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著者・編者 | 篠月しのぶ=著 |
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出版情報 | KADOKAWA |
出版年月 | 2016年1月発行 |
東部戦線で ターニャ・フォン・デグレチャフ
中佐は、連邦からの亡命してきた ヴィクトーリヤ・イヴァーノヴナ・セレブリャコーフ
中尉の言語力を活用し、捕虜から驚くべく事実を聞き出した。彼らは共産党を支持しているのではなく、母国を侵略者から守ろうというナショナリズムで戦っていた。ターニャは考える――イデオロギーと戦っているのであれば、イデオロギーの妥当性や正当性を攻撃すればよい。が、『ナショナリズム』との戦いはダメだ。
連邦との戦い方について、ターニャは ハンス・フォン・ゼートゥーア
中将に意見具申する。こうして参謀本部軍事諜報局は、ターニャに白翼大鉄十字を推薦した。だが、サラマンダー戦闘団は解体され、参謀本部が代わりの戦闘団を組織するという。
ターニャが率いる 第203航空魔道大隊 は、ノルデン北方で連合王国の大型輸送船RMSクイーン・オブ・アンジューの偵察任務に就くが、ウィリアム・ダグラス・ドレイク中佐が率いる連合王国の海兵魔道部隊の攻撃を受け、十数名の部下を失う。ターニャは、「損害がたった10名と口にできる人間は、人的資本管理の欠片も理解していないアホだけだ」と罵る。
統一歴1926年10月8日、 第203航空魔道大隊 は潜水艦隊と協同で、RMSクイーン・オブ・アンジューに再戦を挑む機会を得た。ターニャらは陽動役を買って出て、勝利する。合衆国の義勇兵 メアリー・スー 少尉は生き残り、連邦の政治将校、 クイーン・オブ・アンジュー 中尉と出会う。
ターニャらは再び東部戦線に戻り、参謀本部が編成した練度の低い戦闘団をどうにか動かしながら、連邦と対峙する。だが、気象班の予報より早く冬が訪れようとしていた。連邦は連合王国と手を組んだ。一方、帝国はターニャの提案を受け入れ、連邦が帝国と敵対させていた分離主義者(民族主義者)と手を組み、連邦への反抗を開始した。
参謀本部にサラマンダー戦闘団を取り上げられたターニャにあてがわれたのは、戦場の経験がほとんどない新兵からなる戦闘団――「インストールすれば、その瞬間からプログラムが動き出すという具合に人間はできていないのだ」(272ページ)、「営業の最前線に、自分の取り扱う商品について理解していない新人を放り込むようなものだ。人手不足を補いたいという意図はさておき、酷い混乱を生み出すのは間違いない」(367ページ)、「自己判断を任せることすら危うい新人のアルバイトしか配属されていない繁忙店となれば結局、指揮官先頭とばかりに店頭に店長が立つしかない」(379ページ)と怨嗟の声を上げる。ターニャの中の人は、現代日本の人事部課長なのだ。同情を禁じ得ない。一方で、自由市場経済の信奉者として共産主義者を忌み嫌っていたが、「『ナショナリズム』との戦いはダメだ」(85ページ)という歴史の教訓から、連邦の民族主義者と手を結ぶという合理的な提案をする。サラリーマンとしてはたいへん有能である。
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