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著者・編者 | ダン・シモンズ=著 |
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出版情報 | 早川書房 |
出版年月 | 2000年11月発行 |
28世紀――人類は銀河系へ進出し、200以上の惑星と1500億人の人口を擁する連邦を形成し、惑星間を転移ゲートで結ぶ〈ワールドウェブ〉を構築していた。その技術を提供し管理しているのは、数世紀前に人類から独立したAI群〈テクノコア〉だった。〈テクノコア〉は、その計算力により数世紀先の未来を予測することができた。だが、惑星〈ハイペリオン〉には、未来から時間を遡ってきたという抗エントロピー場をもつ〈時間の墓標〉は、未来予測の不確定要素であった。やはり数世紀前に人類から独立した〈アウスター〉は、〈テクノコア〉に依存しない文明を築き、〈ウェブ〉と〈テクノコア〉と対立していた。
そんななか、連邦の最高運営責任者マイナ・グラッドストーンは、領事にハイペリオンに戻ることを命じた。
領事、ルナール・ホイト神父、フィドマーン・カッサード大佐、詩人のマーティン・サイリーナス、乳児を抱えたソル・ワイントラウブ、私立探偵で唯一の女性ブローン・レイミア、聖樹船〈イグドラシル〉船長ヘット・マスティーンの7人の巡礼が、惑星〈ハイペリオン〉へ旅立った。
第1章 司祭の物語: 神の名を叫んだ男
〈ハイペリオン〉上陸を前にして、ホイト神父は、かつて〈ハイペリオン〉へ送り届けたポール・デュレ神父について語る。デュレ神父はビクラ族に出会い、聖なる十字架によって不死性を与えられていることを知る。だが、その代償はあまりにも大きかった。
ホイト神父は〈ハイペリオン〉を再訪しデュレ神父を捜索したのだが‥‥そこに大きな秘密があることを領事は知る。
第2章 兵士の物語: 戦場の恋人
〈ハイペリオン〉の総督となった、かつての領事の部下シオ・レインが巡礼を迎える。フィドマーン・カッサード大佐は、仮想訓練でしか会うことができない謎の美女〈ミステリー〉と肌を重ねた。カッサードはプレシアの戦いにおいて蛮族〈アウスター〉を相手に活躍したが、負傷し、病院船に収容された。だが、病院船は〈アウスター〉に襲われ、〈ハイペリオン〉に不時着する。ここでカッサードは実体をもつ〈ミステリー=モニータ〉に遭遇する。〈時間の墓標〉は時間を逆行している。カッサードは怪物〈シュライク〉を使って〈アウスター〉と戦った。
救出されたカッサードは、今度〈モニータ〉と出会ったら殺すつもりだと語る。
第3章 詩人の物語: ハイペリオンの歌
巡礼は河港〈水精郷〉(ナーイアス)に入った。詩人のマーティン・サイリーナスは、オールドアース(地球)で生まれ育った思い出を語り始める。
サイリーナスは北米の裕福な家庭で生まれた。だが、地球は大変動に襲われ、莫大な借金を残して両親が亡くなった。母親は死ぬ前に、最後の財産を小惑星銀行に預金し、サイリーナスを光速より遅い宇宙船に乗せ、惑星〈ヘヴンズ・ゲイト〉へ客観時間167年の旅に出した。その間に生まれた利息は、借金を返済して余りあるものになるはずだった。ところがサイリーナスが低温睡眠中にオールドアースの資産は凍結され、彼は〈ヘヴンズ・ゲイト〉に着くやいなや運河掘りの労働に着かされた。低温睡眠中の影響で脳卒中を起こし、発生できる言葉は9つしかなかった。サイリーナスが書きためた詩は「終末の地球」として時流に乗ったベストセラーとなり、彼は再び裕福な生活と健康を取り戻した。だが、それは1冊限りのことだった。サイリーナスは、芸術家ひしめくビリー悲観王の王国〈アスクウィス〉を目指す。ビリー悲観王は、土星の衛星「ハイペリオン」からの入植者たちが名付けた惑星〈ハイペリオン〉を開発し豪勢に暮らすのだが、やがてシュライクによる殺戮が始まる。サイリーナスは、シュライクを作り出したのは自分の詩想だと考え、〈ハイペリオン〉に残り、「ハイペリオンの歌」を書いた。詩人の都は朽ち果て、「ハイペリオンの歌」の原稿は燃えてしまい、サイリーナスは延齢処置と冷凍睡眠で長い時を待った。
第4章 学者の物語: 忘却の川の水は苦く巡礼は〈叢縁郷〉(エッジ)に到着し、風莱船(ふうらいせん)に乗り込んだ。〈ハイペリオン〉に来るのは初めてというユダヤ人、ソル・ワイントラウブが語り始める。(つづく)
冒頭で、領事が「やはりワーグナーは、雷鳴のなかで聴くにかざる」と独白するが、これは万国共通、28世紀の未来にも通用するのか――と、親近感を覚え、どんどん読み進んだ。
所々に名前が登場するジョン・キーツは、19世紀初めのイギリスの詩人。哲学的叙情詩「ハイペリオン」「ハイペリオンの没落」は未完に終わり、1818年に発表した「エンディミオン」は、評論家から厳しく批判され、失意のうちに結核で他界する。これらを「ジェフリー・チョーサーの「カンタベリー物語」風に再構築したのが、「ハイペリオン」シリーズである。したがって、SFではあるものの、宗教ネタあり、哲学ネタあり、そして技術ネタありの、てんこ盛り。登場人物の名前の由来も掘り下げてみると面白い。
かつての天文少年としては、ハイペリオンと聞いて、まず土星の衛星を思い浮かべた。もちろん本書ではそのエピソードも取り上げており、水も漏らさぬ仕上がりだと感じた。
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