りらっくママの日々

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2010年01月08日
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今日の日記




「ある女の話:カリナ67(同僚との飲み2)」




ビールからウーロンハイに切り替えたイシタニくんが言った。

「え?そう?どして?」

私は炭酸がキツくなってきて、
カシスグレープフルーツとかってカクテルに切り替えていた。

変にイシタニくんが男性だって意識しないように、
落ち着きたくて、一口飲んだ。
ジュースのような甘酸っぱさと、
酔いで少し体がふんわりと熱くなる。

「だってさ、さっきのモリタさんとの話、
俺がモリタさんだとしても、少し安心するっていうか…。
ミゾグチさんって、そういう空気あるね。」

「そんなこと無いよ。
いっつもグチばっかり言ってるよ。」

「あ、彼氏に?」

「うん、そう~。
申し訳ないな~って思ってる。」

「そうなんだ?
彼、そういうの聞いても大丈夫な人?」

「大丈夫かどうかはわからないけど、
うんうんって聞いてくれるから。
だから私もつい話しちゃうんだけど、
何だろう…
彼の方はグチっぽいこと言わないから悪いな~って。」

「ふうん。」

「だから違う話するようにしてるの。
何だろ…
心配かけるより彼が笑ってくれるような話題ないかな~って考えちゃう。
って言っても、仕事ばっかりだから難しいんだけどね。
でも、最近は仕事も楽しいし。」

「そっか。ラブラブだね。」

あ、話し過ぎたかな…
って思って恥ずかしくなったのに、
イシタニくんは、からかうワケじゃなくて、
ホントにいいな~って感じで笑顔を見せた。

その顔を見たら、少しホッとした。

「俺のとこ、そんな話になったら結構ケンカになったりするかな。
俺、気が利いたこと言えないから…。
結構、彼女のことすぐ怒らせちゃったりする。」

イシタニくんが少し暗いトーンで言ったので、
私は少し心配になった。

「しゃべらなくても手とか握ってあげるのとかは?
落ち着くよ。
アドバイスが欲しいワケじゃなくて、
ただ聞いててもらえればいいんだよね…。」

「ミゾグチさんの彼はそうしてくれるの?」

私は迷ったけど、
自分のことを話すことにした。
イシタニくんなら、からかったりしないような気がして。

「ううん。自分から繋いでみるよ。
そうじゃないと、自分がして欲しいことって相手には伝わらないから。
言わないでしてくれたら理想なんだけど、
なかなかそうは行かないんだよね~。」

ダメダメって感じで私が手を振ると、
イシタニくんが笑った。

「そうだよね。
うん、そっか。
ちょっとそうしてみようかな。
あ、でも何か…できっかな?」

イシタニくんは照れたようにウーロンハイをゴクリと飲んで、
吸っちゃっていい?
って今更断ってタバコに火をつけた。

タバコの煙がふんわりのぼって行くのを、
私はボンヤリと眺めた。

「いいね…」

「え…?」

「ミゾグチさんの彼、いいね。
羨ましいよ。
そんなふうに思われたら嬉しいと思う。」

「え?そう…?」

私は照れた。
誤魔化すように目を逸らして飲んだ。

「ケンカとかしないの?」

「うん…
することもあるけど…」

私は昔のことを思い出しながら言った。

「前に付き合った人が、
しばらく会えないことがあって、
心配になったら事故に遭ってたことがあるの。
車で、私を送ってくれた帰りに頭フロントガラスに突っ込んだとかで…。
それ以来、誰が相手でもケンカしたら、
その時に解決したいって思うようになっちゃった。
怖くなっちゃって。
なるべくケンカしないようにしなきゃな~とも思うし。」

「そっか。そういうことあると怖いよね。」

「うん…。
だからかな、
彼とケンカして朝早くに謝りに来ても追い返したなんて聞くと、
どうして…って思っちゃうの。
もしかしたら、その帰りに何か遭ったりしたら後悔しそうでしょ?
いきなり来られても困るって気持ちもわかるんだけどね、
それでも彼の気持ちが嬉しくないのかな?って思っちゃう。」

コレはベップ=B子が言ってたことだ。

彼が朝早く謝りに来てさぁ~、
そんなの支度も出来てなくて、いきなり来られても困るんだけど~
って感じじゃない?

同意しなかったら、まるで私が彼氏みたいに怒り出した。
私のそういうとこ、
ずっと気に入らなかったんだろうな。

また嫌なこと思い出しちゃって、
私は消すようにグイっとお酒を飲んだ。

「ミゾグチさんなら怒ってても追い返さない?」

「車で仲直りできたら…って思っちゃうかな…。」

「ふーん…」

イシタニくんはタバコの煙を眺めて何か考えてるようだった。
私は変なこと言ったんじゃないかって心配になって、
何となく沈黙が怖くて付け加える。

「でも…それって、
追い返しても大丈夫って関係だからだよね、きっと。
私はダメなんだ。
そんなことして嫌われたらどうしよう…って思っちゃうの。
自分なら悲しい気持ちで帰るんだろうな…って思うと、
そんなふうに追い返されたら冷めちゃうかな~とかって。
だから…
そんなことしたり安心してケンカができるって関係に憧れたりもするんだよね。」

「そっか…
安心してケンカね…。
別れてもいいって思ってするんじゃなくてかな?
相手のこと、
そんなに好きじゃないからそんなことできるんじゃない?」

イシタニくんが真面目に返事をしてくれたことでホッとして、
私は思ったことを言った。

「私はそういうのって、
相手が優しいから甘えてるんじゃないかな~って思うよ。
そうじゃなきゃ、
よっぽど自分達の仲が揺るがないって思わせるようなこと、
相手がしてくれてるとか…。
でも性格もあるのかな。」

イシタニくんは、クックと笑った。
ちょっと投げやりっぽいって言うか、
少し淋しそうに見えた。
いつものイシタニくんじゃないように見えた。

「相手の方がたくさん好きってわかってるから、
安心して、そういうことするってこと?」

「え…?
う~ん、わかんないけど、
そういうことなのかな?って。
わかんないよ~。
私はしないから。」

私はどう返事したらいいのかわからなくなって飲んだ。

「私は、ちゃんと安心してないのかもしれないし…」

ポツリと思ったことを付け加えた。

「安心させる男って情けなくない?
邪魔クサイって言うか。」

「そんなこと無いよ。
私なら嬉しい。」

「そお?」

「うん。」

そこでお互い話は終わったかな…
って感じの沈黙が流れた。

「帰ろうか。」

イシタニくんがタバコをもみ消してそう言った。

私は余計なことを話したような居心地の悪さを感じていた。

これだから会社から浮いちゃうのかな~って。
もう、飲みに誘われることも無いかな~って。

店を出るとイシタニくんが言った。

「今日ミゾグチさんと話せて良かった~。
何か俺、自分のことベラベラしゃべっちゃった気がするんだけど、
大丈夫?」

「え?それは私の方なんだけど。大丈夫?」

あ、そっか。もちろん大丈夫だよ~。
ってイシタニくんが笑う。

ああ、良かった~って、私も心からホッとして笑った。

安心し過ぎて少し涙が出たけど、
そんなことはイシタニくんに悟られちゃいけない。

でも、

私はこの時、イシタニくんに話したことを後悔することになる。

男女でも友達になれることもあるのかな…って、
思ってたくらい嬉しかったのにね。




前の話を読む

続きはまた明日

目次





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最終更新日  2010年01月08日 21時04分46秒
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