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著者・編者 | ダン・シモンズ=著 |
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出版情報 | 早川書房 |
出版年月 | 2001年3月発行 |
第2のジョン・キーツの復元人格であるジョセフ・セヴァーンは、連邦CEO(最高運営責任者)マイナ・グラッドストーンに呼び出され、夢を中断させられたことに腹を立てた。彼は夢で見た巡礼たちの状況をグラッドストーンに報告した。
〈ウェブ〉では暴動が起きてきた。セヴァーンは図書館を訪れ、ジョン・キーツのオリジナル原稿を目にする。
ブローン・レイミアのアナログと、その恋人である復元人格ジョニイは、〈メガスフィア〉にいた。〈雲門〉(うんもん)は神のように2人に語りかけ、いとも簡単にジョニイを消滅させてしまう。
セヴァーンは惑星〈パケム〉へ転移した。聖ペテロ大聖堂には、モンシニュオール・エドゥアールとポール・デュレ神父がいた。デュレ神父は、惑星〈ハイペリオン〉での出来事を語る。グラッドストーンの腹心リイ・ハントがやって来て、セヴァーンとともに首都惑星TC 2 (タウ・ケティ・センター)へ向かおうとするが、見たことのない惑星の表面に転送されてしまう。あてどもなく歩いていると、セヴァーンは喀血する。ジョン・キーツが罹患していた結核だった。
セヴァーンと分かれたポール・デュレ神父は、惑星〈ゴッズ・グローヴ〉へ転移し、森霊修道士の〈世界樹の真の声〉セック・ハルディーンに会見する。そこには、シュライク教団の司教もいた。彼らはシュライクこそが予言の存在だと主張するが、デュレは遙かな未来からやって来た機械だと断言する。両者の議論は平行線のまま、デュレはTC 2 へ戻ろうとするが、ハルディーンの妨害に遭う。ハルディーンは人類と〈コア〉の共生関係が狂気の元凶だという。だが、ハルディーンの目論見通りにはならず、〈アウスター〉はゴッズ・グローヴを滅ぼしてしまう。間一髪で脱出したデュレは、グラッドストーンに会う。
〈アウスター〉は〈ウェブ〉に総攻撃を仕掛けてきており、惑星〈ハイペリオン〉も戦乱の最中にあった。九死に一生を得た領事は、偶然、かつて部下だったシオ・レイン総督に救出される。グラッドストーンは領事に〈アウスター〉と交渉させるため、領事の宇宙船を解放したという。2人は宇宙港へ向かうのだが、途中、シオは大怪我を負う。運良く、メリオ・アルンデス博士と出会い、彼のスキマーに乗って、3人は領事の宇宙船に乗り込む。宇宙船はグラッドストーンからのメッセージを告げる。グラッドストーンは人類を救うために、領事に〈アウスター〉と交渉を求めていた。領事は、〈アウスター〉船団のフリーマン・ヴァンズらの諮問を受け、〈ウェブ〉攻撃の驚くべき真相を知る。
〈スフィンクス〉の入口でレイチェルの帰還を待っていたソル・ワイントラウブだが、突然、〈翡翠碑〉にブローン・レイミアが現れた。レイミアは、シュライクに捕らわれた詩人マーティン・サイリーナスを救出するため、〈シュライクの宮殿〉へ向かう。フィドマーン・カッサード大佐はモニータとともにシュライクと戦っている。彼はモニータとともに〈時間の墓標〉の未来へ向かい、人類とシュライクの最終決戦に身を投じ、戦いの中で死んだ。彼の遺体は〈クリスタル・モノリス〉に葬られる。
グラッドストーンは、〈コア〉を代表するアルベド顧問官を呼び出し、〈アウスター〉の襲撃を予測できなかった責任を問いただす。だが、アルベドは予測通りだと主張する。アルベドが連れてきたナンセン顧問官は、〈コア〉が開発した最終兵器〈死の杖〉(デスウォンド)を披露する。それは、熱や放射線を発することなく、シナプスにダメージを与える――つまり、動物だけを殺す兵器だ。
セヴァーンの意識は〈メガスフィア〉にあった。彼は〈雲門〉に出会い、対話を通じて、〈コア〉に派閥があることや、各々の目的や、その存在する場所を理解する。
セヴァーンはハントに〈メガスフィア〉で理解したことを詩の形で伝え、自分が〈先触れ〉であることを告げる。セヴァーンは、かつてジョン・キーツが死んだときのように、スペイン広場を見ながら息絶える。そこはオールド・アースだった。
ハントはセヴァーンを埋葬すると、突然シュライクが現れ、墓を見つめている。ハントは転送ゲートを見つけるが、まったく動かない。
治療を受けて眠っているデュレ神父の夢に、ジョンを自称する人物が現れ、〈パケム〉へ行くように告げる。
15分の仮眠をとったグラッドストーンは、夢に現れたセヴァーンの言葉を信じ、最後の作戦に打って出る。レイミアは妊娠していた。〈シュライクの宮殿〉に入ったレイミアはサイリーナスを見つけ、シュライクと対峙し、宙を舞いながらサイリーナスを担いで逃げ延びる。
ワイントラウブは、アブラハムが神への愛ゆえに息子を差し出したのではなく、神を試したのだと悟った。そして、機械の神と人間との戦いの意味を悟った。そして、彼の前に、赤ん坊を抱きかかえたレイチェルが現れる。そこへ領事とシオ・レイン、レイミア、サイリーナスがやってきた。レイチェルは自らの素性を明かす――。
すべてが終わってから5ヶ月後、レイミアは仲間に別れを告げ、領事の〈宇宙船〉に乗って旅立ってゆく――。
ハイペリオン・シリーズは、1990~2000年代の国内のSFファンの人気を鷲づかみにした。その理由は、解説で話題に出されたアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』との類似性にあるからではないだろうか。古今東西のSFのエッセンスを抽出した上で、ハリウッド映画顔負けの情景描写を盛り込みつつ、ホラーや推理トリックをちりばめ――私は、場面展開の早さに騙されないよう細心の注意を払っていたのだが、最後の100ページで完全にやられた?
圧倒的な火力を見せつける宇宙戦闘シーンは、E・E・スミスのSF「スカイラーク」「レンズマン」シリーズを、シュライクと人類が戦う未来のシーンは映画「ターミネーター」を、聖樹船〈イグドラシル〉はアニメ『天地無用!』を、〈メガスフィア〉のシーンは映画『マトリックス』を連想させる。
ただ過去のSFを下敷きにしているだけでなく、宗教的・哲学的な重厚さも備えている。〈雲門〉の語りは禅問答だし、デュレ神父が語る惑星〈ハイペリオン〉での出来事はダンテの『神曲』だ。
そして、思わせぶりな旅立ちをしたデュレ神父とレイミアが、次のシリーズで重要な位置を占めることになる――。
〈コア〉と接触する場面では、AIの倫理について取り上げている。『 AI倫理
』(西垣通/河島茂生=著,2019年)でも議論されているが、AIに〈死〉の概念がない以上、人類と同じ知能を期待するのは難しいという仮説は説得力がある。後続の作品『エンディミオン』『エンディミオンの覚醒』において、人類を含む銀河系の知的生命が、これとは別の生存戦略を提示するが、この流れは〈永遠の生命〉に疑問を投げかけた松本零士「銀河鉄道999」を想起させる。
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