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さて今日も緑内障治療の第一選択剤である、プロスタグランジン関連薬の世界を見ていきましょう。 2回目となる今回はトラバタンズ(一般名 トラボプロスト)点眼液です。 このトラバタンズ点眼液は、防腐剤に工夫を凝らしていて角膜障害が出にくいのと、他のプロスタグランジン関連薬に較べると「点眼後に長く効く」のが特徴です。なので、ちょいちょい目薬を点すのを忘れる患者様にはとてもいい薬と思います。 その一方で副作用であるPAPは前回紹介した キサラタン点眼液 に較べるとやや多めです。お薬というのは「あちら立てればこちら立たず」でバランスを取るのが実に難しいものなんですね。(続く)
2019.03.28
さて今日からは、緑内障治療の第一選択剤である、プロスタグランジン関連薬の世界を見ていきましょう。 初回となる今回はキサラタン(一般名 ラタノプロスト)点眼液です。その強力な眼圧下降効果で1999年の発売と同時に爆発的な大ヒットとなり、「日本の緑内障治療を変えた」と言われる歴史的名薬ですね。 ちなみに私は1999年に眼科医になったのですが、ちょうどこのキサラタン発売と時期が重なったために、緑内障の点眼治療が飛躍的に進歩したことと掛け合わせて「キサラタン世代」と呼ばれていました。今から考えると特に意味はないのですが、当時は何だか最先端の様に感じていましたね。(笑) ところでこのキサラタンが出るまでは、上の一覧表の中のレスキュラ点眼液 が同じプロスタグランジン系統(厳密にはちょっと違う)唯一のお薬としてバカ売れしていたのですが、このキサラタンが発売になるやいなや、見る見るうちにそのシェアを落として、当時販売していた製薬会社のMR(営業マン)の方が真っ青な顔をして夜遅くまで大学医局の廊下に立っていたのを思い出します。多分会社で売り上げ減を怒られて必死だったんでしょうね。 さてこのキサラタン点眼液の特徴を一言で言うと、 眼圧が良く下がる上に副作用が少なくてバランスが良い ということになるかと思います。 前回紹介したPAPという副作用が少なめで、かつ眼圧下降のキレが良い、いいお薬なんですね。 ちなみにこのキサラタンが発売されて20年が経過した今では同じ系統にも色々な薬が出ているのですが、緑内障専門医の先生たちと飲んでいると、「ぶっちゃけていうと、やっぱりキサラタンがトータルで見たら今でも一番いいよね。」というお話になったりもします。(ちょっと秘密) そして私も、「キサラタンはやっぱりいい薬だなあ。」とこの記事を書いていても改めてしみじみと思います。キサラタンに救われた患者様の数というのは莫大と思いますし、もしもこの薬が登場していなかったらと思うと、ちょっとゾッとしますね。 ところで、キサラタンは発売後20年が経過しているので当然ジェネリック(後発)医薬品が存在します。「ラタノプロスト点眼液」というのがそれですが、今だとこの後発品の方が処方されるケースが多いだろうと思いますね。(続く)
2019.03.19
さてそれでは今回からは、広い広い緑内障点眼薬の世界を個別に見ていきましょう。 初回となる今回は、何といってもプロスタグランジン関連薬です。 効き方としては、主にぶどう膜強膜流出路からの房水(ぼうすい : 眼球を充たす体液のこと。眼圧を保つと共に角膜・水晶体の栄養補給の役目を果たしている。房水は毛様体という組織で作られ、主にシュレム管を通過し眼外に排出される。)流出促進作用となります。 さてこのプロスタグランジン関連薬は、現在緑内障治療の第一選択薬(ファーストライン)として使用されています。緑内障と診断された方は、まずはざっくりとこのエリアから目薬を処方されるということです。 その理由は何と言っても「眼圧が良く下がるから。」です。緑内障の目薬は何と言っても「眼圧が下がってナンボ。」なので、眼圧が下がらない=効かないのではてんでお話にならないのです。またこの系統のお薬には「全身的な副作用がなく、安全で使用しやすい。」という長所もあります。 その一方で、これらのプロスタグランジン関連薬には、点眼によって目の周りが落ち窪んだり、黒くなったり、毛が生えたりという、患者様に非常に嫌がられている、 PAP(眼窩周囲症状 Prostaglandin associated periorbitopathy)と呼ばれている副作用 があります。 これを防ぐためには、目薬を点眼後に濡らしたティッシュでふき取るか、目を閉じて洗眼するのが有効なのですが、どんなに気を付けていてもPAPが出現してしまう患者様も残念ながら多いです。 この副作用をものすごく、死ぬほど嫌がっている患者様というのは実にたくさんいらっしゃいますし、特に女性の方は嫌います。 大切な「目力」に影響してしまうので当然 ですね。なので、このPAPが強く出た場合や患者様の拒否反応が強い場合には違う系統の目薬を検討することになります。ただ逆に言うと、このPAPが気にならない場合には、 プロスタグランジン関連薬は、無敵に、夢の様に良いお薬 ということも出来ます。とにかく良く効きますからね。 それでは次回からは、このプロスタグランジン関連薬の世界を個別に見ていきましょう。(続く)
2019.03.12
さて日本人では40歳以上の20人に1人(5%)、70歳以上では7人に1人(14%)の有病率ということで、非常にありふれた病気であると同時に、「失明に直結する!」という「とても怖いイメージ」があるために、多くの方から「恐れられている」病気である緑内障。 当ブログでもこれまでに様々な角度から取り上げてきましたが、この緑内障は「超慢性疾患」で進行がとてもゆっくりな病気なので、実際には発病から失明に至るまでには30年以上という時間的な猶予が与えられた、真面目に治療に取り組む患者様にとってはある意味で「優しい病気」でもあります。 そして治療の基本は、眼圧を下げるための点眼治療です。何故かというと、眼圧を下げることによって緑内障の進行を遅らせて目の健康寿命を延ばすことが出来ることは、既に質の高い多くの論文から明らかになっているからです。治療法としては他に手術も色々とありますが、結局はどれも眼圧を下げるためだけの物なので、目薬の治療だけで病気がコントロールできるのであればそれに越したことはありません。何も好き好んで痛い思いをする必要はないですからね。 そして実際全国にはとてもたくさんの緑内障点眼薬を使用していらっしゃる患者様がいます。緑内障は決して「良くなる」ことはない病気なので、世界最高レベルの高齢化がこれからも類を見ないスピードで進展するここ日本では緑内障患者様の数はこれからも増える一方です。もしかすると、このブログに辿り着いた方の中には既に緑内障の治療中の患者様もいるかもしれませんね。 そこで今日はこれまでと視点を変えて、緑内障点眼薬の世界を広く見渡してみることにしましょう。これはとても大切な視点です。何故かというと、この数年緑内障の分野では新薬ラッシュが続き、使えるお薬が爆発的に増え、その結果として以前とは比べ物にならないくらいに処方パターンが増えているからです。 それではまずはその全体像をお示ししましょう。 す、すごい量ですね。20年前には「僅かに数種類」しかなかった緑内障点眼薬は、いつの間にかこのような「爆発的な進化」を遂げているのです。そして私達眼科専門医は、これらの全てのお薬の長所・短所・有効な組合せ方を学び続けながら、毎日の診療に当たっているんですね。(続く)
2019.03.09
私は開業医なので毎日外来診療をしています。 医療と言うのは様々な不安を抱えた患者様に対応するものなので「究極のサービス業」であると考えており、常にニコニコと笑顔で接することを心掛けていますが、まあそれは当たり前のことではあります。 今日はそんなことではなく、患者様から日々放たれる様々な訴えの中で、自分が何に最も気を付けているか?というお話です。 それは、 飛蚊症(ひぶんしょう) です。 これは目の中の硝子体(しょうしたい)の濁りが網膜に写ることによって生じるものなのですが、急に生じた飛蚊症の一部に、網膜剥離裂孔(網膜に穴が開いている状態)、網膜剥離、眼底出血、ブドウ膜炎などの急ぎの治療が必要な病気が隠れていることがあるからです。 特に飛蚊症に光視症(光が走って見える症状)が合併しているときには、網膜の状態が急激に変化していることがあるので要注意です。 そのため私はニコニコとして外来に座っていても、患者様からこの飛蚊症や光視症の訴えを聞くと、目の奥が「キラーン」と輝きます。そしてすぐに OCT(3次元眼底解析検査) と オプトス(画角200度の超広角の眼底撮影) 検査をさせて頂いています。そしてやっぱり、一定の頻度で 網膜剥離などの重篤な病気 が発見されます。 眼科開業医として、この「飛蚊症に隠れた重い病気」を見逃さないことが、何よりも大切なことであると考えています。
2019.02.22
今年もかゆいかゆいスギ花粉症の季節が差し迫って参りました。当院でもスギ花粉に敏感すぎる方を中心に既に患者様が急増し始めており、毎日の外来はまさに「春はすぐそこ。」という戦国の様な様相を呈しています。 さて毎年花粉症のシーズンには薬局で目薬や飲み薬を買ったり、それでも収まらなかったら病院に行ってもっと良く効く医療用の薬を貰ったり、という方はたくさんいらっしゃると思うのですが、自分が何に対してアレルギーがあるのかを実際に調べたことがある人って意外と少ないと思います。 今日は、そんな方に1つ提案があります。それは、 指先からほとんど痛みもなくほんのちょっとだけ採血して、20分で結果の分かるアレルギー検査 がありますよ、簡単にアレルギーの原因を調べることが出来ますよ、というお話です。 具体的には、 「イムノキャップ ラピッド 鼻炎・ぜんそくI」 という検査になります。 この簡単な検査で、春のスギ、夏のカモガヤ、秋のブタクサとヨモギという「世界3大花粉症」の原因と、更にプラスしてダニ、ゴキブリ、ネコ、イヌというハウスダスト系のアレルギーの元を一気に全て調べることが出来ます。 検査は先ほど述べた様に指先にパチンと針を突いて、血液をほんの少量戴くだけで終わりです。ほとんど痛みもありませんし、何の苦痛もありません。もちろん皆様に自信をもってお勧めするくらいですので、院長である私自身が実際にその検査をお試しでやっています。ちょっとその結果を見てみましょう。 はい、このように院長である私は、スギが強陽性、ダニも陽性という結果でした。自分は元々重度のスギ花粉症なので、この結果は非常に妥当なものと言えます。 ちなみにこの検査は健康保険が効きます。なので、自分が何のアレルギーなのかを調べたい方は、是非外来で気軽に聞いてみて下さいね。
2019.02.07
私は色々な患者様にお会いできる外来診療が大好きで、毎日毎日仕事とは思えないほど楽しい日々を過ごしています。ただそんな素敵で輝いた時間の中でも常に気をつけていることがあります。今日はそれを列挙してみます。 1.患者様には必ず大きな声で元気よく挨拶をする。また常に笑顔でニコニコ応対する。 2.全ての患者様を自分の身内と思って、「自分もしくは自分の家族がこの病気になったら、どういう治療をするのがベストか?」を考えて診察に当たる。 3.患者様は目薬を点すために生きているのではない。必要最小限の点眼処方にして負担を最小限にすることを徹底する。 4.自分の力量を超えるような難しい状態の病気の患者様は、その病気を専門としている医師に迅速に紹介する。いい意味で「患者様離れ」が良い医者であるように心がける。 5.セカンドオピニオンを求めて来院された患者様に対して、前に診た先生を絶対に非難しないようにする。(後から診る医者の方が情報が多くて圧倒的に有利。) それでは、また明日も皆様の御来院をお待ちしています。
2019.01.21
新年明けましておめでとう御座います。今年2019年も進化の激しい眼科医療のスピードに負けないように毎日の勉強を欠かさず、全国レベルの眼科医療をここ八幡浜地域の皆様にお届けできるように頑張ります。 学会出張による臨時休診で皆様に御迷惑をかけることが多々あるかもしれませんが、常に最先端の臨床・研究を学び続けることは眼科専門医として非常に大切なことですので御了承下さい。 なお、新年は既に1月4日より通常診療を開始しております。(手術開始は1月8日からです) それでは皆様、今年も にしわき眼科クリニック をよろしくお願い申し上げます。
2019.01.06
目にゴミや花粉が入った時に皆様はどうされますか? 目を水道水で洗ったり、アイボンを使ったり、目薬を滝の様に入れてみたり、と色々されるのではないでしょうか? ただ、水道水は涙液層の安定性を低下させるリスクがありますし、アイボンや目薬の頻回使用は含まれている防腐剤の影響で黒目(角膜)をボロボロにしてしまうことがあるので、眼科専門医としてはあまりお勧めできません。 こんな時に提案したいのが、防腐剤が入っていない 点眼型洗眼薬 です。 具体的には、下記の様なものが一般用医薬品(第3類医薬品)としてドラッグストアで売っています。 異物洗浄効果も、 角膜(黒目)に対する安全性も、 確認されています。 目にゴミや花粉が入ったら、「ピンポイント洗眼」がお勧めです。是非覚えておいてくださいね。
2018.12.26
いよいよ12月ですね。当院は四国有数の漁港である愛媛県八幡浜市の国道197号線に面した、地域で一番の一等地に立地することもあり、毎年頑張ってイルミネーションをしています。今年2018年もスタッフの尽力で、本日から冬のイルミネーションを開始しました。 今年は新アイテムを大量に追加し、更に華やかな出来栄えとなりました。 新登場の「ムービング観覧車」です。光源がLED化されているので発色がいいですね。 クリニックの側面はこんな感じです。 皆様もご覧になったら、イルミネーションの感想を是非聞かせてくださいね。
2018.12.10
12月になりました。街もイルミネーションで色づいてきましたね。 そして当院も今だけのクリスマスバージョンに換装して皆様をお待ちしています。 入り口には大きなクリスマスツリー。 待合室も12月限定バージョンになっています。 そして待合室用のお菓子もクリスマスバージョンとなっています。 素敵な季節の始まりですね。
2018.12.06
本日、日本が世界に誇る眼科用医薬品メーカーの参天製薬から、全く新しい機序を持つ世界初の緑内障新薬である、エイベリス点眼液が発売となりました。 私は患者様に勧められる目薬なのかどうか、常にまず自分が先に点眼してみて確かめるようにしています。とんでもなくしみるとか、変な目薬もたまにあるからです。そこでこのエイベリスも早速使ってみましたが、点し心地は悪くなかったです。これは大丈夫ですね。(笑) これは以前にも説明しましたが、「選択的EP2受容体作動薬」という、今までに全くなかったブランニューの効き方をする画期的な新しいお薬となります。具体的には、目の中を流れている「房水(ぼうすい)」を2種類の経路を使ってその流出を促進することで眼圧を下げてくれます。 一番気になるのはその効き目ですが、 現在緑内障治療でファーストラインとして使用されている名薬 キサラタン点眼液(一般名:ラタノプロスト)に比べて「非劣性」 であるというデータが出ています。つまり、 滅茶苦茶良く効く ということですね。 またキサラタンに代表されるプロスタグランジン製剤(他にはトラバタンズ、タプロス、ルミガンなどのお薬があります。)には、点眼によって目の周りが落ち窪んだり、黒くなったり、毛が生えたりという、患者様に非常に嫌がられている、 PAP(眼窩周囲症状 Prostaglandin associated periorbitopathy)と呼ばれている副作用 があるのですが、エイベリスはこのPAPが少ないと言われています。 ただその一方で、 結膜(白目)の充血や黄斑浮腫(目の奥の網膜の視力に関係する大切な部分の腫れ)などの副作用がやや多い という欠点があります。そのため、 白内障術後で目の中に眼内レンズが入っている患者様や、タプロス(一般名:タフルプロスト)という点眼液を使っている方への使用は禁忌 となっています。 さて眼科専門医として正直に言うと、このエイベリス点眼液はやや副作用が多そうで、「ちょっと気難しそうな薬」という印象はあります。ただその一方で現在緑内障治療のファーストライン(第一選択薬)である前述の プロスタグランジン製剤のPAPという副作用をものすごく、死ぬほど嫌がっている患者様というのは実にたくさんいらっしゃるので、そういった方々へのオプション的な選択肢としての魅力は凄くある と思います。 まあいずれにせよ、私達眼科専門医にとっては機序の異なる、全く新しい薬効を示す緑内障の新薬が出たことはとても喜ばしいことです。 緑内障と言う難敵と戦うのに、使える武器はいくらあっても困ることはない ですからね。♬ エイベリス点眼液が多くの緑内障患者様にとっての福音となってくれることを期待しています。
2018.11.27
当院ではクリニックの周りにオリーブの木とツタを植えています。10年前の開院時はヒヨヒヨだったのですが、 いつの間にか強力に成長し今では年に4回くらいは散髪しないと収拾がつかないくらいの暴れっぷりとなっています。 ということで、先日はその散髪の日でした。業者の方に来ていただいて綺麗にしてもらっています。 これで無事に正月を迎えることが出来そうです。
2018.11.26
さて毎日の外来診療では目の写真をたくさん撮って、今後の治療方針の検討や患者様への症状説明に使っているのですが、これまでは画像取り込みに下記の様に原始的なコード付きの足踏みスイッチを使用していました。 ただこれだとどうしても足元がごちゃごちゃしますし、診察室の動線も印象も良くないので、スイッチを顕微鏡の横につけて指で操作できるように改善しました。 顕微鏡を操作しながら同時に小指でボタンを押す感じになるのでちょっと指が吊りそうになるのですが、何度も練習してだいぶ慣れてきました。(笑) 当院ではこれからも少しずつでも進化を続けて、患者様のお役に立つクリニックであり続けるように努力していく所存です。
2018.11.22
さて前回は、緑内障治療の根幹はしっかり眼圧を下げることであり、その為には毎日の点眼治療がなによりも大切であることを説明したうえで、更に+アルファの努力を希望される患者様に対して、緑内障治療サポートのサプリメントがあるというお話をしましたが、今日はその緑内障サプリの実際を御覧頂きましょう。 その名は、サンテ グラジェノックス。 日本1位の眼科用医薬品専門の製薬会社である参天(さんてん)製薬が、緑内障の患者様のために開発したサプリメントです。 具体的には、目の保護と機能改善作用が示されている松樹皮エキスとビルベリーエキスを高濃度に配合したものです。 またこのサプリメントの摂取で眼圧が下がったという健康人でのデータもあります。 それ以外にも、目の動脈の血流速度の改善 神経保護作用 視野狭窄抑制作用 なども示されています。 緑内障の患者様で、ネット通販・薬局・テレビのショッピング番組などを通じて「目にいい」と言われるサプリメントを購入されている方って実は非常に多いと思うのですが、どうせ飲むのであれば、日本ナンバーワンの目薬メーカーの参天製薬が、緑内障患者様のために気合を入れ、かなりのコストをかけて作ったこのサプリメントが良いのではないかな?と眼科専門医として考えています。 ちなみに当院にはお試し用に1粒付いた試供品もおいてあります。 興味のある方は、是非外来で気軽に声をかけて下さいね。
2018.11.12
40歳以上では20人に1人、70歳以上ではなんと7人に1人!が罹っており、我が国における失明原因の第1位ともなっている緑内障。 世界最高水準の人口高齢化がこれからも爆発的な勢いで進行していく日本では、その患者様数は更に激増することが確実視されている、大変重要な病気です。 この緑内障が怖い所は、「悪くはなるけど、決して良くなる事は無い。」という一方通行の進行性の病気である点です。 ただ「眼圧(目の血圧)を下げる」ことによって、その進行を抑制できることは信頼性の高い多くの論文で既に証明されており、だからこそ緑内障の患者様は毎日の点眼でしっかりと眼圧をコントロールすることが何よりも大切です。 ところで、緑内障の患者様と言うのは全般的に「非常にしっかりとされていて真面目」な方が多いことが知られています。我々眼科専門医の業界では「緑内障気質」という言葉があるくらいです。(笑) そのため、緑内障の患者様から「眼圧を下げるための目薬は絶対に忘れずきっちりと使っている。でも緑内障の進行を防ぐために、他にもっと何か出来ることはないですか?」という質問を良く受けます。 そういう、+αの努力を希望される患者様に対して、私は「緑内障治療サポートのサプリメント」を提案しています。次回はその「緑内障サプリメント」の具体的な内容を見てみましょう。 (続く)
2018.11.05
先日の事ですが、ヤフーのトップニュースに、 スズメバチ 今季は激増? という恐ろしいニュースが出ていました。 ちなみにこのスズメバチに目を刺されると、 下の写真の様な状態になってしまいます。 この患者様はスズメバチに角膜(黒目)を刺され前房(目の中)にまで毒素を注入されてしまい、その結果、黒目の表面の皮、水晶体(目の玉)が溶けてしまいました。何度かの手術を受けられたのですが、残念ながら視力を失ってしまわれました。 アウトドアでの活動は楽しいですが、是非サングラスや保護メガネをかけて目を防御しながらにして欲しいと眼科専門医として願っています。
2018.11.01
毎日の緑内障診療で欠くことの出来ない基本的な検査機械である、視野検査マシン。 当院では、耐久性とメンテナンス性に優れた日の丸国産メーカーであるコーワ社のAP-7000というマシンを現在「2代目」として導入しています。壊れにくくて非常に信頼できる名機ですね。♬ さて前回の日記で、 視覚障害者の認定基準が全面的に改訂 されたというニュースを取り上げたのですが、当院ではこの新しい変化に即時対応して、このAP-7000で検査後に等級を自動判定できるバージョンアッププログラムを導入しました。 コーワ社の技術者の方が来てくれて、ソフトウェアをバージョンアップ中です。 自動判定できるようになりました。♬ これからも当院では、常に医療環境の変化に迅速に対応し続けながら、快適な眼科医療が提供し続けられるように努力を重ねて行く所存です。
2018.10.27
目が非常に見えにくい患者様に関して、以前から身体障害者認定基準というものが定められていました。ただその基準が非常に細かくて、認定のために患者様にお願いしなくてはならない検査や書類記入は大変な手間とコストのかかるものになっていました。 今回、その基準が全面的に改訂されました。 全体として、非常にシンプルかつ分かりやすいものに改善されています。 特に、2~4級において、エスターマンテストという検査で基準を設定し、 一定以下の点数であれば次の10‐2プログラムに進むという流れは、実際の眼科臨床の実情に沿っており高く評価できると思います。 当院では、この新しい検査基準をコンピューターで自動判定できるように、視野検査マシンのプログラムを既に有償で大幅にバージョンアップしました。これに関しては、また次回詳しく説明しますね。(続く)
2018.10.23
普段の木曜日と言うのは、当院の手術日が火曜日と水曜日という関係で、術後の患者様で外来が込み合い非常に忙しくて活気のある一日になるのですが、今日は何故か朝からとてもゆったりとしており、私はのんびりと過ごしていました。 まあ、患者様の来院の立ち上がりが悪い日と言うのはたまにあり、「そんな日なんだろうな。」と思っていたのですが、それにしても何時まで経っても外来が空いたままです。 「うん???」と思っていると、街中から楽しげな 祭囃子 が聞こえてきました。 そう、今日は 地元の秋祭りの日 だったのです。こんな日には命に関わらない「マイナー科」である眼科と言うのは極端に患者様の数が少なくなるんですね。(笑) そんな訳で、今日は久々にのんびりとした外来診療を楽しんでいます。
2018.10.18
日本が世界に誇る眼科用医薬品メーカーの参天製薬から、近日中に全く新しい機序を持つ世界初の新薬が登場します。 その名は、エイベリス点眼液。 これは「選択的EP2受容体作動薬」という、今までに全くなかったブランニューの効き方をする画期的な新しいお薬となります。具体的には、目の中を流れている「房水(ぼうすい)」を2種類の経路を使ってその流出を促進することで眼圧を下げてくれます。 一番気になるのはその効き目ですが、 現在緑内障治療でファーストラインとして使用されている名薬 キサラタン点眼液(一般名:ラタノプロスト)に比べて「非劣性」 であるというデータが出ています。つまり、 滅茶苦茶良く効く ということですね。またキサラタンなどのプロスタグランジン製剤には、点眼によって目の周りが窪んだり、黒くなったり、毛が生えたりという患者様に非常に嫌がられている副作用があるのですが、これも少ないと言われています。 ただその一方で、 結膜(白目)の充血や黄斑浮腫(目の奥の網膜の視力に関係する大切な部分の腫れ)などの副作用がやや多い という欠点があります。そのため、 白内障術後で眼内レンズが入っている患者様や、タプロスという点眼液を使っている方への使用は禁忌 となっています。 ただいずれにせよ、 非常に眼圧下降効果が強く、かつ世界初の作用機序を持つエイベリス点眼液への期待は非常に大きい ものがあります。きっと多くの緑内障患者様にとっての大きな福音となってくれるでしょうし、私も眼科専門医として、近日中とされている発売を首を長くして待っています。
2018.10.05
「何か物が飛んで見える。目を動かすと一緒についてきて気持ち悪い。」と言うような訴えで受診される患者様は非常に良くいらっしゃいます。そのほとんどは「飛蚊症(ひぶんしょう)」といって、目の中の生理的な濁りが見えているだけで問題が無いことが多いです。 ところがこの飛蚊症、 飛び物の数が増えたり、形や色が変わった場合には要注意 なんですね。1つ具体例を見てみましょう。 上の写真の患者様は「数日前から目の前にハエが数匹飛んでいるように見える。」との訴えで来院されました。車を運転して受診されていたので瞳を開いて目の奥を隅々まで見る散瞳(さんどう)検査は出来なかったのですが、網膜が200度の範囲で撮影できる広角眼底カメラのオプトスでの検査では特に大きな異常は認めませんでした。。。 、、、、、、数ヵ月後、この患者様が再びフラリと受診されました。「4日前から急に目の前を飛ぶハエの数が5倍くらいに増えた。」と言うのです。すぐに目の奥を診せて頂くと、、、、、、 既に網膜剥離(RRD)を起こしてしまっていました。! 写真の上の方には穴(retinal tear)が開いているのも写っています。 この状況をエコー写真で見ると、 上側の網膜がベロッと剥がれているのが分かりますね。 この患者様はすぐに基幹病院に紹介して網膜剥離の手術を受けて頂きました。手術は無事に成功し、今は再び目の健康を取り戻されています。 このように、飛蚊症が急に悪化した場合には大きな病気が隠れていることがあります。皆様も是非心に留めておいて下さいね。
2018.09.27
患者様から、「あくびをするとどうして涙が出るの?」という質問を受けました。今日はこの問題について考えて見ましょう。 涙は、下の図の目尻の上のほうにある涙腺(るいせん)というところで作られています。 そしてあくびをすると、顔の筋肉が持ち上げられて涙腺が圧迫されることにより、「搾り出される」ように機械的に涙が出てくるのです。これが「あくびをすると涙が出る理由」です。とても単純な仕組みなんですね。(笑)
2018.08.21
さて当院では、今年2018年の新規設備投資として、コーナンメディカル社の新型レンズマッピングシステム VX40 を導入しました。 これは患者様のメガネの度数を測る機械なのですが、メガネを台に乗せてポンとボタンを押すだけで自動で測定してくれる優れものなのです。更に従来型の機械では測定がやや困難だった累進焦点レンズでもばっちり完璧に調べ上げてくれます。 患者様の検査時間短縮に繋がりますし、スタッフからも好評です。♬
2018.08.06
今や日本人の国民病とも言われている糖尿病。 糖尿病の方は、脳梗塞、心筋梗塞、壊疽などの大血管障害を起こしやすいことが知られています。 そのために上記の3つの疾患で病院に通院されている糖尿病の患者様は全国にたくさんいらっしゃるのですが、同じ糖尿病による細小血管障害である目の網膜症に関しては、まったく気にせずに完全に放置されている方が非常に多いのが残念な現状です。 その理由は単純で、 目に関しては何にも自覚症状がないから です。 糖尿病になって長い時間が経ち、全身に様々な症状が出るようになっても、目に関しては特に見えにくいこともない、何も困ることはない、という方が多いんですね。 これがどうしてかと言うと、 目は生き物にとって急所だから です。 自然界のほとんどの生物は、目が見えなくなったら終わり です。それは生きていくのに必要な食べ物を手に入れることが出来なくなるからです。そして実は人間もそれは全く同じです。 だから目と言うのは、糖尿病になっても何とか持ちこたえて最後の最後まで頑張ってくれる んですね。そういう臓器なのです。 でも、当然目にも限界はあります。糖尿病による合併症である網膜症には、 ある一定のラインを超えると、そこからの進行が恐ろしく早い という特徴があります。 具体的に単純化して言うと、糖尿病になって平均で約15年で初期(単純型)の症状が出始めるのですが、ここからが早くて、18年で中期(増殖前期)、20年で末期(増殖期)へと進行します。まさに、 坂道を転がり落ちるように悪くなる んですね。 下の図の左側が初期(15年)、右側が中期(18年)なのですが、実はこの中期までは目は必死に頑張り続けてくれるので、患者様が自覚できるような視力低下はほとんどありません。 でもこの次の末期(増殖期)に入ると、目の奥の網膜に大きな出血を起こしてしまい、一気に視力は低下してしまいます。つまり、患者様側からすると、 ある日突然、目が見えなくなってしまった。! という悲劇的なことになりがちなんですね。 そして、糖尿病による心疾患や脳疾患を起こしている患者様は、高率に目の網膜症も既に発症していることが知られています。 なので、糖尿病になってから15年以上経っている患者様で眼科を未受診の方は、是非一度、お近くの眼科専門医を受診されてくださいね。
2018.07.23
当院は開院して10年が経過しましたが、相変わらず多くの患者様に御来院戴いています。そして特に午前中は朝8時30分の診療開始時から毎日大変混雑しており非常に申し訳なく思っています。 ところで月・火・木・金の午後は3時半から6時まで外来診療をしています。最初の1時間くらいは「程々に混雑」していることが多いのですが、5時くらいになるとほとんどの日は「非常に空いている」状況となります。 この傾向は今に始まったことではなく開院時からずっとです。そのためこの時間帯にはレーザー手術や外来小手術・処置の患者様の予約を入れているのですが、それでも尚空いています。 他のクリニックでも同様の傾向があるようで、近くの内科の先生は「開けててもあんまり患者様が来ない。」とのことで午後6時までの診療を午後5時30分までに変更されました。 当院でも診療時間の変更を以前から検討はしているのですが、今のところは従来通り午後6時まで診療しています。平均すると午後5時から6時の間は非常に空いていることが多いので、極めてゆったりと丁寧に診察させて戴くことが可能な状況です。ということで、是非この夕方の時間帯にも受診して頂けたらと思っています。
2018.07.09
毎日暑いですね。楽しいプールの季節の始まりです。さて、 プール後の洗眼は逆に目を傷めるのでしないほうが良い と言うのは、我々眼科専門医の間では既に常識となっているのですが、どうもまだ国民的な一般的常識までにはなっていないようなので、今日は復習としてこのお話をしたいと思います。 「プール後洗眼は悪影響」 塩素が角膜損傷 国内研究チーム発表 プールで泳いだ後に目を洗うのではなく、ゴーグルを-。水道水の消毒に使われている塩素が角膜を傷つけ目に悪影響を及ぼすことを、石岡みさき医師(両国眼科)、慶応大学眼科などの研究チームが実験で明らかにし、米国の眼科学専門誌に発表した。 学校現場で当たり前に行われる水泳後の洗眼は、かえって目にダメージを与える恐れがあり、研究チームは「洗眼はやめてゴーグルで保護した方がいい」としている。 実験は、健康な男女各5人を被験者として実施。250ccの(1)体液と浸透圧が同じ生理食塩水(生食)(2)水道水(3)生食に塩素を加えたもの-で目を洗い、角膜の状態などを複数の方法で調べた。 この結果、(1)~(3)のいずれも目を洗う前と比べて角膜上皮の傷がやや増えたが、塩素入り生食の場合に顕著だった。また、目を保護する粘液の成分が、水道水および塩素入り生食で洗ったときに減少し、生食では減らなかった。 さらに、色素の透過量で角膜上皮のバリアー機能を調べる検査では、塩素入り生食の場合のみ低下が認められた。 これらの結果から、浸透圧ではなく塩素が目に悪影響を与える主な原因と結論付けた。研究班の加藤直子・慶大非常勤講師は「強酸や強アルカリなどが目に入ったとき以外、目を洗う必要はない。プール後の洗眼は、さらに傷を広げる可能性があるのでやめた方がいい」としている。 上記記事は2011年3月1日の産経新聞より引用 私自身も学生時代にプールに入った後でみんなで並んで一律で高い水圧で目をジョボジョボ洗っていました。よくある「昭和の風景」だったわけですが、実はその頃も「洗眼って、目の中の大事な善玉の成分まで洗い流してしまいそうで、何か嫌だな」と漠然と思っていたのですが、やはりその直感は正しくて、本当に良くなかったんだというお話です。 少し具体的に解説をしておきましょう。 我々の眼の表面と言うのは、上から油層、水層、ムチン層(分かりやすく言うと納豆のネバネバのような層。眼の表面を守るのに重要な役割をしている)の3層があるのですが、目を洗いすぎるとこのムチン層が剥がれ落ちてしまい、 そこにバイキンが付きやすくなってしまうのです。 またいわゆる アイボンなどの眼を洗浄する薬剤も使いすぎると逆効果 になります。 アカスリのやりすぎが皮膚に良くないのと同じような話 かなと思いますね。 そのため大切なことは、水泳をする時には必ずゴーグルをつけて雑菌と塩素の多いプールの水が目に入らないように予防した上で、目の洗浄はほどほどにする、ということです。 皆様も是非この「新常識」を覚えた上で、夏のプールを楽しんでくださいね。♪
2018.06.28
さて当院では今月、新しいはやり目(流行性角結膜炎)の検査キットを導入しました。 従来型のはやり目の検査キットは、赤目(眼瞼結膜)を綿棒で「血がにじむ」くらいにゴシゴシと擦らなくてはきちんと検査が出来なかったのですが、元々目に炎症を起こして来院されている患者様からすると、「そうでなくても目が痛いのに、更に粘膜を擦られてはたまらない。!」という非常に負担の重いものでした。 ところが今回の新型検査キットはなんと、 試験紙を赤目にピトッと浸すだけ、ただそれだけ という簡単さなのです。またこのやり方ならば検査時の痛みもほぼ0なのです。画期的ですね。♬ でもそんなに検査法が簡単になってるのなら、検査の感度も落ちてるんじゃないの? と思われる方もいると思うのですが、従来型の痛いゴシゴシ検査法と較べても感度低下がないことが既にデータとして示されています。 これはまさに夢の様な検査法ですね。これからは、 はやり目の検査はもう痛くない ということです。実際当院でも既に多くの患者様にこの新型キットを使っていますが、大好評です。我々医療者側にも、患者様にとっても、両者にとっての大きな福音となりましたね。
2018.06.19
さて2010年12月の発売以来、今や日本人の国民病とまで言われる「ドライアイ」の治療を革命的に進歩させた参天製薬の名薬にして、発売7年が経過した今もベストセラー街道をばく進する、ジクアス点眼液。 このジクアス点眼液はその薬理作用上、目の細胞からの水分とムチンという物質の分泌を促進するので、点眼後に涙の量を増やしてくれます。そしてその「うるおい効果」が点眼後約1時間も持続するという、画期的で優れものの目薬です。 その為、「ジクアスが無いともう生活が成り立たない。」と仰られる患者様もたくさんいらっしゃるくらいに大人気のお薬なのですが、ベストセラーで売り上げが多い(2018年3月期で見て、1年間で128億円)が故に、逆にクレームが目立つ点眼薬でもあります。 そしてそのクレームの中で断トツに多いのが、 ジクアスを点眼すると、その後で半透明のネバネバした目やにがたくさん出てきて気持ち悪い というものです。この「ジクアス点眼後に目やにが出る」という患者様からの訴えは非常に多く、私が1週間外来をしていると、最低でも1、2回は聞きます。 これは一体何なのでしょうか? ジクアスの何か危険な副作用なのでしょうか? 今日はこの「ジクアス点眼後の目やに」の正体について、私が眼科専門医として分かりやすく回答しましょう。 先ほども書いたように、ジクアスを点眼すると目の表面からムチンという物質が放出されます。これは納豆の様にネバネバしたものなのですが、この ジクアスの効果で出てきたムチンが、目の表面の常在菌をトラップしてトリモチのように絡めとって「目やに」として出てくる のです。 つまり、 ジクアス点眼後の目やには、お薬が効いている証拠 でもあるということなんですね。 ちなみに、このジクアス点眼後の目やには、無構造でバクテリアなどをトラップしたものであり、炎症細胞はほとんど認められない、いわば無害なものであることが専門的な研究によって既に分かっています。 以上をまとめると、 ジクアス点眼後の目やにに対してはそれほど神経質になる必要はない と思います。ただドライアイ治療ではジクアス以外にも有力な選択肢はたくさんありますので、どうしても不快で気になる場合には違う点眼薬に変えればそれで済む話でもあります。 なので、どうしても気になる方は、是非気軽に次回の外来で私達眼科専門医に相談してくださいね。
2018.06.11
さて私は2018年4月に第122回日本眼科学会総会(日眼:にちがん)に参加してきました。この春の日眼と秋の日本臨床眼科学会(臨眼:りんがん)は、我々眼科専門医にとっては一種のお祭りの様なものです。その理由なのですが、学会と言うのは年中たくさん開催されているものの、この2つは特に参加者が多く、それを反映して様々な楽しいイベントや宴が開催されたり、機械展示場が広くて多くの新しい検査・手術機械に実際に触れることが出来るからです。 今日の日記は、自分が「あっ、これめちゃ欲しい。」と思った、個人的な物欲がスパークしたものを備忘録的に残しておくものです。 まず一番いいと思ったのが、ドイツのカールツァイス社の最新型の眼底カメラのCLARUS 500。 このカメラは画角は133度しかないのですが、同時に複数枚の写真を撮ってそれを瞬時にコンピューターで繋げることによって非常に広い範囲の眼底を一度にバンとチェックすることが出来ます。当院では既に約3年前にこのカールツァイスの新型カメラのライバルとなる イギリスのオプトス社のオプトスデイトナ (画角は200度と非常に広くそこが大きな長所) というマシンを買ってしまっているので、ちょっと買い替えるという訳にはいかない(オプトスも凄く高額だったし、減価償却も全然終わっていない)のですが、このツァイスのマシンは写真の色調が美しくて自然なのがとても魅力的だな、と思いました。涎がタラタラと出ましたね。。。ちなみにブースにいらっしゃった社員の方によるとお値段は、「、、、ま、十分に1本は御用意頂かないと、、、」とのことでした。くー、欲しいけど結構イクなあ、、、 痺れますね。。。 後は、自分は日々の診療で日の丸国産メーカーであるタカギセイコー社の細隙灯顕微鏡(さいげきとうけんびきょう)を気に入っていて10年使い続けているのですが、その顕微鏡を設置しているスライディングテーブルに薄型でクールでカッコいい、更に可動域も広がっているというナイスな新型が出ていて、これもかなり欲しいなと思いました。 このように、 学会と言うのは「行くと欲しいものだらけである意味危険な場所」 でもあるのですね。(笑)
2018.06.04
薬に罪はないのに、日本の厚労省のシーラカンスの様な動きの遅さによる絶望的なドラッグラグ(本国アメリカから発売16年遅れ)、更に保険診療上の縛り(ファーストラインとして最初に処方することが出来ない)、トドメにプロモーション力が圧倒的に足りない業界下位の弱小メーカーである千寿製薬からの販売という、 「3重の地獄の苦難」を背負っての2012年の「ひっそりとした」静か過ぎる日本発売となったアイファガン点眼液。 またこれは完全な裏が取れているわけではない噂レベルの話ではあるのですが、複数の業界筋によると、このアイファガン点眼液の日本販売権に関しては、「アメリカ発売から16年も遅れて、更にめんどくさい1日2回点眼の古い薬なんて、どうせ今更大して売れないよ。」と製薬業界内で嫌がられてたらい回しにされ、それで最終的に弱小メーカーの千寿製薬に販売権が回ってきたという説もあります。(笑) そしてこのように、業界内の誰にも、何だったらもしかすると販売元の千寿製薬にさえも大して期待されないまま (笑) 静かに日本発売後6年が経過した今年、その「突出したガチンコ力の高さ」によって多くの並みいる競合薬を抑えて緑内障薬売上ランキングのトップに立ちました。これはまさに、 アイファガン点眼液が起こした奇跡 です。 今日は、どうして3重苦を背負った、並みの平凡な薬であったならばひっそりとそのまま息絶える運命だったアイファガンが「6年越しの奇跡」を起こせたのかについて、眼科専門医であり同時に発売時から熱狂的なアイファガンファンでもあり続けたこの私が、その秘密をついに語りましょう。 アイファガンの凄い所は以下の通りです。1. 副作用が少なくて効き目が強い。 はい、アイファガンの長所を一言で言えばこうなります。お薬と言うのは全てリスク(副作用)とリターン(作用・効き目)があるわけですが、このアイファガンはそのバランスが抜群にいいのです。 例えば、現在緑内障の点眼治療ではファーストラインとしてプロスタグランジン関連薬 が使われています。これらのお薬は眼圧を下げる力は本当に強くて、だからこそファーストラインなのですが、その一方で多くの特に「局所」の副作用があります。具体的には点眼後の強い充血、更に点眼を目の周りにこぼすと、そこが黒くなったり、くぼんだり、しまいに毛が生えたりします。中には逆にこの副作用を狙って、使い終わって余った使用期限切れの目薬を頭皮にゴシゴシ塗り込んでいるおじいさんさえいたりします。(専門的にはこの副作用はDUES:デューズという名前で呼ばれています。) またプロスタグランジン関連薬に次ぐセカンドラインの位置づけのベータブロッカー点眼剤(製品名でいうとチモプトールやミケラン)は、喘息・コントロール不良の心臓病・閉そく性の肺疾患がある患者様には禁忌で処方することが出来ません。ただ緑内障の方には高齢者が多く、自分で自分の持病を完全に把握できていない場合もあり、この系統の点眼薬の処方は医師・患者様の両方にとって大きなリスク要因となります。 更にセカンド/サードラインとして良く用いられる炭酸脱水酵素阻害剤点眼薬は、ペーハーの関係で強烈に目に沁みたり(製品名トルソプト)、沁みなくても目薬が白い濁り液で点眼後しばらくめがかすんで見えなくなるので、元々目に関して色々な不安を感じている緑内障の患者様にとっては気持ち的に沈んでしまって点しにくい、ついつい点眼をさぼりやすい(製品名エイゾプト)ものだったりします。 つまり、 緑内障の目薬と言うのはどれもそれなりの欠点があって気難しいものが多い のです。ところがアイファガンは非常に点し心地が良く(これ、凄い美点)、更に眼圧も良く下がる(ほぼセカンドラインのチモプトールと同等)のです。なので、患者様に一度処方すると、「先生、今度の目薬、点しやすいし眼圧下がるし、滅茶苦茶いいわあ。」と喜ばれることが多いのです。そして患者様が嬉しいと私達医者も嬉しいのです。何故なら、我々は患者様の「役に立つ」ことが最大の喜びであり、それをモチベーションとして毎日の外来診療を頑張っているからです。 これでもうお分かりですね。 アイファガンがベストセラーとなったのは、患者様に強く求められるお薬であったから。そこに「幸せの、喜びの連鎖」があったから。 なのです。 そしてアイファガン点眼液にはまだ他にも長所があります。2. 防腐剤に工夫があり、角膜障害が少ない。 緑内障の目薬と言うのは大なり小なり角膜(黒目)へのダメージがあります。そして防腐剤として、安価で一般的なベンザルコニウム塩化物(通称 エンベコ)が入っている目薬では、そのダメージが更に増強されます。ここでは具体的には書きませんが、多くの緑内障点眼薬はエンベコを使用しており、特に海外メーカーのものはその濃度もべっとりと非常に高い場合があります。ただ欧米の方はあまり角膜障害を気にされないようなのですが、日本人と言うのは「世界一消費者意識が高くてとても繊細」なので非常に気にされます。 そしてアイファガンは、Purite(亜塩素酸ナトリウム)という、非常に角膜に優しくて安全な防腐剤を使用しており、長期使用に不安が少ないところも大きな美点なのです。 この2点がアイファガンの凄い所なんですね。 ただこのアイファガンにも少ないながら欠点はあります。それは、 点眼後数か月が経過すると結膜(赤目)にアレルギーを起こしてくる場合が一定の確率である ことです。この副作用が出た場合には、違う系統の薬に切り替えることになります。 さて長くなりましたが、以上をまとめると、 アイファガンは売れるべくして売れた ということです。 緑内障点眼薬の中で「総合力が断トツトップ」であり、それが口コミで広がってついに6年経って1位になった ということですね。 これからも名薬アイファガンと共に、緑内障患者様1人1人の眼の状態に合わせた「オーダーメイド治療」に精進していきたいと考えています。
2018.05.27
2012年5月、今から6年前にひっそりと静かに日本国内発売となった緑内障・高眼圧症治療薬のアイファガン点眼液。 このアイファガンは、元々アメリカでは「アルファガンP」という名前であり、1996年の発売以来売上高世界上位のベストセラー薬であり続けている名薬でした。 少し復習をしておくと、この目薬(一般名 ブリモニジン)は「アドレナリンα2作動薬」といって、目の中を流れる房水(ぼうすい)の産生を抑制しつつ流出を促進するという、2つの作用機序を持つ非常に優れた薬剤です。先行して発売されたアメリカではずっと緑内障点眼薬売上ランキングの上位を維持し続けてきたベストセラーであり、我々日本の眼科専門医にとっても長年「喉から手が出るほど」使いたい、欲しいお薬でした。 ただ残念ながらその認可は遅々として進まず、なんと「アメリカから16年遅れ!」でようやく発売となったという、その「ドラッグラグ(海外で使われているくすりが、日本で承認されて使えるようになるまでの時間の差のこと)」の大きさでも話題となりました。 そしてこの2012年にようやく発売となったアイファガンなのですが、 なんと発売から6年が経過した今年2018年になって、多くの屈強な薬剤がひしめき合い、しのぎを削っている緑内障点眼薬の中で、なんと売上1位となった のです。 これはとてつもなく凄いことです。それがどうしてなのかを説明しましょう。1. 現在の緑内障治療においてはいわゆる「標準治療」≒ガイドラインが存在している。そしてその中では、第一選択薬としてプロスタグランジン関連薬(キサラタン、タプロス、トラバタンズなど)を使うことが推奨されており、 アイファガンは「最初に処方されるお薬」ではない。 2. また同時に保険診療上の縛りもあり、アイファガンは「ファーストライン(疾患に対して効果があるとされる複数の治療薬のうち、最初に投与すべきと考えられる治療薬)」として使うことは出来ない。あくまで「セカンドライン」以降の薬と言う位置づけとなっている。つまり、「大きくは売れないことを元々宿命づけられた薬」である。3. 更に悪いことに、発売元の千寿製薬は失礼ながら弱小メーカー(2018年3月期の売上高は379億円。これは製薬メーカーとしてはかなり少ない。)であり、薬の宣伝をする営業マン(MRさん)の数も広告のための予算も非常に少ない。なので「鼻薬を嗅がされた、緑内障学会のとてもエライ先生」が一般眼科医に薬を使うように「啓蒙」し、「応援」してくれることもほぼない。 つまり、 アイファガンが売れたのは、広告や宣伝の力ではなく、薬に本当の実力、「突出したガチンコ力」があったから なのです。でも同時に、千寿製薬には十分なプロモーションのためのお金がありませんでした。なので、アイファガンの良さは静かに口コミレベルで医療現場にじわじわと浸透するしかなかった。その為、2012年の発売からランキング1位となるまでに6年もかかったのです。 そして、資金力のある大手メーカーによる「パワープレイ」が支配的な製薬業界において、発売後6年が経過し更に弱小メーカーからの販売となったお薬が売上ナンバーワンとなるなどということは、医学界の常識では通常ではあり得ない、凄いことなのです。 それでは次回は、なぜアイファガンは数々の不利を乗り越えて売上ナンバーワンとなることが出来たのか? アイファガンのどこがそんなに優れているのか? その、 アイファガンの秘密 に迫っていきましょう。(続く)
2018.05.22
さて当院では2017年に、網膜電位計 レチバル を導入しました。 従来の網膜電位計と言うのは、目の中に巨大な電極を入れ、かつその状態に長時間耐えなければ検査をすることが出来ず、苦痛と恐怖を伴うとても大変な検査だった(と言うか、今現在でもほとんどの眼科施設ではそうだと思います。)のですが、このレチバルは、皮膚電極を目の周りにペタッと貼るだけで検査ができるので、本当に夢の様に快適に検査を受けることが出来ます。ちなみにこのレチバルの導入は、四国では当院が初となります。 この網膜電位計は、網膜色素変性症という病気の診断確定や糖尿病網膜症の重症度判定など、様々な病気の診断に力を発揮してくれます。 これからも当院では適切な設備投資を欠かさず、常に最新で快適な医療環境を維持し続けて行きます。
2018.05.12
さてしばらくこのブログを更新していなかったので、今日から数回に分けて、この2年間で行った当院の設備投資についてまとめておこうと思います。 まずは昨年2017年のことですが、日本のトプコン社の最新型のOCT(3次元眼底撮影装置)である、 スウェプトソースOCT DRI OCT Triton(トリトン) を導入しました。 このOCTと言うのは現代の眼科医療においては既に無くてはならない必須機械となっており、当院でも2011年に同じトプコン社のOCT2000というマシンを導入していたのですが、今回新しく入れたトリトンは飛躍的にその能力が向上しています。特に緑内障の診断能力が以前のマシンから較べると10倍くらいになっており、それが買い替えの決め手となりました。 眼科の検査機械の進歩と言うのは、本当に凄いものなんですね。
2018.05.12
本日で当院は開業10周年を迎えました。 お祝いでお花を戴きました。有難う御座います。 さてこの10年間を振り返って見ますと、開業時のスタッフも半数以上がそのまま今でも勤務してくれていますし、楽しくて明るい雰囲気のクリニックを維持し続けて来れたことが一番嬉しいなあ、と思っています。 そして、この10年間は以下の事を意識してクリニックを運営してきました。1. 院長である私がとにかく仕事を楽しむ。そして居心地の良い、雰囲気の良い院内環境を作り出すことを常に意識して、スタッフには働きやすい、患者様には明るくて受診しやすいクリニックであり続ける。2. 眼科医療の世界は変化と進歩がとても早い。当然検査機器や手術機械などもどんどんどんどんと進化する。そのため常に基幹病院と同等レベルの検査・診断・治療が出来るように、設備投資への出費を怠らず、むしろ意識してやや過剰なくらいに積極的な投資を行い、常に最新の医療機器を整え続ける。3. 院長である私自身が常に眼科医療に関しての知識を最新の状態にアップデートし続けることが患者様のために何よりも大切。何故なら自分が患者さんだったら不勉強な医者になんか絶対にかかりたくないから。そのため、可能な限り多くの勉強会・学会に参加し倒して、極限まで学び続ける。 これからもスタッフ一同常に研鑽を欠かさず、地域の皆様の役に立つクリニックであり続けることが出来るように努力を重ねて行こうと思います。
2018.05.07
今の白内障手術と言うのは技術的にはほぼ完成し尽しており、手術後には眼底(目の奥の網膜)に異常がなければ高い確率でよく見えるようになります。 でも、手術をしたらしたで、また「別の問題」が発生することもあるんですね。今日はそういったお話をちょっとして見ましょう。 白内障手術後に患者様からよく聞く訴えの一つに、 「手術が済んだら、顔のシワが増えた。」 というものがあります。特に女性に多いですね。 これは別に術後に急にシワが増えたわけではなく、それまでは白内障があって自分の顔の詳細が良く見えていなかったのが、手術が済んだらはっきりくっきり見えるようになって、それで急にシワが気になるようになってがっかりしたというお話です。 もう一つ多いのが、 「手術が済んだら、家中がほこりだらけで愕然とした。」 というものです。 これも、手術前には白内障のせいで家の中の細かい汚れが見えなかったのが、手術後に急に気になりだしたというお話です。この場合には、 「頑張って掃除をしまくっていたら、今度はぎっくり腰になってしまった。」 というのも、たまに聞くお話です。(笑) このように、白内障の手術後には良くも悪くも見え方は激変します。もしかすると、「手術をしない幸せ」というものもあるのかも知れないですね。
2017.12.11
角膜に潰瘍が出来てしまいなかなか治らない患者様がいらっしゃいました。 目の状態は上の写真の様な状況で、見ただけで大きな潰瘍(写真で緑色に染まっている部分)があるのが分かりますね。 これは「周辺部角膜潰瘍」という病気で、自分で自分の目を攻撃してしまっている状態です。ステロイドの目薬を使えばすぐに治ることが多く、私達眼科専門医にとっては一般的にはそれほど難しい病気ではありません。 ところが、この患者様、とにかく全然良くならないのです。目薬を変えてみたり色々と作戦を練るのですが、全然潰瘍が小さくならず改善しません。 「潰瘍部に凶悪なばい菌が住み着いていてそれで治らないのかな? それとも自分の見立てと違う何か違う病気なのかな? これは困ったな。」私も段々と焦りの色が強くなっていきます。 そんなある日、患者様を診察していると、かなり強く目を閉じる癖があることに気付きました。「もしや?」と思って患者様に自分で目薬を点してもらうと、 点眼した瞬間に目を強く閉じてしまっており、実際には目薬が全く目に入っていませんでした。 つまり、この患者様はちゃんと目薬を点せていなかったせいで、それで全く治らなかったのです。 そこで、この日からは奥様に代わりに目薬を点してもらうようにしたところ、 潰瘍はほんの数日で見る見る良くなりました。 大変勉強になる、そして印象に残る出来事でしたね。
2017.01.15
患者様から、「赤ちゃんってちゃんと見えているの? 視力は具体的にどのくらいなの?」という質問を受けました。今日はこの問題について考えて見ましょう。 私達人間は、黄班部(おうはんぶ)というところで物を見ています。ところがここが成熟するのは生後8~12ヶ月前後と言われており、生まれたての赤ちゃんはまだ黄班部がきちんと発育していないため大人の様にはキチンとは見えません。 ただし周辺部の網膜はそれなりに発達しているため全く見えないと言う訳でもありません。視力でいうと0.02程度はあると考えられています。なので 赤ちゃんに話しかけるときにはニコニコとオーバーリアクションが必要 です。そうしないと赤ちゃんには見えないんですね。 ちなみにまだ言葉がしゃべれない赤ちゃんの視力をどのようにして測るかと言うと、縞模様に反応しやすいという赤ちゃんの性質を生かして、 PL法という特殊なやり方で測定します。 そして0.02程度だった赤ちゃんの視力は、1歳で0.1、3歳で0.5、4歳で1.0とみるみる発達していきます。びっくりするほどに凄いスピードで目は成長していくんですね。
2016.10.17
目の神経が圧迫されて傷むことにより、見える範囲が欠けてきて最後は失明に至る恐ろしい病気の緑内障。 40歳以上の20人に1人、70歳以上ではなんと7人に1人! という大変頻度の高い病気なのですが、 緑内障患者様の10人に9人は未発見で放置されているのが現状 で、「なんだか最近目が凄く霞む。おかしいので来た。」と カジュアルに来院され、突然に失明寸前の末期の緑内障が発見されて途方にくれて立ち尽くされるという悲劇 が後を絶ちません。 ところでこの緑内障、 治らない 失明してしまうというような非常に怖い病気であるというイメージがとても強い のですが、実は同時に、 治療をすればするほど得をする 病気でもあるのです。いったいどういうことなのか説明しましょう。 私たち人間は生まれた時には目の視神経が約120万本あります。これが半分の約60万本以下になると視野(見える範囲)が欠けてきて緑内障になります。 そして、なぜかあまり一般に知られていないことなのですが、 この視神経、生きているだけでどんな人でも年に5000本くらいは自然に減っていく のです。でもこのくらいの減り方なら100歳になっても視神経が70万本残っているわけで元気に目を使って頂けます。ところが 緑内障の方は視神経が弱いので年に20000~30000本減ってしまいます。 仮に年に20000本減る方だと60歳時点で視神経は残り0本、すなわち失明ということになってしまいます。 さてここからが本題ですが、放っておくと年に20000本の視神経を失ってしまう緑内障患者様がここにいるとして、頑張って毎日眼圧を下げる緑内障の目薬を点します。するとこの 失う視神経の量を自然減の年間5000本に抑え込むことが出来る のです。 1年だと20000-5000=15000本、 1日だと約400本の視神経を余分に守り抜くことが出来た、得をした ことになります。そしてこの 得をした目の貯金が積み重なると、物凄い差 になります。 つまり、 緑内障の治療はすればするほど、目の寿命が延びて得をする ということなんですね。
2016.08.06
義眼の方の目の中はどうなっているんですか? と言う質問を患者様から頂きました。 義眼は怪我や病気などで眼球を摘出せざるを得なかったり眼球の中身を取る手術をした場合に、 眼球があるように見せるために入れる扁平な楕円形のもの で合成樹脂で作られています。ほとんどは反対側の元気な目に合わせて色や形を整えて1つ1つオーダーメイドで作ります。 それでは実際に見てみましょう。 非常に綺麗に義眼が入っていますね。 これを外すと、、、、、 中は空洞 になっています。この空洞(結膜嚢:けつまくのう)の状態に合わせて1人1人の患者様にぴったりの義眼を作っているので、パッと見では義眼と分からないことも多いくらいなんですね。
2016.07.15
最近の検査機器の進歩によって PPG (Preperimetoric glaucoma : 視野障害前緑内障) と言う概念が急速に広まってきています。これは、 視神経に緑内障性変化を認めるものの視野異常を認めない状態 のことです。 私達人間には目の視神経が元々120万本あります。そして大雑把に言うとこれが半分の60万本を切ると視野(見える範囲)が欠けてきて緑内障発症ということになります。 そして視神経に異常がありそれに一致する視野欠損があれば、どこからどう見ても立派な緑内障で当然に治療開始と言うことになる訳ですが、例えば今の視神経が残り70万本位で思い切り緑内障性の視神経変化を認めるけれども、視野検査では色々な検査法を駆使してチェックしてもまだ完全に正常であると言うことは臨床上非常に良くあります。つまり、 視野検査と言うのは「もどかしい位に非常に感度が低い検査」 なんですね。 分かりにくいので、具体的にPPGの症例を見ながらお話をしましょう。 これはある患者様の目の視神経をOCTという機械で解析したものです。上の図の左側が右目の神経の状態を示しているのですが、良く見ると下側に色が赤いところがありますね。これはその部分の視神経が減ってきていることを示しています。この状態で視野検査をしましたが全く正常でした。患者様は同時に高眼圧症と言って眼圧が非常に高い状態だったのですが、治療を希望されなかったのでそのまま様子を見ることになりました。。。。。。 さてこれが同じ患者様の 2年半後の写真 です。赤い部分が少しだけですが明らかに広がっていますね。 視神経が更に減ってしまった のです。ただ この段階でも視野検査はまだ完璧に正常 です。でも眼圧は25前後(正常値は10~21mmHg:単位の読み方はミリメートル水銀柱)と非常に高い状態が続いていました。眼圧が高いと視神経が非常に痛みやすいこと、またこの2年半での視神経の減り方を考えると今後数年以内に極めて高い確率で視野異常が出てきて「どこからどう見ても立派な緑内障」に移行するであろうこと、これが仮に私自身の目だとしたら絶対に目薬を使うことを説明したところ、治療開始を希望されたのでこの患者様は眼圧を下げる緑内障点眼を開始することになりました。 ただこのPPGをどの段階から治療開始とするか?については今のところ 明白な決まり がありません。1人1人の患者様と個別に丁寧に相談しながら決めると言うことになります。ただ、私自身の考えを言えば、 PPGは積極的に治療を開始すべき であると思います。 なぜなら 緑内障は進行すれば失明することもあり、しかも一度発症してしまえば「決して良くなる事は無い」怖い病気だから です。 進行傾向が明らかなのに、近い将来に視野が欠け始めることが分かっているのに、「その日が来るまで、ただひたすら座して待つ。」などということが良い選択だとはとても思えない からです。 このように医学の進歩と言うのは、様々な複雑で難しい問題を引き起こすことがあるんですね。
2016.07.11
さてアクティブになる楽しい夏の季節なのですが、それに伴って目にも色々なものが入ってトラブルを起こすことがあります。これは以前にも書いたことがある人気記事なのですが、新たな画像を追加して「2016年夏バージョン」でお送りしましょう。 ↑ この患者様は、「魚を捌いていたら急に目が痛くなって水で洗っても目薬しても何しても痛みが取れない。」との訴えで来院されました。矢印の部分に何かがありますね。 魚のうろこが白目(結膜)に刺さっていました。うろこは表面が複雑な形状をしているので一度目にくっつくとなかなか自力では取れません。顕微鏡で見ながら慎重にピンセットで引っぺがしたのですが、強力にくっついていたので剥がすのが大変でした。 ↑ この患者様は以前も紹介したことがありますが、農作業中に田んぼで転んでその時に目にヒルが食い付いてしまいました。非常にすばしっこく逃げるので摘出するのが大変でした。 ↑ この患者様はみかんの摘果(てきか)作業中に目にゴミが入り、「洗っても何してもどうしても取れない。」との訴えで受診されました。それもそのはず、蟻が目から振り落とされないように結膜(白目)に足を深く刺してしがみついたまま絶命していました。このありんこも引っぺがすのが大変でした。 ↑ この患者様は、「まぶたの裏で何かがもぞもぞ動いている!」との訴えで来院されました。上まぶたをめくって調べて見ると、ショウジョウバエと思われる2ミリ大の虫が目の中で既に絶命していました。 このように、目の中と言うのは様々な異物が入り込みます。自力ではなかなか取れないもの、取るのが危険なものもあります。ですので、「あれ?何か目にゴミが入ったぞ。」という時には、是非気軽に遠慮なくお近くの眼科専門医を受診するようにしてくださいね。
2016.07.07
眼科医療には必要不可欠な機械であるレーザー光凝固装置。具体的には糖尿病網膜症の進行抑制や網膜に穴が開く網膜剥離裂孔の治療に使用するのですが、当院では8年前の開業時にグリーン(緑)1色だけ打てる廉価版のマシンを最初に導入しました。 これは開院時は財務的にかなりタイトだったために価格的にハイグレードのマシンが買いにくかったためだったのですが、白内障が強い患者様だとグリーンレーザーは目の奥の網膜までキチンと到達しないという問題点があり、「あ、これじゃ全然ダメだな。」という判断の元、開院2年目には早くもグリーン(緑)に加えてレッド(赤)も打てる上位機種 に急遽買い換えました。そしてこの目の奥までキチンと届くレッドレーザーがあれば、ほぼどんな患者様へのレーザー治療にも対応できたために、今日まで御機嫌で使用してきました。 これがこの7年間を共に戦ってきたマシン、オーストラリアエレックス社の「インテグラデュオRGレーザー光凝固装置」 となります。特に悪いところも無く今でも現役バリバリの状態良好のマシンなのですが、眼科医療の進歩のスピードはとてつもなく速く、大幅に機能アップした最新鋭のマシンへ買い換えることにしたので、泣く泣くお別れすることになりました。シンプルで分かりやすい操作性で、サイズもコンパクト、かつ実に安定したパフォーマンスを発揮してくれた名機で、とても名残惜しいです。本当にお世話になりました。。。。。。。。 さてこれまでこの「インテグラデュオRGレーザー」がいた場所には、3代目となる新型レーザー装置がやってきます。このマシンの眼科医療機関への導入はなんと当院が「四国初」となります。お楽しみに。。。。。。。。。
2016.06.27
黒目と白目の境目がどんどん白くなってきたのですが大丈夫ですか? と言う質問を患者様から受けることが良くあります。そうですね、大体1ヶ月に数回は聞かれます。今日はこの問題について考えて見ましょう。 まず結論から言うと、これは 老人環(ろうじんかん senile ring) というものです。「お年のせい」ということですね。加齢によって脂質が沈着して黒目の周りが白っぽくなったものですが、通常は視力低下に繋がったりはしないので気にしなくて大丈夫です。 それではこの老人環が一体どのようなものなのかを具体的に一緒に見ておきましょう。 上の写真で水色の矢印で示したのが老人環です。ちょっと分かりにくいので色を塗ってみましょう。 緑色に塗った所が老人環です。黒目(角膜)の隅っこなので視力などには影響はないので心配しなくてもいいんですね。 そしてこの老人環、70歳以上だと大体80%くらいの方に存在します。なので、 目の白髪 くらいに思って頂いて良いと思いますね。
2016.06.21
さて前回の日記である患者様の網膜剥離の術後の写真(左目)をお見せしたのですが、 そもそも網膜剥離は疫学的には 1年間に10000人に1人 発症すると言われています。ところが、 片目に網膜剥離を起こした患者様がもう片方の目に剥離を起こす可能性はその100倍の1年間に100人に1人へと跳ね上がる のです。それだけ目が弱いということなんですね。 実際、上でお見せした患者様の反対眼の右目の網膜の状態を覗き込んで見ると、 やはり隅っこにすでに穴が開いていました。! ただこちらはまだ幸運にも剥がれてはいなかったので、レーザー(PC)を打って周りを補強することで事なきを得ました。 このように網膜剥離には「起こしやすい方」がいます。具体的には、片目に網膜剥離を起こした方を筆頭に、近視の強い方(網膜が薄くて弱いため)、アトピー性皮膚炎の方(かゆみで目を慢性的に触るのでそのダメージが降り積もるため)、ボクシングや相撲などの目を打撲することが多い格闘技をされる方などが該当します。心配な方は是非一度お近くの 眼科専門医 を受診されてくださいね。
2016.06.17
さて当院に導入して半年以上が経過した、イギリス オプトス社の超広角眼底カメラ(目の奥の網膜の写真を撮るマシン)のオプトスデイトナ。 このオプトスの凄さを改めて復習すると、普通の眼底カメラは画角30度くらいの狭い範囲しか撮影できないのに対して、オプトスは一度に200度、網膜の80%をカバーする範囲が撮影できるということです。しかも無散瞳(むさんどう、瞳を開く検査薬を使わずにそのまま撮影できる)、非接触(目に器械が触れない)、短時間という、3拍子揃ったいい所だらけのまさに夢のマシンです。 さてこの夢のマシン、オプトスを導入してから私は毎日の外来診療がより楽しくなったのですが、その最大の理由が、 目の奥の網膜の状態が手に取るように全て分かる ようになったことでした。従来の眼底カメラだと画像を継ぎ合わせないと網膜の全体像と言うのは把握できなかったのですが、このオプトスだとそれが一発でOKなんですね。 今日は恐ろしい病気として知られている 網膜剥離(もうまくはくり) の術後の網膜の状態をご覧戴きましょう。 上の図の矢印の部分に丸く開いているのが網膜剥離(RD)の跡です。この大穴から水が入って網膜が剥がれてしまい緊急手術を要しました。穴の周りがブツブツに見えるのは穴を塞ぐ為にレーザーを何重にも打ってカチカチに固めてあるからなんですね。非常に綺麗に手術が出来ており今は視力もすっかり良好に回復しているのですが、術後の状況が手に取るように分かります。 このように オプトスと言うのは毎日の外来診療に凄まじい効果を発揮 してくれます。「もう2度とオプトス無しの生活には戻れない。」と言っても過言ではないですね。
2016.06.10
どうして人間の瞳は丸いのですか? という質問を患者様から戴きました。今日はこの問題について考えて見ましょう。 まずここで言う瞳と言うのは目の真ん中に開いている「瞳孔」のことですね。私達人間は 「外界からの情報の80%を目から手に入れている」 と言われており、その入り口となるとても重要な部分となります。 さてこの瞳孔、我々人間はたまたま丸いわけですが、 実は動物によって異なる のです。! (眼科セカンドオピニオン 銀海舎 P53より引用) 猫が縦型なのは割と皆さんも御存知かと思うのですが、 ヒキガエルはなんとハート型 なんですね。 また我々人間でも、たまにこのハート型の瞳を見ることもあります。 これはある患者様に検査のために散瞳薬という目薬を入れたところなのですが、上方の虹彩(茶目)の一部がその後ろの水晶体とくっついている関係で、偶然「ハート型」になっています。 患者様に「目がハート型になっていますよ。」とこの写真をお見せしたら大変喜んで頂いたのですが、とっても珍しいものが見れて私も嬉しかったです。こういった様々な楽しいことがあるので、私は毎日の外来診療が大好き なんですね。
2016.06.06
さて当院では開院時より待合室にティーサーバーを置いて常時4種類のドリンクを楽しんで頂けるようにしていましたが、この度それを最新型の機種へと入れ替えました。 ↑ こちらが古いティーサーバーです。いつの間にかだいぶ色褪せてしまいましたね。 ↑ そしてこれが新しいティーサーバーです。以前から人気の高かった玄米茶は残し、特上煎茶、ピーチティー、うるおいレモン水を新規に導入しました。私も試しに飲んでみましたが、どれもとても美味しかったです。 当院ではこれからもクリニックの隅々にまで気を配って、スタッフ一同頑張って行きたいと考えています。
2016.06.04
さて白内障手術時には、目の中への器具の出し入れと眼内レンズ挿入のために一般的に2.2~2.8ミリ程度の切開創を作ります。私自身は色々と試行錯誤の末に今は余裕を持って2.5ミリで手術を行っています。以前は2.3~2.4ミリでやっていたのですが、器具の出し入れ時にやや狭くて負担がかかり逆に創の強度が落ちることがあったために、安全性を重視して少し広げました。 そしてこの切開を作るためには スリットナイフ というものを使うのですが、私が開業しているエリアは非常に目が窪んで(奥目)いて更に瞼の幅(瞼裂)が狭い人が多いので、理想通りの切開を作るのに非常に苦労する場合がありました。 この苦労について以前に日記に書いてボヤいていたのを、眼科ナイフメーカーのマニー社(純国産メーカーです) の方が見ていて、「奥目用の新製品が出たので使ってみて下さい。」とディーラーの吉田メディカルさんを通して連絡をしてくれました。ちなみに眼科ナイフメーカーは数社あるのですが、その技術力と切れ味はこのマニー社がダントツのトップで、私は手術でマニーのナイフ以外は一切使いません。そのくらい他社のナイフとは差があり、私はマニーが世界一の眼科ナイフメーカーであると確信しています。 そしてこれがその新製品 ショートヘッドナイフ となります。 アングルから先が従来品よりも2ミリ短くなっていて、飛躍的に操作性が上がっています。またナイフの先端から1.5ミリと2.0ミリのところにラインが入ったことによって更に使いやすくなっています。本物を見てみましょう。 小さすぎて何だかよく分かりませんね。それでは実際に手術時の画像を御覧戴きましょう。 切開が狙い通りに超クールに決まります。滅茶苦茶使いやすくて感動しました。また、奥目の患者様以外でも全然いけます。これは素晴らしいナイフですね。 この新製品のショートヘッドナイフが最高だったので、即日全ての手術で使用するように変更しました。マニーの担当者の方、またディーラーの吉田メディカルさん、素晴らしい情報を教えて頂いて有難う御座いました。
2016.06.02
さて当院では最低年に2回、「院内感染対策」に関しての全スタッフを対象とした研修を行っています。これには外部講師を招くこともありますし、院長の私が行うこともあるのですが、今日はその実際をちょっと見て頂くことにしましょう。 この日は「古くて新しい病気」である結核について私が概説をしました。長引く風邪や咳がある場合、それはもしかしたら結核かもしれません。何故なら今でも1年に20000人以上の方が新しく罹っている病気だからです。 そしてこの結核、実は目にも出るのです。 このように結核によって目の奥の網膜の血管が詰まってしまい出血を起こすことがあるのです。こうして古くて新しい病気である結核は、今でも静かに日本のどこかで広まっているんですね。
2016.04.21
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