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著者・編者 | 田中辰巳=著 |
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出版情報 | 文藝春秋 |
出版年月 | 1999年5月発行 |
著者は、リクルートに入社しリクルート問題に関わり、その後、企業危機コンサルタントとして独立した田中辰巳さん。さまざまな企業危機との対峙した経験から、現実的で緊迫感のある内容だ。
冒頭、田中さんは、日本人が平和に慣れすぎており、「企業の人々の心には、どこか油断があるように思えてならない」(18 ページ)と語る。その結果、面倒な仕事を反社会勢力に依頼してしまうことになるが、「『正義のアウトロー』などいないと知るべき」(19 ページ)と警鐘を鳴らす。そして、意外なことだが、「渉外担当には、およそ体育会とはかけ離れた印象の人物こそ適任」(21 ページ)という。「言語が不明確で、“のれんに腕押し”のような、それでいて結構撤密な人」。「そんな人物を闇社会の住民はもっとも苦手としている」からだ。
田中さんは、「『危機だ、リスクだ』と騒ぐ前に、『何の危機か』を正確に把握しておかないと、対応を誤ってしまう」(54 ページ)と指摘する。守るべきものを間違えた結果、ミドリ十字は姿を消し、ジョンソン&ジョンソンは存続し続けている。リスク管理の第一歩は、守るべきものを棚卸することである。私はシステム開発に携わっている立場上、設計書などの機密情報や、個人情報を毎年棚卸している。いままで漏洩したことはないが、こうして管理しておくことで万が一の時の訓練ができる。
田中さんは「危機管理はマニュアルになじみません」(91 ページ)という。マニュアルは作業を標準化したものであるから、イレギュラーケースを扱う機器管理には馴染まないのだ。それより「部下の育成や危機意識の高揚を図るために自前で取り組むことをお勧めしたい」と低減する。
また、危機に際しては「共通の敵」を作ることで組織を結束できると説く。
怪文書に対しては、句読点の位置を変えるなどの「ホクロ作戦」をとり、流通ルートを特定する。犯人には炙り出した結果を伝えるだけで十分という。
田中さんは、「起きることを前提とした予防」(115 ページ)が大切と説く。しかし、多くの経営者は、起こさない努力をすることに注力してしまうという。また、「危機管理が難しいのは、限られた情報の中で、早い判断を求められ、やり直しがきかないから」(122 ページ)と指摘する。だから、その時点でベターな選択をとるしかなく、マスコミのコメンテーターなどがベストとされる「タラ・レバ」を突きつけるのは酷だという。
田中さんが言うように、危機管理にマニュアルは無い。だとすると、日々のニュースに目を通し、自分が勤めている会社のについて、常に客観的に分析できる姿勢でいることが大切だと思った。
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