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2005.04.03
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中世とは何か

第一章「中世史家になる」では、中世に興味をもった理由が語られます。それから、彼の中世観、史料に関する話などが語られます。
第二章「長い中世」では、中世史家が扱う中世とは、いったいいつなのか、何なのか、邦訳のタイトルの通り、文字通り「中世とは何か」が語られます。ここで示唆深いことが述べられます。「私は歴史的事実というのはつねに歴史家によって作られると思っています。時代というのも、歴史的事実以上に作られたものなのです」(70頁)。彼は、断絶という概念よりも継承と転換という考え方を重視していており、様々な分野の間でタイムラグがある、ということを述べています。つまり、政治、経済、文化(広義の文化は政治、経済なども含むでしょうから、ここでは芸術などの意味で)…これらは、ある時を境に一気に変わるというものではない、ということです。一般に(従来)、中世は476年の西ローマ帝国の滅亡からはじまる、とされていますが(この区分は19世紀以来のものだそうです。86頁)、これを境に新しい時代の始まりとはいえない、と。もっとも、この伝統的時代区分に対する批判はいろいろ出ているようですが。なお、彼の時代区分に関する、あるいは中世の枠組みに関する考えは、手持ちの文献でいえば、 Medieval Imagination の"Introduction"と、"For an extended Middle Ages"(拡張された中世のために)で述べられています。
第三章「商人、銀行家、知識人」では、表題にある三者から見た、労働観について述べられています。この章に関して、日本語で読める本に、『中世の知識人』(岩波新書。今は絶版のはずです。私も古本屋で買いました)、『中世の高利貸』(法政大学出版局)があります。いずれも、卒業論文の際には参照させていただきました。…ん?私はいつからかジャック・ル・ゴフが大好きですが、これはいつからでしょう?最初に読んだアナール学派の本は、コルバン/デュビィら『感性の歴史』(藤原書店)で、これを読み、私はアナール学派の知見を使った勉強をしたい、と強く思い、第二外国語はドイツ語をとっていたのですが、独学でフランス語を勉強し、現在ではアナール学派の研究者の文献をいろいろと読んでおります。ともあれ、最初に読んだジャック・ル・ゴフの本はなんだっけ…?って、どうでもいい話ですよね。脱線しました。
第四章「ある文明が形をなす」では、簡単にいえば、西洋中世の時間と空間について、述べられています。封建制と領主制、正統と異端、という小見出しもありますが。
第五章「天と地において」まず、『聖王ルイ』という本が邦訳で出たのですが、聖王ルイを中心に、伝記のありかたなどが述べられます。また、中世の「人文主義」という考え方が示されます。あとは、異端の迫害、聖霊、悪魔などについて語られます。
第六章がエピローグです。
どの章も興味深く読んだのですが、特に第一章、第二章は興味深かったです。

Muessigの論文集もあと7ページほどで読了するので、終わったら、Le Goff, Time, Works, and Culture in the Middle Ages に収録されている論文のいくつかを読もうかな、と思います。Muessigもこの本を参照しておられるので。ハードカバーとペーパーバックのページが一致していなかったら、ちょっと面倒ですが…。





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Last updated  2005.10.15 20:21:16
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のぽねこ @ シモンさんへ コメントありがとうございます。 久々の再…
シモン@ Re:石田かおり『化粧せずには生きられない人間の歴史』(12/23) 年の瀬に、興味深い新書のご紹介有難うご…
のぽねこ @ corpusさんへ ご丁寧にコメントありがとうございました…

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