入院4日目

お産入院のすべて―2人目編


10月24日(金)入院4日目

■体重のナゾ

 寝不足でぼーっと迎えた朝。おっぱいがさらに巨大化しパンパンで痛いが、さすがにゆっくり休みたくて、朝7時前からしばらくパルタを新生児室に預け、搾乳しながらしのいだ。

 10時過ぎ、私の尿検査と体重測定があるとのことでナースステーションへ。検査紙を受け取ってトイレで尿をかけ、渡すと、体重計に乗る。

 …出産前から-2kg。

 前回もお産直後あまり体重が減っていなかったので今回も期待していなかったとはいえ、約3500gのパルタを産んで胎盤も羊水も外に出たというのに2kgしか減っていないとは一体どういうことなんだろうか。尿検査は糖たんぱくともにマイナスで異常なしであった。

 10時40分ごろから沐浴指導があるとアナウンスがあった。私は2人目ということで出なくても良かったのだが、前回の沐浴のことなんてすでに忘却の彼方だったので一応出ることにし、ナースステーションに向かう。

 助産師長さんが講師となり、実際に沐浴をしながら手順を説明してくれた。見ているうちに忘れていた記憶が呼び起こされてきた。ああそうそう、こんな感じだった。

 沐浴指導を行っている場所のすぐ後ろにある新生児室から大泣きの声が聞こえて振り返ると、おなかを空かせたパルタがギャンギャン泣いていた。なるべく母乳を吸わせていることがわかっている看護師さんが「糖水を少しあげるだけでいい?」と聞きにきたのでお願いした。すぐにほんの少し糖水が入った哺乳瓶をパルタに手渡してくれたのだが、なんとパルタ、その哺乳瓶を自分で持って飲んでいるではないか! 生後4日目でそんなことができるもの? ビックリである。

 引き続き立ったまま沐浴指導を受けていたら、ヘモが痛くて気分が悪くなってきた。おへその消毒の仕方まで効き終えたところで抜けさせてもらい、おなかを空かせたパルタとともに部屋に戻ったのだった。

■ウェルカムパーティー

 ベッドの上で添い寝をしながら授乳していたら、ポカポカの陽射しに気持ち良くなってしまい、いつの間にか寝てしまっていた。「よん様~、よん様~!」と名前を呼ぶ声に目を覚ます。ん? ナースコール?

 時計を見ると12時15分。ギャーッ!!!

 実は今日、「ウェルカムパーティー」と銘打った食事会がホールで行われるとのことで、11時45分にホール集合と言われていたのだ。30分も遅刻じゃないかあ~! しかも、退院前の外来診察を行うために授乳が終わったらナースコールしてくださいと言われていたのに、それもすっぽかしてしまった。

 あわててナースステーションにパルタを預け、ホールに向かう。ホールでは近い日付で出産したママさん3人と助産師長がすでに食事を始めていた。
「す、すみません~~」
 ペコペコ謝りながら席に着くと、「一度乾杯してしまったんだけれど、そろったのでもう一度しましょう」とのお言葉。本当にすみません…。

 食事会のメニューはとても豪華だった。
 スープ、ステーキ、トマトとモッツァレラチーズのサラダ、サーモンのカルパッチョ、クロワッサンとデニッシュパン。デザートにはグレープフルーツゼリーとハーゲンダッツのアイスクリーム、そしてボリュームたっぷりなアップルパイまで。

 12時45分にはパーティー終了となるため、遅れを取り戻すべく食べる食べる食べる。

 一方で助産師長さんに話を振られながら、出席者のみなさんとお話。
 私を含めた4人の出席者のうち2人は初産。もう一人の方は3人目のお子さんだったそうだ。初産のママさんのうちの一人は分娩室に入ってから15時間もかかってしまったそうで、あまりの痛みに看護師さんを蹴飛ばしてしまったのだとか。出産の感想を聞かれ、「死ぬかと思った」と答え、陣痛がこなくて分娩室で世間話をしていたという私の話に目を丸くしていた。

 助産師長さんのお話で印象に残ったのは、「上の子を絶対に孤立させないでくださいね」というものだ。これまで自分だけのママだったのに、ある日突然別の赤ちゃんを抱いているということは、上の子にとってそりゃあショックな出来事だ。だから下の子と2人きりで授乳する姿は絶対に見せないようにと。授乳する時には必ず上の子もそばに呼び、おやつをあげて一緒に食べるとか、絵本を読んであげるとよいとのこと。なるほどなと思った。

 あっという間に時間は過ぎ、当然料理は食べきれなかった。残ったものはスタッフの方々がラッピングしてくださり、部屋に持ち帰り。最後に記念撮影をして、お開きとなった。

■移動

 パーティーを終えて部屋に戻ると、メロンが1個ドンと置いてあった。どうやら留守中に叔母がお見舞いに来てくれたらしい。

 新生児室にパルタを迎えに行くと、部屋を移るので荷物をまとめてくださいと言われた。明日退院なのに、面倒くさい。このままでいいのになあと思いながら荷物をまとめ、ナースコール。すぐに看護師さんがやって来て、14時ごろには部屋を移動した。

 新しい部屋に移動して驚いた。いままでの部屋よりさらに広く、部屋の中にトイレとシャワーがついているのだった。ヘモ痛を抱えた私にとって、いつでもトイレに行って薬が塗れるし好きな時にシャワーで患部をあたためられる(すると楽になる)ということは、非常にありがたい。前回入院した時にはこのタイプの部屋は使ったことがなかったのでビックリした。さっきまで「面倒だ~」とブツブツ思っていたのに、すぐに吹き飛んでしまった。

 今日はまだ病院に来ていなかった父に移動したことを連絡しようと電話したが、家にはいなかった。父は携帯を持っていないので連絡が取れない。仕方なく母にだけ連絡をしておくと、15時すぎに父とルンバがやって来た。トビラを開けるなり、ルンバが「ねー、ママ、やっぱりこっちだったでしょうー」とわかったようなことを言う。

 なんでも前の病室に行ったらほかの人がいて驚き、ナースステーションで移動のことを聞いて新しい部屋にやって来たのだということ。今日は病院に来る前に公園に連れて行ってもらったそうで、ルンバはたいそうゴキゲン。
「どんぐりひろって、おねえちゃんがホットケーキつくってくれたの。すべりだいも、サッカーもしたよ!」と公園での遊びの様子を報告してくれた。

 ところで病室にはソファーが置いてあるのだが、前の部屋のソファーはひじかけ部分もクッションだったのに対し、今回のソファーはひじかけ部分が木である。来るなりゴロンと横になった父は、頭を乗せる部分が木なのが居心地悪いようで、「前の部屋のほうが良かったなあ」とブツブツ言いだした。「お父さんにはそうかもしれないけど、トイレとシャワーがついているから、私はこっちの部屋のほうがうれしいんだよ」と言うと、「シャワーは別になくてもいいんだけどなあ」とか言う。イヤ、お父さんが泊まるわけじゃないんだから。何を言っているのやら。

 そんでいきなり昼寝しだす父。お見舞いじゃなくて、休憩しに来てるでしょう、絶対。ルンバの相手が大変なのはわかるけどね。

 しょうがないので、しばらくルンバとテレビを見て過ごした。

■ごちそうを奪われた

 話が前後するが、父とルンバが来る前に退院診察があった。外来の診察室に向かい、内診台に上がって傷の様子を見てもらう。本来は会陰を診てもらうためのものだが、ヘモが花開いちゃってるものだから先生もそっちに気を取られ、「ここまでひどくなるのは珍しいねえ。とにかく、よくあたためること。薬を使うより、本当はそのほうがいいんだよ」と。会陰のことはなーんにも言われなかった。

 内診台をおりると、おっぱいチェック。母乳がよく出るわりには張ってかたくならない私のおっぱいを診て、「いいおっぱいだ」とこちらも問題ナシで診察終了。ヘモのための座薬と軟膏、痛みどめの錠剤(ボルタレン)を出してもらったのだった。

 さて、部屋で授乳をしていたら、ルンバがこちらに寄ってきた。気を使った父が「ママおっぱいあげているんだから、そっち行っちゃダメだよ」と言うが、「いいよ、こっちにおいで」と呼び、一緒に座って授乳をした。するとルンバはパルタの様子を見つめながら、「ちいさいねえ」「いいこ、いいこ」と頭をなでてくれた。うれしい。

 夕食は退院のお祝い膳つきだった。ロブスター、寿アイスクリーム、フルーツヨーグルト、ミルクプリン、フルーツ、千歳飴などが乗ったお祝い膳が先に運び込まれると、ルンバは「おいしそー!」と目を輝かし、ミルクプリンやアイスを早速取られてしまった。食い意地キングの私としては、息子といえどもごちそうを奪われて悔しかったが、致し方ない。気が済むまでいろいろつまみ満足すると、18時前に父とルンバは帰って行った。

 「帰ろう」と言われ一度は抵抗したルンバだったが、高校1年生の私の従弟のところに遊びに行こうと誘われて、急にその気になったのだ。一人廊下を走ってエレベーターに向かって行ってしまった。元気そうで何よりだ。

 しかしルンバ、昨晩はいつまでも寝ずに父と母を困らせたらしい。母が寝かし付けていたものの根負けして先に眠ってしまい、様子を見にきた父が部屋をのぞいてみると、寝ている母の横でルンバが一人おとなしくアバレンジャーの絵本を読んでいたのだとか。明日の私の退院を何より心待ちにしているのは、ルンバに手を焼いている父と母、そして弟に違いない。

■授乳、搾乳、また搾乳

 食事会でデザートたっぷり、夕食のお祝い膳もまた然りだったというのに、20時の夜食はこれまたおいしそうなケーキだった。こんだけ食べてりゃ、体重減らないのも当たり前だよなあ。

 看護師さんが回診に来て赤ちゃんを預けるかと聞かれたが、搾乳するのも面倒なので夜も同室でいいですと答えた。今日は比較的ヘモも楽で、気分がいいのだ。と言っても円座を使ってさえ座るのがツライ状態だったのだが、寝ていれば痛まない程度には回復してきたのである。

 今日のパルタは昼からよく寝る。起きる→授乳(1時間弱)→2時間寝る、というサイクルの繰り返し。飲みがいいからよく寝るのか、よく寝るから飲みがいいのか。

 2時間あくと、おっぱいが痛くなる。合間に2回も搾乳して捨てなければならないほど、よく出る。明らかに生産過剰。早く落ち着いてくれ~。

 夜は痛みどめを飲まなくても大丈夫だったが、パルタがよく寝たとは言え合間に搾乳していたので、結局この日もあまり寝られなかったのだった。


>次へ ■HOMEへ


© Rakuten Group, Inc.
X

Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: