第四章6で論じられる狩猟書と料理書の話もとても興味深かったのですが、ここでは特に、14世紀の料理書が、携帯と現場での参照に便利なように、その多くが巻物の形を取っていたという指摘を挙げておきます。というのも、巻物の形が、果たして現場で使うのに便利だろうか、と疑問に思ったのでした。 私は、西洋中世の説教史料や説教活動に関して特に勉強してきているのですが、13世紀には托鉢修道会といって、民衆への説教活動を精力的に展開する修道会が誕生します。その修道士たち(=説教師たち)は、説教に使うために、小型の手引書を携帯していた、と指摘されています(cf. d'Avray,The Preaching of the Friars, pp. 57-62)。 制作者や実際での現場での使い方が同じというわけではないとはいえ、巻物よりは、このような小型本の方が参照に便利だと思うのですが、なぜ巻物という形が多いのか。興味深い問題だと思います(私が不勉強なだけで、既に解決されている問題かもしれませんが…)。