りらっくママの日々

りらっくママの日々

2009年08月21日
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今日の日記



「ある女の話:アヤカ2」




「今度見に来てみる?
女の子連れてきて欲しいって言ってるし。」

「え?いいの?
見たい!見たい!
でも、私連れてって平気?」

「男ばっかだと、張り合いが出ないから、
コーラスとか欲しいんだって。
私は何だっつーの。」

「同じ学校の子じゃなくていいの?」

「いーの。いーの。
どーせベースはよそのガッコの男だし。」

「ふうん。」

私は学校が休みの日にスタジオってとこに連れてかれて、
そこでエリたちのバンドの練習を見ることになった。
本物の楽器の音はスゴくて、
カラオケの音なんかとはワケが違った。

みんな上手くて、すっかり圧倒されてたけど、
聴いたことのあるバンドのコピーだったから、
聴いてて面白かった。

エリがヴォーカルだったので、
時々マイクを向けてくる。
カラオケに行った時のように時々ハモったら、
男の子たちが「いいじゃ~ん!」って言うから、
調子にノって歌った。
エリと顔を見合わせて笑った。

そうしてすっかりバンドのメンバーの一員になった私は、
みんなとご飯を食べて帰ることにした。
エリが帰り道に言い出した。

「ねえ、どう思った?」

「え?ああ、マノくんのこと?」

「うん。」

マノくんはバンドのドラムで、エリは彼が好きなんだそうだ。

「カッコいいんじゃない?」

「アヤ、タイプじゃない?」

「あんまり~。
知ってるでしょ?私はあの感じは好きじゃないの。」

えへへってエリが笑った。

タイプも何も、しゃべってないけど、
エリの話だと3マタもかけてる遊び人だって話だった。
しかも26歳の人妻と24歳のOLも入ってるって言ってた。
あと他の学校の同級生。

何かよくわからないけど、
親が離婚して母親が2回位変わってるのが原因とか言ってた。
マノくんはそのことをネタにしてるのか、
それで女の子の気を引いてるらしい。

「強がってるのよ。
私がそんな歪んだ気持ちを何とかしたいの。」

「そうゆうのって、難しくない?
なったことないとわかんないし。」

「わかってるよ。
でもさ、やってみなきゃわかんないじゃん。」

エリは燃えていた。
私はエリのそんなとこが結構好きだったりする。
まっすぐで。

マノくんは確かに野球選手の何とかって人に似ててカッコいいけど、
ルックス的に私のタイプではなかった。

ルックスを言うなら、タカダくんの方が私は好きだ。
エリには言ってないけど。
変にエリの家で顔を合わせにくくなると困る。
絵画教室でも会うし。

いつかライブデビューしようね!
私はエリのノリが嬉しくて頷いた。

4回目のスタジオ練習の日、
みんなで待ち合わせ予定のファミレスに行くと、
なぜか誰も来ていなかった。
日にち間違えたんだろうか?

不安になって、電話しようかと思った15分後、マノくんが来た。
「あれ~?アヤちゃん早いじゃん!」

「え?何で?2時じゃないの?」

「3時でしょ?俺、欲しい曲あったから、早目に来て買ってたんだ。
ココで聴いてようと思って。」

マノくんはCDを見せた。
誰かが来てくれて安心したけど、
一人で待ってた方が良かったような…。
私は複雑な気持ちになった。

「いっしょに聴く?」

マノくんがヘッドフォンの方耳を私に渡そうとする。

「ううん!いい。」

そんなとこ、エリに見られたら大変だ。

「そっか。んじゃ、いーか。」

私はドリンクバーからお代わりの紅茶を持ってきて、
マノくんはヘッドフォンで曲を聴いてたけど、
そのうちそれを止めて、

「やーめた。アヤちゃんとお話しよっかな。」

と言い出した。

いや、聴いてていいのに。
変に話してたりして、エリに誤解でもされたら困る。
でもそんなのマノくんに関係ないらしい。

「俺のこと聞いてるんでしょ?
だから、あんまり話したくないんだ?」

「え?何を?」

「エリがさ、
その…
俺のこと好きって言ってくれてるのはありがたいんだよ。
でもさ、俺今付き合ってる女いるじゃん?
その話は聞いてるでしょ?」

「ああ…うん。まあ…。」

「俺さ、聞いてるかもしれないけど、
母親が手首切ってるんだわ。
子供の頃に風呂場で。
父親が女好きでさ。
俺にもその血が流れてるんだよ、きっと。」

「ふうん。」

その話も実は聞いていた。
きっと隠すことなく、誰にでも言ってるんだろう。

私だってもしも、お母さんが手首切ったりしてたら、
かなり衝撃を受けると思う。
彼の中できっと何かが麻痺しちゃったんだろうな…
って思った。

でも、こう言っちゃなんだけど、
うちの父親だって、結構モテたみたいだよ。
母親が、お父さんの背がもっと高かったら、
私なんて選ばなかったって泣いてたことがあったもん。

どこの家でも、そんなことあるのかもしれない。
ただ、私の母親が手首切らなかっただけで。

だからってワケじゃないけど、
話を聞いても、
周りを傷つけていいとは思えなかった。
それにモテることひけらかす男も好きじゃない。

「だからなあに?
そしたらいろんな子と付き合っていいの?」

「そういうワケじゃないけど…。
エリはまっすぐでしょ?
俺みたいなのとは合わないと思うんだよ。
俺は真面目に女と付き合えないから。
アヤちゃん、何とか言ってよ。
俺なんかやめるようにさ。」

「そんなこと言われても…。
困るよ。
私はエリの友達だし、
人の気持ちは簡単に動かせるもんじゃないし。」

「ふうん…。
アヤちゃんはいろいろわかってそうじゃん。」

「そんなこと無いけど…。」

なるほど。
女心を掴むのが上手そうな男だな。
いろんな経験してる感じがする。
すごく大人びたことを言う。

私はそんなこと思った。
それから、話してて飽きなそうだな…と。

申し訳ないけど、
私は経験値不足だ。
頭でっかちな理屈だけの知識しか持っていない。
マノくんの言うことはハズレだ。
でも、
彼の存在は、確かに興味を惹くだろうと思った。

「アヤちゃんは、絵を描くんだって?
エリが言ってたよ。」

マノくんは話を逸らした。
私に助けを求めても無駄と判断したらしい。

「うん。もっと上手になりたいんだけどね。
エリみたいに。」

「エリとは違う絵を描くって聞いたけど?
どんなの?」

私は上手いこと説明できないけど、
何となく、こういう絵を描いていて、
次描きたい絵はこんな感じでって説明した。
それをマノくんは楽しそうに聞いていた。

「わかった?」

「ううん。わかんない。
でも、面白いや。」

そう言って笑った。
他にも、私が普段何して過ごしてるかとか、
何に興味があるのか聞いてきた。

エリに申し訳なかったけど、
私も面白かった。

いや、いけない。
コレがこの男の手なんだ。
私はそう自分に言い聞かせた。


そのうちメンバーがどんどん集まってきた。
エリはマノくんの隣に座って、
スタジオの時間まで楽しそうに話していた。
私の隣にはベースのツカダくんが座った。

みんながツカちゃんって呼んでいた。
でもエリが言ってた。
本気に何となくなれなくて、彼女を何人も変えてるって。

口数が少なくて、時々相槌のように笑う。
どっかのアイドルみたいだ。

でも、ツカちゃんにしても、マノくんにしても、
どこか私には異世界の人たちみたいに思えた。








続きはまた明日

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最終更新日  2009年08月21日 18時46分23秒
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