PR

プロフィール

パパぱふぅ

パパぱふぅ

キーワードサーチ

▼キーワード検索

2018.10.09
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類
宇宙はどこまで行けるか

宇宙はどこまで行けるか

 小型高速炉「4S」の発生電力は10メガワット(1万キロワット)で、30年間燃料交換なしで作動する。(269ページ)
著者・編者 小泉宏之=著
出版情報 中央公論新社
出版年月 2018年9月発行

著者は、「はやぶさ」イオンエンジン運用および帰還時の力プセル回収隊の本部班としてオーストラリアでの回収に従事した小泉宏之さん。イオンエンジンなど推進系の世界最小クラス開発のトップランナーでもある。

まず、スペース X社の話から始まる。スペース X社を創設したイーロン・マスク氏は、プログラマ出身で、PayPal社を設立した。スペース X が商売上手なのは、定価を明示して、大量受注・大量打ち上げを行っていること。また、第1 段ロケットを回収し、製品のテスト・改良実験に流用しているという。

次に、ロケット・エンジンや、人工衛星の姿勢制御の仕組みを図入りで解説する。
静止衛星にはロケットエンジンが必要だが、近年、電気推進を使うものが出てきているという。化学燃料に比べて推進剤の重量が格段に減り、人工衛星の総重量が半分になる。その分、打ち上げコストも安くなる。小惑星探査機「はやぶさ」が電気推進の一種イオンエンジンを用いていたのは有名な話だが、このイオンエンジンについてかなりのページ数を割いている。とくに、小泉さんが携わった、小型衛星(キューブサット)に搭載した「アイクーズ」エンジンの開発苦労話は興味深い。
また、大気圏突入方法として、ガンダムに登場した「バリュート」に触れている。東京大学と JAXA を中心に研究が進められているそうだ。

第6章では、有人火星探査について考察する。実現可能な技術を使って 6 人を火星に送り込む「R計画」を想定し、粗々の見積と断りながらも、推進剤を含めた宇宙船の重さは約 1000 トン、国際宇宙ステーションの 3 倍の重さであることから、打ち上げに 1 兆円以上、開発費を含めると 10 兆円以上のプロジェクトになると予測している。さらに、外惑星探査に用いられるスイングバイ技術と原子力電池について解説する。意外だったのは、原子力電池の変換効率が悪いこと。1kg あたり 540W の熱量を、わずか 5W の電力にしか変換していないそうだ。それでも、太陽光が弱まる木星以遠では威力を発揮する。また、プルトニウム 238 の半減期は 88 年だから、88 年しても発電力は半分残るという長寿命電池だ。

第8章では太陽系外探査を考える。
小型原子力発電を使ったイオンエンジンと、限界に近いスイングバイの組み合わせで、太陽系脱出速度として秒速250 キロが出せるという。ボイジャー 1 号の 15 倍のスピードだ。それでも、最も近い恒星アルファ・ケンタウリに到達するのに 5 千年かかる。
SF で登場する反物質推進は望み薄だ。CERN の巨大粒子加速器をフル稼動しても、反物質を 1 グラム作るのに 10 億年もかかるからだ。

電気推進というキーワードで、原子力ロケットや反物質ロケットのような SF 大道具を持ち出さなくても、太陽系外縁の探査も可能になる時代が来そうだ。






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2018.10.09 12:13:49
コメント(0) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: