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著者・編者 | ジェームズ・P・ホーガン=著 |
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出版情報 | 東京創元社 |
出版年月 | 1997年8月発行 |
後編――救出されたジーナは、記憶が書き換えられ、ハントたちをスパイするように刷り込まれた。日本アニメにもよくありますね。ヒロインがヒーローの敵側に取り込まれる話が。ホーガンの面白いところは、それを超能力や魔法ではなく、ホーガン流の科学的舞台装置でやり遂げてしまうところ。本作は、あくまでハード SF なのです。
物語は、新興宗教の指導者で巨悪ポジションのユーベリアスが、かつての政治的指導者が兵器工場としていた惑星アッタンへ向かうところで佳境を迎える。向上としての機能を失ったはずのアッタンに、果たして何があるのか!?ハントはついに、宗教指導者の豹変ぶりは狐憑きではなく、「内なる宇宙=エントヴァース」に由来するものだという仮説に至る。一行は、全知全能ヴィザーのバックアップを得てエントヴァースへ転移したはずだった。だがそこで、思わぬ危機に直面する――そして、物語は大団円を迎える。
なお、ホーガン自身は冒頭で、ファンタジーは書けないと言っているが、『造物主の掟』(1983 年)はファンタジーの要素を取り入れていた。本作に登場するエントヴァースは、それを超えた舞台設定になっており、それを比較するのも面白いだろう。エントヴァースには超能力や魔法のような力が存在するが、これを打ち破るのに、同じ力ではなく、「スター・ウォーズ」をヒットさせたアメリカという国の遊園地や攻撃ヘリを持ち出すのは、イギリス人特有のジョークであろう。
本作の真骨頂は、コンピュータ・ネットワークや人工知能が人間に及ぼす副次作用を仮説提起しているところにある。そこには、サイバーパンクのような難しさはないし、『攻殻機動隊』や『マトリックス』のような厭世観もない。科学は常にハッピーエンドをもたらす。私たち技術屋は、ハント博士やダンチェッカー博士と同じく、これらのシステムを「便利な道具」としてしか見ていない。だが、皆さんはどうだろうか。ネットに常時接続し、Siri やスマートスピーカーを使い、スマホのカメラを通してみる仮想現実に慣れることで、何か生活の変化は起きていないだろうか――いや、変化は起きていても自覚はないだろう。そこから「内なる宇宙」が始まる‥‥
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