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11月に入って暦の通り、小雪。雪の降る青森県へ托鉢に行ってまいりました。
風もあって真横に雪が飛ばされていきます。寒さに震えじっとしていると手足が痛くなってくるので、ひたすら歩き続けます。
そんな時に思い出すのが、昔見た731部隊の映像でした。詳しくは覚えていないのですが、収容されている捕虜の手を伸ばしているところに水をかけ、どこまで寒さに耐えられるのか、凍傷となって腐るまで研究に使われたものです。あの冷たさは…意識のある人間にそれが行われていたという、それを思い出すと自由な身の自分は言葉を失うのです。
やっぱり歩き続けなくては…と。
峠を過ぎ、お天気も回復しましたが、今度は歩道が溶けた雪と水でぐちゃぐちゃ。草鞋にしみて車道に出たい思いでいっぱい。お腹も空かずに歩きます。そんな時に公衆トイレに入るとほんのり暖かく、気持ちが和みました。
と、小さな田舎道の駅の近くで托鉢していた時のこと。学校帰りの詰襟をきた男の子が側に寄ってきました。
「何しているんですか?」
「托鉢って聞いたことあるかな?」
子供なほど自然体で寄って来ますが、彼もそんな風でひやかしは感じませんでした。すぐに別れたのですが、しばらくしてもう一度くるなり
「やっぱり、街でこんな人と会うのは珍しいから話を聞かせてください。」と言って、しばらく付いて歩いたのです。そうして僕も入れていいですかと、半開きのリュックから小銭入れを取り出して入れてくれました。
そのやり取りは、とても私に勇気をくれました。こんな若い子でも、直感的に感じる力を持っているんだなあ、と。
街は閑散として、自分のこと、人生や経済、家族のこと、そんなもので忙しく、大いなるものやこんな異質なものには目がいかない世相です。そんな中でも立ち止まって、何だろうなあと話しかける男の子の存在はかえって稀有に思えました。
どんな大人になるのでしょう。それはまだ未来に希望を感じさせる出会いでした。そして、素直に育てる環境を残して行きたいとも思われるのです。
寒かったけれど、やっぱり良かったと無事に帰路についた私でした。