広瀬正『ツィス(広瀬正小説全集2)』
~集英社文庫、 1982
年~
ツィス(ドのシャープ)音が聞こえる…。精神科医・秋葉医師のもとに一人の女性から訴えがあってから、日本中を巻き込む騒動につながる、という長編作品です。
その時期、有名なフランスのバイオリニスト・モレル氏が、とつぜんコンサートを中止するという事件が起こります。
モレル氏にもツィス音が聞こえたため、演奏どころではなくなったのではないか。そう考えた秋葉医師は、音響学の権威・日比野教授に相談をもちかけます。教授は、ツィス音測定機を作成し、実験を重ねた結果、いずれ東京にも音が聞こえるようになる、そしてツィス音はどんどん大きくなるという予測をたてます。
そこで、テレビ局で、ツィス音の状況を専門に解説する番組が開始されることになり、教授は今後の予測と対応について、人々に発信していくことになるのですが、ついに東京でも耳栓なしには暮らせなくなるほどにツィス音が大きくなるという時期が近づき、政府とともに解決策を練っていくことになります。
謎のツィス音、そしてそれがどんどん大きくなるといういわば大災害というテーマに加え、マスコミの役割・ありかた、災害への政府の対応など、様々なメッセージが感じられる作品でした。そして物語が反転するほどの結末の衝撃……。これは面白かったです。
(2022.10.05 読了 )
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