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「ゆとり教育」では、他者との意思疎通が重視されている。ならば、「論理エンジン」は打って付けの手法であったはずである。
子どもの国語力を伸ばすために、著者は「論理エンジン」という手法を編み出したという。受験業界では結構有名なメソッドだが、最近ではビジネスマンにもウケているという。このメソッドで育った子どもたちが社会に出てきたということだろうか。
論理エンジンというメソッドは、自分としては、知らず知らずのうちにやってきたことだった――「限られた試験時間のなかで、一場面を分析する試験の場合、当然、ふだんの読書とは異なる読み方が必要となる」(190 ページ)とは、まさにその通りで、自分の子どもにもそう教えている。“受験の国語”を突破するには不可欠な能力と言えよう。
しかし、「論理エンジン」の究極目的は、「他者意識」(66 ページ)を大切にすることである。そのための「目標」として「論理エンジン」を獲得するのである。
そして、「論理エンジン」を獲得して終わりではない。論理を操って他者と意思疎通をはかること――これが目的なのである。
「ゆとり教育」では、他者との意思疎通が重視されている。ならば、「論理エンジン」は打って付けの手法であったはずである。にもかかわらず、「国語には論理だけでなく、子どもたちの感受性を磨くとか、豊かな想像力を育むとか、ほかにも大切なことがたくさんある」(225 ページ)と言う大人がいることは、論理矛盾を来している。
もちろん、「論理エンジン」は万能ではない。それを扱いきれない子どももいるだろう。「論理エンジン」は目標に過ぎないのだから、「他者意識」を大切にするという目的を達成でき、その子に合った手段が他にあるなら、それを目標に置き換えてもいいのである。
「ゆとり教育」の目的は正しい。だが現在でも、目標の立て方が揺らいでおり、目的を見失っているような気がしてならない。
■メーカーサイト⇒ 出口汪/PHP研究所/2006年10月 「論理エンジン」が学力を劇的に伸ばす
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