りらっくママの日々

りらっくママの日々

2010年01月07日
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今日の日記




「ある女の話:カリナ66(同僚との飲み1)」



展示会へ出張に行った。

モリタさんは私たちより6歳ほど年上で、
頼りになる、くだけた先輩って感じの男性だ。
このメンバーで仕事を組めたのはラッキーだったかもしれない。
私の意見も聞いてくれるので、
最近仕事が少し楽しかった。

私達は、自分たちの会社のブースを見た後に、
いっしょに他のブースを見てまわったり、
個別行動をしたりして、
自分たちの仕事に役立ちそうな情報や、
資料を集めてまわった。

いつもの社内にいる仕事と違って、
出張の空気が旅行気分になって、
モリタさんもイシタニくんも、
いつもの社内の顔じゃない、
まるで学生のような感覚でいっしょに過ごした。

「腹へったな~。
飲んでこーか。
直行直帰で良かったなぁ~。」

翌日が休みってこともあって、
会社への報告の電話を済ませた後、
当然のようにモリタさんがイシタニくんと私の顔を見て言った。

「焼き鳥がいいな~。」

すっかりモリタさんの弟感覚で、イシタニくんが言った。

「あ!でもスーツじゃ可哀想か。
ミゾグチさんは居酒屋とか嫌?
ちょっと洒落たとこがいい?」

「大丈夫だよね~?居酒屋行ったりするよね?」

一日展示会会場を回った疲れと、少し遠くまできた開放感。
夕暮れに焼き鳥に飲み。
オナカのすいた私には、
自然な流れで誘われたことが嬉しかった。

「焼き鳥いいですね。
なんか、オナカすいてるから、
頭が焼き鳥でいっぱいになっちゃいましたよ。」

それを聞いた二人は嬉しそうに笑って、
よし!飲むぞ~!とか、
資料確認してからにして下さいよ。
とか言っていた。

女同士だと、どうもランチの延長って感じで、
どっかのレストランや喫茶店に入ることが多い。
飲み屋なんて、マッシーたち仲良しの子としか行かない。

いっしょに飲めるような社内の子もいなかったし、
私は、こういう出張も、
帰りにみんなでどこかに寄って飲むってことも、
経験したことが無かったんだな…って思った。

だから、仕事帰りに会社の仲間と一杯、
って言う状況にワクワクしていた。

焼き鳥の焼けるいい匂いがする。

まずはビールでしょう!って言って、
モリタさんがビールをジョッキで頼んで、
それにイシタニくんが続いて、
モリタさんが、
課の飲み会じゃないから好きなの頼んでいいよ~って言うので、
私は青りんごサワーを頼んだ。

そんな気遣いも何だか嬉しかった。
いつもなら上の人に瓶ビールを注いでまわって、
注ぎ返されたら、苦いけど飲まなくちゃいけない空気で、
注ぎ方が下手とか何とか笑われて…。
ちょっと課の飲み会も居場所が無くて好きじゃなかった。

「ミゾグチさん、いつも飲み会の時働いてるよね~。
女の人たちは大変だよね~。
落ち着いていっしょに飲んだこと無いから、
今日は楽しみだなぁ~。」

モリタさんは嬉しそうにビールを飲んだ。
二人に案内されたお店は、
少しワザと古く見せて、くつろげるような、
焼き鳥を中心に出す居酒屋だった。

値段が安くてメニューも豊富で、
週末のせいもあってか、店は満員だった。

「いいお店知ってますね~」
メニューを見てボソリと呟いたら、
嬉しそうにしたモリタさんが、ジャンジャン飲んで!と言った。

まずは酔う前に、お互いの集めた資料を出し合って、
ココのブース凄かったよな!
とか、
ココ行ってきたんだ?周り忘れた~!
とか、
ココってさ、やっぱうちとは違うよね。
と、みんなで今日の展示会の感想を言い合った。

ミゾグチさん、ちゃんと串から食べるんだ~?
とかって、
二人が私を見るので、
そう言われると、食べるのに少し躊躇した。
でも美味しい。

いい具合に気持ち良くお酒が回って来た頃、
「そう言えば、奥さんもうすぐですよね?
こんな飲んでも大丈夫ですか?」
と、イシタニくんがモリタさんに言った。

社内の情報に疎い私は、あれ?と思った。

「まだ大丈夫だからって言ってたよ~。
出張のが、いつもより早く帰れて嬉しいよ。
いつもならこの時間残業じゃん?
ここならうちまで近いし。
生まれたら早々行けなくなるだろうから、
飲んできていいってさ~。」

奥さん優しいですよね、ってイシタニくんは言って、
私は、ああって思った。

「今9ヶ月なんだ。」

モリタさんは照れた感じで、タバコをつけた。
そろそろ吸うの止めよっかな~って呟いた。

「お父さんになるってどんな感じですか?」

私は、つい聞いてみた。

「お父さんになる感じね~。」

モリタさんはタバコを吸って、
ちょっと考えた感じで、
フーって、煙を吐いた。

「ん~、何だろね~。
実感湧かないんだよね~。
産むの俺じゃないし、
嫁さんの腹だけが膨らんできてて、
触るとグリグリって動いたりするから、
お~、こん中で生きてるんだな!
とかって思うけど。」

私は興味津々でモリタさんの顔を見て頷いた。
今まで子供のいなかった人の父親感ってどんなんだろうと思って。
イシタニくんは、
やっぱそんな感じなんだろうな~と頷いていた。

「出てきて俺に似てたら、
もっと実感湧くのかな~とかって思ったりもするけど。
ほら、男なんてさ、
子供できたわよ。アナタの子供よ。
って言われたら、見に覚えあったら信じるしか無いじゃん?
変な話、俺の子供かどうかなんて女にしかわかんないワケで~。」

そりゃあ、そうかもな~。
なんて私は思った。
そう考えると男の人って相手の女性を信じるしか無いんだな~。と。

自分が男立場になった場合を、ついいくつか考えてしまった。
男が子供を産むって立場なら、どうだろう?

ミツルには嘘をいっぱいつかれてたから疑うかもしれない。
それにあんまり嬉しく無いかも。
現実を見ないで、
「産んじゃおうか」とか言いそう。
困る。

ケンちゃんは純粋でバカ正直な人だったから、
疑う気にならない。
むしろ疑ったりしたら逆ギレされそう。
これまた何でか嬉しく無い気がした。
純粋な子供っぽさが、結婚とかけ離れてる人だったから。

青山くんは…

ナゼだか想像しただけで嬉しかった。
変な話、
笑顔の青山くんがすぐに頭に浮かんだ。

「カリナ、僕らの子供ができたよ。」

「えー、ホント?男かなぁ?女かなぁ?」

「もー、僕が産むと思うと気が楽なんだろ?」

「うん。そう!
あー良かった。産むの痛そうなんだもん。
協力するから、ガンバってね!」

そんな会話さえ簡単に想像できて、
何だか可笑しくて、
軽く笑った。

私の想像など知らずに、
イシタニくんが笑いながらモリタさんをこづく。

「何すか~モリタさん。
デキちゃった結婚じゃないですよね?」

「うん、違うよ~!
でもさ、しみじみしちゃうワケだよ。
この女が俺の子供産むんだな~とかさ。
なんか、もうあっちは女じゃなくて母親って顔しててさ、
俺は置いてけぼりくらってるような感覚が少しあってさ。」

モリタさんは私達が友達かのように同意を求める目で見る。

「嫁さんの腹をさすって、心の中で、
俺が父親でいいか~?大丈夫か~?
って思ったりするんだ。
そうすると返事するみたいにポコンって動いたりして。
そしたら、ちょっと安心したりして。
何だか俺の方が子供に励まされてどーする?とかさ。」

ははは…って、ちょっと気弱にモリタさんが笑ったので、
私は微笑ましい気持ちになる。
こういう気安い本音をしゃべってくれるところが、
モリタさんの慕われる理由なんだろうな~って、
私は酔った頭でボンヤリ思う。

「いいお父さんになりそうですよね~、モリタさん。」

私は思ったことを口にした。

「え~、どこがぁ?頼りなくない?」

「だって、私がモリタさんの子供だったら、
お父さんがそんなふうに本音とか言ってくれる人だと嬉しいですよ。
お父さんにも弱いとこあるなら、自分の弱い面とか、
受け入れてくれそうって言うか、
打ち明けやすそうじゃないですか~。」

「そう~?
ならいっかぁ~。
ん~。俺でも大丈夫ってことかな~。
俺みたいな父親でもいいかぁ~。」

トロンとした目でモリタさんが言う。

「はい。だいじょーぶです!」

私は片目をつぶって、バッチリって手で表現した。
あ、私酔ってるな~って思った。
でもってサワーを飲む。
美味しい。

そうか、バッチリか!って、
私と同じポーズをモリタさんもして、
イシタニくんが笑った。

その時モリタさんの携帯が鳴った。

「え?マジ?!嘘!
うん。わかった。
今すぐ帰るから。
そこにいる?
8時過ぎかな…。大丈夫?」

電話を切ったモリタさんは真剣な顔になっていた。

「ごめん!何か嫁さんヤバいかも!
陣痛じゃないみたいなんだけど、
デパートで少し腹痛くなったとかで。
ゆっくり飲んでて!
あ!そうだ金!」

財布を出したモリタさんを、
イシタニくんがいいから早く行って下さい!
って追い立てるようにして、
あ~、でもそれじゃ俺から誘ったのに悪いし、
ってモリタさんが言って、
じゃあとりあえずこれだけ!って机に慌ててお札を置いて、
ごめん!じゃまた!
って去って行った。

残された私とイシタニくんは、
モリタさんが見えなくなるまで立ち上がっていて、
店から出るまで手を振った。
ガンバレ!早く行って!みたいな感じで。

「律儀な人だな~。あんな慌ててるのに。」

イシタニくんがそう言って、
机の上にある5千円札を二人で眺めて、
脱力したように座ると、
イシタニくんは自分のタバコの箱とライターをお札の上に載せて、
残ったビールをグッと飲んだ。
私もサワーをゴクリと飲んだ。

「おかわり頼む?」

「うん。」

残されたものの、どうしたら?
って、酔いから覚めた空気が漂っていた。

中心になっていたモリタさんがいなくなったことと、
彼氏がいるのに付き合ってない男の人と、
二人だけで飲むことになった緊張感が私を包んだ。




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続きはまた明日

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最終更新日  2010年01月07日 19時56分24秒
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