りらっくママの日々

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2010年01月14日
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今日の日記




「ある女の話:カリナ73(赤木くんとの釣り)」




青山くんが餌を買いに行ってる間に、
釣り糸の先を見ながら赤木くんが呟いた。

「うん…。そうだね。
仕事、結構疲れてるみたい。」

「アイツ、カリナちゃんに弱音吐いてるんだ?」

赤木くんが笑って私の方を見た。

「ん~ん。
全然吐かないね。
だから心配になっちゃうよ。」

「そっか~。
そうなんだ…。」

赤木くんは何か考えてるようだった。

「アイツ、自分のことより人のことばっか気遣っちゃうから、
気をつけてやってよ。
バカ真面目だし。」

バカ真面目?アオヤンっぽい表現~!
だろ?って、二人で笑う。

そこには、
青山くんのそんなところを、
お互い好きだと思ってることが詰まっていて、
親しい人にしかわからない空気があった。

でも、青山くんは、
赤木くんには、いろいろ本音を吐いてるんだろうな…って思った。
私がマッシーにいろいろメールで話してるみたいに。

マッシーどうしてるかな…って思った。

最近連絡が無い。
便りが無いのがいい返事って言うけど。

こうして3人でいると、
みんなで騒いで過ごした日が、
遠いことのように思えた。

「なんか…
アオヤン、私のことばっかり聞いてくれてるの。
もう最近は私も仕事が忙しいし、
それなりにやりがいもあるから大丈夫なんだけど。」

「あ、何かカリナちゃんも痩せたよね。
そんなに忙しいんだ?」

私は仕事の話をする。
フッと、イシタニくんのことを思い出す。
釣り糸を見て消すようにする。
今日は当たりが悪い。

「赤木くん、彼女作らないの?」

話題を会社から逸らしたくて聞いてみた。

「え?!ははっ!
最近、女連れてこないから?
ん~、もういらないね。
友達でいいや。友達で。」

「赤木くん女友達たくさんいそうだよね?」

「たくさん?そーでも無いよ。
でもまー、女として見ないから友達になれんだろうけど。」

「そういうのって、突然女として見ることって無いの?」

私は竿を上げてみた。
餌が取られてる。
ちぇっ。

「あるかもしれないねぇ…。」

赤木くんがボソリと答えた。
その声が、ちょっとトーンダウンしてたことが気になる。

「どんな時?」

赤木くんは私と同じように竿を上げて、
餌を確認した。

「どうなんだろうな~。
女だと思っていたんだけど、
女だと思わないようにしてたっていうか…。
そういう相手…なの…かな?
よくわかんねーや。
そういうのが一番性質が悪い。」

赤木くんは誤魔化すようにアハハって笑った。

赤木くんは、何だか経験豊富みたいで、
私が今抱えてる気持ちの答えを知ってるような気がした。

「好きになっちゃったの?
そういう人。」

「ん~、あ~、まあ…ね。」

赤木くんは自分からは言いたがって無いのがわかった。
それでも私は答えが聞きたかった。

「それでどうなったの?
付き合った?」

「びみょ~。」

あ、逃げたな。って私は思った。
その時に青山くんが戻ってきた。

「どう?釣れた?」

「ぜんぜ~ん。」

二人して言ったので、青山くんが笑った。

それでも何匹か釣れたので、
塩焼きにして食べることにした。

私は釣れた魚の内臓を取っていた。
オナカに包丁を刺して、グッと引いて、
指で中を引き出して…

内臓の柔らかさと血が、
手についた。

こんなふうに、
私の中にある醜いものも取り出せたら…

フッと人の気配を感じて振り向いたら、
赤木くんが上手いもんだね~って見ていた。

「カリナちゃん、好きな人でもできた?」

いきなりなことを赤木くんが言うので、
一瞬言葉がつまりそうになったけど、
慌てて笑って目を逸らして、
魚を洗いながら言った。

「何言ってんの?
まさかぁ~!
そしたらココに来てないって!」

「そりゃ、そうなんだけどさ…」

赤木くんは言いづらそうに間をおいた。
手を洗いに来たらしくて、
ザブザブ洗いながら言った。

「何か…、知ってる人と同じ表情してたから。」

私は水ですすいだ魚を置いて、
次の魚のオナカに包丁を当てた。
赤木くんができた魚に串をブスリと刺した。

「その人って、さっき言ってた人?」

赤木くんは、その質問が聞こえなかったみたいに、
黙々と串を刺す作業をした。
私は質問を続けた。

「何で女だと思わないようにしてたの?」

また返事しないかな~って思ったけど、
今度はちゃんと答えが返ってきた。

「俺にはサキがいたし、
その人も他に相手がいたから。」

「それでサキちゃんと別れたの?」

「いや、そうじゃないよ。
でも、会っちゃったことで、
自分が変わっちゃったかもな。」

心臓がドキンと痛んだ。

今まで何とも思わなかったことをいろいろ考えちゃったり
…って、
赤木くんが付け加えた。

「そういうことって、
あるかもしれないね…」

私はつい呟いた。

赤木くんは、魚を置きながら、
聞きにくそうに言った。

「何か…そういうこと、
あった…?」

「何話してんの?」

青山くんの声がしたので、ドキッとした。
自分のことを話さなくて済んで、
ホッとしたけど、
赤木くんに打ち明けてしまいたくなっていた自分もいたから。

作業の手が止まってしまっていた。

「俺の恋バナ~。」

何でもないように赤木くんが答える。

「何?僕聞いたことある?」

「オマエには教えね~。」

笑いながら赤木くんが言うと、
何だよ~!
って、笑いながら青山くんが赤木くんをこずいて、
その温かい空気に心が和んで、
自然に笑いが漏れる。

この空気を大事にしたいって思った。

食べ終わって、私がトイレに行って戻ってくると、
席には赤木くんしかいなかった。

「あれ?アオヤンは?」

「あれ?すれ違わなかった?」

燃えてる炭を二人でジッと眺めて、
青山くんが戻るのを待った。

赤木くんの話の先を聞きたかったけど、
あまり聞いたら墓穴を掘りそうな気がする。

今赤木くんが一人でいるのが、
その結果な気がした。

さっきの話の続きを聞いていいのか悪いのか…。

赤木くんも同じように思っていたらしい。

「さっきの話だけど…」

「ねえ、
さっきの彼女のこと…」

お互い同時に言い出したので、
一瞬固まって、
お互い、ちょっと笑ってから私が言った。

「好きになって良かった?」

赤木くんは私の顔をぼんやりと見て口を開いた。

「答えによっては浮気を勧めることになるのかな?
それとも本気?
そしたら俺、アオヤンに申し訳ないんだけど。」

「何も無いから、心配しなくていーの。」

私は笑いながら言った。

赤木くんも笑顔で答えた。

「好きになって良かったよ。後悔して無い。」




前の話を読む

続きはまた明日

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最終更新日  2010年01月14日 21時42分46秒
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