「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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2003年07月11日
『沈まぬ太陽』(4・5) 山崎豊子
(4)
テーマ:
今日どんな本をよみましたか?(91880)
カテゴリ:
カテゴリ未分類
18年前の今日8月12日。日航ジャンボ機の墜落事故がありました。
航空業界を襲った相次ぐ衝撃の中、顧客獲得のために様々な手をうち、価格競争等もおこっておりますが、もっとも大切な使命である【安全の確保】を決して、決して怠ることのないように、最優先事項として片時も忘れることのないようにお願いしたい。
もう悲劇は繰り返してはならない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
以上、上書きしました。以下は前に書いたものそのままです。
前日の日記の続き。会長室篇・上下と全体を通して。
恩地の戦いは終わらない。
やがて、新設された【会長室】の部長に抜擢される。遺族係の仕事に未練を残すものの、新会長・国見の熱意にほだされ引き受ける。ともに、国民航空の体質改善に乗り出すが、前途は多難だった。社内利権を貪る不正と腐敗。自分の懐具合のみが心配な上層部と、その周辺に巣食う者達。政官財の癒着。マスコミ操作。使える限りのありとあらゆる手段で邪な権益を死守する。
全くのゼロからでは、ここまで酷く書く事は出来ないのではないかと思うほどだ。もちろん、本書は事実をありのままに書いたものではなく、脚色もあるだろう。現実はここまで酷くはないと思いたいところだが、最近の道路公団の人事などを見ていると、全く同じことをやっているな、と目の前が暗くなる。明るみに出ていない同じような事例も幾つもあるのだろう。安全面についてみても、NASAですら、技術者の声が幹部にまで届かないという状態だったようだ。
安全管理というのは大前提ではないのか?
組織の在り方を考えなければならないのではないか。
経済至上主義の価値観を考え直さなければならないのではないか。
自ら望んで得たわけではない地位。固辞したものを押し付けられた役目。それでも新会長の国見は、国民航空の建て直しの為に、真摯な姿勢と情熱を持っていた。畑違いのところから担ぎ出されたものの、引き受けたからには、全精力でもって改革に取り組む。地位、就任の経緯に多少の違いはあるが、その姿は恩地と重なる。国見が改革の柱として恩地にこだわったのもわかる気がする。しかし、そのことが逆に国見を境地に追い込んでいくことにもなってしまう。
二人が初めて顔をあわせた時に、恩地は自分のことを『今昔物語』の【“片目の猿”の中の異端者の存在】だと例えた。
本来は当たり前であることが、当たり前のこととして通らない。
一人ではたいしたことは出来ない。似たような人間が集まって集団をつくる。集団が巨大になり組織化され、一人一人の輪郭が希薄になる。組織の問題は誰のせいでもないのだという錯覚をおこす - 組織の力は自分の力だと錯覚する。本当は一人一人の責任の重さはかわらないはずなのに - 自分の力だけは何倍にも膨れ上がる。そして自分たちの考えこそが、当たり前なのだ、正しいのだと思い込む。
思い通りに動かせると思い、自分の都合のみで押し付ける。
他人も自分と同じように搾取したいのだ、と思っている。
見込み違いがあると、今度は全力で潰しにかかる。
恩地がブロンクス動物園の《鏡の間》で見た物。
THE MOST DANGEROUS ANIMAL IN THE WORLD
こう書かれた文の下、鏡に映るのは・・・もちろん人間である。
ショックを受けると共に、長らくアフリカに居た恩地こそが、いちばん実感出来る言葉だったのだろう。ここに“ UGLY ”(醜い)という単語を置き換えても反論することは出来ない気がしてしまう。とても悲しいことだけれども。その中で恩地、国見のような良心的存在には、まだ救いがある。
何度か触れたが、この話は【事実に基づいて、小説的に再構築】されたものである。脚色がどれほど入ろうとも、モデルは明らかなわけで、当然その反応が気になる。ここまで書いてしまう(しかもベストセラー)と当然穏やかではない反応が予想される。リアルタイムで読んでいない悲しさ、週刊朝日が載せたという“『沈まぬ太陽』を「私は許せない」”の記事も読んでいない。
日本航空機長組合のHP
また、
鵜飼清『山崎豊子 問題小説の研究』
(目次)のように山崎豊子さん自身の小説の書き方についても幾つかの批判があるようだ。(未読ですが、この目次をみてみると、以前本屋でパラパラとみた田口ランディの批判本などよりは真面目な内容か?)
それでも、この本が与える衝撃は大きい。ちょっと受け止めきれない部分もあるし、問題提起のみで終わっているのも否めないが。
小説の最後でも決して希望に満ちて大団円を迎えるわけではない。むしろ前途の険しさが感じられ、闘いの終わりは見えない。
けれども【沈まぬ太陽】がある限り、前を向ける気がする。
この本は、私に読書の楽しさを教えてくれた方の(デュマや池澤夏樹などを薦めてくれた)「読んでると熱くなります。血が。」というお薦めの言葉もあって読みました。おそらく私の知り合いで唯一HPを見てくれた人。ありがとうございました。
久しぶりに、本を読んでいて電車を乗り過ごしてしまいました。
いやー、熱くなりました。(↑の感想は、少し熱くなりすぎてしまったかも。)
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最終更新日 2003年08月15日 00時30分04秒
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