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私にとっては当たり前のことを平易な言葉で記してあるだけなので、とくだん感銘はなかった。にもかかわらず、本書が驚異的ベストセラーになったのは、とても不思議である。
「なぜ人殺しをしてはいけないのか」「なぜ援助交際をしてはいけないのか」――こんなことは、子育ての経験があれば当然わかるはずの(わからなくてはならない)命題である。「いけないから、いけない」のである。議論の余地はない。
自由や平等などというのはナンセンスである。少し考えれば、新興宗教のプロパガンダと五十歩百歩であることがわかるはずだ。ゆえに、私は、子どもに自由や平等を与えるつもりはない。
一生で使い切れないほどの金を稼ぐことが偉いのか――IT長者たちの生活を見ると、けっして幸せではないことが見えてしまう。幸せでない者たちに「偉さ」を感じてしまうのは異常である。
勝ち組・負け組という一元的な区別も意味がない。そんな簡単に割り切れないのが人生である。
ただし、いわゆる「負け組」の人々がこぞって本書を買い求め、感銘を受けたような気分に浸っているとしたら、日本の行く末は暗い。
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