ちなみに、本書では、ジャック・ド・ヴィトリ(1240年没)という聖職者が記した『西方の歴史』から、中世の学生たちが出身地が違う者たち同士で互いに罵り合っていたという情景が紹介されています(62-63頁)。この中で、「彼ら[学生たち]は、イングランド人は酔っぱらいで、尻尾があると言い張り」という一節があります。「イングランド人には尻尾がある」とはどういうことか。本書ではそこまで書いていませんが、ルコワ・ド・ラ・マルシュという研究者による19世紀末ころの著作に、この「尻尾持ち」(caudatus)という言葉の意味が紹介されています。それによれば、この言葉は女性のローブの裾の長さを非難する際にも用いられましたが、本来は衣服についてのことではなく、臆病者を意味する言葉だったということです。せっかく数年前に勉強したことなので、参考までに書き留めておきました(フランス語の文章を誤解しているかもしれませんが…)。 (Cf. A. Lecoy de la Marche,La chaire francaise au moyen age. Specialement au XIIIe siecle d'apres les manuscrits contemporains, Paris, 1886 [repr. Geneve, 1974], pp. 440-441)