない場所では東日本大震災や熊本地震で被災した子供たちとの交流も――。感想地獄の明治大学野球部時代、東京大学に負けると島岡御大から五時間の正座を命じられ、野球部を逃げ出した時点で東映フライヤーズからスカウト、野球部を馘首になるものの、球団社長から、東映の俳優生活を勧められる。悪役仲間を集い、あくやくしょうかいを組織、一時期はらじゆで松田聖子の隣の店で、タレントショップを経営、青汁のコマーシャルは自ら発案。評価5点
2024.11.12
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こんにちは中ちび太です。今日のおすすめは、篠田節子「ロブスター」です。書き出し分厚いガラスの向こうは赤い。どこまでも赤い大地が広がっている。午後二時。まだ日が高い時間帯だというのに、空もまた赤い。巨大山火事であぶられた空の赤だが、燃料となる木々などどこにもない。ロブスター 篠田節子/著内容私は人生の終着点を見つけてしまった 生と死の尊厳に迫る優しく美しい一冊感想地球温暖化が進んだ社会、鉱山で働く男は、強制労働なのか、自ら志願して働いているのか、近未来小説を描いたこの作品は、労働のあり方を問うているのか。評価5点
2024.11.11
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こんにちは中ちび太です。今日のおすすめは、白石一文「代替伴侶」です。書き出しその日は午後に予定していたクライアントの打ち合わせが流れてしまい、隼人は早めにオフィスを出た。こういうときはゆとりに連絡して外で食事をすることもあるのだが、今夜は取引先への接待だと言っていたから、そういうわけにもいかなかった。代替伴侶 (単行本) [ 白石 一文 ]内容人口が爆発的に増え、「代替伴侶法」が施行された近未来。 伴侶を失い精神的に打撃を被った人間に対し、最大10年間という期限つきで、 かつての伴侶と同じ記憶や内面を持った「代替伴侶」が貸与されることとなった。 それは「あり得た夫婦のかたち」を提示すると同時に、愛の持つ本質的な痛みを炙り出すことともなったのだった――。 感想少子化の世界を嘲笑うように、逆行した人口爆発の世界、代替伴侶法が施行された社会、10年限定のアンドロイドを持てる社会とは何か。夫婦制度のあり方を問う、発想力に感嘆とさせられた新作。評価8点
2024.11.11
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こんにちは中ちび太です。今日のおすすめは、吉本ばなな「下町サイキック」です。書き出し「友おじさん、どうして色とかお金と目がくらむの?だって、今までの暮らしが普通に幸せだったら、それ以上つけたすべきものはないはずじゃない?もしもその時点で幸せでなかったら、お金が入ってきたって特に幸せになるわけじゃない?下町サイキック [ 吉本 ばなな ]感想近所に住む友おじさんの「自習室」でお手伝い、離婚した父親が口説いた若手ギャルにふられて精神をやられ、入院生活、ふとしたきっかけから、主人公のサイキック少女は結婚生活に突入、サイキックそのものは主題ではないせいか、変わった出来事はそんなに起きることもない。評価6点
2024.11.11
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こんにちは中ちび太です。今日のおすすめは、井上荒野「だめになった僕」です。書き出し音村綾街路樹の桜はもう散りかけている。東京のハルは生暖かくて、埃くさい。東京に来るのは四年ぶりだった。吉祥寺はすっかり様変わりしている。いや、実際のところ、わからない。感想筆者の23年ぶりの恋愛長編小説がセールス文句に惹かれて読んでみた、ウェブに連載を持ってる漫画家のサイン会で暴力を振るった男、その事件を一年前から十六年前まで遡ってゆき、また、現在に終息してゆくがその試みが必ずしも成功するしたとは言い難い。評価6点
2024.11.10
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こんにちは中ちび太です。今日のおすすめは、燃え殻「明けないて夜」です。書き出し会食の予定一時間前に先方から、仕事がどうしても終わらず、会食をキャンセルさせてくれという旨の電話がかかってきた。「承知しました」とだけ僕は告げ、「ふー」と息を吐いてみる。そして、その場で「よし!」とガッツポーズを決めた。明けないで夜 [ 燃え殻 ]感想どんな予定もうっすら行きたくないといつも思っていた。珍しく付き合っていた女性も同じ考え、でも振られたのは当たり前。講演会で今年から小説を本屋で買った人はいますかと聞いて、漫画を買った人が一人だけいた。小説家は商売にならない。評価5点
2024.11.10
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こんにちは中ちび太です。今日のおすすめは、堂場瞬一「ポップ・フィクション」です。書き出し「百五十万部!百五十万部だぞ!」昭和三年秋。誰かが大声を上げると「エース」編集部に歓声が満ちた。それも当然だ。ポップ・フィクション [ 堂場 瞬一 ]感想日本で初めて雑誌で百万の大台に乗せたエース、実名はキング❓、大正から昭和にかけての編集者と作家の交流や雑誌界の動きなどがよくわかる。ただ、実在の作家や仮名の人物が入り混ざり、とこが事実でどこが虚構なのか、少しわかりづらい作品となっている。評価6点
2024.11.10
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こんにちは中ちび太です。今日のおすすめは、小野寺史のり「モノ」です。書き出しモノローグが好きだ。演劇でもひとり芝居が好きだし、小説でも一人称が好き。これまで特に意識したことはなかったが、考えてみたらそう。といっても、演劇はそんなに見ない。モノ [ 小野寺 史宜 ]感想東京モノレールで働く四人の主人公、そのそれぞれが恋愛で少なからずの失敗経験があったのが、共通項、この作家にしては珍しく、お仕事小説だったが非常に読みやすい好作品。評価6点
2024.11.09
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入居条件:隣に住んでる友人と必ず仲良くしてください [ 寝舟 はやせ ]こんにちは中ちび太です。今日のおすすめは、寝舟はやせ「入居条件:隣には住んでる友人と必ず仲良くしてください」です。書き出し「これは友達から聞いた話なんだけどね」隣人は怪談を話す時、必ずその文言から始める。おれはこいつに「友達」がいないことは知っているが、一切つっこむことはない。感想主人公のタカヒロはやることがないので、奇妙な人が住むアパートの住み込み管理人に、隣人はどんな人が住んでるのか全くわからないが、どんな人であろうが、その人と仲良くするのが採用の条件、もっとホラーっぽい作品と思ったが、奇妙なだけという思い。評価4点
2024.11.09
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こんにちは中ちび太です。今日のおすすめは、小田貴月「高倉健の愛した食卓」です。書き出し「ぼくは100%会社からです。昼はスポーツジムでフルーツとか野菜のフレッシュジュースだけ。食事らしい食事は、1日1食。夕食だけで、その日のカロリーをいっきに摂っています。高倉健の愛した食卓 [ 小田 貴月 ]感想高倉健の養女が書いた、高倉健の食卓日記。ブランチを中心にメニュー紹介、魚嫌いだから、食事は肉と野菜が多いが、紹介されたメニューから推察すると、やはり美食家というか、食事をするのが好きだと思われる。メニューを見るだけで楽しい一作。評価5点
2024.11.09
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こんにちは中ちび太です。今日のおすすめは、谷川俊太郎「ららら星のかなた」です。書き出しまず最初の対談が2020年の秋にありまして、それは「婦人公論」に載りました。その後も続けたくて、2021年3月から不定期に谷川邸に通って対話を繰り返し、2021年11月にいったん区切りをつけました。対談集 ららら星のかなた (単行本) [ 谷川俊太郎 ]感想鉄腕アトムの作詞が谷川俊太郎だと初めて知った。対談相手の伊藤比呂美はアメリカから早稲田の先生になるため帰国、現在は熊本住まい、アメリカから狂暴犬を連れ帰る。中年詩人と老年詩人の掛け合いがおもしろかった。評価4点
2024.11.08
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こんにちは中ちび太です。今日のおすすめは、星野智幸「ひとでなし」です。書き出し嫌な気分は何もかもノートにぶちまけて、言葉の部屋に閉じ込めなさい。尊敬するセミ先生からそう教えられたのは、鬼村樹が小学生五年生の梅雨時だった。ひとでなし 星野智幸/著感想作家人生の集大成と銘打った600ページ超の大作、嫌な気分をぶちまけるという架空日記、日記の中のイッキーと日常の樹が交雑してゆく味わい、ファンタジーなのか、ミステリーなのか、曖昧模糊として作品、それが狙いか、また、ビルディングロマンでもある。評価6点
2024.11.08
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あさ酒/原田ひ香【1000円以上送料無料】こんにちは中ちび太です。今日のおすすめは、原田ひ香「あさ酒」です。書き出し特徴的なブラウンの立て看板に導かれるように店に入っていくと、すでに一番奥の席に犬森祥子が座っていた。彼女は、水澤恵麻の顔を見ると、ほっとしたように軽く手を上げた。「おはようございます。」「大丈夫」感想ランチ酒シリーズのスピンアウト作品。26歳で意味もわからず、突然に婚約破棄にあった主人公、「見守り屋」ってしょくかが本当にあるのか、著者の創作なのかは不明、その謎を解くのではなく、グルメ小説として読むのが正解なのか。評価6点
2024.11.08
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