成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

2009.12.22
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カテゴリ: 高速ツアーバス
自社(子会社を含む)の旅行業部門が集客する形で自ら高速ツアーバス事業に参入するバス事業者は順調に増えつつある。これまでは、貸切バス事業において地元で相応の存在感を持つ貸切専業者( 青森観光バス 高志観光バス 南薩観光 など)、企業や大学送迎など平日の仕業に強く週末の車両に余裕がある中堅事業者( MK観光バス 中日臨海バス など)が中心だった。振り返ってみると、私たちの会社が貸切専業のバス事業者に「高速ツアーバスをやってみましょうよ」と本格的な提案活動を始めたのは3年ほど前。既存事業者に「高速路線バスの販売をお手伝いさせてください」と提案に回り始めた時期(実は、事業開始前には高速路線バス、高速ツアーバス各社の両方に営業に行ったものの<※当時はまだ私は関係していない>、ウェブをうまく使って予約数を増やしたい、と賛同してくれたのが高速ツアーバス側のみという結果だったようで、厳密には「提案営業の再開」だが)とほぼ同じである。高速ツアーバス予約事業の開始から1年経った頃で、要するに、事業の立ち上げが何とか終わり次のステップへの余裕が生まれた時期にあたる。サイト上の導線を、それまでの「路線・便の一覧」中心から、乗車区間と乗車日を指定して空席がある便のみを表示する「空席検索」中心に変えるとともに、需給バランスに応じ価格をビビッドに変化させる「ダイナミックプライシング」概念を導入することにより、繁忙期だけの限られた運行でも採算が取れる「スポット運行」のノウハウを見つけ出した頃だ。

当時の思いとして、より「上位」の事業者に高速ツアーバスに参入して欲しいという希望があった。高速ツアーバス、イコール「格安」イコール「新免事業者」という思い込みが業界内で先に立っており、私自身も「アンチ・ツアーバス」の状態のまま今の会社に転職したわけだが、高速ツアーバスという事業スキーム自体には大きな可能性があると感じていた。私の会社で高速路線バスも取扱って新しい需要をお送りするということと並んで、より歴史やブランドのある事業者に高速ツアーバスに参入してもらい、両業態の垣根を低くしたいという思いが強かった。その思いは後日、まさに既存事業者そのものであるサンデン交通、弘南バスから「高速ツアーバスをやってみたい」とご相談を受けるという、私の予想を超えた動きで実現するのだが、その頃は上記のような事業者をまず引き込むことが最初のステップだと考えていたのだ。

なぜあらためて昔話を書いたのかというと、その頃の提案先のうち特に思い入れの強かった2社が、ようやくこの年末から高速ツアーバスに本格参入するのだ。 中紀バス イーグルバス

※この黒字化。もちろん人件費レベルの差も大きいだろうが、同時に、谷島社長が MBA取得 で培ったマネジメント手法を乗合事業に導入し「科学的」運営を行なっている点が特徴的だ。日経新聞をはじめメディア露出や各種受賞暦も多い。手法は 「バスネットフォーラム」での講演資料 をご覧いただきたい。極めてロジカルであり、逆に、このバス事業の危機における既存事業者の対応が精神論だけに頼っているのだと実感できるはずだ。なお、先日ご紹介した Bさんの会社 は、イーグルバスではないので念のため。

成り立ちは正反対の2社だが、会社の「格」(というモノがあれば、だが)はよく似ており、結局、高速ツアーバス本格参入の決断までじっくり時間をかけたのも共通している(なにせ冒頭に挙げた会社たちは既に事業が軌道に乗っているのだから)。また本格参入に当たって3列独立シートトイレ付きの専用車で臨もうとしている点も両社に共通だ。相互に車庫や仮眠施設を提供し合えるようまずは私たちの方で「お見合い」をセットしたが、今後はお互いに事業パートナーとしてより踏み込んだ協力をできるよう協議中という。その辺り、ご決断いただいたことに感謝していると同時に、共同運行に近いシステムや車両タイプなど、何となく「既存事業者の高速路線バスの匂い」がして不思議な感じ。これはサンデン交通や弘南バスにも言えることだが、双方のいい面を取り入れた新しい事業モデルを作りあげ業界をリードしていただきたい。また、狭域マーケティングが重要で習慣的利用が多い短距離路線(空港線)は当日発券に対応できる乗合形式を、また価格や居住性の差が大きく商品同士を比較検討のうえ予約する率が高い都市間夜行はツアー形式を選んだイーグルバスの選択は高知駅前観光のそれと共通しており、これもまた一つのスタイルだと考えている。

いつも書いていることなのだが、「高速バスとはこういうモノ」「バス会社とはこういうモノ」という既成概念に囚われては成長はない。一方、ただ刀を振り回すようなやんちゃなやり方では、その会社だけなら成長するかも知れないが業界全体へのインパクトは小さい。私の原点は「このままだとバスってダメになるでしょ」という一点であり、この2社のような「ハイブリッド型の高速バス会社」が生まれるのは、既成概念打破の象徴として大変嬉しいことである。

それにしても、両社の夜行専用車。3列独立トイレ付きという仕様では共通だが、生い立ちは対照的。イーグルがセレガハイブリッドの新車であるのに対し、中紀は近江鉄道から流れてきたという富士ボディ=UD。趣味的にはどちらも乗ってみたいクルマではある(笑)。





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Last updated  2009.12.22 20:19:50 コメント(4) | コメントを書く


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京帝117@ ご参考まで この度 K電鉄バスの取締役安全技術部長に…
京帝117@ 残念でした 他にメッセージをお送りする方法を知らな…
成定竜一@ Re[1]:中央高速バス~ふたつの路線~(02/24) 京帝117さん、コメントありがとうございま…
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