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| 著者・編者 | 永井孝尚=著 |
|---|---|
| 出版情報 | KADOKAWA |
| 出版年月 | 2014年9月発行 |
私はコーヒー好きだ。帯に、スタバ、ドトール、ネスレ、そしてマクドナルドやセブンーイレブンの名前まで踊っていたので、思わず手にとって読んでみた。読了し、美味しいコーヒーを 1 杯飲んで、自分の仕事を見つめ直すことにした。
著者は、慶應義塾大学工学部卒業後、日本アイ・ビー・エムの製品プランナー、マネージャーとして 30 年間勤め上げて独立した永井孝尚さん。理系出身だけあって、エビデンスに基づいたマーケティング戦略論が展開される。
面白いのは、ブラック金融会社を逃げ出した新町さくらを中心に展開する小説の形態をとっていること。
ドリーム・コーヒーの社長に拾われた新町さくらは、コーヒー豆が入った麻袋が転がっている倉庫を改造した SP 室に配属になる。会社にほとんど姿を見せない室長の藤岡と、新規事業を任される羽目に。さくらがまず出会ったのは、ドリーム・コーヒーに低価格攻勢を仕掛ける高津珈琲。だが藤岡は、低価格路線で成功したドトールを引き合いに「鳥羽社長の考え方はシンプルだ。美味しいコーヒーを半額で提供しても、4 倍の顧客が来れば、売上は 2 倍」(39 ページ)と説明するものの、時代は変わり、「どんなに素晴らしい戦略でも永遠には続かないということだ。どんな戦略にも賞味期限がある」(46 ページ)と指摘する。
さくらは新規事業を立ち上げるにはアンケート調査が必要だと主張するが、藤岡は「顧客に何がほしいかを聞いて、その通りにつくっても、顧客のためになるとは限らない」(66 ページ)と切って捨てる。「どうして DVD のリモコンが、こんなに使いにくいものになってしまったのか。それは顧客がほしいという機能を全部実現したからだ」(63 ページ)。
さらに、自社農園から焙煎、コーヒーショップまでサプライチェーンを持つドリーム・コーヒーについて、「すべて自社でまかなっているというのは、能力にすぎない。問われているのは、その能力を活かして顧客にどんな価値を提供するかだ」(126 ページ)と言い切る。
藤岡はさくらに、「もっとターゲットを絞り込んで、具体的に『こういう人』というところまで落とし込まなければ、自社らしさは出せないし、他社との差別化もできない。そうなれば、泥沼の価格競争に陥って疲弊するだけだ」(128 ページ)と畳みかける。
そして、ついに DD プロジェクトが立ち上がる。藤岡とさくらに加え、お嬢様の町田南、無口だが分析能力に秀でている青葉大、熱血営業の永田兆司、高津珈琲を退職した玉川が加わる。
藤岡は「企業の目的は社会貢献であって金儲けではない。利益は手段であって目的ではない。企業の事業と社会貢献は、本来は同じものだ。分けて考えるべきものではない。社会貢献にビジネスとして取り組むことに意義がある。儲けがあるから続けられるのだ」(200 ページ)と熱く語る。
さくらは、「 コーヒー農園の人たちに、私たちの『夢の一滴』を届ければいいんだ!」(226 ページ)と閃く。経済的に貧しいコーヒー農園の人びとでもドリーム・コーヒーが飲めるような仕組みを整えられ、6 人が各々の個性を発揮し、DD プロジェクトは大成功。
現実には、新規ビジネスがこんなにうまく行くことは希だ。著者の永井さんも日本アイ・ビー・エムで苦労したに違いない。だが、企業の存在目的が「社会貢献であって金儲けではない」ではないことには同意する。社会貢献できる企業が老舗となり、われわれは老舗を守るために購買行動する。その好循環が、わが国の強みであると信じる。
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