シューベルトの「鱒」

《私の『シューベルトの「鱒」』》



  シューベルトは、珍しい楽器の組み合わせであるピアノ五重奏曲イ長調、作品114を、1819年に作曲
しました。実はその2年前に、歌曲『鱒』を作曲しているのです。これをモチーフにして、ピアノ五重奏曲の
第4楽章が主題と変奏曲から成っています。

  この『鱒』をオカリナで演奏してみたくなり、例によってピアノとヴァイオリンで、伴奏作りに取りかかった
のですが、なかなか思うようにはかどりません。それに、原曲に忠実にイ長調で演奏しようとしますと、
E管のオカリナが必要です。このE管のオカリナは、タイタニックの『愛のテーマ』の演奏用に持っていますが、
シューベルトの『鱒』を明るく生き生きと演奏するには、少しもの足りません。

  そうこうしているうちに、このシューベルトの『鱒』の伴奏が、市販のフルート曲集で、見つかりました。
その楽譜は、私の思っているとおりの編集になっていて、うってつけです。ところがここで、また新たな問題が
出てきたのです。その伴奏は、ニ長調で演奏するようになっているのです!

  シューベルトの『鱒』をニ長調で演奏するには、A管が必要なのです。幸いにも私はアルトのA管を持って
いますので、シューベルトの『鱒』の展開部を、1オクターブ上の、ソプラノのA管で演奏したいという願望が
ムクムクと湧き上がってきて、どうすることも出来ません。仕方がないので、このソプラノのA管は、アケタに
特注で作製していただきました。こうして、オカリナによるシューベルトの『鱒』が完成しました。

  この主題と変奏については、詳しい解説が見当たりません。私が演奏する時は、最初はお母さん鱒が、
かわいい子供の鱒を引き連れて気持ちよく泳いでいる様子を思い浮かべながら、アルトのA管で演奏します。
次の、トリルをふんだんに用いた華麗な変奏部分は、ピアノ五重奏ではピアノで演奏されますが、
この部分をソプラノのA管で演奏しますと、かわいい子供の鱒が、お母さん鱒から一定の距離を保ちながら、
まるで踊りながら泳いでいるようです。

  このように鱒の親子が楽しく泳いでいるところに、大きな獰猛な鯉がやってきて、かわいい鱒の子を
飲み込んでしまおうとします。この部分が、短調に変わる部分で、アルトのA管で演奏しますと、
その気分が出せて、ぴったりです。びっくりした子供の鱒は、あわててお母さんに寄り添って逃げて行きます。
やがて獰猛な鯉は去り、また鱒の親子に平和で楽しい世界が戻ってきて、この曲は静かに終わります。
これはTakashi’s 3rd Album に収録してあります。



おかりなたち






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