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「いつの日か、かならず、日本に思返しをしなければならない‥‥」
本書は、かぎりなくドキュメンタリーに近い小説である。
舞台はイラン・イラク戦争開始から 5 年後、1985 年 3 月のイラン。イラク軍は突如、3 月 19 日以降にイラン領空を飛ぶ航空機の無差別攻撃を宣言。日本政府は救援機を送ることを断念し、イランに数百人の日本人が取り残された。手に汗握る展開。
これを救ったのが、トルコの民間航空機である。
なぜ、トルコが、しかも民間の航空会社が日本人を助けたのか。100 年以上前に起きた「エルトゥールル号」の事故を振り返りながら、日本とトルコの親密な関係を、大河ドラマ仕立てで紹介していく。
巻末の解説で、映画監督の井坂聡は「百年前、私はおろか私の両親もこの世に生まれていなかった。百年後、私は勿論、残念ながら私の子供たちもこの世にいないだろう。百年とはそういう単位の歳月である」と語る。
トルコの軍艦「エルトゥールル号」が和歌山県沖で遭難したのは、いまから 120 年前の出来事である。その時、海岸に近い大島村の住民は、生き残ったトルコ人船員たちを助け出し、献身的な介護を施した。その時の恩を、トルコ国民は今でも忘れていないという。
恥ずかしながら、「エルトゥールル号」の事故は知らなかった。ただ、イラン・イラク戦争の折り、イランに取り残された日本人を救出するためにトルコの民間航空機が活躍したことや、1999 年のトルコ大地震の時には日本政府が緊急援助を行ったことは覚えている。こうした関係は、120 年前の「エルトゥールル号」から始まっていたという。
トルコ首相が日本人大使に、こう語る場面がある。「人から人へなにごとかが伝えられ、さらにまた人から人へなにごとかが伝えられる。歴史はそうしたことの積み重ねで成り立ってゆく」――。
憎しみばかりでなく、親しみ・喜びの歴史を子どもたちに伝えていかなければならないと感じた。
■メーカーサイト⇒ 秋月達郎=著/新人物往来社/2010年03月発行 海の翼
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