軽水炉の事故で一番怖いのは、炉心を冷やしている冷却水が失われたり、炉が「空だき」になることだ。ECCS(緊急炉心冷却)は、こういうとき炉心に水を送り込むための設備である。主蒸気管や給水管の切断を想定して、中央操作室後方にある教官卓(コンソール)のスイッチを押してみよう。
p.57
原子炉の冷却水が喪失し炉が空だきになるといった原発にとって最悪の事故が生じた場合、原発敷地周辺にいた人は、全身に二百五十ミリレム、甲状腺に八.三レムの被爆をすることになっている。原子炉で沸かした蒸気をタービン発電機に送る主蒸気管で破断した場合の全身被爆は四十五ミリレム、甲状腺被爆は二十一レムである。
p.146-147
五十一年七月、福島第一原発の下請け作業員で周辺のある村出身のX(当時五四歳)が死んだ。胃がんだった。まだ暑い日差しが大地に照り返していたころ、村の遺族を訪ねた。≪中略≫「ちょうどあれは五十一年の田植えのころだったない。田植えで息子も原発を休んでおって、『どうも腹がゴロゴロする』というので病院で診てもらったら、すぐ手術ということになった。胃かいようだと思っとったが、切ってみたらがんということだった。そう長いこと入院もせず病院で死んでしまった」。老母はボソボソと当時を思い出しながら小声で語った。
p.201
Xががんで死んだころ、その前後二、三年で同じ会社の作業員だけで「六、七人が死んだ。全員ががんだった」と元下請け作業員のE(五一歳)は証言している。
p.202
Bの記憶では黒人作業員が一度に百人ぐらい投入されたこともあった。「こっちは三十とか五十ミリレムのアラームメーターを持つが、あの人たちのはもっととんでもない数だった。被ばく線量一日百ミリレムなんてものじゃなかった」。
p.203
これまでこれと同じような症状で死んだ作業員は、大学≪苗字(おぢさん補注)≫が知っているだけでも五人はいる。いずれも極度に疲労した状態が続き、それから血を吐き、体が衰弱していって最後は目、口、鼻、耳から血を出して死ぬ、といった無残な症状だったという。作業員たちはこれを「原発病」と呼んでいる。
p.212-213
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この悪夢は少なくとも三重のものでした.最初は起こってほくなかった原発の重大事故,おそらくメルトダウンが実際に起こったこと,第二は,東京電力と政府の発表,マスコミでの報道や解説が事態をまったく過小評価するものであったこと,第三は,知人の物理系などの研究者を含めて,ネット上での論調のほとんどがこの過小評価を支持し,客観的な現実認識をこばむもののように見えたことです.
p.9
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