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著者・編者 | デイヴィッド・A・グッドマン=著 |
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出版情報 | 竹書房 |
出版年月 | 2019年12月発行 |
『宇宙大作戦(スタートレック)』(アメリカでのテレビ放映は1966年9月~1969年6月)で、宇宙船艦〈U.S.S.エンタープライズ〉で活躍したジェームズ・T・カーク船長の自叙伝という形式をとっている。ドクター・マッコイは序文で「はじめに断っておくが、わたしは医者だ。もの書きではない」(8ページ)と、いつもの調子で話し始め、スタートレック世界を振り返る。
テレビシリーズと映画の間には20年以上のギャップがあるが、クルーは全員オリジナル・メンバーであることや、カーンも同じ俳優が演じていることを思い出した。また、カークの甥ピーターが『自叙伝 ジャン=リュック・ピカード』で重要な役回りを演じていることを思い出し、スタートレック世界が大河ドラマであることを改めて認識する。理想的父権主義者のピカード艦長はパリピだったが、本書ではイケイケなカーク船長がとても内省的であることが判明する。冒頭カラーページの写真も秀逸だ。巻末の用語解説は、ぜひ保管しておこう。
オリジナル・メンバーが次々と鬼籍に入る中、2021年10月、カーク船長を演じたウィリアム・シャトナーが90歳にして、ついに宇宙飛行を行った――宇宙、それは人類に残された最後の開拓地である。
カークは、アイオワ州リバーサイド近くの農場の次男として生まれた。祖父のタイベリアス・カークは、創設したばかりの宇宙艦隊アカデミーへの入学はかなわなかったが、第8宇宙基地の爆発で5人を救助し、宇宙艦隊から名誉勲章を授与。父のジョージ・カークはアカデミーを卒業し〈U.S.S.ケルビン〉の副長になるが、退役し、農場を営む。
カークは11歳の時、地上に墜落したテラライト人の大使を救助し、ジョージ・マロリー大佐から「君は星間外交問題を防ぐのに一役買った。本物のヒーローだ」と称賛される。カークは12歳の時、母を訪ねてタルサス4号星を訪れるが、コドス知事による大虐殺に巻き込まれるが、運良く宇宙船〈エンタープライズ〉に救出される。
宇宙艦隊アカデミーは合格率2%の狭き門だったが、カークはマロリー准将にテープを送り、18歳でまんまと宇宙艦隊アカデミーに入学する。
2ヵ月後に卒業を控えたカークを控えたカークは、2学年上でコンピュータ・プログラムの指導教官をしているベン・フィニーを巻き込み、〈コバヤシマル〉テストを攻略する。彼は不正を問われ審査委員会にかけられるが、「もし指揮官の座につくなら、持てる知識と経験の限りをつくしてクルーの命を守ることを期待されるのではありませんか?」(101ページ)と応じ、アカデミーを美辞に卒業。〈U.S.S.リパブリック〉の機関室に配属となり、スコットランド訛りがあるモンドメリー・スコット大尉と出会う。カークの転属先である最新のコンスティテューション級宇宙船〈U.S.S.ファラガット〉は、宇宙空間でガス状生命体に襲われ、船長以下、乗組員の半数を失う。九死に一生を得たカークは、キャロルと結婚を約束し、2人でファラガットに戻る。キャロルは妊娠するが、父親と士官の両方をこなそうとしたカークから、彼女は離れていってしまう。
カークは27歳で〈U.S.S.ホットスパー〉の船長になる。宇宙艦隊史上最年少の船長だ。ここで、アカデミーを卒業したばかりのウフーラと、船医のレナード・マッコイと知り合う。カークは第12宇宙基地でキャロルと息子デビッドをホットスパーに乗船させようとしたが、キャロルに断られてしまう。妻と娘ジョアンナと離れて暮らすマッコイはカークに同情し、秘蔵の酒を振る舞った。
カークは、ホットスパーを火星まで運び退役させると、マッコイと地球へ向かった。途中、〈U.S.S.エンタープライズ〉の科学士官のスポックが、地球にいる母親に会うためにシャトルに同乗する。
地球では、クリストファー・パイクから〈U.S.S.エンタープライズ〉の船長を引き継ぎ、29歳で大佐に昇進する。アカデミー時代の後輩ゲイリー・ミッチェルを副長に据え、スコットが機関長に昇進し、天体科学主任としてヒカル・スールーが加わった。記録担当士官は〈U.S.S.リパブリック〉でカークと一悶着あったベン・フィニーだった。
こうして乗組員を補充し、カークが率いる〈U.S.S.エンタープライズ〉は5年間の深宇宙探査の任務に就く。
銀河系の辺縁で、200年前の宇宙船〈S.S.バリアント〉の航行レコーダーを発見したエンタープライズは、そこで、謎のバリアに触れる。ミッチェルは超能力を獲得し、船を奪おうとする。カークはミッチェルを殺すしかなかった。生まれて初めて相手の顔をじかに見て殺したことは、カークの心を深く傷つけた。(宇宙大作戦第3話「光るめだま」)
転送装置の自己でカークは善人と悪人に分裂した。悪人カークは、秘書のジャニス・ランドを襲う。元に戻ったカークは、自分の中に邪悪な存在が潜んでいることに心を痛めた。(宇宙大作戦第5話「二人のカーク」)
エンタープライズは、ロミュラン帝国との中立地帯に入り、ロミュラン人とのファースト・コンタクトを果たす。100年前、地球はロミュラン人と戦ったが、白兵戦も捕虜もなくロミュラン人の招待は長い間、謎だったのだ。ロミュラン船との戦いで、結婚を控えていたロバート・トムリンソン大尉が殉職する。新婦になるはずだった敬虔なカトリック教徒、アンジェラーマーテイーニ少尉が礼拝堂で祈る姿を見たカークは、聖職者の孤独を感じた。(スタートレック・エンタープライズ第29話「許されざる越境」)
エンタープライズはイオン嵐に巻き込まれ、ベン・フィニーが犠牲となってしまう。だが、船にはカークがフィニーを殺したという映像が残っていた。カークは軍法会議にかけられる。スポックがコンピュータ・データが改竄されていたことに気づくが、すでに軍法会議は平定していた。ここで、カークに付いた老弁護士サミュエル・コグレーが弁舌を振るう。エンタープライズに隠れて生きていたフィニーを発見し、カークの無実が実証される。(宇宙大作戦第20話「宇宙軍法会議」)
アカデミーを卒業したばかりのチェコフ少尉が乗船する。
300年前、世界を統一しようとしたカーン・ノニエン・シンの冬眠宇宙船が発見された。歴史家のマーラ・マクガイバー少尉がカーンと恋に落ち、カークは彼らを無人惑星セティ・アルファV号星へ追放する。(宇宙大作戦第22話「宇宙の帝王」)
カークの兄ジョージ・サミュエル・カークとその妻オリーランが宇宙生物に神経に寄生され死亡した。カークの両親は生き残った息子ピーターを引き取ると申し出たが、カークは船長業務に集中するため、他人の手に委ねるしかなかった。(宇宙大作戦第29話「デネバ星の怪奇生物」)
カークの旧友マット・デッカーがロボット宇宙船〈惑星の殺し屋〉に殺された。長さ数キロの〈惑星の殺し屋〉は、数百万年に建造された異なる銀河からやってきた宇宙船で、カークはデッカーが指揮していた〈U.S.S.コンステレーション〉を内部で爆発させることで、マシンを機能停止した。(宇宙大作戦第35話「宇宙の巨大怪獣」)
5年間の探査任務を終えようとするころ、スポックは船を下り、故郷のバルカン星に戻った。カークは、マット・デッカーの息子ウィラードを副長に指名した。〈U.S.S.エンタープライズ〉は地球に戻り、大規模な改修工事に入った。カークは36歳にして提督に昇進し、ウィラード・デッカーが船長となった。デッカーはエンタープライズ改装の指揮を執っていたが、謎の高エネルギーを発する未知の物体「ヴィジャー」が地球に接近すると、カークはデッカーでは役不足として自らがエンタープライズに船長として乗り込み、その調査に向かう。マッコイとスポックが合流するが、デッカーがヴィジャーと合体し、新たな生命体に進化し、物質としては消滅してしまう。(映画「スター・トレック」)。
43歳になったカークは、艦隊指揮大佐を命じられる。実家に戻ってみると、甥っ子のピーターは艦隊アカデミーに入学し、一家の4代目を継いでいた。〈ジェネシス〉計画で、別れた妻キャロル・マーカスと再会する。カークは〈エンタープライズ〉に乗って〈ジェネシス〉へ向かうが、そこで、カーン・ノニエン・シンと対峙する。一行は窮地を脱出するが、スポックが犠牲となった。(映画「スター・トレックII」)
スポックが生きていることを知ったカークは、〈エンタープライズ〉を盗みだし、再び〈ジェネシス〉へ向かった。だが、クリンゴンの艇長クルーゲが息子デビッドを殺してしまう。カークはクリンゴンに深い憎しみを抱く。スポックを救出し、〈エンタープライズ〉を墜落させることでクルーゲらを撃退したカークらは、クリンゴン船〈バード・オブ・プレイ〉に乗ってバルカン星へ向かう。(映画「スター・トレックIII」)
惑星連邦の裁きを受けるために、カークらは〈バード・オブ・プレイ〉に乗って地球へ向かうが、謎の探査機が地球と、その周辺のすべてのパワーシステムを無効化してしまった。カークらは地球を救うため、1980年代のサンフランシスコにタイムワープを敢行し、クジラを連れて戻ってくる。地球の危機は救われ、ロス大統領はカークを大佐に降格したうえで、あらたな宇宙船〈U.S.S.エンタープライズ〉を与え、深宇宙探査を命じる。(映画「スター・トレックIV」)
クリンゴン人は滅亡の危機にあった。〈エンタープライズ〉は惑星連邦を和平を結ぼうとするゴルコン宰相を迎えるが、これを光子魚雷で撃ってしまう。デビッドを殺されたことでクリンゴンに恨みを抱いているカークは宰相殺害の罪を着せられたが、クリンゴン人のウォーフ大佐(新スタートレックのウォーフの先祖)の弁護により無罪となる。(映画「スター・トレックVI」)
「あとがき」を書いたスポックは、〈U.S.S.エンタープライズB〉を救ったカークが殉職したと伝えられているが、彼は生きており「彼は戻ってくる」と締めくくる。
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